IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
彼等の気持ちにみんな満足している中、ひとりの少女が火影を呼びとめ、いきなり告白する。…だが火影は自分は少女を含むみんなの事を守りたいと思いながらも、もっと守りたいと思う存在がいると打ち明け、少女の想いを断る。改めて人間とは難しいものと感じ、またひとつ学んだ火影。
……対して鈴・シャルロット・本音の三人の心中は穏やかではなかった。
※UAが90000に到達致しました。ありがとうございます。また次回まで一週間ほどお時間を頂きます。
学園祭とキャノンボール・ファーストの合同労い会から数日。思わぬハプニング?もあったものの当日は何事も無く無事に終える事ができた。だが予期せぬ形で火影の気持ちを知る事となった鈴・シャルロット・本音の三人はずっと緊張し続け、その影響は未だ続いていた。例えばある休み時間、
火影
「なぁシャル、今度……シャル?」
シャル
「ふぇ!?なななななな何火影!?こ、こんばんわ!」
酷く慌てて返事をするシャルロット。
火影
「……やっぱり良い。疲れてる様だからまたな」
そう言って火影は再び席に戻った。
シャル
(あ……。も~!折角話しかけてきてくれたのに~!しかもこんばんわってなに!?僕のバカバカバカ~!!)
……更に別の時には、
火影
「なぁ本音、今日お前」
本音
「!!」バタンッ!「…すぅすぅ」
声をかけてきた火影の目の前でいきなりタヌキ寝入りをする本音。普通ならつっこむところだが、
火影
「………」
…火影は何も言わず帰って行った。
本音
(…あ、あれ~?ひかりん何もない…。私自身も悪いと思うけど……だって恥ずかしいんだもん!!)
……更に更に翌日の登校時には、
火影
「よぉ鈴、箒。おはようさん」
箒
「ああおはよう火影」
鈴
「!…ごめん、私急ぐから」すたすたすた…
そう言って鈴は足早に去って行った。
火影
「……」
箒
(…鈴の奴…)
その鈴は教室の自分の机に付くと、
鈴
(ハァ、ハァ……。ハァ、私なにやってんだろ…。挨拶も返さないなんて、これじゃ私普通に嫌な奴じゃないの。……どうすればいいの……?)
こんな感じで三人ともまともに話す事さえできない始末。どうやら先日の労い会での出来事は彼女達の心に想像以上に影響を与えた様である。
…………
その日の昼。この日は屋上でみんなで集まって食べる事になった。
一夏
「…んっ?火影。そのポットお茶じゃなくてスープか?」
火影
「ああこれはハリラっつうモロッコのスープだ。ニコに教わったんだ」
セシリア
「ニコさんって確か火影さん方のお家の整備士さんでしたわね?懐かしいですわ。お元気ですか?」
火影
「ああ元気だぜ。全く問題ねぇよ」
一夏
「良い匂いだなぁ。ちょっとくれよ、そのゴリラってスープ」
火影
「ハリラだよ。……ほら」
一夏
「サンキュー、……うめぇ!」
箒
「…ほぉ、確かに旨い。スパイスが効いているな」
ラウラ
「なぁ海之。玉子焼きひとつ貰って良いか?前に鈴が絶賛していたし、夫としてお前の好みの味を知っておきたいんだ」
海之
「…理由はさておき構わん。……簪、お前もどうだ?」
簪
「えっ…い、良いの?…ありがとう!」
一夏
「鈴達もどうだ?ほんとに相当旨いぞこれ!」
鈴
「えっ?…え、ええっと…」
シャル
「…ぼ、僕は…あの、その…」
本音
「わ、私は~…」
火影の料理という理由だけでここでも答えに困る三人。
