IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
……一方、ファントム・タスクのオータムは謎の男から自身のアラクネに新たな機能を取り入れたと説明される。男はその名を「DNS」と言った。
Mission108 労い会と思わぬ告白
IS学園 とある一室
「……よし、これで完了。ふぅ~、なんとか間に合ったな。そっちは?」
「問題ない」
「こっちも大丈夫だぜ~。……つってもまたこれを着る意味あんのか?」
「まぁいいじゃねぇか。あいつら頑張ったんだからこれ位で喜ぶのなら一回位安いもんだ」
「……ハァ」
…………
IS学園 廊下
キャノンボール・ファーストが終わって初の休日。この日箒達は学園内のある部屋に向かっていた。というのは前日の授業が終わった直後、突然一夏が教壇に上がり、みんなにある発表をしたからであった。
一夏
(明日みんなでここに来てくれ!俺は先に行ってるからな!あああと制服じゃなくてもいいからな!)
……という訳で箒達だけでなく、一組内で行ける生徒達みんなで一夏から指示された部屋に向かっていたのだった。
「なんだろうね~?織斑くんからのお誘いって」
「分からないけどきっと何か考えがあるんだと思うよ~?篠ノ之さん達だけじゃなく私達まで呼んでくれたんだもん!」
「行けなかった子、「一生の不覚!」って青ざめてたよ」
セシリア
「…一体何でしょう一夏さん。私達だけじゃなく一組の皆さんまで」
シャル
「そうだよねぇ。箒は何か聞いてない?」
箒
「ああ私も聞いていないんだ。聞いても教えてくれなくてな…。火影なら何か聞いているかなと思ってあの後聞いてみたんだが、何も知らなかったそうだ」
ラウラ
「私も海之に聞いたが同じ返答だったな。…そういえば本音、火影はどうした?」
本音
「ひかりんなら朝早くからみうみうと出かけたよ~?大事な用事があるから行けないって~」
鈴
「なんなのよ一体…。……というか大事な用事って、まさかまた勝手に危ない事しようってんじゃないでしょうね!?もしそうなら許さないわよ!」
本音
「お、落ち着いて鈴~!ひかりんそんな様子無かったよ~」
シャル
「う、うん。それに織斑先生もそんな話してなかったから僕も多分違うと思うな…」
簪
「海之くんも心配するなって言ってたから多分違うよ鈴。だから安心して?」
鈴
「…………うん」
箒
「…しかしどこに行ったんだろうなふたり共。おまけに一夏とも今朝から連絡がとれんし…」
ラウラ
「まぁふたりなら問題ないだろう。取り合えず一夏の言う通り行ってみようではないか。誘った以上間違いなくいるだろうしな」
セシリア
「そうですわね。……あっ、あの部屋でしょうか?」
気付かない内に一夏が指定した部屋が見えてきた。
シャル
「多目的室?」
簪
「……取り合えず入ろうか」…コンコン「失礼します」
生徒達
「「「失礼しまーす!」」」
ガラッ
彼女達はノックして扉を開けた。するとそこにいたのは……、
火影・海之・一夏
「「「お帰りなさいませ、お嬢様方」」」
先の学園祭の時に見た、執事姿の火影・海之・一夏の三人だった。
女子達
「「「………」」」
目の前で起こっている思いもよらない事態にとっさに反応できない少女達。
火影
「本日は先に行われた学園祭、そしてキャノンボール・ファーストでの、お嬢様方の疲れを少しでも労いたいと我々、この様な企画を計画致しました」
海之
「勝手な事をし、誠に申し訳ありません。テーブルの上にありますのは私達が全て手作りしたものでございます」
一夏
「大したものではありませんがどうぞごゆっくりお楽しみくださいませ」
三人の言う通り、机の上には様々なケーキやパフェ、タルトに和の甘味、ゼリーにクッキー、更にはサンドイッチやピザまで多くのデザートや料理が並んでいた。
女子達
「「「………」」」
説明を受けても相変らず反応できない。だが暫くすると、
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!
