IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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シャルロットにパンドラ・リヴァイヴが届けられた日の翌日。この日の授業も終わり、一夏達はHRで千冬と真耶からタッグマッチについて。そして火影と海之が何故参加許可されないのかの説明を受ける。過去のイベントでの経緯を危ぶんだ学園は、園で最も実力があるであろうふたりを大会の警備に当てる事にしたのだった。一夏達は驚くが火影と海之は苦い顔ひとつせずそれを了承する。

一方一夏達参加者はタッグを誰にするか決めかねていた。そんな中、海之は簪に今後の事、そして過去を乗り越える意味も兼ねて一夏と組む事を提案する。最初は戸惑った簪だったが海之からのフォローを受け、一夏と組む事を決意した。


Mission113 それぞれの想いを持って①

IS学園 1-1

 

 

「一夏くん。タッグマッチの相手、私と組んでほしい」

 

 

千冬からタッグマッチについて説明があった日の翌日朝。簪は一組に来ていた。目的は見ての通り一夏にタッグマッチでのペアをお願いするためである。何時もの大人しい彼女らしくない、とてもしっかりとした口調だった。

 

一夏

「えっ?…あ、ああ。俺で良いなら別に構わねぇ…けど…」

 

一夏は少々困惑していた。普段いつも同じメンバーで集まってはいるものの、簪とは多分一番話していない。別のクラスという事もあって一緒にいる時間も少ない。そんな彼女がよりによって自分と、しかも向こうからペアをお願いして来るなんてはっきり言って無いと思っていた。

 

「ありがとう。じゃあ今日からできるだけ訓練しましょ。時間は合わせるから決まったら連絡お願いね」

 

そう言うと簪は部屋を出て行った。

 

一夏

「……」

本音

「な、なんかかんちゃん。随分力入ってたね~」

火影

「…そうだな。海之、何か知ってるか?」

海之

「……後で話す」

 

実質簪がああするきっかけとなった海之は先程の簪を見て大丈夫だと思った。

…とそこに箒とセシリアが入ってきた。

 

「おはよう皆」

セシリア

「おはようございます。皆さん」

本音

「おはよ~しののん。セッシー」

火影

「おはようさん」

海之

「おはよう」

一夏

「おはよう箒、セシリア」

箒・セシリア

「「!」」

 

一夏の姿を確認するや否やふたりは一夏に詰め寄り、そして、

 

箒・セシリア

「「一夏(さん)!タッグマッチでは私と組んでくれ(くださいませんか)!」」

 

こちらも先の簪に負けない位の迫力のふたり。そんな彼女達に一夏は、

 

一夏

「あ、ああそれなんだけどさ。もう俺ついさっき簪と組む事になったんだ。悪いな」

 

それを聞いたふたりは更に詰め寄る。

 

「な、なんだと!!簪とだと!?」

セシリア

「い、一夏さんからの要望ですか!?いえきっとそうですわよね!?簪さんがそんな事言われる筈ありませんもの!」

一夏

「い、いや簪の方からだ!俺じゃねぇって!つーかなんでそんな必死なんだ~!?」

 

一夏はふたりから更に詰め寄られていて暫く掛かりそうだ。そんな中他のメンバーも登校してきた。

 

シャル

「おはよう火影、みんな。……って、どうしたの?箒とセシリア」

ラウラ

「一夏の奴えらい剣幕で迫られているな」

「あいつの事だからまた何か怒らせる事したんじゃないの~?」

火影

「…いや、一夏の奴は全く悪くない……筈だ」

本音

「う~ん、でもふたりの気持ちを考えるとね~」

海之

「…ハァ」

 

海之は箒とセシリアにほんの少しだけ悪いと思った。その後、ふたりの押し問答は授業開始のチャイムが鳴る迄続いたのであった……。

 

 

…………

 

IS学園 アリーナ

 

一夏

「つ、疲れた~」

 

その日の放課後、一夏はタッグを組む事になった簪と共に訓練を行っていた。基礎や応用、最後は実戦練習まで。その内容ははっきり言ってハードだった。

 

「じゃあ今日の所はこれ位にしようか。でもこれ位でバテてる様じゃ今度の試合勝てないよ」

一夏

「そ、そうはいってもいきなりこんなハードとは…。ってか簪強えなぁ。初めてだっけ?こうして戦うのは」

「これでも一応日本の代表候補だからね。それにケルベロスの訓練も兼ねて海之くんや火影くんに時々単独で教えてもらってたし」

一夏

「そ、そうなのか」

「うん。じゃあ今日はお疲れ様。また明日ね」

 

