IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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ある日の放課後、火影と海之のふたりは千冬にある部屋に連れていかれる。そこには真耶と楯無、更に千冬に呼ばれて束とクロエも待っていた。ふたりは予想しながら連れて来られた理由を尋ねると千冬はふたりの事を全て話してほしいという。もはや隠しておけないと悟ったふたりは自分達の前世、謎のIS達、そして自分達のISに起こっている異変について全てを話す。
とても信じてもらえないだろうと思っていたふたりだったが千冬や束達は疑うことなくふたりの言葉を受け入れ、更に協力を約束してくれた。彼女達の温かい言葉に、ふたりは心を熱くするのであった。


Mission101 明滅瞬時加速(ブリンク・イグニッション)

千冬達との話から二日。

火影や海之、一夏達は来週に行われるキャノンボール・ファーストに向けて訓練を行っていた。そして今日も訓練が終わり、全員で食堂に来ていた。

 

 

IS学園食堂

 

一夏

「ふぃ~、今日も終わった~」

本音

「おりむ~、おじさんくさいよ~?」

セシリア

「それはさて置きいよいよ来週末はキャノンボール・ファーストですわね。ブルーティアーズのストライクガンナーをようやくお披露目できますわ」

一夏

「? ストライクガンナー?」

セシリア

「ブルーティアーズのビットをスラスターに使用する高速仕様パッケージですの。攻撃には使いにくくなりますがその分今まで以上のスピードが出せますのよ」

「そういえば臨海学校の時にも言ってたわね」

「そういえば火影くん、残念だったね。エアトリックが使用禁止なんでしょ?」

火影

「まぁな。でもなんとかするさ」

一夏

「お前には悪いけど俺からしたらラッキーだよ。あんなの反則みたいなもんだからな。でもだとすっと俺にも勝機はあるかもしれねぇ。なんてったってアラストルとトムボーイがあるからな」

「それを言うなら私も展開装甲とトムガールがあるぞ」

「私は高速パッケージは無いけどガーベラの加速機能があるから甘く見てもらっちゃ困るわよ!」

ラウラ

「私のパンチラインも同じだぞ」

シャル

「いいなぁみんな。それぞれ装備があって」

一夏

「? シャル、お前にはないのか?」

シャル

「うん。でも今はそれよりもっと優先すべき事があるから。お父さんも会社を建て直そうと頑張りながらお母さんの仕事もやっているしね」

一夏

「そ、そうだったな…。悪い」

「シャル、私だって高速機動の装備は少ないよ。それに大切なのは速さだけじゃない筈だよ」

海之

「その通りだ。キャノンボール・ファーストは高速下という条件で如何に正確に動くか、そして攻撃を確実に当てて足止めできるかが重要になる。スピードだけで勝敗が決する訳ではない。お前はお前のやり方で挑めば良い」

シャル

「ありがとう簪、海之」

火影

「せめてパンドラが間に合えば良かったんだけどな。ごめんなシャル。今束さんも一生懸命頑張ってくれてっからさ」

シャル

「火影もありがとう。僕は大丈夫だから」

セシリア

「パンドラ…。ギリシャ神話に出てくる女性の名前ですわね。決して開けてはならぬという箱を好奇心から開けてしまい、世界に災いを振りまいてしまいましたが最後には希望を残したと言う」

「パンドラの箱ね」

本音

「な、なんかすごそうだね~」

火影

「あれは魔具の中でも結構ややこしいからな。時間もかかってる。つっても束さんがやってくれなきゃもっと掛かってたが」

 

そんな感じでみんなで話していると、

 

「…ねぇ海之くん。…この前だけど何かあったの?随分帰ってくるの遅かったけど…?」

本音

「そういえばひかりんが帰ってくるのも遅かったよ~?」

一夏

「…それって三日前の事かな。確か千冬姉がふたりを職員室に呼んだ日」

「なに?なんかお説教でもされてたの?」

「しかし私もあの後行ったが三人ともいなかったぞ?」

火影

「…ああ気にすんな。大した事じゃねぇから」

海之

「ああ。ちょっと出かけていただけだ」

「……」

(ふたりはああ言っているけど…きっと大事な話だったんだ。そして多分お姉ちゃんも一緒にいたんだろうな…。生徒会室にもいなかったから。…私達にはまだ教えられない話。わかってはいるけど…、やっぱり寂しいな…)

