IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
疲れてその場に倒れ込んだふたりを医務室に連れて行くみんなとそれを管制塔から見守る者達。その中で一夏と千冬の心にはある思いがあった…。
「ダンテとバージルって…」
「お伽噺話の様な話だが…ふたりはまさか…」
火影(ダンテ)と海之(バージル)のケンカの翌日。この日は日曜日で学園は休み。火影と海之はあの後、一夏達の手によって医務室に運ばれた。お互いの傷はISの機能によって自動修復され、既に完治しているのだが疲労の方が激しかった様でふたりは医務室で未だ眠っていた。そんな日曜、時刻は昼過ぎに差し掛かっていた…。
火影の個室
火影
「…ぐ~」
シャル
「……」
火影の傍にはシャルロットがいた。怪我もなく、基本ずっと眠っているだけなので放っておいても問題ないし、目が覚めたら連絡すると医師から言われたのだが、どうしてもそんな気になれなかったみんなは交代で傍に付いている事になった。
シャル
「あと数時間で丸一日…、よっぽど疲れたんだね。…もう、本当なら今日久しぶりに火影をデートに誘おうと思ってたのに…。一夏があんなお願いするから…」
こうなるとは思ってなかったとはいえ、直接の原因を作った一夏にやや不満をこぼすシャルロット。しかし火影が断りきれない性格だと言う事も分かっていたのでそれ以上は言わない事にした。
シャル
「……」
彼女は火影の前髪を手で払いのけて顔を見る。
シャル
「…そういえば火影の寝顔見るのって僕が男の子のふりをしている時以来かな…」
シャルロットはIS学園に転校してきた時を思い出していた。彼女は父親の会社の命令で一夏と白式のデータを盗むために男子操縦者、シャルル・デュノアとして転校してきた。あの時は全部運命だと諦めてしまっていた。こうしなければ自分の居場所が無くなると思い込んでいた。…そんな彼女を救ってくれたのが火影だった。
(このまま会社の言いなりになるか?それが自分の運命と思って流されるか?それがお前の本心か?お前はどうしたいんだ、シャルル!)
…あの言葉があってシャルロットは初めて自分をさらけ出すことができた。そして計画は崩れさり、結果的に父親と、そして今の母親との仲も改善できた。あの時の感謝の気持ちを今でも彼女は忘れていない。いや決して忘れはしないだろう。
シャル
「火影がいなかったら…、僕はきっと…今も何も知らないまま流されるだけだった…。火影はきっと気にするなって言うんだろうけど、…本当にありがとう」
そう言うとシャルは火影のおでこにそっと自らの唇を当てた。…その時、
ガラッ
鈴
「お疲れ様シャル。…火影まだ起きない?」
シャル
「う、うん!まだ全然起きてないよ!!」
本音
「シャルルン~、医務室では静かにした方が良いよ~」
シャル
「そ、そうだね!ごめんごめん!」
(吃驚した…、ほんとに吃驚した!…あとなんて恥ずかしい事してんの僕は!?)
誰もいなかったとはいえ、先程の行動を猛烈に恥ずかしがるシャルロットであった。
火影
「ぐ~…」
鈴
「はぁ~、全くこんなに可愛い女の子達が揃って心配してんのに呑気に寝ちゃって。本当なら折角の休日、どうせ退屈してるだろうからデートにでも誘ってやろうかなと思ってたのに…。今度めちゃ奢らせてやるんだから!あと原因作った一夏も同罪ね!」
本音
「あ~ずる~い鈴!私もひかりんと過ごしたかったのに~」
どうやら鈴と本音もシャルロットと同じ考えだった様だ。
シャル
「……」
鈴
「?どうしたのシャル?」
シャル
「…あのさ。…この前火影が僕らを助けてくれた時…、鈴、火影に…告白したよね?」
鈴
「…………へっ!?ななななに言ってんの!?わわわ私が何時よ!?」
本音
「鈴~、静かに~!」
鈴
「ご、ごめん…。…シャル、何時の事よ?」
シャル
「ほら…、あの時鈴泣きながら言ってたじゃん…」
※詳しくはMission93をお読みください。
シャルロットは爆弾の件だけを隠しながらあの時の事を話した。
鈴
「………」
確かに言っていた事を思いだして鈴は赤くなった。
本音
「ずる~い、鈴~」
鈴
「あ、あれは…つい思い切ってというか…、あの、その…」
シャル
「…じゃああの時の言葉は嘘なの?一番好きだって事も誰よりも大切って事も?」
