IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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火影と海之が千冬や束達に真実を話して数日後。学園はキャノンボール・ファーストに向けて動き始めていた。そんな一夏達に火影と海之は新たな技を教える事にする。その技とは瞬時加速と刹那の瞬間的停止を点滅の様に繰り返す事で細かい高速移動を行うという技、明滅瞬時加速(ブリンク・イグニッション)であった。連続の超加速という慣れない技に苦労するみんなであったが、完全に学べば自分達にも近づけると言われた一夏は必ず習得してみせると決心するのだった。


Mission102 キャノンボール・ファースト開幕

IS学園 アリーナ

 

ドンッ!……ドンッ!……シュンッ!

 

一夏

「くっ…、はぁ、はぁ、ぜぇ、ぜぇ…」

 

火影と海之による訓練から数日後。一夏はあれからずっとふたりに教えてもらったブリンク・イグニッションの訓練を続けていた。

 

ラウラ

「…今ので約6割強ロックオンされたぞ一夏」

一夏

「はぁ、はぁ。…くっそぉぉ、まだそこまでかぁ~」

 

今は停止した瞬間にロックオンされない様に直ぐ瞬時加速する訓練をしている。あれから必死に訓練して成功率は少しずつ上がってきてはいるがそれでもまだまだという感じだった。

 

 

…………

 

セシリア

「はい、お水とお薬ですわ」

一夏

「お、おう。サンキュー…」

「今日はもうこれ位にしておこう。キャノンボール・ファーストは明後日だ。今体調を崩してしまったら元も子もない」

シャル

「そうだね、そうしよう」

一夏

「俺はまだ…っといいてぇ所だが…まだ頭がクラクラすんな…」

「そりゃあんだけ毎日毎日やってりゃそうなるわよ。火影と海之も言ってたじゃない、そんな直ぐに習得は無理だって」

ラウラ

「…まぁ気持ちはわかるがな。嫁と弟はたった一週間程で慣れたという話だし。昨日も一回もロックオンされる事が無かったからな」

 

火影と海之は昨日も同じくブリンク・イグニッションを実践し、一発もロックオンされずに見事な動きでやり遂げていた。因みに今日ふたりは生徒会の仕事で来ていない。簪は弐式の調整、本音は付き添いである。

 

「…だけどあのふたりって凄いけど不思議よね。まだISを動かしてたった数ヶ月位なのに何時あんな事までできる様になったのかしら?ISの操縦歴なら私達の方が長い筈なのに…」

シャル

「そうだよね。いつも一緒にじゃないけどほとんど一緒に訓練してるし、訓練量だけならそれ程違いは無いと思うんだけど…」

一夏

「……」

「? どうした一夏?」

一夏

「ん?ああ…ちょっとな。思い出した事があって…。前にふたりと一緒に風呂入った時にさ、あの旅客機の事故の話になったんだけど…」

※Mission51をご覧ください。

「ああ火影と海之が助けた旅客機の話?」

一夏

「ああ。ふたりはあの旅客機を自分達の飛行訓練中に見つけたのを助けたって言ってたんだけど…。でもさ、ちょっと変だなって思って…」

シャル

「変?」

一夏

「あの事故ってさ、俺がISを動かせる事がわかった時より前に起こったんだぜ?そして俺の件は速報でその日の内に流れたから…」

「…あ!」

ラウラ

「…そうか」

セシリア

「どうしましたのおふたり共?」

ラウラ

「…わからないか?あの事故は一夏が世界初のIS操縦者というニュースが流れるよりも数日前に起こった事故だ。その事故を救ったのが海之と火影。と言う事は…」

「!…火影と海之は…一夏よりも前からISを動かしていた!?」

シャル

「……きっとそうだよ。それも大分前からだと思う。いくらふたりでも飛べる様になったり落ちかけている飛行機を受け止めるなんて、急にできる筈無いと思うし…」

「…確かに。考えれば最初に見たふたりの戦いも動かせる様になって一ヶ月とは思えない内容だった。…あれは随分慣れた者の動きだ」

「で、でもさ?だとしたらなんで今まで知られなかったのよ?私達だってここに転校してきてからふたりの事初めて知ったんだから!」

一夏

「…それは多分アリギエルとウェルギエルがふたりの所有だからじゃねぇかな?国の所有じゃねぇんだから公に出す機会も少ないだろうし、おまけにセキュリティが頑丈なスメリアだから幾らでも隠し様もあるだろうし」

「あ、そ、そっか」

ラウラ

「…まだ気になる事がある。スメリアにはISはおろか、訓練の類となる様なものがあると言った話は聞いたことがない。前にスメリアに行った時も一度もそんな話は聞かなかった」

