IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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火影と一夏がオータムと対峙していた時に現れた突然の乱入者。それはセシリアの母国イギリスより奪われ、行方不明になっていたIS、サイレント・ゼフィルスとそれを駆る謎の女であった。謎の女はオータムを連れて逃げ出そうとするが火影がそれを阻止せんとする。逃げられないと悟った女は戦いを仕掛けるが先のオータムと同じく女も火影の強さに徐々に押されてしまう。
そんな状況の中、オータムが突然自らのアラクネのコアを解除し、箒達に向けて自爆装置を作動させる。みんなを守るために火影は爆弾を自分に引き付け、更に驚くべき行動に出た!


Mission93 動き始める運命

コアに追われて逃げ続ける火影は突然リべリオンを展開する。そして、

 

ザンッ!!

 

火影は自らの、アリギエルの左腕を斬り落とした。

 

火影

「ぐうぅぅぅぅぅ!!」

シャル

「…火影----!!」

「………………え?」

 

火影の思わぬ行動にシャルロットは絶叫し、鈴は言葉を失っていた。

 

ブンッ!

 

火影は自ら斬り落とした左腕を掴み、それを追って来るコアめがけて放り投げる。するとコアは放り投げられた左腕に反応し、そして、

 

ドガァァァァァァァァァァン!!

 

追って来ていたコアはアリギエルの左腕もろとも爆発した。幸い爆発のダメージが火影やみんなにまで及ぶ事はなかった。

 

火影

「やれやれ…なんとか上手くいきやがった…ぐっ!」

 

二の腕の途中から下を失ったアリギエルの左腕からは大量の血があふれ出る。

 

火影

「ちっ、やっぱ痛みが激しいな。まぁ当たり前か…前ん時も腕無くすなんて事…くっ」

 

そんな火影の元にみんなが近寄る。特にシャルロットは既に涙を浮かべている。

 

シャル

「火影!火影!」

「大丈夫か!!」

ラウラ

「なんて事をするんだお前は!!」

セシリア

「そんな事を言っている場合じゃありませんわ!直ぐに手当てしないと!!」

火影

「だ、大丈夫だっ…ちょっと待ってろ」

「何を言っているの!?大丈夫な訳な……!!」

 

カッ!

 

するとアリギエルの失われた左腕に変化があった。まずみるみる内に骨格が再生し、そこにまとわりつく様に筋肉や血管、神経繊維等が修復され、腕は何事も無かったかのように元通りになったのだ。

 

「う、腕が元通りになった!?」

楯無

「嘘でしょ!?」

火影

「…くっ。あ、ああそうか、楯無先輩と簪は知らなかったか。俺のアリギエルは頭部と心臓が破壊されない限り、再生し続けるんだよ」

「そ、そういえば以前その様な事を言っていたが…」

セシリア

「で、でも先程失った血は!?」

火影

「ああ…それも大丈夫だ。失った分の血も元通りになっから。前に海之が腹の傷治ったの知ってるだろ?…まあ再生するまでの痛みは人並みだけどな」

 

火影は左腕を触りながら答える。

 

「………」

シャル

「本当に、本当に大丈夫!?」

火影

「ああ心配すんな。もう痛みもねぇよ」

「一夏といいお前といい…本当に心配させる天才だよ…」

ラウラ

「…しかし火影。先程の者達はなんだったのだ?」

火影

「ああそうだったな。とりあえず地上に降りようぜ」

 

そして火影達は一番近くの地に降りた後、火影はここまで起こった事をみんなに話した。一夏がファントム・タスクのオータムと名乗る女と交戦していた事。そしてオータムやあのゼフィルスの女がアンジェロやファントムと関わりがある事。そしてあの爆弾の事等…。

 

