IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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生徒会長の楯無が考案した特別企画「シンデレラ」。
一夏達が身に付ける王冠若しくは勲章を奪うと何でも願いを叶えるという彼女の遊びとしか思えないその企画に火影・海之・一夏の三人も日頃経験したことが無い疲れを感じていた。
そんな中、火影と海之に千冬から突然連絡が入る。不穏な事態を悟った彼等は企画を中断し、指示通り指令室に向かおうとするがそこに箒が一夏がいなくなってしまったと駆けこんでくる。そして火影は一夏の捜索に、海之達は指令室に向かう事になった。


Mission89 ファントム・タスク<亡国機業>

空は夕刻にさしかかり、陽が傾き始めていた。

 

「シンデレラ」の進行中に火影と海之の元に突然入った千冬からの連絡。事態を重く見た海之、そして火影と一夏を除いた専用機持ち一行は指令室に向かっていた。他の生徒達は校内放送で企画の一時中断の連絡と自室待機を命じられ、学園内は先程とは違って静かなものだった。

 

IS学園指令室

 

指令室の扉を開け、一行が入るとそこには千冬、真耶、そして楯無がいた。

 

海之

「先生、楯無さん」

千冬

「来たかお前達。…一夏と火影はどうした?」

「それが…」

 

箒は事情を説明した。

 

千冬

「そうか…」

真耶

「一夏くんはこちらからも連絡がつかないんです。どうしたんでしょう…?」

シャル

「連絡がつかない?」

「…変ね。電話持ってる筈だけど」

楯無

「…気になるわね。…まぁ一夏くんは火影くんに任せましょ。彼なら大丈夫だろうし」

箒・セシリア

「「一夏(さん)…」」

シャル

「…そういえば先生。何があったんですか?」

千冬

「ああそうだったな。実は……またあの例の黒いIS達が現れた。そして進行ルートからして…目的地は…ここだ」

海之以外の全員

「「「!!」」」

海之

「…何故ここに?」

千冬

「…わからん。臨海学校の時はゴスペルや束がいた事等が考えられるが、今回は…」

「関係ありませんよね…」

真耶

「…因みに接触は今から約20分後の予定です」

ラウラ

「敵の数は?」

千冬

「約20機程だ。以前と比べて随分数は少ないな」

「20機…」

海之

「……」

(確かに以前に比べて随分少ない。まだ何かあるのか…?)

楯無

「……」

「どうしたの海之くん?」

海之

「…いや、なんでもない。わかりました、では俺が」

 

とその時、

 

「ちょっと待って海之。ここは私達にやらせて!」

海之

「…なに?」

ラウラ

「その通りだ海之。お前の手を煩わすまでもない。私達にやらせてくれ」

真耶

「そんな!危険です皆さん!」

シャル

「そんな危険な事を海之ひとりだけにさせるわけにはいきませんよ」

海之

「しかしお前達は…」

セシリア

「大丈夫ですわ海之さん。私達も強くなっているのですから」

「その通りだ。それに私も以前と違ってもう力に浮かれたりしない。信じろ」

シャル

「僕達考えたんだ。以前火影や海之、どんなに傷ついても自分達の大切なものを守るために戦うって言ってたよね?」

海之

「……」

「それは私達も同じよ。正直まだまだあんたや火影の足元にも及ばないけど…私達も守りたいって思ってるわ。そしてそのために強くなりたいってね」

ラウラ

「鈴の言う通りだ。だから…お前や火影に頼ってばかりでは駄目なんだ」

千冬

「お前達…」

真耶

「皆さん…」

「私も戦う」

海之

「簪」

楯無

「簪ちゃん」

「大丈夫。私だって海之くんや火影くんにずっと訓練をしてもらってたもの。弐式も完成したし、私も戦えるよ。ケルベロスもある。だから…大丈夫!」

 

彼女らの強い意志を見た海之は、

 

海之

「……わかった。では俺は緊急時に備えて待機しておこう」

楯無

「じゃあ私がみんなと一緒に出るわ」

海之

「宜しく頼みます。楯無さん」

楯無

「任せといて♪…じゃあみんな行くよ!」

女子達

「「「はい!」」」

 

そう言うと海之、千冬、真耶以外は出て行った…。

 

真耶

「…みなさん、気をつけて…」

千冬

「…頼ってばかりでは駄目…か…」

海之

「……千冬先生」

千冬

「あ、ああ。なんだ?」

海之

「少しお話が…」

 

 

…………

 

その頃、行方が分からなくなっていた一夏は、

 