セシリア

「…まさか…最初からアリギエルとウェルギエルを…?」

シャル

「確か誰かから貰ったって火影言ってたよね?…一体何時だろう?」

「あれって束さんが造ったものじゃ無いのよね…。臨海学校の時に言ってたし…」

「…ふたりのIS。そして魔具。…一体誰が造った物だ…?…そして何故ふたりに…」

 

その場にいるみんなが悩んでいた。そんな中、

 

一夏

「…まぁ今はいいじゃねぇか」

「…えっ?」

一夏

「確かに火影と海之には俺らが知らねぇ事が多いかもしれねぇ。…でもよ、だからといってあいつらが俺の友達って言う気持ちは変わらねぇぜ。レオナさんも言ってたろ?もしあいつらが悩み苦しむ時があったら助けてやってくれって。あいつらは今まで俺達をずっと助けてくれた。火影の奴は腕ぶった切ってまでな。…正直あいつらに追いつけるかどうかわからねぇけど…、俺はあいつらを信じるぜ。あいつらがもっと強くなれるって、俺を信じてくれてるみたいによ」

箒・セシリア・鈴・シャルロット・ラウラ

「「「………」」」

 

五人は一夏のその言葉を黙って聞いていた。

 

「ははっ、たまには良い事言うじゃない一夏」

一夏

「たまには余計だよ」

「…そうね。考える事もなかったわ。火影を信じてどこまでも付いて行ってやるって約束したんだもん。それに火影も海之もこのまま秘密を黙り通す様な事はしないだろうし、ふたりが話してくれるまで気長に待つわ。私達はその時を待っていれば良い。な~んにも変わらないわ」

シャル

「…そうだね。僕も火影に約束した。それに火影も海之も何の意味も無く秘密にしているわけじゃないだろうし、きっと訳があるんだよ。僕達は今まで通りふたりを信じていれば良いと思う」

「…そうだな。それにかつて私が自信を失いかけた時、ふたりは力になってくれた。あのふたりに同じ様な事があるか分からんが…、その時は私がふたりを助ける番だ。…姉さんもきっと賛成するだろうし」

ラウラ

「私は元から何も変わらんぞ?例えふたりにどのような秘密があっても。家族は信じるのが当たり前だからな」

セシリア

「…一夏さんの仰る通りですわ。それに私がおふたりから受けた御恩は決して忘れられないものですもの。これ位でおふたりへの信頼の気持ちは変わったりしませんわ」

 

全員が同じ気持ちだった。火影と海之には確かにわからない事が多いかもしれない。しかしだからと言ってふたりへの信頼が、気持ちが揺らぐ事はない。

 

一夏

「よぉ~し!そうと決まったら休んだし訓練再開だ!」

シャル

「えっ!もう夕方だけど!?」

一夏

「ほんじゃあと一回だけだ!」

「…ハァ、全く。…ふふっ、まぁいい。付き合おう」

セシリア

「私もやりますわ!」

「やれやれ、付き合いますか」

ラウラ

「無論だ」

 

そしてみんなは再び訓練を再開したのであった…。

 

 

…………

 

キャノンボール・ファースト 会場

 

そしてそれから二日後。いよいよキャノンボール・ファースト当日となった。キャノンボール・ファーストは簡単にいえばISによるレース競技。しかしただ高速で飛びまわる訳ではなく、互いに攻撃・妨害も許されている言わばバトルレース。その人気はかなり高く、国際大会も開かれる程である。学年ごとに訓練機部門と専用機部門に分かれ、まず最初は一年生による訓練機部門のレース。その後に火影や一夏達が出場する一年の専用機持ちのレースだ。

 

火影

「キャノンボール・ファーストか…。こうしてしっかり見るのは初めてだな。ましてや自分が出場する時が来るとは思わなかったぜ」

一夏

「俺も同じだよ。今年の春ごろまで思いもしなかったな」

海之

「…それはそうと一夏、ぎりぎりまでブリンク・イグニッションを練習していたそうだな。大丈夫か?」

一夏

「当たり前だぜ!少しでもお前らに追いつこうと頑張ってんだぜ!…それでも6割は受け損ねてるけど」

火影

「この短期間でそれだけできれば上出来だ」

 

とそこへ他のメンバーがやってきた。

 

「すまない、遅くなった」

セシリア

「私達全員の出場登録をしていましたら時間かかってしまいました」

本音

「ごめんね~」

火影

「…そういえば本音。お前確かこの後の訓練機部門に出んだろ?気をつけろよ」

本音

「大丈夫だよ~。私だってみんなと一緒に時々訓練してたんだから」

「本音はこう見えても結構うまいんだよ?ISの操縦」

シャル

「そういえば授業でもミスとかした所見た事ないかもね」

 

