IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
一方、火影との戦闘から離脱したオータムやMは彼女らの拠点に帰還していた。そこではスコールという女性と、もうひとり謎の人物がいた。その人物はMから報告を受け、Mを部屋から出て行かせると、どこにいたのか今度はもうひとつの声と話し始める。その声は言った…。
「火影と海之という双子…、やはり…、これが運命か…」
オータム、アンジェロの群れ、ファントム、そしてMと名乗るゼフィルスのパイロットと、多くの襲撃があった日の翌日。この日は前日の事もあって臨時休校となった。混乱を防ぐために一部の生徒を除いて生徒達には襲撃があった事は極力隠され、ただ単に文化祭によるものと説明されている。突然の事だったので不思議に思う生徒も少なからずいたが、より詳しく模索しようとする生徒はなく、特に問題は起こっていない様子だった。
医務室
ガラッ
火影
「一夏、身体はどうだ?」
一夏
「おお火影、みんなも。もうすっかり平気だって言ってんのに…箒やセシリアや千冬姉が明日の登校までしっかり休めって帰してくれねぇんだよ」
箒
「油断大敵という事もある!」
セシリア
「その通りですわ!火影さんがいなかったらどうなっていた事か!」
一夏
「…まぁそれは素直に認めるよ。でも火影、お前も随分無茶したらしいじゃねぇか?千冬姉から聞いたぜ。俺も正直ぶったまげたよ」
火影
「はは…。お陰で数日の間、部屋と風呂以外に鈴とシャルのどっちかが一緒にいて見張りについてる事になったよ」
鈴
「…自分でまいた種なんだから我慢しなさい」
シャル
「本音に教えないだけでもありがたく思ってよ…」
簪
「本音は怒らせたら恐いよ?」
火影
「…悪かったよ」
ラウラ
「そう思うならもう二度とあんな真似はしない事だ、弟よ。あと海之、頼むからお前もあんな無茶はしないでくれよ?この歳で未亡人は嫌だぞ」
海之
「心配するな。俺は効率的に動く」
一夏
「そう言えば楯無先輩は?」
海之
「楯無さんは事後処理で来れない。明日文化祭の件でまた集会だそうだ。最も真実は話されないだろうが」
ガラッ
千冬
「お前達も来ていたのか」
扉が開け、入って来たのは千冬だった。
一夏
「ああ千冬姉、…なぁ」
千冬
「駄目だ」
一夏
「…まだ何も言ってねぇけど?」
千冬
「お前の考えなど手に取る様にわかる。もう本当に大丈夫だから部屋に帰してくれねぇか?、とでも言いたいのだろう?」
一夏
「…一言一句その通りです」
鈴
「流石千冬さん。一夏の事はわかりきってるわね」
千冬
「…火影、本当ならお前も同じく閉じ込めておきたいところだが既に何ともない以上そうもいかん。だが自分がやった事は決して忘れるなよ?」
火影
「…はい」
千冬
「お前、そして海之にも言っておく。お前達は確かに強いし頭も良い。状況把握力も指揮能力もある。…だがいつもお前達が言っている様にお前達も頼る事も覚えろ。如何にお前ら自身は死なない、大丈夫と思っていても見ている側は辛いと思う事があるんだ。最早この学園においても…もうお前達はお前達だけのものではないんだぞ」
火影
「…はい」
海之
「わかりました…」
火影・海之・千冬以外
「「「………」」」
みんな暫く黙っていた。そしてやがて火影が口を開く。
火影
「そう言えば織斑先生、ひとつ聞きたい事があるんです」
千冬
「なんだ?」
火影
「俺は一夏がオータムに追いつめられていた時に割って入ったんですが…、その時に一夏が奴に気になる事を言ったんです」
千冬
「気になること?」
火影
「はい。お前らのせいで」
一夏
「! 火影!」
その時一夏が割って入って止めた。
箒
「どうした一夏?」
一夏
「い、いやなんでもねぇ…」
火影
「……」
火影は一夏の様子を見てきっとみんなに聞かれたくないのだろうと思い、何も言わないでおこうとした。すると千冬が何かを察したのか口を開く。
千冬
「…火影、一夏がその女に対してそう言ったのか?」
火影
「…ええ」
千冬
「……」
千冬はまた暫く黙っていたがやがて、
千冬
「…わかった。私から話す」
一夏
「千冬姉!」
千冬