思った通り一斉に黄色い歓声が上がったのだった……。
…………
「あ~もう最高♪今日死んでもいいわ!」
「私学園際の時、部の出し物で来れなかったのよ!夢みたい!」
「一夏くん達のスイーツ絶品ね~!ダイエットの決心が揺らいじゃうわ!」
「夢にまで見た火影くん達の執事姿……。ああ神様、私は幸せです!」
「やっぱり海之くんの執事姿は画になるわぁ~!カメラ持ってくれば良かった~!」
労い会は予想以上の反響だった。
火影達が用意したデザートや料理を存分に堪能する者。
火影達の執事姿に妙な妄想をしている者。
そんなこんなで大成功?していたのである。そして喜んでいるのは彼女達も例外ではない様で、
本音
「う~ん!やっぱりひかりんのストロベリーサンデーは美味しいね~!」
箒
「…うむ。確かに一夏の手作りのクッキーの味だ…。懐かしいな」
セシリア
「このゼリーに使われているの…果物でなくて野菜ですわ!デザートにも合いますのね!」
シャル
「ねぇラウラ、前に火影が食べさせてくれたっていうピザってこれ?」
ラウラ
「ああそうだ。ストロベリーとマシュマロのピザ。私一回食べただけで好物になってしまったぞ」
簪
「海之くんの手料理…。初めて食べたけどすごく美味しい…」
鈴
「そう言えば簪は前の食事会の時はいなかったのよね。良かったわね食べれて」
みんな楽しそうにしていた。……火影達はそんな彼女たちの様子を離れた所からジュースを手に眺めている。
火影
「みんな楽しそうだな」
一夏
「そうだな。思いつきでやってみたが良かったぜ」
海之
「…こういうのも悪くないか…」
…………
時は少し遡って二日前。火影・海之・一夏は食堂にいた。
海之
「…労い会?」
一夏
「ああ。あいつらのために開かないかと思ってな。学園祭の時もできなかったし、キャノンボール・ファーストの分も合わせてな」
火影
「どういう事やるんだ?」
一夏
「大して難しい事はしなくて良いさ。例えば……三人で料理やデザートを用意するとかな。経費は学園祭の時の支度金がまだ残ってるし。ほら、服を手造りしたろ?あれで浮いた分が結構あんだよ。更に収入金も大分あったからな。場所は千冬姉に許可をもらえば良いし。…でどうだ?」
火影
「俺は別に構わないぜ。面白そうだしな」
海之
「あいつらには日頃世話になっているからな。…良いだろう」
一夏
「んじゃ準備に入るとすっか」
…………
それから三人は千冬に事情を話し、部屋の確保と材料の用意の承諾を貰い、本日の労い会を実施したのであった。
火影
「まぁキャノンボール・ファーストに関しては中途半端に終わっちまったけどな。みんな楽しみにしてたらしいし」
海之
「仕方あるまい。状況が状況だった。見物客に負傷者が出なかっただけ良しとするべきだろう」
一夏
「だな。…しかしやっぱふたりは強いよなぁ。俺なんて箒やセシリア、それに楯無さんも助けにきてくれなけりゃ間違いなく勝てなかったし…まだまだだ」
海之
「……一夏、気落ちする事は決して無いぞ」
一夏
「え?」
火影
「海之の言う通りだぜ。考えてみろ?半年前のお前はISを動かすのもやっとという感じだった。それが今はどうだ?白式を進化させたりゴスペルを倒したり、ブリンク・イグニッションも少しずつだが使える様になってきた。そして逃げられたとはいえ今回のゼフィルスの撃退。お前は十分過ぎる位成長してるよ」
海之
「その通りだ。…それに俺も火影も最初から力があった訳ではない。特に俺など、以前は散々敗れ続けたものだ」
一夏
「えっ海之が!?マジか!!」
海之
「……箒と同じ反応するんだな。…まぁいい。一夏、焦る事はない。お前はまだ若い。これからの努力次第だ」
火影
「そう言う事だ。お前なら必ずもっと強くなれるさ」
一夏
「……ありがとよふたり共」
ふたりの言葉に一夏は感謝するのだった。
一夏
「……しっかしふたりって本当に16歳か?さっきの海之の言い方といい、なんかじいちゃんみたいな話し方だぜ?お前はまだ若いって。年齢誤魔化してんじゃね~の~?」
