IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
海之の言葉を聞いた簪は翌日の朝、一夏にタッグを申し込んだ。彼女の気迫にやや押されながらも一夏は申し込みを聞き入れ、訓練に励む。その最中、海之達から自分と簪の間にあった経緯を聞いた一夏は彼女の力になる事を約束した。
一方、時を同じくして箒は楯無と話をしていた。その中で箒もまた楯無から一夏と簪の隠された経緯。そして姉妹の間にある関係について知らされる事に。箒は楯無の心にある思いを感じ取り、彼女を助けたいとタッグを申し入れるのであった。
キーンコーンカーンコーン
簪
「さあ一夏くん、今日も行くよ!」
一夏
「お、おう!」
一夏と簪のペアが決まった翌日。相変わらず簪はやる気に満ちており、一夏もそんな彼女に付いてアリーナに走って行った。
火影
「昨日に続いてやる気十分だな簪」
箒
「私もこの後空いているから楯無さんに訓練を頼もうか…」
海之
「箒は楯無さんと組んだか。一夏達にとってはますます強敵だな」
セシリア
「……」
…………
学園内 アリーナ
セシリア
「そこ!」
ドギュンッ!
ラウラ
「甘い!」
ドンッ!ドンッ!
昨日箒と同じく一夏とタッグを組めなかったセシリアは、一夏達とは別のアリーナで訓練していた。パートナーはラウラ。偏光射撃を使える様になったものの精度はまだ完全とは言えなかった。更なる訓練が必要と感じたセシリアは経験が皆の中では一番多いラウラに相手をお願いしたのである。開始から約一時間半、互いの攻撃がぶつかって相殺された所で、
ラウラ
「……ふぅ。セシリア、もう今日はこれ位にしておこう。息が上がっているぞ」
セシリア
「だ、大丈夫ですわ!まだこれ位…」
そう言うセシリアだがその腕はライフルを持ちあげるのもやっという感じだ。
ラウラ
「そんなに無理をしてはタッグマッチの前に明日の授業に差し支える。今日はもう止めだ」
セシリア
「……わかりましたわ」
…………
アリーナ控室
ラウラ
「ほら」
セシリア
「あ、ありがとうございます…。御無理を言ってすいませんでした、ラウラさん」
ラウラ
「気にするな。私もレーゲンの新パッケージの良い訓練ができたしな」
セシリア
「あの両肩に装備された大砲ですわね」
ラウラ
「ああ、パンツァー・カノーニアという。何時ものレールガンよりも小ぶりだがその分連射と動きが良くなった。それに対物シールドもある」
先日ラウラのレーゲンにもティアーズの様な新しい装備がドイツから届いていた。
ラウラ
「しかし随分張り切っていたなセシリア。まぁ理由はなんとなくわかるが。一夏とタッグを組めなかったのがそんなに悔しかったのか?」
セシリア
「た、確かにそれもありますが…、それだけではないのですわ。……ラウラさん。少しお話を聞いて頂いて良いですか?」
ラウラ
「ああ構わん」
セシリア
「ありがとうございます。実は……先日のキャノンボール・ファーストの時でのお話なのですが…、あのMという方が操るゼフィルスと戦った時、私、一夏さんに助けられましたの。自らも危ないですのに。あの事でますます一夏さんの力になりたいと思いましたわ。そのお陰でティアーズも強くなったと思っておりますし」
ラウラ
「良かったではないか」
聞く限り悪い話ではないとラウラは思った。
セシリア
「はい、本当に感謝しておりますわ。……でも、その一方で、心の隅でこうも考えていましたの」
ラウラ
「? どんな考えだ?」
すると突然セシリアの表情が変わった。
セシリア
「はっきり申します。…私は、一夏さんよりもずっと前からISに携わってきましたわ。ティアーズを持つのも何年も掛かりましたし、イギリスの代表候補にまでなれた。……でも、一夏さんはまだほんの半年程しかISに関わっていない。…なのに最早私達と同等、もしかしたらそれ以上に強くなられてしまっている」
ラウラ
「……」
ラウラは黙って聞いていた。
セシリア
「一夏さんが成長されるのは私もとても嬉しいですわ。それは本心です。…でもなんと言えば良いのか…、ほんのちょっとですが…同時に悔しくもありましたの…。一夏さんがどんどん成長されていく事に。…そして箒さんも。あの方もほんの数ヶ月なのに私達と並ぶ位にまで成長されましたわ。…はしたないお言葉かもしれませんが……負けたくない!…そう思いましたの。もしこのまま差をつけられる様な事があればおふたりに、一夏さんに置いて行かれそうで……怖くて…」