そう言って簪は戻って行った。

 

一夏

「な、なんかあいつ凄いやる気だなぁ。それにさっきの話し方、まるで楯無さんみてぇだ。…ってそうか、姉だから当たり前か」

 

すると外から海之と火影、そして本音が入ってきた。

 

本音

「お疲れ~、おりむ~」

一夏

「ん?おお、のほほんさん。火影と海之も」

火影

「お疲れさん。訓練は終わったのか?」

一夏

「ああ今さっきな。随分なやる気だよ。簪の奴」

火影

「…確かに随分張り切っているな。…まぁタッグの相手がお前で、かつ自分の壁を乗り越える機会だから何時も以上に張り切ってるんだろ」

一夏

「? タッグの相手が俺だから?」

海之

「ああ…。実はな……」

 

 

…………

 

それから海之は自分が知るだけの事を全て一夏に話した。簪の専用機である打鉄弐式が偶然且つ直接の責任で無いとはいえ、一夏の出現と白式の開発で殆ど中止同然となってしまい、彼女の心が大きく傷ついた事。そして周りの協力もあって最近やっとの思いで完成した事。その間簪は開発に集中するあまり、代表候補としての役割ができずに悔しがっていた事。そして今回のタッグマッチで実の姉である楯無に勝ちたいと思っている事を。

※Mission40をご覧ください。

 

一夏

「……そうか。俺のせいで簪の夢が遅れてしまったのか…」

火影

「俺もさっき海之から聞いたばかりだ。まぁある程度は聞いてたけどな」

海之

「もちろん全部お前に責任がある訳じゃない。お前の出現は誰ひとり予想できなかった。ただ完成間近という状況でそうなったためにあいつも素直に受け止めきれなかったのだろう」

一夏

「…それもあるけどあいつ、楯無さんにそんな感情があったんだな。…考えりゃ確かにあいつから楯無さんに話しかけているの見たこと無い気がする…」

本音

「…うん。お家でもなんだ。でもあれでも随分良くなったんだよ~?最近はかっちゃんの言葉に返したりしてるもん~」

火影

「俺らと一緒にいるときは紛れて会話できてんだろうけどな。でも今までがそうだったから急には無理って事だろ…」

海之

「簪はこの大会でこれまでの自分とケジメを付けるつもりだ。だから…お前も協力してやってくれないか?…あいつが悔いなき結果が得られる様に。勝敗に拘らずな」

 

海之がそう頼むと一夏は、

 

一夏

「……へへっ、なんかお前らに頼み事されるなんて初めてな気がするな。…もちろんだぜ!但し、やるからにゃ勝つつもりでいくぜ!楯無さんにもな!」

火影

「そう言うだろうと思ったよ。んじゃ飯でも行くか」

本音

「じゃあ折角だからかんちゃんも呼ぼー!」

 

簪も合流し、みんなで夕食に向かったのであった。

 

 

…………

 

学園内道場

 

ブンッ!ブンッ!

 

一方、こちらは学園内にある道場。そこではひとりの少女が竹刀を振るっていた。

 

「ハッ!!」ブンッ!

 

それは箒だった。一見みると何の変わりも無い鍛錬だが…彼女の心中はというと、

 

(一夏の奴、許せん!!私に組もうと持ちかけなかったのは致し方ない!あいつの性格上それは難しいと思う。しかし私でもセシリアでも、ましてや同じクラスのシャルやラウラでも無く、わざわざ別のクラスの簪と組むとは!!)

 

どうやら一夏が簪と組んだ事にまだ腹を立てている様だ。とそんな箒に話しかける者がいた。

 

楯無

「……箒ちゃん?」

 

それは楯無であった。

 

「…あっ、楯無先輩。お疲れ様です。どうしたのですか?ここは道場ですよ?」

楯無

「部の先生に用事があったの。それで戻る途中だったんだけど、道場からもんの凄く気合い入った声が聞こえたから…なんか聞いた事ある声だな~って思って」

「そ、そんなに大きな声でしたか。申し訳ありません……」

 

楯無が聞いたと言う声はもちろん箒。どうやら集中し過ぎていて自らの声に気付いていなかった様である。

 

楯無

「ううん。むしろそれだけの気合いが入った訓練はどんどんやっていいと思うわよ。タッグマッチに向けての訓練?ってゆうか箒ちゃんってタッグの相手決まったの?まぁ誰と組みたいかはもう丸わかりだけど♪」