鈴
「違うわ!……あっ」
シャル
「…ふふっ、やっと認めたね」
本音
「鈴大胆だね~!」
鈴
「うぅ…」
鈴は暫く黙っていたがやがて、
鈴
「…………ふぅ~。そうね、素直に認めるわ。というか臨海学校でもう認めてるけど。……私は火影が好き。誰よりも好きで、誰よりも大切な人だと思ってる。あの時の言葉に嘘はないわ。まぁあんな状況だったから火影は気付いてないだろうけどね。…でも何時か、ううん、近いうちに正直に言うつもりよ。…だって」
シャル
「…だって何?」
鈴
「あんな戦いしてたら…、何時か本気で倒れてしまうかもしれないもの…。もう後悔はしたくないから」
シャル
「…わかった。ごめんね鈴、ひっかけるみたいな事して」
本音
「どうしたのシャルルン?」
シャル
「ううん、気にしないで。……ねぇ鈴、本音。僕負けないよ?火影を想う気持ちはふたりにも、誰にも負けない自信があるから」
本音
「私だって負けないよ~!ひかりんの事好きだもん!」
シャルロットと本音も想いをさらけ出す。
鈴
「ふふん、じゃあ改めて宣戦布告ね♪」
シャル
「そうだね♪」
本音
「布告~♪」
三人とも物騒な事を言っている様だがその顔は晴れやかだった。
鈴
「じゃあ今日は折角だからこの後三人で過ごしましょ!こいつはどうせずっと眠ってるだろうしね♪」
本音
「サンセイ~!」
シャル
「良いね行こう♪」
そう言って三人は部屋を出て行った。
パタンッ
火影
「…………………やっと行ったか」
火影はそう言って目を開けた。
火影
「あんなでかい声出しっぱなしだったら起きない方がおかしいっつーの。………参ったな」
どう言ったら分からなくて困る火影であった…。
…………
海之の個室
海之
「……」
ラウラ
「……」
一方海之も火影と同じく昨日からずっと眠っていた。そんな彼の傍には今ラウラがいた。というより昨日からずっと付いていた。というのも、
ラウラ
「嫁の世話をするのは夫として当たり前の事だ」
と、他のみんなが世話を願い出るのを断っていたからだった。とそこへ、
ガラッ
簪
「失礼します…」
ラウラ
「簪か、海之ならまだ眠っているぞ」
簪
「そう。…ねぇラウラ、交代するよ。徹夜明けでしょ?」
ラウラ
「大したことは無い。一日位の徹夜など軍ではよくある事だ。だから任せろ。これは夫である私の役目だ」
簪
「……」
簪は少し考えた後、やや不満そうな表情を見せて言った。
簪
「…ずるい」
ラウラ
「? なに?」
簪
「…ずるいよラウラ。私だって海之くんに付いててあげたいのに…。きっと私だけじゃない、みんなも心配してるのに…」
ラウラ
「……」
すると今度はラウラがやや寂しそうな表情を見せて言った。
ラウラ
「…羨ましい」
簪
「…えっ?」
ラウラ
「…私はお前が羨ましい。…まだ数ヶ月とはいえ私よりも海之と長く過ごしていて、部屋もずっと一緒だし、お前の機体を完成させるために…たくさん協力し合ったと聞いた。…あとお前は臨海学校の時に言っただろう?海之のおかげで、今まで自分が避けてきた全ての事と向き合おうと思えたと…。あの時、海之がどれだけお前の力になってきたか、そしてお前が海之をどれだけ強く想っているか、分かった気がした…」
簪
「……」
ラウラは更に続ける。
ラウラ
「でもそれは私だって同じなんだ…。かつて力に縛られ、全く周りが見えていなかった私を…海之は命懸けで助けてくれた。あの時の胸の高まりは今もはっきり覚えている。だから私も海之の助けになりたいと思った。…しかし助けられているのは…いつも私ばかりだ。臨海学校の時も先日も。私が海之の助けになってやれた事等一度もない…。おまけにお前の様に一緒に協力した事もなければ、同じ部屋で一緒に過ごした事もない。だからこれ位はしてやりたいんだ……」
簪
「……」
簪は暫く黙っていたが、
ガシッ
ラウラ
「…!ちょっ!?」
簪
「……」
突然ラウラの肩を掴んで自分に向かせる。その顔は真剣だ。
簪
「…ねぇラウラ。ラウラは海之くんを信じてるんでしょ?」
ラウラ
「あ、当たり前だ!考えるまでもない!」
簪
「じゃあさ、海之くんは友達や仲間を優劣をつけて見る様な人だと思う?私達をそんな風に見てると思う?」
その問いかけにラウラは少し考え、
ラウラ
「………いや、海之はそんな男ではない」