火影
「…無理すんな三人共。誰にでも好き嫌いはあるさ。俺だってオリーブ嫌いだしな」
鈴
「えっ、…ち、違う!そうじゃなくて!」
火影
「良いって良いって。気にすんな」
鈴・シャル
「「……」」
本音
「ひかりん…」
…三人はまた黙ってしまった。
海之・箒・セシリア・簪・ラウラ
「「「………」」」
一夏
「なんだ…?まぁいいや。そういや再来週には専用機持ちのタッグマッチだっけか?」
海之
「…ああ。キャノンボール・ファーストの時と違い、専用機持ちなら学年に関係なくタッグを組める。…とはいえ先生の話では参加者は大分少なくなりそうだがな」
ラウラ
「何故だ?」
火影
「ほら、前のファントムや先日の鳥野郎の襲撃なんかがあったろ?あれで出たいって生徒が減ってんだよ。専用機を持たせてる国側も今回ばかりは仕方ないと了承しているそうだ。流石にそこまで国も鬼じゃねぇって事だな」
海之
「だからお前達も無理に出る必要はない。…ああ楯無さんは出るそうだ。ロシア代表としては出なければならんとな」
簪
「……」
火影
「あと俺と海之も出るぜ。今度こそ決着を付けてぇしな」
一夏
「ふたりが出るなら俺も出るぜ!」
一夏に続いて箒、セシリア、ラウラも参加を決めた。
箒
「…鈴、シャル。お前達はどうする?」
鈴
「えっ?え、ええ。もちろん出るわ」
シャル
「…うん。僕も参加しようかな」
海之
「簪、お前はどうする?無理する必要は無いが」
簪
「……」
簪は暫く考えた後、
簪
「…私も出るよ。自分の可能性を知りたいから」
海之
「そうか」
セシリア
「立派ですわ簪さん」
そんな感じで時間は過ぎ……、
キーンコーンカーンコーン
一夏
「おっと、もうこんな時間か」
箒
「では今日はこれでお開きとしよう」
そして片付けをしている中、火影がある者達に声をかけた。いつもの彼らしくない真面目な表情で。
火影
「…鈴、それにシャルと本音。…後で話がある。放課後またここに来てくれ。他に用事があんなら別の日でもいい」
鈴
「えっ!…う、うん。わかったわ…」
シャル
「…うん。僕も行ける」
本音
「…私も大丈夫だよ」
火影
「…わかった。じゃあ後でな」
そう言うと火影は先に戻って行った。その後ろ姿を鈴達は黙って見つめている。
鈴・シャル・本音
「「「………」」」
箒
(な、なんか火影の奴、いつもと様子が違ったな)
セシリア
(ど、どうされるんでしょう?)
簪
(分からないよ…)
ラウラ
(あいつの事だ。問題は起こさないとは思うが……)
海之
「………」
一夏
「…ほんとなんなんだ?」
…………
キーンコーンカーンコーン
そしてやがて放課後になり、鈴達は屋上に向かっていた。…だがその足取りは重い。
本音
「…ねぇ、ひかりんの話ってなんだろう…」
シャル
「…わからないよ…。あんな表情の火影普段見ないもの…」
鈴
「……」
本音
「まさかひかりん、もう私達と一緒にいたくないとか言うんじゃ…」
シャル
「ちょ、ちょっと変な事言わないでよ!」
これまで経験した事がない緊張が鈴達を襲っていた。
………そしてやがて屋上の扉の前にたどり着いた。
シャル
「来ちゃった……」
本音
「…す~、は~…」
鈴
「……行くわよ」
ガチャ
そう言って鈴達は扉を開けた。
……しかし、
鈴
「………火影?」
本音
「…? いないねひかりん…」
シャル
「…おかしいね。時間も場所も合ってるのに…」
火影がいない事に不思議がる鈴達。
………すると突然、
?