火影
「…はは」
海之
「……」
まさか記憶だけは100年以上という事等言える訳はなく、ふたりは苦笑いするのだった。
セシリア
「一夏さん達もこちらにいらっしゃって下さい!」
ラウラ
「そうだぞ海之。遠慮するな!」
シャル
「といっても火影達の料理だけどね」
一夏
「…行くか」
一夏
「ああ」
海之
「うむ」
三人もみんなの中に加わる事にした。
箒
「やっと来たな三人共。……しかし正直に凄く驚いたぞ。まさかこんな事をしているとは」
一夏
「悪いな箒。驚かしたくて」
本音
「鈴なんてスッゴク心配してたんだよ~!ひかりん達に連絡繋がらないから~」
簪
「おまけに凄く怒ってたよね?また勝手な事して!って。ふふっ」
鈴
「ちょ、ちょっと本音!簪まで何言ってんの!」
火影
「……悪かったな鈴。また勝手な事して」
海之
「…すまない」
鈴
「えっ!う、ううん!ふたりは何も悪くないから!私が」
とその時、ひとりの女子が火影に声をかけてきた。
少女
「…ちょっといい?」
火影
「ん?俺か?」
少女
「このピザって火影くんが作ったんだよね?すごく美味しいよ」
火影
「そいつはどうも」
少女
「…………あのさ、火影くん。ちょっと…聞きたいん事があるんだけどさ?……良いかな?」
火影
「ああ。何だ?」
少女はもじもじしながら驚く質問をした。
少女
「……あの…火影くんって………、好きな子とか……いる?」
火影
「…好きな子?」
鈴・シャル・本音
「「「!!」」」
少女からの思わぬ質問に火影に好意を抱く三人は動揺する。
少女
「ごめんね?いきなりこんな事聞いちゃって……」
火影
「…いや、別にかまわねぇが…。でもなんでだ?」
火影は疑問に思って聞いてみた。すると少女は答えた。
少女
「うん。……あのね、…それでね?もし…もしいないのなら……、私と……付き合って…ほしい……。駄目…?」
鈴・シャル・本音
「「「!!!」」」
火影
「……」
少女からの思わぬ告白に横から聞いていた鈴達は先程以上に激しく動揺していたが、周りの目を考えているのか声に出せない。因みに他の女子達はそれぞれ盛り上がっているらしく少女の言葉に気付いていなかった。……一部を除いて。
箒
(お、おい!もしかしてこれは!!)
簪
(もしかしても何もそうだよ!!)
セシリア
(どどど、どうされるのでしょう火影さん!?)
ラウラ
(き、気持ちはわかるが落ち着けみんな!)
海之
「……」
一夏
「?なぁなんでみんな小声で喋り出したんだ?」
………少しの時間の後、質問された火影がゆっくり口を開いた。
火影
「……ありがとよ。俺みたいな奴にそんな事言ってくれるなんてな……。素直に嬉しいぜ」
少女
「……」
鈴・シャル・本音
「「「……」」」
火影の言葉を正面から聞く少女。気付かれない様横から聞き耳を立てる鈴達(プラス箒達)。少女達は一見冷静な様だがその心中は全く穏やかでは無かった。
………そして火影が出した返事は、
火影
「…………だけど悪い。あんた、いや…君の気持ちに……応える事は…できない」
鈴・シャル・本音
「「「!!」」」
火影は静かに少女の申し出を断った。
女子
「……好きな子がいるの?」
鈴・シャル・本音
「「「……」」」
少女からのその質問に鈴達は緊張する。火影はゆっくりと答えた。
火影
「……わからねぇ」
少女
「…えっ?」
鈴・シャル・本音
「「「…?」」」
火影
「わからねぇんだ…俺には。今までそんな風に人を想った事が無かったからな…。君の言う…誰か特定のひとりだけ、特別な感情を持つっていうのがな…。両親にも聞かなかったし、俺には全く縁がない話と思ってた位だ…」
少女
「……」
火影
「……ただ」
少女
「…?」
言葉を考えながらか、火影はゆっくり話を続ける。
火影
「上手く言えねぇけど……、君の言う「特に好きって思う子」はいないかもしれねぇけど………、「特に守りたいって思う子達」は……いるかもしれねぇ。俺の事を信じてくれて…、君みたいに俺の事を…好き、と言ってくれる」