「アンジェロ、ファントム、そして…ファントム・タスクという奴らか」

楯無

「…まさかあいつらが関わっていたなんてね」

シャル

「楯無さん知ってるんですか?」

楯無

「聞いたことがある範囲でだけどね…。秘密結社って話だけど…多くは謎に包まれているわ。でもアラクネもサイレント・ゼフィルスも奴らに奪われていたってことね」

セシリア

「更にアンジェロやあのファントムも同じ組織のものという事ですわね」

「…でも火影くんの話だと…、アンジェロとファントム…。それはアラクネやゼフィルスと違って自分達で造ったっていう話なんだよね?」

ラウラ

「…つまり敵側にもISを造れる程の科学者がいるという事か…」

火影

「……」

 

火影はオータムが言っていた「あいつ」という言葉がずっと気になっていた…。敵の言葉を信じる通りもし「あいつ」とやらがあれらを生み出したのなら…考えられる事は…。

 

シャル

「火影?どうしたの?やっぱり痛む?」

火影

「…ん?ああ何でもねぇ…。そろそろ戻ろうぜ、一夏や先生方にも報告し」

 

その時、

 

パアァァァァァァン!

 

全員

「「「!」」」

 

突然場に乾いた音が響いた。それは…今迄黙っていた鈴が火影の顔に思い切りビンタしたからだ。

 

「……」

シャル

「り、鈴!?」

火影

「…鈴、お前なに」

「……てんのよ」

火影

「…えっ?」

「…なにバカなことしてんのよって聞いてんのよ!!」

全員

「「「!」」」

 

火影含め全員は再び驚いた。ここまで怒り声を上げる鈴を見るのは一夏の件に続いて二回目だ。ただあの時と違い特に彼女を傷つける事等していないと火影は思っていた。

 

「り、鈴。どうしたお前?」

「黙ってて!…もう一度聞くわよ火影!なんであんなバカなことしたの!?爆弾の前に立ちふさがるだけでも結構なのに、その上私達が爆発に巻き込まれるのを防ぐために囮になって、更に自分の腕斬り落とすなんて!!どんな神経してんのよ!?」

火影

「…いやしかしあれは」

「しかしも何もない!!拳銃で破壊できないならあんたのカリーナでもイフリートでも使ってみれば良かったじゃない!!それでも無理なら私のガーベラでも簪の春雷でも頼めば良いじゃない!それでも無理ってんならみんなの攻撃を合わせてぶつけてみれば良かったじゃない!違う!?」

 

言い続ける鈴の目にはいつの間にか涙が溜まっていた。

 

「鈴…」

「レオナさんが言ってたわ!あんたも海之もいつも他人の事ばかり考えて、自分の事はいつも疎かにして、何でも自分達だけで背負い込もうとするって!なんでよ!?私達やみんなの事はいつも真摯に考えてくれたり守ったりしてくれるのにあんた達はなんでそうなのよ!?もっと周りを頼りなさいよ!私達仲間じゃないの!?」

 

やがて鈴の目からは大量に涙があふれ出た。

 

ラウラ

「鈴…もうそれ位にして」

「あんたは守ってるつもりかも知れないけど守られてる方だって辛いのよ!自分が頼りないからまた迷惑かけたってね!まして目の前であんな助けられ方されて喜ぶ子がいると思う!?一番好きな奴が…誰よりも大切な奴が…自分の腕斬り落として、それで助けられて喜ぶ女の子がいると思う!?そんなの大間違いよ!!バカにすんじゃないわよ!!」

 

火影

「……」

シャル

「鈴…」

楯無

「鈴ちゃん…」

セシリア

「鈴さん…あなた…」

 

鈴は涙を流しながら必死に訴える。話の中でほぼ告白じみた事を言っているのはその場にいるみんなも鈴自身も気付いていたがそんな事を気にしてはいなかった。

 

火影

「鈴……」

「でもあんたはどうせこれからもそんな戦いを続けるんでしょ。前も言ってたし。ほんとは力づくでも止めさせたいとこだけど…私には無理だし。だからせめて約束しなさい!これからどこに行くにも戦うにも、必ず私達も連れて行きなさい!時間稼ぎでも足止めでも何でもやってあげるから!あんた達が無茶しない様に見張り役に付けなさい!…もし…もし…さっきみたいな事またしたら…絶対許さないんだから…ただじゃおかないんだからぁーー!!」

