IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
時刻はやや戻って、一夏とオータムが戦っていた頃。空は夕闇に差し掛かっていた。
箒・セシリア・鈴・シャルロット・ラウラ・簪、そして楯無の七人はIS学園の校外空域にいた。IS学園に向かって来ているという例の黒いIS、アンジェロの群れを迎撃するためだ。
千冬
「…まもなく接触する。良いなお前達、前回のゴスペル戦と同じくこれは訓練でも試合でもない。戦いだ。くれぐれも無茶はするな。我々もできるだけ通信でサポートする。さら…いや今は二人いるんだったな。楯無、現場の指揮は任せるぞ。それからボーデヴィッヒ、お前は他の者より戦いに慣れている。サポートを怠るな」
楯無
「了解です織斑先生」
ラウラ
「は!了解しました!教官!」
箒
「…千冬さん、一夏から連絡は?」
千冬
「…まだ連絡がつかない。織斑の事は火影に任せておけ。あいつなら心配ない」
シャル
「箒、一夏は大丈夫だよきっと」
箒
「…うむ」
セシリア
「箒さん、気持ちはわかりますが今は目の前の敵に集中した方が良いですわ。もし私達が倒れたら一夏さんにも会えなくなりますわよ?」
鈴
「そうよ。あいつを守るんでしょ?」
箒
「! ああ!」
簪
「…先生、海之くんは?」
千冬
「海之は今独自で行動している。心配ない。だから頑張れ」
簪
「は、はい!」
真耶
「…みなさん!間もなく接触します!」
楯無
「了解です。……いいわねみんな、さっき織斑先生も言ったけどこれは戦い、戦闘なんだからね。おまけに火影くんも海之くんもいないんだから。絶対に油断しないで」
ラウラ
「こちらは七人に対して相手は約20機。数では三倍近い。囲まれればこちらが不利だ。何人かでペアになって敵を分散させる」
楯無
「なら私は一人で良いわ。みんなは二人ずつでペアを組んで。お互いの背中を守るのよ」
シャル
「そんな!無茶ですよ!」
簪
「お姉ちゃん…」
楯無
「大丈夫よ。これでもロシア代表だからね♪……見えたわ」
やがて遠くの方に敵の群れが見えた。
鈴
「じゃあまずは先手必勝ね!」ガシャンッ!
すると鈴はガーベラを展開した。先ほどからチャージしていたようだ。
鈴
「吹っ飛びなさい!」
ズド――――ンッ!
ドドドンッ!
鈴はガーベラのレーザーを収束モードで発射した。それに何機か直撃し、爆発したのが見えた。
鈴
「やりぃ♪」
セシリア
「相変わらず凄い威力ですわね」
簪
「感心してる場合じゃないよ!向こうも気付いたみたい!」
箒
「行くぞ!」
敵もこちらに気づいて急速に向かってくる。箒達もそれぞれに分かれてそれに相対した。
…………
アンジェロ
「……」
ドドドドンッ!
敵は無言のまま自らのライフルを発射する。
箒
「紅椿のスピードを甘く見るな!」
箒は全速でそれを見事に回避し、終わると同時に自らの剣で迎え撃つ。
ガキィィィィンッ!
箒
「流石!だが負けん!」
ガキンッ!キンッ!ガキキンッ!
暫し剣の応酬が繰り広げられる。そして、
箒
「そこ!」
ザシュッ!
アンジェロ
「!」
ドガァァァンッ!
箒の剣が敵の腹を真っ二つにし、爆発霧散した。
箒
「やった!」
喜ぶ箒。しかしその時別の敵が横から迫って来ていた。
箒
「!」
セシリア
「箒さん!」
シュバァァァァ!ガシッ!
アンジェロ
「!?」
迫って来ていた敵はセシリアのローハイドによって捕獲されていた。
セシリア
「今です箒さん!」
箒
「! ああ!」
ズガッ!
ドォォォォン!
捕獲された敵は箒の攻撃で倒された。
箒
「すまんセシリア!感謝する!」
セシリア
「構いませんわ!参りましょう!」
…………
キュイィィン…ズドンッ!
アンジェロの胸部からレーザーが発射される。
シャル
「やらせないよ!」
ババババババババッ!
シャルロットは自らの大出力シールド「ガーデン・カーテン」を展開して防ぐ。そこへ、
鈴
「はぁぁぁぁ!」
アンジェロ
「!」
ドンッ!……ズガンッ!ボガァァァアン!
敵がシャルロットに気を取られている内に、鈴がガーベラによる加速状態のまま双天牙月の強烈な一撃を繰り出した。まともに食らい、敵は爆散した。
シャル
「ナイス!鈴!」
鈴
「まあね!次来るわよ!」
更に敵が襲いかかってくる。
ガキィィンッ!