ラウラ

「どうした簪?」

「う、ううん!何でもないよ!…御免」

海之

「……」

一夏

「…まぁお前らがそう言うならいいか。それはさておきキャノンボールの方に今は集中しねぇとな」

「その前に来週始めに行われる中間試験もあるぞ一夏?」

一夏

「それは今は言いっこなし!」

火影

「…そういえばみんな、明日放課後時間空いてるか?ちょっとした技を教えてやるよ」

一夏

「お!マジで!」

「私は大丈夫よ火影」

シャル

「僕も大丈夫だよ」

 

他のみんなも翌日の放課後の訓練参加を約束し、その日は別れたのであった…。

 

 

…………

 

海之と簪の部屋

 

みんなと別れた後、海之と簪は部屋で勉強していた。

 

「…えっとここは…」

 

机に向かっている簪。すると後ろで同じく机に向かっている海之が姿勢をそのままにしながら言った。

 

海之

「簪」

「えっ!…あ、ご、御免ね。…なに?」

 

急に声をかけられ、やや驚きながら簪は振り向いて返事をした。

 

海之

「…すまない」

「…えっ?」

海之

「先程は何も言えず、すまない」

「さっき?………あっ」

 

簪は先程食堂で自分がした質問の事を思いだした。

 

「う、ううん。私も御免ね…、ついあんな事聞いて」

海之

「気にするな。…ひとつだけ話しておこう」

「……」

 

海之は変わらず机に向かっている。簪はそんな海之の背中を見つめながら聞く。

 

海之

「今はまだ…全てを話す事はできない。話せばお前達とこうして過ごす事もできなくなるかもしれんからな…。俺も火影も…」

「…え」

 

簪は海之のその言葉に耳を疑った。…海之と火影がいなくなる…?

 

海之

「だが何時か必ず全てを話そう。約束する。今は」

 

とその時、

 

スッ…

 

海之

「!」

「……」

 

簪が海之の首に手を回して後ろから抱き付いていた。彼女の表情は伺えなかった。

 

「…やだ」

海之

「簪?」

(泣いているのか?)

「嫌だ…嫌だ…。海之くんが…いなくなっちゃうなら…、話してくれなくても良い。ずっと話してくれなくても良い。だから…だから…」

海之

「……」

 

消えそうな簪の声。海之は自分も向きを変えて簪の顔を見る。彼女はやはり泣いていた様で海之は彼女を安心させるように答える。

 

海之

「…大丈夫だ。俺を信じろ」

「海之くん…」

海之

「ただし何時かは話さなければならん。これは避けられん。その時、お前は話を聞いてくれるか?」

「……うん、わかった。…でも約束して?例え全て話しても…、絶対いなくならないって」

海之

「…ああ」

 

海之はしっかりと約束し、簪もその言葉で安心した様だった…。

 

 

…………

 

翌日 放課後

 

その日の授業が終わったいつもの面々は昨日の約束の通りアリーナに来ていた。

 

一夏

「全員揃ったな」

本音

(…かんちゃんどうしたの?)

(ううん、何でも無いよ本音。私は大丈夫)

本音

(?)

ラウラ

「それで弟よ。ちょっとした技とはどういうものだ?」

火影

「ああ。今から教えるのはちょっとしたテクニックだ。今度のキャノンボール・ファーストでも十分使えっけど完全に習得するまで結構時間がかかるから間に合わなくても許してくれよ?」

シャル

「そんなに難しいの?」

火影

「ああ…。つっても前に見せた事あるけどな」

一夏

「へっ?何時?」

海之

「覚えていないか?以前俺と火影が戦った時、俺が放った幻影剣を火影が細かい加速で避け続けた事があったろう?」

「…あああの時ね!確か瞬時加速を連続でやってた様に見えたわ」

火影

「ああそうだ。まぁもう一回見せてやるか」カッ!

 

すると火影はアリギエルを展開し、みんなから離れると瞬時加速の態勢に入った。そして、

 

ドンッ……ドンッ……ドンッ……ドンッ!