「わっ!!!」
鈴
「きゃっ!!」
シャル
「わぁ!!」
本音
「ひゃあ~!!」
突然後ろから声をかけられ、ひどく驚く鈴達。
火影
「くっ…あっはははははは!!」
声をかけたのは火影だった。鈴達の驚きっぷりに腹を抱えて笑う火影。
シャル
「ひ、火影!何時の間に!?」
本音
「び、吃驚した~!」
鈴
「ちょっと火影!あんた何してんのよ!」
火影
「くくっ…いや悪い悪い」
鈴
「悪い悪いじゃないわよ!ほんとに吃驚したんだからね!?」
シャル
「し、心臓飛び出すかと思ったよ。本当に何してんのさ!」
本音
「もう~!罰としてひかりん今度私達にデザートふたつずつー!」
本気で驚いたらしいシャルロットと本音。怒る鈴。そんな彼女達を見て火影は、
火影
「…そうだよ。そうでなきゃお前ららしくねぇ」
シャル
「…えっ?」
火影
「お転婆で男勝りだけど泣き虫な鈴。大人しく見えて活発なシャル。そしていつもデザートをねだるのんびりな本音。それでこそお前らだ」
本音
「あ~ひかりんひど~い!」
鈴
「ま、また言ったわね~!おまけに泣き虫って遊園地の時よりひとつ増えてるじゃないの!……あっ!」
シャル・本音
「「………鈴~?遊園地って何の事(かな)~?」」
鈴
「え、えっと……それは…」
※Extramission04をご覧ください。
その後、鈴はシャルと本音から少しの間追及され、その様子を見て火影は再び大笑い。そんな火影に鈴はポカポカ叩きながら怒り、シャルと本音もそれを見て笑うのであった…。
…………
空がうっすらオレンジ色に差し掛かり、ようやく落ち着いた四人は昼にみんなで食事したスペースに座った。
(…ギィッ)
シャル
「ところでさ火影、なんで僕達を呼んだの?」
シャルロットの質問に火影は答える。
火影
「お前らと話がしたいと思ったんだよ。ここ最近のお前ら、妙におかしかったからな。話しかけても目も合わせねぇし」
本音
「ご、ごめんなさ~い」
鈴
「だ、誰のせいだと思ってんのよ!あ、あんたがあんな事言うから!」
火影
「……あんな事ってのは労い会で俺があの子に言った事か?それとお前らがおかしかったのとなんの関係がある?」
鈴
「!…そ、それは…」
シャル
「え、ええっと…」
本音
「…う~んと~…」
鈴達はなんと答えたら良いか分からなくて困っている様だ。
火影
「…俺からすりゃ医務室でお前らが言ってた事の方が衝撃だったけどな」
鈴
「…えっ!?」
本音
「ふぇっ!?」
シャル
「…火影…やっぱりあの時」
火影
「ああ。鈴が違う!って大きい声で言った時に起きたんだ。そりゃあんだけ大きい声揃いも揃って出したら起きない方がおかしいって」
鈴・シャル・本音
「「「……」」」
恥ずかしさのあまり真っ赤になって黙ってしまう鈴達。そんな鈴達に火影は、
火影
「……ありがとう」
鈴
「……えっ」
シャル
「…火影?」
本音
「ひかりん?」
鈴達は火影の方こそ何か何時もらしくないと感じた。
鈴
「ど、どうしたのよそんな事言うなんて。あんたこそらしく無いわよ?」
火影
「…そうか?………なぁ三人とも。少し話聞いてもらって良いか?」
シャル
「う、うん」
火影
「……先日の労い会でも話したが…、俺は今迄特定のひとりだけに特別な感情を持つって経験、まぁあの場合、恋ってやつか。それをした事がない。興味がなかった訳じゃねぇ。ただ俺には本当に縁が無い話だと思ってたんだ。だからあの時本当に困ったよ。どう答えたら良いのかな」
本音
「ひかりん誰かに告白とかされなかったの~?」
鈴
「そうよ。あんたはっきり言って顔は悪くないんだからそれ位あったでしょうに?」
火影
「……わかんねぇ。もしかしたらあったかもしれねぇけど…気付かなかったのかもな」
鈴
「あんたといい一夏といいほんっと鈍感ね。まぁ恋って単語が出ただけあんたの方がマシだけど」
火影
「…否定はしねぇよ。まぁそんなんだから、あの時偶然にも医務室でお前らの気持ち聞くまで全く気付かなかった。……悪い」
鈴
「お、思い出さないでよ恥ずかしいから…。あと謝んなくても良いわよ」
シャル
「そうだよ火影。あれは僕達が悪いんだから。……あれ?悪いのかな?」
本音
「さぁね~?」
火影
「ふっ。………それでな、俺があの時あの子の告白に対して言った言葉、覚えてるか?「好きな子はいないけど特に守りたい子はいる。だから気持ちに応えられない」っていう」
シャル
「う、うん」
火影
「…そんな俺の返事に対してあの子が言った言葉、「特に守りたい子がいるという事は好きな子がいるという事」だと。あの時は正直よくわからなかったが…、あれから少し考えてみた。……そして気付いた事があったんだ」
鈴
「…な、何…?」
三人は緊張しつつも火影の言葉を黙って聞く。
火影