簪
「うん、私も同じ。海之くんはどっちが役立つかとかどっちが長く過ごしたからとか、そんな理由で人を見たりする様な人じゃないよ。きっと私もラウラも平等に見てくれてると思う。スメリアでも言ってたでしょ?自分の命をかけて大切なものを守る。ラウラや私達もって」
ラウラ
「……」
簪は更に続ける。
簪
「…それにさ、ラウラは私が羨ましいって言ってたけど…、私だってラウラがいつも羨ましいんだよ?」
簪
「…えっ?」
ラウラは意外といった様子だ。
簪
「だってラウラ。海之くんへの好意を包み隠さないし、もうお嫁さん宣言してるし、生徒の中にはもうそうなんだって本気で信じてる子もいるよ?あんなに堂々と言えるラウラが私何時も羨ましいって思うもん。それに前…夜中に私達の部屋に入ってきた事もあったでしょ?あれも海之くんと一緒にいたかったからだよね?」
ラウラ
「!! き、気づいていたのか?」
簪
「一瞬だけだったけどね。ふふっ、でも安心して?誰にも言ったりしないから」
ラウラ
「そ、そうしてもらえると助かる…」
今思えばなんとも大胆な行動だったとラウラは反省している様だ。
簪
「あとさ、以前ラウラと海之くんが戦った時、ふたり共心が繋がった様な感覚があったって聞いたよ?」
ラウラ
「ああ…」
ラウラは思い出していた。かつて自分がヴァルキリー・トレース・システムの力に飲み込まれた時を。お互い最後の剣がぶつかった時、ラウラと海之は一瞬互いの気持ちを交流した感じがしたのだ。医務室で目覚めるまで夢かどうかはっきりしなかったがどうやらあれは現実だったらしい。
簪
「あの時何があったのかは私もわからない。前に一夏くんが聞いた事あったけど「勝手に話すとあいつに悪い」って断ってたから。だからきっと大切な事だったんだろうなって思う」
ラウラ
「…海之が…」
ラウラは海之の気遣いが嬉しかった。そしてあの時の事は自分と海之だけの秘密だと思うと妙な嬉しさもあった。
簪
「だから私は本当に羨ましいんだ。海之くんの事を正面から好きと言えて、ふたりだけの繋がりを持っているラウラの事が。…だからラウラも自信を持って?海之くんはラウラをきっと大切に思っている筈だから」
ラウラ
「…簪…」
ラウラは自分を恥じた。海之が自分より簪を気にかけているのではないか、そして簪もそう思っているのではないかと一瞬でも考えてしまった自分を。彼女の言葉が嘘や冗談ではない事は目を見ればわかった。ただありがたかった。
簪
「…でも」
ラウラ
「?…でも?」
簪
「…海之くんが好きって気持ちだけはラウラにも負けないけどね。ふふっ♪」
ラウラ
「……」
先程まで簪の気持ちに感動さえしていたラウラはその言葉に一瞬ぽけっとしたが、
ラウラ
「…上等だ。私も負けるつもりはないぞ!ここからが本当の勝負だ!」
簪
「うん♪」
こちらも互いに笑顔で宣戦布告するふたり。と、
海之
「……なんの騒ぎだ…」
簪・ラウラ
「「!!」」
突然の海之の言葉にふたりはひどく驚いた。
簪
「み、海之くん!」
ラウラ
「大丈夫か海之!?」
海之
「問題ない。ただ少し寝過ぎた様だな…。迷惑をかけた」
簪
「ううん、全然気にしないで。…良かった…」
ラウラ
「ほぼ丸一日眠っていたんだぞ。全く折角の夫婦の休日なのに…、一夏の奴ときたら」
海之
「あいつを責めるな。俺達がやり過ぎただけだ。……ところで
簪
「? なに?」
海之
「先程のお前達の勝負とはどういう意味だ?」
ラウラ
「えっ!…い、何時から聞いていた?」
海之
「いや、その言葉で目が覚めた。…それで?」
簪
「え、ええっと…、そ、そうだ!来月にあるキャノンボール・ファーストの事!お互い負けないよって言ってたんだよ!ねぇラウラ!?」
ラウラ
「あ、ああ!その通りだ!決して何でもないぞ!!」
海之
「?…そうか」
やや疑問が残りながらも海之はそれ以上深く聞かない事にした。……その海之の個室の前では、
千冬
「……」
千冬が壁に背中を預けて立っていた。
千冬
(…更識もボーデヴィッヒも本当に変わったな。……教師としてはあいつらの事を応援してやるべきなのかもしれない…。でも…私としては、織斑千冬としては…。……私はどうすればよいのだろう……)
簪やラウラと同じく、千冬もまた海之に惹かれる者として大いに悩むのであった…。