「…もう黙っている意味は無い。それにまた同じ事が起こらんとも限らん。白式目的とはいえ実際お前は拉致された訳だし…、話しておいた方が今後のためにもなるだろう」
箒
「…同じ事?」
一夏
「千冬姉…」
鈴
「ねぇ火影、さっきの話ってなんの事よ?」
ラウラ
「まさか…」
シャル
「ラウラ、何か知ってるの?」
ラウラ
「…確信はない。だが私が思っている通りなら…おそらく」
他のみんなと違ってラウラは何か思い当たる事があるようだ。
海之
「千冬先生、その話とはもしかして以前先生とラウラが言い合っていた事と何か関係が?」
千冬
「……まぁな」
一夏
「そういえばあの時海之もいたんだっけな」
セシリア
「…織斑先生、一体どういったお話なんですの?」
その問いにまず火影が答える。
火影
「…一夏、お前は昨日あいつに言ったな?「お前らのせいで自分や織斑先生は」と」
一夏
「…それは…」
すると今度は海之が口を開く。
海之
「…先程の千冬先生の「同じ事」という言葉と、そして今回お前が拉致された件。…一夏、お前以前も同じ様な事があったのではないか?」
一夏
「っ…!」
箒
「なっ!?」
セシリア
「そ、そんな!?」
火影
「……」
千冬
「…それについては私が話そう」
ラウラ
「教官…」
千冬
「あれは今から四年程前、私が出場していた第2回モンド・グロッソの決勝戦が行われる日だった…。決勝まで無傷のまま勝ち進んだ私は、もう僅か数分後に行われる試合に向けてISの最終調整を行っていた所だった。そんな時に突然、ドイツ軍からある連絡が私の所へ飛び込んできた。それは…一夏が何者かに誘拐された、という連絡だった」
全員
「「「!!」」」
火影・海之
「「……」」
一夏
「……」
千冬
「だが同時にドイツ軍は一夏の監禁場所の情報も既に掴んでいた。私は周囲が止めるのも聞かずに試合を放棄し、ISを纏ったままその場所に急行した。途中で兵器群との少しの戦闘の後、私は一夏を救い出した。発見された時に一夏は気絶こそしていたがそれ以外に被害は見当たらなかった」
箒
「良かった…」
一夏
「…よくねぇよ!」
箒
「!」
一夏
「千冬姉はそれ以来ずっと自分を責め続けて来たんだ!俺を危険な目に合わせたってな!おまけに周りの連中の中には千冬姉がモンド・グロッソを連覇できなかった事を責める様な記事を書いた奴もいた。…なんでだよ!?悪いのは誘拐された俺なのに、なんで千冬姉がそんな目に合わなきゃいけねぇんだよ!?千冬姉は俺を助けるために必死で戦ってくれたってのに!」
一夏は自分の歯痒さと責任を感じたのか涙を浮かべながら叫んだ。
火影
「一夏」
箒
「ご、ごめん…一夏」
一夏
「……」
そんな一夏に千冬が語りかける。
千冬
「一夏、自分を責める必要はない。これは私が自分で決めた事だ。さっきも言ったが…お前が誘拐されたと聞いた時、周りの中にはドイツ軍が助け出すから大丈夫と言って私が行くのを止めた者もいた。だが私の耳には入らなかった。お前を助け出す、私の選択肢はそれ一択だけだったんだ」
一夏
「千冬姉…」
千冬
「寧ろお前には謝り足りない位だ。当時の私はブリュンヒルデという立場もあってお前にろくに相手になってやれなかった。してやる暇も無かった。私がより上に行けばお前を守ってやれるという謝った考えまで持つようになった。他にも方法はあった筈なのにな…。許してくれ」
一夏
「千冬姉…」
全員
「「「……」」」
みんな暫く言葉を発しなかった。
…………
千冬
「落ち着いたか一夏?」
一夏
「…ああもう大丈夫だ。みんなも悪かったな」
箒
「…いや、謝らなければいけないのは私の方だ。お前の気持ちも考えずに」
セシリア
「私達も同じですわ…。どうか許してください」
鈴
「ごめんなさい…」
シャル
「ごめんね一夏…」
簪
「……」
ラウラ
「…すまない。今思えば転校時、私はとんでもない事をしようとしていた」
一夏
「もう良いってみんな。それにラウラ、謝る必要ねぇよ。俺の居場所を突き止めてくれたのはドイツの人達なんだからさ」
シャル
「…あっそうか、先生とラウラが知り合ったのはそれで」
千冬
「ああ、情報の見返りとして一年間ドイツへ教官として赴任したのだ。ボーデヴィッヒと出会ったのはその時だ」