どうやらセシリアは一夏や箒の成長に焦りを感じていた様であった。……そんな気弱になっているセシリアにラウラは、
ラウラ
「セシリア!」
セシリア
「!は、はい!」
突然大きな声で呼ばれた事にセシリアは驚いている。そしてラウラは言った。
ラウラ
「セシリア。お前は一夏を信じているか?」
セシリア
「えっ?え、ええ。当然ですわ」
ラウラ
「ならば聞く。お前は一夏がそんな理由で見限る様な男と思うか?例えお前が一夏より弱いとしても、自分より弱い者を見捨てる様な薄情な男と思うか?」
セシリア
「! い、いえ!そんな方ではありませんわ!」
ラウラの問いかけにセシリアは全力で否定する。
ラウラ
「ならば信じろ、あいつを。そして強くなれ。どうせなら誰よりも一夏を支えられる位を目指して。お前がそう思う限り、お前はもっと強くなれる」
セシリア
「……」
ラウラ
「お前は一夏の事が好きなのだろう?ならば信じるのだ。一夏はお前の事もきっと大切に思っている筈だ」
セシリア
「ラウラさん…」
それは以前ラウラが簪に問われた言葉と似たものであった。あの時同じく自信が揺らいでいたラウラに簪が言った言葉。
ラウラ
「だから余計な心配は不要だ。まぁ一夏は確かに鈍感で馬鹿で、女心もわからないし、嫁の海之に比べれば全ての点で負けるが、大切なものを守りたいという気持ちだけは足下位には及ぶ。ふふっ」
セシリア
「………」
セシリアはラウラの暖かい言葉が嬉しかった。
セシリア
「…ありがとうございますラウラさん。貴女のお陰で不安が消えましたわ」
ラウラ
「それは良かったな」
セシリア
「はい。………あのラウラさん。今度のタッグマッチ、私と組んで頂けませんか?」
ラウラ
「ああ、私で良いなら構わん。宜しく頼む」
こうしてセシリアとラウラのタッグが完成したのであった。
セシリア
「ですがラウラさん。ちょっと一夏さんに厳しくありません?」
ラウラ
「そうか?」
…………
整備室
シャル
「基本的には消費SEが低いジェラシーとエピデミックでけん制して…グリーフやグラトニーで確実にダメージを…」
セシリアとラウラがタッグを組んだ頃、授業を終えたシャルロットは整備室で作業をしていた。先日束から預かったパンドラの武装の再確認と的確な戦術の組み立てのためである。
シャル
「グラトニーやアンバーカーテンはラファールで使い慣れてるけど他の武装は全部初めてだからなぁ。おまけにほぼ全部前例の無い武器ばかりだから教科書も無い…。前は量産機の武器を使い回してたりしてたから比較的簡単な物が多かったし。…でも今回はパンドラの、僕だけの武器なんだよね」
シャルロットのIS、パンドラ・リヴァイヴの武装は全て魔具「パンドラ」に収納されていたもの。元々この世界に無い武器であるから教科書が無い事も仕方が無かった。故に最適な使い方は勉強かつ訓練を繰り返して覚えるしかない。
ガラッ
とそこに扉を開けて誰かが入ってきた。
鈴
「あれ?シャル。ここにいたのね」
それは鈴であった。
シャル
「やぁ鈴、お疲れ様。どうしたの?」
鈴
「特にこれと言った用事は無いんだけどね。あんたが見えなかったからなんとなく探してたの。……パンドラの勉強してたの?」
シャル
「うん。大会迄にタッグの相手も決めなきゃいけないけど…でもそれよりこっちを優先したくて」
鈴
「? それ逆じゃない?パンドラの勉強はタッグの相手を決めてからでもできるんじゃない?まずは相手を決めないと最悪出られないわよ?何せ参加者が少ないんだから」
シャル
「う~ん…そうなんだけどね。でも僕からしたらタッグマッチよりもこっちの方が大事なんだ。折角火影や束さんが僕のために造ってくれたんだもの。早く使いこなせる様になりたいから」
鈴
「ま~なんとなく気持ちわかるけどね~。でもちょっと休憩しない?多分だけど…あんた授業終わってからずっとでしょ?」
シャル
「あははは…、そうだね。わかった」
…………
屋上
その後ふたりは飲み物を買って屋上に来ていた。空はすっかりオレンジ色になっている。
シャル
「もうこんな時間になってたんだね。全然気付かなかったよ」
鈴
「やっぱりずっと整備室に籠ってたのね」
シャル
「……ねぇ鈴。この空の色、そしてこの場所。…思い出すね。この前の事」