鈴の双天牙月と敵の剣が激突した。
シャル
「はあぁぁぁぁ!」
鈴に気を取られている的にシャルロットはグレースケールを展開して突撃する。と、
鈴
「!シャル、後ろ!」
シャル
「えっ?…!」
後ろを見るとシャルに銃を向ける別の敵がいた。
シャル
「しまった!」
攻撃を食らうのを覚悟するシャルロット。すると、
ドスッ!
アンジェロ
「!?」
ドガーンッ!
突然後ろから敵の腹部を槍が貫き、敵は撃破された。
楯無
「大丈夫?」
槍で貫いたのは楯無だった。
シャル
「! 楯無さん、ありがとうございます!」
楯無
「気にしなくていいわ。…シャルロットちゃん、あなたの機体は防御は優れているけど武装や反応はみんなより劣るわ。あんまり無茶はしないようにね」
シャル
「う…、そ、そうですね。気を付けます」
鈴も先程の敵を倒し、こちらに来た。
鈴
「大丈夫シャル?」
シャル
「うん、大丈夫だよ」
楯無
「よし、私は次に行くわ。二人共油断しない様にね!」
楯無は次の敵に向かって行く。
鈴
「私達も行くわよシャル!」」
シャル
「う、うん!」
(…確かに僕の機体は他のみんなと違ってまだ第2世代型だもんね…。僕ももっと強い力があればなぁ…)
…………
ガキンッ!キンッ!キンッ!
こちらでは先程から簪が炎のケルベロスで敵と交戦していたが、簪の方がやや劣勢だった。
簪
「くっ!」
ラウラ
「簪!離れてろ!」
そう言われて簪は下がる、そこへ、
ドギューン…ドゴォッ!
ラウラ
「貫けぇっ!」
アンジェロ
「!」
ズガガガガガッ!ドガーーーン!
ラウラのビーム手刀を加えたパンチラインが直撃し、敵を貫いた。
ラウラ
「大丈夫か簪?」
簪
「う、うん!ありがとうラウラ」
ラウラ
「そうか。なら良い」
セシリア
「大丈夫ですか二人共」
そこへセシリアと箒が近づいてきた。と、
簪
「!二人共、後ろ!」
箒・セシリア
「「!!」」
ズドドドドドドドッ!
別の敵が二人の背後からライフルを撃ってきた。
簪
「危ない!」
バリリリリリリッ!
素早く入った簪はケルベロスの三節棍によるバリアを展開し、攻撃を防いだ。
箒
「簪!」
簪
「大丈夫!…よし!このまま!」
すると簪は攻撃が止むと同時に、
簪
「春風…いっけぇ!」
ドギューーンッ!
アンジェロ
「!!」
ドガァァァァンッ!
弐式の荷電粒子砲「春風」が直撃、敵を破壊した。
箒
「凄いな簪」
ラウラ
「やるではないか簪」
セシリア
「さすが簪さんですわ」
簪
「あ、ありがとう…」
みんなに褒められて簪は照れた様子だった…。
…………
一方楯無は自らを囲むように展開する三機のアンジェロと対峙していた。
楯無
「……」
キュイ―ン…
三機のアンジェロがそれぞれ胸部のレーザーをチャージする。そして、
ズド――――ンッ!
それぞれ中央の楯無に向かって発射した。
ドガ―――――ンッ!…パラパラ…
三機から放たれたレーザーが中央の楯無に同時にぶつかり、激しい爆発を起こした。
すると、
ザシュッ!
アンジェロ
「!?」
楯無
「残念♪今のは分身よ」
ボガーーンッ!
敵の一体が後ろから楯無のランスによって切り裂かれ、爆発した。
ズドドドドッ!
敵は楯無に向けてライフルを撃つ。しかし楯無はそれを全てかわす。
楯無
「海之くんや火影くんとは比べ物にならない位簡単ね!」
楯無はかわしきると敵に向かって瞬時加速で接近し、
ズガッ!ズガッ!………ドドォォォォォンッ!