とその時、

 

アナウンス

「お知らせします。IS学園一年生による訓練機部門のレースに出場される選手は、メインゲート前に集合してください。お知らせします…」

ラウラ

「…むっ、もう集合時間の様だな」

本音

「ねぇひかりん、私が優勝できたら特別なデザート作ってほしいんだけど~?」

火影

「できたらな」

本音

「わ~い頑張るぞ~!」

「…ほんっと子供ねアンタ。まぁ頑張んなさい」

 

そう言って本音は集合場所に走って行った。

 

一夏

「…大丈夫かなのほほんさん、あんな調子で」

「私の直感だが結構良い線行くと思うぞ?」

海之

「まぁ拝見するとしよう」

 

そして全員で生徒専用の席に移り、本音が出場するレースを見学する事にした…。

 

 

…………

 

ラウラ

「…まさか本当に優勝してしまうとはな」

「ああ驚いたぞ。凄いな本音」

本音

「えっへん♪」

 

その結果、本音は一年訓練機部門のレースで見事に優勝したのである。

 

セシリア

「良い線行くとは思いましたけどまさか優勝してしまわれるなんて…」

本音

「約束どおりデザート作ってねひかりん♪」

火影

「ああわかったよ。頑張ったな本音」

本音

「えへへ~♪」

一夏

「食い物の執念ってやつか」

「…それだけじゃないわねきっと」

シャル

「…きっとね」

一夏

「?」

 

とそこへ、

 

千冬

「お前達、ここにいたのか」

一夏

「あっ、千冬姉」

シャル

「お疲れ様です織斑先生。何かありましたか?」

千冬

「ああ大した事ではない。お前達のレースはコースの整備が終わり次第行う。約30分後だ。それまではISの調整や整備等しておくが良い」

「わかりました」

ラウラ

「了解です」

千冬

「ではな」…コンコンッ

火影・海之

「「…!」」

 

そう言いながら千冬はさりげない仕草で耳に当てているインカムに触れた。火影と海之はそれを見て自分達へのメッセージだとわかった。

 

火影

「…んじゃ、俺は少し走ってくるか」

一夏

「えっ?大丈夫か?くたびれるぞ」

火影

「ウォーミングアップってやつだ。海之、お前も付き合えよ」

海之

「…いいだろう」

「時間までには戻ってきなさいよ」

 

そして火影と海之は走って行った。…と見せかけてみんなには見えない所で止まり、少し待つ。すると先程の合図の通り千冬から連絡が来た。

 

千冬

「ふたり共聞こえるか?」

火影

「ええ聞こえます。何かあったのですか?」

千冬

「…ああちょっとな。気になった事があって…」

 

すると千冬が答える前に海之が言った。

 

海之

「…先生。今回もおそらく…例のファントム・タスクが何か仕掛けてくる、先生はそうお考えなのではないですか?」

千冬

「!…その通りだ、海之」

火影

「…成程。クラス対抗戦に始まり、タッグマッチ、臨海学校、そして学園祭。これまで行事毎に奴らは仕掛けてきましたからね。今回もその可能性があると?」

千冬

「あくまでも私の完全な予想だがな。…だがここまで立て続けだと可能性も捨てきれん。ましてや今回は今までよりも遥かに多くの観客がいる。彼等に被害を出すことは許されん。そこで…」

海之

「その時は俺達が引き受けます」

千冬

「……すまんなふたり共…。ふたりのISも万全ではないというのに…」

火影

「気にしないでください先生」

千冬

「そうはいかんよ…。私は情けない…。教師でありながら…生徒であるお前達ばかりに押しつけている自分が…」

 

姿は見えていないが千冬が本当に悔しいのだと声からふたりは感じとった。そんな千冬に対して海之が言った。

 

海之

「…千冬先生。そんな事はどうか露程も思わないでください」

千冬

「…え?」

海之

「俺も火影も先日申したでしょう?これは俺達がやるべき事、俺達が望んでやっている事です。押しつけとか全く思われる必要はありません。…それに寧ろ俺達は感謝しています。こんな俺達を信じてくれる、そして心配してくれるあいつらや先生方に」

千冬

「海之…」

海之

「大丈夫です。あいつらも観客も俺達が守ります。千冬先生も」

千冬

「!…あ…」

海之

「…もう切りますね。レースが近いですから」

 

そしてふたりは連絡を切った。

 

火影

「……」

海之

「? なんだその表情は?」

火影

「…お前ほんとに変わったよ。良い意味でも悪い意味でも、罪作りな奴だ。…行こうぜ」

海之

「…?」

 

ふたりは周りを暫く見て回ってから集合場所に向かった。そしてこの後、三人の予感は的中する事になる…。


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