「…もし、もしあの時…あの子が言った事が正しいんだとしたら。……俺が特に守りたいと思ってる子が…、俺が好きだと思ってる子だとしたら……」
……そして火影はこう続けた。
火影
「それは……鈴…シャル…本音。………お前らの事なんじゃねぇのかな…って」
鈴
「…………え」
シャル
「…ひ、火影」
本音
「…それって…」
鈴達は火影のその言葉に一瞬何も言えなくなった。但しその心中にあるのは以前の時の様な緊張ではない。好きと言ってもらった事に対する喜び・嬉しさ・愛おしさ。それに加えてほんの少しの恥ずかしさ。鈴達は喜びの声を出そうとした。…だが、
火影
「…だからこそすまねぇ」
鈴
「…え?」
シャル
「…?」
本音
「ひかりん?」
続けざまの突然の謝罪に鈴達は声を止めた。火影の声はこれまでより小さく、そして寂しそうだった。
火影
「…正直に言う。俺はお前らに、みんなに話していない事がある。大事な話だ。ああでも安心しろ、ほんとはお前らの敵だったとかそんな話じゃねぇから。ただ大事な話だ。そして…今はまだ話す事はできない。もし話したら……それこそ本当におまえらと、一緒にいられなくなるかもしれねぇから」
鈴・シャル・本音
「「「!!!」」」
予想だにしていなかった火影からの更なる告白。その内容に鈴達は先程の喜びが急激に下がっていく感じがした。
火影
「…お前らの気持ちは凄く嬉しい。これに嘘はねぇ。そして俺がさっき言った事も本心だ。お前らの事は…好き、なんだろう。……だが俺はお前らを裏切っているともいえる。居心地の良いと感じる場所にいるために自分の事を話せない、云わば臆病者だ。…そんな俺なんか」
この時火影の心には無意識的に、前世であまり経験した事がない感情が本当に僅かにあった。
全てをさらけ出す事で自分の居場所を失うかもしれない虚しさ。
周りから拒絶されるかもしれない恐怖。
何時かは話さなければならない。それはわかっている。だが今はまだ……。そうやって逃げている様な気がする自分を火影は情けないと思った。だからこの後、「俺なんかいなくても」と言葉を続けるつもりだった。しかし、
バッ!
火影
「!」
火影が気付いた時、鈴が自分の胸に飛び込んでいた。
鈴
「火影!もしこの後自分はいらないとかいなくなった方が良いとか言ったら私は今度こそあんたを許さないわよ!!……わかってるわよ!あんたと海之に何か大きな事情がある事くらい!なんとなくだけどそんな事みんな気付いてるわよ!……でもね火影!私は火影が好きなの!!一緒にいたいの!!私だけじゃない、シャルと本音も!それに言った筈よ!どんな事があってもあんたの傍にいるって!忘れたとは言わせないわよ!!」
火影
「…鈴…」
するとその横からシャルロットと本音も近づき、火影の手をとった。
シャル
「火影、鈴の言う通りだよ…。僕も火影の事が好き。この気持ちなら誰にも負けない自信がある。確かに火影、そして海之もだけど…わからない事があるよ。でもそれ位でみんなの、僕達の火影を想う気持ちは揺らがないから。だから…そんな悲しい事言わないで。これからも…僕達と一緒にいて…?」
本音
「そうだよ火影。私は鈴やシャルルンの様に火影と一緒には戦えないけど…、前に火影言ってくれたよね?普段の私でいる事が何よりも嬉しいって…。私嬉しかった。こんな私でも火影を支えられてるんだって。あの言葉でもっと火影の事が好きになったの。例え何があっても…私は火影を信じるよ」
ふたりもまた、火影を安心させる様に優しい笑顔で打ち明けた。
火影
「シャル…本音…」
鈴
「わかった?もう一回言うけど、あんたは私達に必要なの。私達の事がす、好きって言うなら、黙ってこれからも一緒にいなさい!ラウラじゃないけど拒否は認めないから!」
火影
「……」
火影は何も言わなかった。いや言えなかった。かつてダンテだった頃、ある時は自分に関わると災いを招く。またある時は友の敵とあらぬ言われをされた事もある。生まれ変わり、今の自分には関係無いとは言えそんな自分に、両親以外にもこうまで自分を想ってくれる者がいるという事に、彼の心は熱くなった。
本音
「…あれ~?もしかしてひかりん泣いてる~?」
火影
「……雨だよ」
シャル
「…降ってないみたいだけど?」
火影
「気にすんな。…ありがとう鈴。シャルも本音も。そして悪かった。もう二度と言わねぇから」
鈴
「…ほんとよ。可愛い女の子をまた泣かせて、おまけにあんな恥ずかしい事言わせて。今度お詫びに何か奢りなさい。私達全員にね!」
本音
「サンセイ~♪」
シャル
「ふふっ、今回ばかりは僕も賛成かな?驚かせた罰として♪」
火影
「おいおい…、まぁいいか。…………しかしな」
本音
「ほえ?」
すると火影は入口のドアを見つめ、
火影
「………」すたすた
シャル
「えっ?」
ガチャッ!