 

そう言って鈴は大泣きしながら火影に抱きついた。そして、

 

シャル

「…火影、鈴の言う通りだよ…。もうあんな事しないで…。僕も…もっと強くなるから、みんなを守れる位強くなるから…、火影に…あんな事させない位…強くなるから、だから…お願いだよぉ…」

 

シャルロットもまた涙を流して火影に抱きついた。彼女も鈴の言葉を聞いて想いが溢れ出た様だった。

 

火影

「…鈴…シャル…」

楯無

「…女の子をそこまで泣かせるなんて大きな罪よ火影くん。もう二度とあんなことしないと誓いなさい。でないと…ふたりとも決して貴方を許さないわよ?」

扇子

(海誓山盟)

火影

「……鈴、シャル。…悪かった。もう二度としない。約束すっから…」

 

火影は今も泣きながら離れない鈴とシャルロットの頭を撫でながら約束した。

 

楯無

「簪ちゃん、あとラウラちゃんも言っとくわ。多分、いや絶対海之くんもいざとなったら火影くんと同じ様に無茶をするだろうから…馬鹿な事しない様しっかり見張ってなさいよ」

「!!…うん!」

ラウラ

「うむ!海之は、嫁は私が守る!弟の火影もだ!」

楯無

「箒ちゃんとセシリアちゃんもよ?一夏くんも二人に負けない位正義感が強いからね」

「は、はい!」

セシリア

「分かりましたわ!」

楯無

「…まぁ一夏くんは私も見張ってるけどね♪」

箒・セシリア

「「…えっ?」」

 

その後、鈴とシャルロットが泣き止むまで暫く待ち、全員で学園に戻ると火影は早速千冬と真耶に呼び出された。火影の事はレーダーを通してふたりも見ていた様で、あの後ものすごく叱られる事になった…。

 

 

…………

 

???

 

その頃、火影との戦いで離脱していたオータムとMと呼ばれた女は彼女らの拠点らしい場所に戻って来ていた。

 

オータム

「やれやれ…どうにか無事に帰ってこれたぜ」

「……」

 

そんなふたりの元へひとりの女性が歩み寄ってくる。長身で金髪、火影程ではないが赤い目をしている。

 

「お帰りなさいふたり共。大変だったみたいね、大丈夫だった?」

オータム

「おおスコール、今帰ったぜ~。散々な目にあったが何とか大丈夫だ」

「…スコール、あの方は?」

スコールと呼ばれた女

「あの人ならずっと自室に籠ってるわよ。何か考え事があるみたいね。相手にしてもらえないから私も寂しいわ」

「……」

オータム

「まぁいいじゃねぇか。放っといてくれって言ってるんだしよ」

スコール

「ところでオータム。あなた白式の回収に失敗したようね?あの人が言ってたわよ?」

オータム

「…ちっ!あんにゃろう余計な事を…。つーか聞いてくれよ!ほんとにもう少しで奪える筈だったんだよ!なのに邪魔が入りやがって…」

スコール

「…邪魔って?」

オータム

「ほら、以前言ったろ?私の銃やナイフを見抜いた奴がいたって。あいつだよ!確か…火影とか言ってたな。それにもうひとりいんだよ!あたしが脱出のために用意していたファントムを簡単にぶっ倒した奴!…確かそっちの方は海之って言ってたぜ。てかそいつらだったんだよ!前に俺らがゴスペルを奪った際に使ったアンジェロ達を殲滅した奴ら!」

スコール

「…火影…海之。…そう、そのふたりがあの時の…」

「…だが邪魔が入ったにせよ任務を果たせなかったのはお前の責任だ。おまけにアラクネのコアまで消費してしまった…。代償は大きい」

オータム

「なんだと!?そういうてめぇだってあの野郎に歯が立たなかったじゃねぇか!」

「……」

スコール

「…貴女達が揃って歯が立たない相手、少し興味あるわね…。まぁ今はその話はよしとしましょう。オータム、理由はどうであれコアを失ってしまったから貴女は当分戦えないわ。暫くの間はISを使わない任務に動いてもらうから。まぁあの人が何とかしてくれるでしょう。ああそれからM、帰還次第あの人が部屋に来てくれって言ってたわよ」