一夏

「……う、…う~ん……あ、あれ…?」

 

気絶していたのか、一夏はゆっくり目が覚めた様子だった。そして立ち上がる。

 

一夏

「…ここは…学園の倉庫?…なんでこんな所に?…確か俺は…箒と戦っていて、でも疲れてたから負けそうになって…、そしたら突然光って」

 

一夏はゆっくり思い出し始める。数刻前、一夏は箒と自身の王冠をかけて一対一の戦いを繰り広げていた。しかしこれまで逃げ続けていた疲れから勝負は劣勢になり始め、もう負けるかと思っていた時に突然強い光が発され、同時に何かに引っ張られた様な感覚に陥った。そして気が付いた時にはこの倉庫にいたのである。

とその時、

 

「…大丈夫ですか?」

一夏

「! 誰だ?」

 

周りに誰もいないと思っていたので一夏は大きく反応する。するとそこにいたのは、

 

礼子

「気がつかれたんですね」

一夏

「! あ、あなたは……巻紙さん!」

 

影から現れたのは数日前、ショッピングモールで声をかけてきた巻紙礼子と名乗る女性だった。

 

礼子

「お久しぶりですね。織斑さん」

一夏

「え、ええ。…ですが巻紙さんが…なんでここに?」

礼子

「ええ…、学園内を歩いていたら織斑さんと女性の方が戦っているのが見えまして、織斑さんが危なかったのでつい助けてしまいました。申し訳ありません」

一夏

「! ではあの光は…」

礼子

「ええ。私が起こした物です。驚かせてしまったようですね」

一夏

「い、いえ、もう大丈夫です。最初は何が起こったのかと思いましたが…ありがとうございます」

 

一夏はきっと助けてくれたのだろうと思って礼子に礼を言った。すると…、

 

礼子

「…そうでしたか。それは良かったですわ。…折角貰い受ける白式に傷がついてしまったら大変ですものね」

一夏

「は、はぁ………えっ…?」

 

一夏は一瞬耳を疑った。礼子から白式の名前が出た様な気がしたのだ。

 

礼子

「単刀直入に申し上げますわ。…織斑さん、あなたの白式を譲って頂きたいのです」

一夏

「!ちょ、ちょっと待ってください!な、なんで白式を!?」

礼子

「もちろん、白式をより有効に使うためですわ。それは本来こんな所で使われる様な機体ではありませんもの」

一夏

「ど、どういう意味ですか?白式がなんだって言うんですか!?」

礼子

「あなたに説明する意味はありませんわ。大人しく譲って頂けません?」

 

礼子は笑みの表情を変えなかったが、声色と雰囲気は先程とまるで違うと一夏は感じていた。

 

一夏

「……お断りします。どんな意味があってどんな理由があるのか知りませんが…白式はお譲りできません」

礼子

「……」

 

一夏ははっきり返答した。すると礼子は、

 

礼子

「……ふふふふっ、どうやらもう化ける必要な無さそうだなぁ~」

一夏

「!?」

礼子

「なら力づくで奪い取るまでよ!」

 

ダダダダダッ!ドゴッ!

 

礼子は突然一夏に向かって走りより、一夏の腹部に蹴りを食らわす。その衝撃で一夏は後ろに吹っ飛ばされる。

 

一夏

「ぐあっ!……がはっ!…くっ、巻紙さん、あんた…一体!?」

礼子

「ああ?礼子ぉ~?…はっ!あたしはそんな名前じゃねぇ。オータムっつんだ、覚えときな。

…さて、どうする?大人しく白式を渡せば三分の一殺し位ですませてやるぜぇ?」

一夏

「くっ…ふざけんな!あんたみたいな奴に白式は絶対渡さねぇ!…白式!」カッ!

 

そして一夏は白式雪羅を展開する。

 

オータム

「へっへっへ。後悔すんなよ?ケンカを売ったのはそっちだからなぁ。…アラクネ!」カッ!

 

そしてオータムの身体が光に包まれ、消えると同時にオータムはISを纏っていた。黒と黄色の配色で8本の脚にも触手にも見えるものがあるISだ。

 

一夏

「IS!?」

オータム

「おうよ、冥土の土産に覚えとけ!アメリカからぶんどったISでアラクネってんだ。てめぇの白式と違って第2世代だが、まぁ操縦者がおこちゃまじゃあ話にならんわな」

一夏

「何だと!」

オータム

「ほんとなら無傷で奪い取るつもりだったがまぁ仕方ねぇ。てめぇをぶっ飛ばしてゆっくりいただくぜぇ!」

一夏

「…やれるもんならやってみやがれ!」

 

ドンッ!