火影はそっとドアノブに手をかけ、一気に引いた。すると、
一夏・箒・セシリア・簪・ラウラ・楯無
「「「わぁ(きゃあ)!」」」ドドドドッ!
…なだれ込んできたのは一夏達だった。しかもどこで嗅ぎつけたのか楯無も一緒だった。
セシリア
「いたたた」
楯無
「あ、あはは。やっぱり火影くんにはバレてたか」
シャル
「み、みんな!い、一体何時から!?」
箒
「あの…その…だな」
火影
「俺達が座った時からだろ?扉開ける音聞こえたぞ」
ラウラ
「さ、流石だな弟よ」
簪
「よ、良かったね!三人共」
…どうやら今の会話は全て筒抜けだったのだろう。それに気付いた三人、特に鈴はここでも一際赤くなった。
鈴
「あああ、あんた達~!!」
一夏
「やべっ!逃げるぞ!つっても鈴の奴なんであんなに怒ってんだ~!?」
そう言って六人は全速で逃げて行った。
火影
「…やれやれだぜ」
シャル
「というか一夏…。もしかして……今の流れでまだ気づいてない?」
本音
「……おりむ~~」
鈴
「ハァ…、なんかまた明日から色々突っ込まれそう…。と、気付けば結構な時間ね。そろそろ戻らないと…?って火影、なにそのポット?」
火影
「ああこれは…」
そう言って火影はそれを紙コップに入れて鈴達に差し出す。すると三人が気付く。
シャル
「これって昼間の?」
本音
「あの時のスープだね~」
鈴
「確かハリラだっけ?どうしたのこれ?」
火影
「お前ら飲んでねぇだろ昼。だから温め直したんだよ。それでちょい遅れちまったけど」
鈴・シャル・本音
「「「……火影(ひかりん)……」」」
鈴達は火影の優しさに感謝しながらその温かいスープを口に運んだ。
鈴・シャル・本音
「「「…美味しい!」」」
火影
「どうも」
笑った四人を夕焼けが優しく照らしていた。
おまけ
そんな彼らを気配を消して見守る者がふたり。
海之
「………やれやれ、やっと終わったか」
千冬
「一夏といい火影といい世話の焼ける奴らだ。…まぁ今回は鳳らも同じだがな」
海之
「愚弟がご迷惑をおかけしました」
千冬
「お前が気にする必要はない。担任の私としても最近のデュノアや布仏らは感心しなかったからな。…だが少し心配したぞ。火影の奴が話さないかとな」
海之
「あいつもそこまで馬鹿ではありませんよ。あいつは馬鹿ですが、俺などより余程マシな人間ですから。鈴やシャルらが不幸になる様な事はしません。…ですがあいつも俺も何時か話す時が来るでしょう。恐らくそう遠くなく…」
千冬
「……そうだな」
海之は少なからず予感していた。みんなに真実を伝える時が近づいているのを…。そしておそらく火影も。
海之
「…さて、それはともかく本当にお騒がせしました。千冬先生には何かお詫びしなければなりませんね」
千冬
「そんな事を気にする必要はな………。海之、それなら…ひとつお願いして良いか?」
海之
「なんでしょうか?」
千冬
「…そのだな。お前さえ良ければなんだが…、また私の酒のあてを…作りに来てもらって良いか…?」
海之
「? そんな事で良いなら何時でも構いませんよ」
千冬
「そ、そうか。あ、ありがとう」
こちらも顔を赤くした者がひとり…。