 

楯無は間違いなく一夏狙いだと思っていた。

 

「…ええ。その事なんですが……、一夏は簪と組む事になったんです」

楯無

「…えっ?…簪ちゃん?」

「はい。海之から聞いたのですが…今朝方簪が一夏に申し込んだ様でして」

楯無

「簪ちゃんが一夏くんに……」

 

顔には出さないが楯無はその事実に驚いている様だ。すると、

 

楯無

「箒ちゃん、この後良かったらちょっと付き合ってくれる?」

「えっ?あ、はい!」

 

 

…………

 

IS学園 大浴場

 

楯無

「ふ~、見事に貸し切り状態ね~♪」

「え、ええ。そうですね……」

 

箒が連れて来られたのは学園の大浴場だった。因みに今ふたり以外に入っている生徒はいない。

 

楯無

「……それにしても箒ちゃん、随分発育がいいわね~。なんか妬けちゃうわ~♪」

「ちょっ!何を仰るんですか楯無さんまで!」

楯無

「気にしない気にしない♪それはむしろ女として誇るべきよ?それで一夏くんも誘惑したりしてるの~?」

「そ、そんな事してません!それに一夏にはそんな事しても…ってそうじゃなくて!というかそんな事言うために私を呼んだんですか!?」

楯無

「あははは、ごめんごめん♪…実はね、この際箒ちゃんにも話しておこうと思って。私と簪ちゃん、そして…一夏くんについて」

「…えっ、一夏と簪?」

楯無

「ええ。ああでも安心してね?決して好きとかそんな事じゃないから。簪ちゃんは海之くん一筋だし~♪…って話か、実はね……」

 

 

…………

 

それから楯無は箒に話した。ISを組み立てた事や操縦技術。成績や若干17という歳で国家代表にまでなっている等、様々な経緯で数年前から簪が自分に対してコンプレックスに似た感情を持っている事。そしてISを巡る簪と一夏の事情についても。

 

楯無

「…と言う訳なのよ~」

「……そんな事が。そういえば学園に入学してまだ間が無い頃、4組に専用機持ちがいるとは聞いていましたが…一度もその者を見たことがありませんでした。あれは…簪の弐式が完成していなかったからなんですね。そしてその理由が…一夏の白式」

楯無

「正確に言えば一夏くんには責任ないんだけどね。彼からしたらそんな事言われてもって感じだろうし。…ただ感情がそれを認めなかったんだと思うわ」

「……そして簪と楯無さんの間にそんな関係があったなんて…。今まで気付きませんでした」

楯無

「まぁ私は平静を装ってたし自然体でいたから無理もないと思うわ。私は何とも思っていないんだけど…やっぱり簪ちゃんの方がね。劣等感なんて全く感じる必要無いし、私にとってかけがえのない只ひとりの妹なのにね」

「……」

 

箒は楯無の話を黙って聞いていた。そして何故か他人事とは思えなかった。自分も姉である束と現在も解消されない問題を抱えているからだろう。そしてもしかしたらそれがわかっていて楯無も自分に話をしたのかもしれないと箒は思った。

 

楯無

「…でもさ、さっき箒ちゃんからあの子が一夏くんと組んだって事を聞いて思ったよ。…あの子は前に進もうとしてるって。だから数ヶ月前まであんなに恨んでた筈の一夏くんと組んだんだと思う。そして……私と戦おうとも思ってる筈。堂々と正面からね」

「楯無さん……」

楯無

「まぁでもやっぱりそのきっかけになったのは海之くんだろうけどね!恋は女を強くするからね~♪…でもあの子がその気なら私も堂々と受けてたつよ!手加減なんて一切せず!そんなことしたらあの子にますます怒られるからね」

「……」

 

箒は感じ取っていた。普段通りに見える楯無だがその心には熱い闘志を秘めている事に。そして箒は、

 

「…楯無さん。タッグマッチ…私と組んでくれませんか?」

 

楯無にタッグを願い出た。純粋に楯無の力になりたいと思ったのだった。

 

楯無

「モチのロンだよ♪頑張ろうね箒ちゃん!鈍感な一夏くんに気付いて貰えない気持ちをぶつけてやろう!」

「そ、それが本命じゃないですが…、わ、わかりました!宜しくお願いします!」

 

こうして楯無と箒のタッグが完成した。




一夏と簪。箒と楯無のタッグが決定しました。次回に続きます。

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