 

そういうと一夏はほとんどフルスピードで向かって行く。しかし、

 

オータム

「わかんねぇかなぁ~?…怒りに我を忘れるのがおこちゃまだっつてんだよ!」

 

ジャキジャキジャキッ!

 

オータムは数本アラクネの触手を前に向け、その先を開く。

 

一夏

「! 銃!?やべっ!」

オータム

「食らいやがれぇ!」

 

ドドドドドドドドドドドッ!

 

アラクネの触手の先からマシンガンの様に銃弾が飛んでくる。

 

一夏

「くっ!アラストル!」

 

一瞬早く反応できた一夏はアラストルの機能で急速回避する。

 

オータム

「ほ~よくかわしたなぁ、だが何時まで持つかなぁ!」

 

オータムは引き続きマシンガンを撃ち続ける。一方一夏は避けることはできていたが白式のエネルギー消費を考えるとずっとこのままという訳には行かなかった。

 

一夏

「くそっ!避けれちゃいるがSEの持ちを考えると俺が不利だ。サークルロンドの要領でなんとか近づかねぇと…よし!」

 

ビュビュビュビュン!

 

旋回行動を止めた一夏は小刻みの動きで飛んでくる銃弾を避けながら素早く近づいていく。

 

オータム

「ほぉ~、やるねぇ~」

一夏

「うおぉぉぉぉ!」

 

そして一夏は手に雪片弐型を持ち、零落白夜を起動。オータムに振りかぶる。

 

一夏

「食らえ!!」

オータム

「おせぇ!」

 

ガキイィィィィィン!

 

一夏

「なっ!?」

 

雪片を振りかぶろうとした瞬間、刀身はアラクネの触手に捕まって動きを止められていた。

 

一夏

「くっ!離せぇ!」

 

一夏は何とか雪片を離そうとするがびくともしない。すると、

 

オータム

「甘いぜぇ!」

一夏

「なに!?」ドドドドドッ!「ぐあぁぁ!」

 

一夏は死角から残りの触手による砲撃を受けた。

 

オータム

「はっはっは!よそ見は厳禁だって」ドゴォッ!「ぐっ!…なにぃ~!?」

 

見ると腹部に一夏の蹴りが入った。一夏に集中し過ぎていて気付かなかった様だ。その隙をついて一夏は距離をとる。

 

一夏

「はぁ、はぁ、はぁ…。…へっ!よそ見厳禁!さっきの言葉返すぜ!」

(火影からあのやり方受けといて良かったぜ!)

オータム

「…こぉんの、ガキィ~!!」

 

ドドドドドドドドドドドドッ!

 

怒り狂ったオータムは触手の銃と手に持ったライフルを向けてくる。

 

一夏

「くっ!さっきより弾が増えやがった!…しかしあいつ、怒りのためかさっきに比べて狙いが単純になってる様に見える。今なら!」

 

そして一夏は砲撃の隙間を抜け、オータムに接近していく。そして、

 

一夏

「これで終わりだぁ!」

 

射程内に入った一夏は再び雪片弐式を持ち、零落白夜を起動する。そしてもう少しで当たる所まで来たその時、

 

オータム

「…ざ~んねん!」

 

ガシィッ!

 

一夏

「な、なに!!…これは!?」

 

見ると自分の身体が蜘蛛の糸の様な物で捕獲されていた。

 

オータム

「ば~か!こっちの芝居に簡単にかかりやがってよ~!だからおこちゃまっつうんだよ!」

一夏

「!…まさかさっきの単純な攻撃は!」

オータム

「そう~!おめぇをおびき寄せるための芝居さ。白式が接近戦重視の機体である事は知ってっからなぁ。まさかこんな簡単にひっかかるとはねぇ」

一夏

「くっ!しまった!」

 

一夏はなんとか動こうとするが糸にがんじがらめにされてびくともしない。

 

オータム

「さ~て、それでは白式を頂こうかぁ~!」

 

そう言うとオータムは四本の脚が付いた妙な機械を取り出す。

 

一夏

「なんだそれは!?」

 

無言でそれを白式に付けた。すると、

 

バババババババババババババッ!