鈴・シャル・本音
「「「!!!」」」
少女
「……」
火影
「でも間違えないでくれ。君も俺の守りたいって思うひとりだ。つーかこの学園の人みんなそうだ。全部…俺の大切なものだ。それはどうか信じてほしい。君の事は決して嫌いじゃない。大事なクラスメートだ。だから…君の気持には応えられねぇけど、君さえよければ……これからも友達として……交流してほしい」
少女
「……」
火影が話している間、少女は黙ったまま俯いていた。そしてゆっくり顔を上げる。
少女
「……ふふっ」
彼女は笑っていた。
少女
「うん、もちろん。火影くんの彼女になれないのは残念だけど…火影くんから大切って言ってもらえたのは…私凄く嬉しい。…これからも良い友達でいてね」
火影
「…ああ」
火影と少女は互いに握手をした。
少女
「あっそうだ火影くん。ひとつ教えておくね?さっき火影くん「特に好きな子はいないけど特に守りたい子達」はいるって言ったよね?…それもう完全に気になる子がいるってことだから♪あと「子達」ってことはひとりじゃないってことね♪」
火影
「……えっ?」
鈴・シャル・本音
「「「!!!」」」
少女
「頑張ってね♪」
そう言うと少女は笑顔で再び友達の中に戻って行った…。
火影
「……」
黙ったままの火影。そんな火影に海之が声をかける。
海之
「お疲れの様だな?」
火影
「……戦いとは全く違う、な。……俺はあの子を傷つけたろうな…」
海之
「そうだな」
火影
「…遠慮ねぇな」
海之
「お前にその気がないまま応える方がより彼女を傷つけるだけだ。ならはっきり断った方が良い」
火影
「……」
海之
「…人間とは悩む生き物だ」ポンッ
そう言って海之は火影の肩に手を置いた。
火影
「…そうだな」
今迄にない経験をした事で火影もまた成長したようであった。
……ふたりがそんな話をしている一方、こちらはまた別の話をしていた。
箒
(ど、どう思う?先程の彼女の意見…)
簪
(ど、どうって言われても…)
セシリア
(でも確かに筋は通ってますわ。特に守りたい人がいるというのと気になる人がいるというのが同意義というのは)
ラウラ
(……しかしもしそうだとして今後の鈴達が心配だな。果たして無事に過ごせるかどうか…)
箒
(確かにな。この前の会話から火影の奴はあいつらの気持ちに気付いている様だが…、ここまではっきり言われてしまうと嬉しいより寧ろ落ち着かないぞ)
簪
(…私達は暖かく見守るしかないのかも)
一夏
「…なんかまた箒達小声で話してんな。さっきはみんな一言も喋らなかったし…、なぁ鈴。………鈴?」
鈴・シャル・本音
「「「……」」」
一夏に話しかけられた鈴達は何も話さずに俯いていた。その心中は、
鈴
(……言ってた。……さっき火影、確かに言ってた。自分の事を好きって言ってくれる子達って……。も、もしかして…あの時の医務室での会話……。ううんそんな訳ない!あの時火影寝てたもの!………でも、はっきり言った時と言えばあの時位しか…。ど、どうしたらいいのよ~!あんなぶっちゃけた告白もし聞かれてたら……)
シャル
(ま、まさか火影、僕が火影のおでこにキスした時も起きてたんじゃ…!!う、ううんそれは考えすぎか…。あの時寝てた事は一緒にいたから知ってるし…。で、でもそれじゃ何時から!?もしあの直ぐ後なら…僕がふたりに言った言葉も聞かれてるかもしれないって事だよね!?……どうしよう……)
本音
(わわわわ私だったよね!あの時一番大きい声で最後にひかりんの事好きって言ったの!ももももしかしてあれで起きちゃった!?ででで、でもあれで起きたなら鈴やシャルルンの言葉は知らない筈だし…。じゃじゃ、じゃあもっと早くから!?どどどど、どうしよう~~!)
鈴達の顔は揃ってストロベリーの様に真っ赤となるのであった…。
※三人の告白についてはMission98をご覧ください。
火影の気持ちを知った鈴・シャルロット・本音。
そしてその三人の気持ちを知っている火影。
果たして彼等はどうなるか?