すれ違いざまに二体を斬った。
楯無
「他愛も無いわね♪」
鈴
「…やっぱり凄いわね」
セシリア
「ええ…、見事な動きでしたわ」
簪
「お姉ちゃん…」
楯無の見事な戦闘を見たみんなは驚いている様子だった。…そしてどうやら今ので最後の敵だった様だ。
楯無
「ふぅ~、みんなお疲れ様。怪我はない?」
箒
「ええ何とか。ありがとうございます」
セシリア
「私も大丈夫ですわ」
ラウラ
「…しかし海之や火影程ではないにしろ思ったより楽に倒す事ができたな」
シャル
「それだけ僕達も強くなっていると言う事じゃない?」
鈴
「そりゃ火影達や楯無さんの訓練を受け続けてきたからこれ位はできないとね」
簪
「うん、そうだね」
~~~~~~~~~~~~
と、その時通信が鳴った。
千冬
「…お前達、無事か!?」
ラウラ
「教官!ご安心ください。全員無事です。大した被害もありません」
真耶
「良かった…!」
セシリア
「ですが一夏さんは間に合いませんでしたわね…」
箒
「そういえば千冬さん。一夏はまだ?」
千冬
「ああ、さっき通信が来た。一夏だが…あの後、オータムとかいう謎の女に拉致され、交戦していた事がわかった」
全員
「「「!!」」」
その内容を聞いてみんな驚いた。中でも箒とセシリアの慌て様は一際だった。
箒
「ち、千冬さん、それは一体!?い、いや、それより一夏は大丈夫なんですか!?」
セシリア
「ま、まさか一夏さん!」
千冬
「ああ心配するな。疲労が激しい様だが無事だ。火影が助け出してくれた」
箒
「そ、そうですか…ああ」
鈴
「火影も無事だったんだ。…良かった」
ラウラ
「教官、それでその女は?」
千冬
「問題ない。火影が倒してくれたよ」
シャル
「火影…」
楯無
「さすが火影くんね♪」
真耶
「それから…これは更になんですが…、実はあの後、学園のアリーナにあの例の機械蜘蛛も現れたんです」
シャル
「! あの機械蜘蛛が!?」
千冬
「ああそうだ。だがそれも心配するな。こちらも海之が撃破してくれた」
簪
「えっ!?」
鈴
「あの化け物を一人で!?」
千冬
「ああ、あっという間にな。どうやら海之は敵の出方が気になっていたみたいでな。万一に備えて警戒していた様だ。お前達に連絡するなと言ったのもあいつだ。集中を切らせてはいけないとな」
簪
「海之くん…やっぱり凄い…」
ラウラ
「流石は私の嫁だ」
千冬
「お前達も御苦労だった。はやく」
とその時、
~~~~~~~~~~~~~
全員
「「「!!」」」
全員のアラームが鳴り響いた。そして千冬や真耶のいる指令室にも鳴り響く。
千冬
「何事だ!」
真耶
「…! 何かが高速で接近してきます!反応からして…ISです!」
千冬
「何だと!どこからだ!?」
真耶
「…! みなさんがいる方角からです!接触まで約2分!」
千冬
「! まさか増援か…!お前達聞こえているな?未確認のISが接近中だ!一機だけの様だが正体が分からん!決して油断するな!」
楯無
「了解です!」
シャル
「未確認ってことは…さっきのIS達じゃないよね?」
簪
「うん。一体なんだろう…?」
箒
「わからん。だが決して油断するな!」
ラウラ
「……あれか!」
…ラウラの言う通り、一機のISらしき影が遠方から近づいて来ているのが見える。速度はかなりのものの様だ。やがて形が少し見える様になると突然セシリアが反応する。
セシリア
「!あれは!…まさか!?」
鈴
「どうしたのセシリア?」
そしてそれははっきり見える距離まで近づいた。全体がセシリアのブルーティアーズの青を更に深めた様な色。特徴は蝶の羽の様なスラスターと触角の様なヘッドパーツ。見た目は正に青い羽の蝶であった。
シャル
「蝶…?」
簪
「油断しないでみんな!」
すると突然、
バババババッ!
ドギュドギュドギュンッ!
謎のISは接近しながらビットを展開し、攻撃してきた。
鈴
「! ビット!?」
ラウラ
「みんなかわせ!」
突然の攻撃だったが何とか全員かわすことができた。
箒
「あいつ、あれ程のビットを動かしながら迫ってくる!」
楯無
「来るわよみんな!」
全員次の攻撃に備えて構える。…しかし、
全員
「「「!?」」」
ドンッ!
謎の青いISはその場にいる彼女達を相手にせず、瞬時加速で通り過ぎて去った。
シャル
「攻撃してこなかった…?」
ラウラ
「相手にもしないという事か!?なめた真似を!!」
簪
「見て!あいつ学園に向かってる!」
箒
「追うぞ!…どうしたセシリア?」
セシリア
「やはり、やはりあれは…」
簪
「セシリア、あのISを知ってるの?」
楯無
「セシリアちゃんって確かイギリスの…。やっぱりそうか…、どこかで見た機体だと思ったのよね…」
シャル
「えっ?」
するとセシリアが答えた。
セシリア
「…あれの名前はサイレント・ゼフィルス…。私のブルー・ティアーズと同じビットを使うISで…、行方不明になっていた…ブルー・ティアーズの2号機ですわ…」