 

一夏

「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

突然一夏の身体に電流が走る。そして電流が収まると同時にISが解除されてしまった。浮遊する物が無くなり、一夏の身体は地面に落ちる。

 

一夏

「ぐあっ!…ぐぐ…」

 

オータム

「へっ、もう終わりか?世界初の男性操縦者さん?」

一夏

「ま、まだだ!…白式!」

 

一夏は再び白式を展開しようとする。……しかし何も起こらなかった。

 

一夏

「…!?」

 

一夏は驚いた。見るとガントレットに嵌っている筈の白式の待機状態であるクリスタルが無くなっている。

 

一夏

「なっ、なんで!?」

オータム

「お探しものはこれかぁ~?」

 

見るとオータムの手の中に白式のクリスタルがあった。

 

一夏

「な!?」

オータム

「ふっふ~ん。さっきおめぇに使ったのはリムーバー、剥離剤っつってなぁ~。こいつを使うとISを強制解除し、更に奪う事ができんのよ!」

一夏

「…てめぇ…、返しやがれぇ!」

 

一夏は立ち上がって向かって行く。しかし、

 

オータム

「うぜぇ!」

 

ドゴッ!

 

オータムの触手の一本が一夏に襲いかかり、弾かれる。

 

一夏

「ぐあぁぁ!…ぐ、ぐ…」

 

這っている一夏にオータムは近づく。

 

オータム

「まるでいも虫だなぁ。……さて、さっき三分の一殺しで済ませてやると言ったが気が変わった。俺に蹴り入れてくれた罰として殺してやるよ!」

 

ジャキッ!

 

オータムは手に持つ銃を一夏に向ける。

 

オータム

「…ああそうだ、冥土の土産に良い事を教えてやる。…織斑一夏、おめぇは昔ガキの頃…まぁ今でもガキか。何者かに誘拐された事があったろう?覚えてっか?」

一夏

「!な、なんでおまえがそれを!?」

オータム

「ふっふっふ、話は簡単だ。何故ならおめぇを誘拐したのは…俺らファントム・タスク、「亡国機業」の人間だからさぁ~!」

一夏

「!!…………おまえらの、おまえらのせいで…俺は!千冬姉は!!…ぐ!」

 

衝撃の事実に一夏は怒り、立ち上がろうとするが身体が思い通り動かない。

 

オータム

「感動の再会ができてもう満足だろう?…じゃあな」

 

ジャキッ!

 

一夏

「…くっ!」

 

オータムは銃を一夏の顔に向けた。……その時、

 

ズドドドドドドドドッ!

ドガンッ!ドガガンッ!

 

一夏

「!!」

オータム

「!! な、なんだと!?」

 

突然オータムの手に持つ銃と触手が数本爆発した。思わぬ事態にうろたえるオータム。

 

オータム

「い、一体何が…」

「これはこれは、もうハロウィンか?」

 

影から声が聞こえてふたりはそちらに目を向ける。すると出てきたのは、

 

火影

「衣装がでかすぎるぜ。センスも最悪だしな。…大丈夫か一夏?」

 

両手にエボニー&アイボリーを持った火影だった。

 

一夏

「ひ、火影!」

オータム

「てめぇはあの時の!どこから入ってきやがった!?ここは全部ロックしてんだぞ!?あと何時の間に近づいてやがった!?全然気配を感じなかったぞ!?」

火影

「質問が多いな。アホか?鍵かかってんなら開けりゃいいのさ」

(あいつに鍵開けの術教わっといて良かったぜ)

「あとあんたが気付かなかったのは知らねぇよ。鈍いだけじゃあねぇのか?」

オータム

「!てめぇ!!」

 

ズドドドドドドドッ!

 

激高したオータムは触手から銃を撃つ。

 

火影

「…ふっ」

 

ズドドドドドドドッ!

 

火影もエボニー&アイボリーを撃つ。

 

キキキキキキキキキキキン!

 

オータム

「なっ!?」

 

オータムは驚愕した。自分が撃った銃弾が火影が撃った銃弾に全弾撃ち落とされたのだ。

 

一夏

「じ、銃で銃弾を撃ち落とした!?」

火影

「まだやるか?お・じょ・う・ちゃ・ん?」

オータム

「! こぉんのガキィー!」

 

先ほどと違って余裕が無いオータムは火影の挑発に激高して向かって行く。

 

火影

「一夏を傷つけたのも許せねぇが…あんたには聞きたいこともあるんでな。サイズ直ししてやるよ」カッ!

 

火影はアリギエルを展開し、リべリオンを構えた。




火影(ダンテ)にとって鍵がかかった扉なんて本来ぶった斬るところですが一応学生なんでそれは無しで(汗)
因みに彼に鍵開けの術を教えたのは同じデビルハンターと思っていただければ。一応何でも屋ですから。

※これと次回アップすればまた間を頂きます。

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