火影
「……成程な」
鈴
「どうしたのよ火影?」
火影
「今の話を聞いて一夏のあん時の言葉の意味がわかったよ。四年前にお前を誘拐したのも…今回と同じファントム・タスクってわけだな?」
一夏
「…ああそうだ。あのオータムって奴は前の誘拐も自分達がやったって言ってた」
箒
「な、なんだと!」
セシリア
「で、では一夏さんを取り戻そうと!?」
一夏
「…いやそれはねぇと思う。今回の奴らの目的は白式だった。俺には特に用は無さそうだったな」
海之
「…寧ろ四年前の事件の方が妙だ」
簪
「どういう事?海之くん」
海之
「誘拐や拉致というのは非常にリスクが高い。下手をすると自分達の犯行を見られるし、ほんの少しでも計画に狂いが生じれば成功の確率は著しく低下する。そして実行したからには当然それなりの要求をしてくるのが普通だ。だが四年前の事件は身代金を要求される事も無かった様だし…。考えられるとすれば…先生の連覇を阻止しようとする者達だが」
千冬
「いやそれは考えられん。決勝戦の相手は私も覚えているが真面目というものをそのまま具体化した様な人物だった。あの後何故決勝を降りたのか私に訪ねてきたが、直ぐに理解してくれたよ。優勝を返上しようとしていたのを止めるのに大変だった」
シャル
「じゃあ何が目的でファントム・タスクは一夏を…」
鈴
「要求を出す前に一夏を取り戻されたとか?」
ラウラ
「……教官、実は教官に話していなかった事があるのです」
千冬
「なんだ?」
ラウラ
「四年前のあの事件、我がドイツ軍が一夏の居場所を特定したとありましたが…実際は何者かによる情報のリークだったのです」
千冬
「なに?」
ラウラ
「しかも奇妙な事に一夏が誘拐されたという情報と居場所の情報をセットにして伝えてきたらしいのです。男の声で」
火影
「…男?」
千冬
「…どういう事だ?奴らも馬鹿ではない。もし一夏の言った通り四年前の事件も奴らの仕業なら…そんな簡単に情報が外に漏れるとは思えん…。何か他に理由があったのか…?」
簪
「確かに海之くんの言う通り奇妙だね…」
ラウラ
「うむ…」
鈴
「…まぁ今はそれを考えても答えは出ないでしょ。それに多分だけどあいつらはまた接触して来るだろうからその時にとっ捕まえて話させればいいんじゃない?」
箒
「…そうだな。確かな事もわからないまま想像だけしていても益は無い」
セシリア
「そうですわね。…あら、お話が長かったみたいですわ。もう空が夕暮れ近いです」
一夏
「お、ほんとだ。…なぁ千冬姉」
千冬
「今日は風呂が使えるから行かせてくれ、とでも言いたいのだろう。却下だ。明日登校前にシャワーを浴びてから行け」
一夏
「……」
シャル
「どうやらまた一言一句同じみたいだね…」
箒
「では私達も戻ろうか…一夏、良く休めよ」
そしてみんなが部屋を出て行こうとした時、
一夏
「火影、海之。ちょっと待ってくれ」
火影
「…?」
一夏
「ちょっと話があるんだ。みんなは外で待っててくれるか?直ぐに終わるからよ」
鈴
「しょうがないわね」
簪
「じゃあ外で待ってるね」
そして部屋に残るのは火影、海之、一夏、千冬だけとなった。
火影
「一夏、話って何だ?」
一夏
「ああ…。火影、お前があのオータムって奴に聞いていたことが気になってな。例のあのIS達…、アンジェロとファントムだっけ?お前それを造ったっていう奴に妙に拘ってたが…どうしてだ?」
火影
「!…それは…」
火影は悩んだ。今ここで打ち明けてしまっても良いものかを。確かにアレは自分達が知っている存在に良く似ている。名前まで同じだ。しかし全くの偶然という可能性も完全には捨てきれない。もしかすると自分達という存在がやって来たために生まれただけかもしれない。自分達と同じ様な存在がいるという確証もまだ得ていない。しかしかつての仲間達の言葉を考えると全く関係ないとも思えないのだが…。
海之
「……」
千冬
「……」
(火影も海之も…やはりまだ私達に言えない秘密があると言う事か。単に想像だが…多分例のIS達、そしてそれを造った「あいつ」とやらが絡んでいるのだろう…。ふたりは知っているのか…?)