「…了解した」

 

Mはそう言われるとその場を去って行った。

 

オータム

「…ちっ」

スコール

「はいはいそう悔しがらないで。貴女も知ってるでしょ?私達には彼女が、それにあの人が必要だって事」

オータム

「…わーってるよ。つーか…あの野郎、どうやってあんなもん造れんだろうな」

スコール

「? どうしたの急に?」

オータム

「さっき言った火影って奴が言ってたんだよ。アンジェロやファントムの奴らをどうやって知った?どうやって手に入れた?ってな。…思えば確かにあいつ、なんであんなもん造れんだろ?」

スコール

「……さあね」

 

 

…………

 

ある部屋の前

 

「…私です」

「……入ってくれ」

 

ピッ!ウィィィン

 

Mは部屋の中から聞こえてきた指示によって部屋に入った。部屋の中は電気を付けていないのか暗く、外からの光によって僅かに見えるだけだった。良く見るとデスクの前の椅子にひとりの人物が座っているようだがその風貌までは伺い知る事はできなかった。だが声色からして男である事はわかる。

 

「……」

「…先程帰還致しました。報告します」

「……聞こう」

 

それからMは全てを話した。オータムが火影という男に敗れ、白式を奪い返された事。ファントムが海之という男に簡単に敗れ去った事。自身も戦ったが手が出なかった事も隠さず全て。

 

「……」

「申し訳ありません…」

「…構わない、気にするな。…無事で何よりだ」

「!…ありがとうございます」

「しかしオータムの奴め、貴重なコアを失うとはな…。いや…その火影と、そして海之という奴の仕業か」

「……」

「まぁ次の作戦は考えてある…。御苦労だったな。下がって休め」

「…承知致しました」

 

ウィィィン

 

そう言ってMは部屋から出ていった。

 

「………」

 

謎の男は暫く黙っていたがやがて口を開いた。だが先程とはやや様子が違う様に聞こえる。

 

(ふっふっふ…)

「…どうなされました?」

(火影、そして海之という双子…。そ奴らが持つIS…。更に傀儡共を圧倒する力。まさかと思っていたが…やはり、やはりそうだったか…)

「ではそのふたりが…」

(…お前は運命とやらを感じた事はあるか?)

「もちろんです。貴方との出会いこそが私の運命であり、宿命でした」

(…そうか。…これからも頼むぞ)

「…仰せのままに。我が主、我が神よ…」

 

部屋の中で声が小さく響いていた…。

 

 

…………

 

その頃、千冬と真耶の説教が終わった火影は屋上で海之と話していた。

 

火影

「いつつ……一生分の出席簿食らった気分だ。おまけに鈴やシャルには泣きつかれるし」

海之

「自業自得だ。鈴の言う通り、少し考えれば方法はあっただろうに」

火影

「うっせー、あの時はそこまで考えが浮かばなかったんだよ。…まぁ確かに今回はあいつらに悪い事をしちまった。もう二度とあんな事はしねぇよ」

海之

「そうしておけ」

火影

「……ところで海之」

海之

「ああ。予想はしていたが……やはりだったか」

火影

「あの時のお前にそっくりなあの黒い奴もあの蜘蛛野郎も…単に良く似てるだけじゃなかったって事だな…」

海之

「……」

火影

「本当にいると思うか?……俺達と同じ奴が」

海之

「……さぁな。だがもはや偶然では片づけられんだろう。…問題は仮にそうであるとして……誰が、という事だが」

火影

「……誰、か」

海之

「………」

 

ふたりはそれから暫く黙りこんでいた…。




※次回までまた暫く間を頂きます。すみません。

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