 

火影は瞬時加速を発動して一瞬止まり、また瞬時加速を発動して一瞬止まる。という動作を繰り返し、様々な方向へ高速移動していた。

 

「…凄い。あんな瞬間瞬間で瞬時加速と停止を繰り返すなんて…」

セシリア

「ええ。しかも瞬時加速は発動すればその加速力で急に止まれない事が多いですが…、火影さんはしっかりコントロールされてますわね…」

「あと停止って言ってもほんとに一瞬しか止まってないから補足も難しいね」

 

ドンッ!…シュンッ!

 

やがて火影は動きを終えるとみんなの所に戻ってきた。

 

一夏

「すげぇな火影!どうやってたんだ?」

火影

「ああ。普通瞬時加速をする場合フルスロットルで加速するだろ?だがさっき俺がやったのはほんの一瞬だけ、70~80%の出力でスラスターを起動させるのさ」

シャル

「70~80%の出力で?」

火影

「ああ、だから普通の瞬時加速に比べたら若干遅い。その代わり加速に振り回されずコントロールしやすいだけでなく、無駄に必要以上な距離を飛ばなくて済む。そして自分の動きが止まった時に再度素早くまた同じ出力で加速する。これを繰り返すのさ。そうする事で単に真っすぐな移動でなく、さっきみたいに様々な方向へ短距離的に加速を行える」

ラウラ

「成程…。確かに瞬時加速は素早く動ける半面、動きが読まれやすいからな」

海之

「最も止まった時は本当に素早く再加速しなければそこを狙われてしまうから注意が必要だ。それこそ刹那の瞬間にな。次にどっちに動くかとかぐずぐず考えている暇は無い。瞬間的に最適な出力の決定、停止位置の目測とそれに合わせたスラスター起動のタイミング、自分が動く方向を見極めねばならん」

「ほんとうに難しそうだね…」

火影

「これが明滅瞬時加速(ブリンク・イグニッション)だ」

一夏

「明滅瞬時加速(ブリンク・イグニッション)…」

海之

「これは特に一夏、そして箒。お前達には是非習得してほしい」

「私と一夏に?」

火影

「ああ。ふたりにはトムボーイとトムガールがある。それを使う事で通常よりもよほど速いブリンク・イグニッションが可能だろう。特に一夏はアラストルも上手く合わせれば俺らのスピードにも並ぶかもしれねぇぞ?」

一夏

「ま、マジか!?」

火影

「ああ。まぁあくまでも俺のエアトリックや海之の残影を抜けば、だがな。おまけにさっきも言った通りこいつは完全に習得するまで大分時間がかかる。その上結構大変だ。それでもやるか?」

一夏

「…当然だろ!俺は決めたんだ!お前らに近づけるならなんでもやってやるぜ!」

「そうだな。私も是非習得したいぞ」

 

一夏と箒はやる気満々の様だ。他のみんなも立て続けに参加を申し出た。

 

火影

「…ふっ、いいだろう。では始めるか」

 

気合い十分なみんなは早速、ブリンク・イグニッションの訓練を始めるのであった…。

 

 

…………

 

そして約一時間後、

 

一夏

「お、おえっぷ…。き、気持ち悪いぃ~…」

海之

「…今日はこれ位にしておくか」

ラウラ

「あ、ああ。頭も少しクラクラする…」

「はぁ…はぁ…」

火影

「度重なる加速酔いだ。こればかりは慣れるしかねぇな」

本音

「はいみんなお水~」

「あ、ありがとう…。確かにこれは慣れるのに時間かかりそうだわ…」

セシリア

「大変って…こういう事でしたのね…」

「ましてや展開装甲やトムガールと合わせれば…もっとキツイかもしれんな…」

シャル

「火影と海之は大丈夫なの…?」

火影

「俺らはもう慣れてっから」

 

その言葉を聞いてやはりふたりは規格外だなと呆れながら感じるみんなであった。





明滅瞬時加速(ブリンク・イグニッション)というのはオリジナルです。BLINK(点滅)を用いたのは加速と停止が点滅の様に連続で繰り返されるからです。明滅というのは点滅という言葉の類似語です。

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