火影
「一夏…それは…」
火影はどう答えようか悩んでいた時、
一夏
「……ははっ、なんてな」
火影
「…はっ?」
海之
「…?」
千冬
「一夏?」
一夏
「ってのは冗談で…、今すぐ答えにくいなら今は良いよ。誰にだって秘密のひとつやふたつはあるもんだ。答える気になった時に答えてくれたら良い。お前らの事は信じてっからさ」
火影
「一夏…」
海之
「お前…」
一夏
「…ただ何時か必ず教えてくれよ?俺だけ秘密話したんじゃ不公平だからな」
火影
「…分かった。何時か必ず」
海之
「…ああ」
千冬
「……」
一夏
「んじゃ俺は話し疲れたし少し寝るわ。ふたり共早く行った方が良いぜ?特に火影は」
火影
「…ハァ、確かに。じゃあ帰るわ」
海之
「ではな一夏。失礼します、千冬先生」
そう言って火影と海之は出て行った。外ではやはりみんなが待っていた様で外からの声が聞こえてきた。
千冬
「…一夏、良かったのか?何も聞かなくて」
一夏
「…良いさ。何時か話してくれるっつったんだから…気長に待つさ」
一夏は笑ってそう言った。
千冬
「…ふっ、そうか」
千冬もその答えに満足している様子だった。
一夏
「あっそうだ、千冬姉にもひとつ聞きたいことがあんだけど?」
千冬
「? なんだ?」
この時千冬はやや油断していた。
一夏
「聞き間違いじゃねぇと思うんだけど…、海之が千冬姉の事を千冬先生って名前で呼んでた気がすんだけど…なんでか知ってるか?」
千冬
「……!!」
千冬はその質問を理解すると瞬く間に真っ赤になってしまった。
※詳しくはMission86をお読みください。
一夏
「千冬姉?」
千冬
「なななな何でもない!大した理由じゃない!…私も戻る!よく休めよ織斑!」
そう言うと千冬も部屋を出て行ってしまった。
一夏
「…まだ答え聞いてねぇけど。あと何で急に苗字なんだ?」
一夏の疑問はまたひとつ増えるのであった。
おまけ
医務室から出た一行は帰路についていた。その途中、
セシリア
「…そういえば海之さん、ひとつお聞きしたい事があるのですが宜しいですか?」
海之
「? なんだ?」
セシリア
「聞き間違いではないと思うのですが…、海之さん織斑先生の事を千冬先生とお名前で呼ばれていた様な気がするのですが、どうしてですか?」
鈴
「…そういえばそうね」
シャル
「気付かなかった」
箒
「私は知っていたぞ。確か昨日からだ」
海之
「ああ…、一日目の締めの作業中に来られてな。コース最後に今後は苗字でなく名前で呼ぶ様にと頼まれたんだ」
火影
「締めの作業中って事は俺が帰った後か…。どうりで遅いと思ったぜ」
海之の答えにみんな納得していた。しかし約二名は別の考えがあった。
簪
(……やっぱり織斑先生も海之くんの事…。でも…負けたくない!)
ラウラ
(流石は教官…。しかし、私にも譲れないものがある!)