シャルロットが言っているのはもちろん、先日あった火影と自分達の会話の事である。
鈴
「い、言わないでよ。意識しない様にしてたのに」
シャル
「ふふっ、ごめん。……ねぇ鈴。僕…あの時の火影の言葉、はっきり覚えてるよ。僕達を守りたいって。そして僕達を好きだって言ってくれた事。…僕嬉しかった。本当に嬉しかった。お母さんお父さんと仲直りできた事と同じ位。…ううん、正直もっと嬉しかった」
シャルロットは満足そうな表情で言った。
鈴
「…ええ、そうね。私も嬉しかったわ…。以前一夏の件で失恋しちゃったから余計にね。……でも今思えば…あの時、失恋して良かったのかもしれないと思ってる。結果論だけどね」
シャル
「えっ、どういう事?」
シャルロットは思わず驚きの声を上げる。今は火影を好いているとはいえ、鈴は前は一夏を一途に思っていた筈だったから。
鈴
「…あの件があったから…、火影に出会えたから…、私は自分の気持ちに正直になろう、強くなろうって思った。それでもやっぱり時間かかっちゃったけどね。告白したのもつい最近だったし。でも…火影は私の気持ちを受け入れてくれた。…好きって言ってくれた。…本当に涙が出る程嬉しかったわ」
シャル
「ふふっ。実際一番泣いてたじゃない」
鈴
「う、うっさいわね…」
シャルロットは鈴の言葉を笑みを浮かべて聞いていた。…しかし、
鈴
「…でも……だからこそちょっと怖い」
シャル
「…えっ?」
鈴の声色が変わり、怖いという言葉が出た事にシャルロットは再び驚いた。
鈴
「ほら、シャル。火影あの時言ってたでしょ?私達には話せない事があるって。そしてそれを話したら…一緒にいれなくなるかも…って」
シャル
「!」
シャルロットは思い出した。あの時火影は言っていた。自分達にはまだ話せない大事な話がある事。そしてそれを話したら自分達といられなくなるかもしれないと。今まで見たことが無い様な寂しい表情で。
鈴
「火影、そして海之もだけど…、多分何かしらの秘密があるって事は分かってたわ。千冬さんも束さんも言ってたけど…ふたりといいふたりのISといい、私達とどこか違うもの…。でも…それがわかったらふたりが、火影がいなくなっちゃうかもなんて事まで…想像してなかった…」
シャル
「…うん。…そうだね」
ふたりは同じ意見だった。そしてここにはいないが同じく火影が好きな本音も多分何かしら感じているに違いない。
鈴
「…だから怖いの。話してほしいとも思うけど……、それでもし本当に火影が…、いなくなっちゃったらと思うと……、凄く…怖い」
シャル
「…鈴」
鈴
「…ねぇシャル、あいついなくなっちゃったらどうしよう…。私、やっと自分の気持ちに…正直になれたのに。…誰よりも好きな人に出会えたのに。……好きって、言ってもらえたのに…」
不安を落ち着かせようとしているのか鈴は自身を抱き、俯いている。火影がいなくなるかもしれないと想像するだけで大きな不安に襲われていた。普段の彼女を知る者はきっと今の彼女を見たらとても驚く事だろう。一夏など病気を疑うかもしれない。それだけ今の彼女は弱々しく見えた。
スッ…
鈴
「!…シャル」
シャル
「……」
そんな鈴を落ち着かせるように、シャルロットが鈴を優しく抱きしめていた。
シャル
「大丈夫だよ…」
鈴
「えっ?」
シャル
「大丈夫だよ鈴。火影が鈴や本音や、僕達を置いてどこかに行っちゃう訳無いよ。火影も言ってたでしょ?もう勝手に行ったりしないって」
鈴
「…でも…」
シャル
「確かに火影はとんでもない無茶をする事はあるよ。…でも火影は何時でも僕達の事を考えてくれてるじゃない。そして何時でも余裕ある顔してるじゃない。それに前にレオナさんが火影達の家に来た時、言ってたでしょ?火影と海之は心配かける事はあっても誰かを悲しませたりする事は絶対しないって」
鈴
「……」
鈴は思い出していた。前に自分達がスメリアに滞在していた時、レオナが火影と海之の家に食事に来た時があった。そして火影と海之がちょうど席を外している時、彼女が自分達に言った言葉がある。
レオナ
(ひー坊とみー坊はいつも自分の事を疎かにするからね。きっと心配かけさせる事はざらにあると思う。…でも、あいつらは心配かける事はあっても悲しませる事はしない。それは断言できる。ましてや君達を悲しませるなんて絶対にしない。…だからふたりを信じてあげてくれ)
鈴
「……」
シャル
「鈴。火影を信じよう?…それにさ、もし勝手にどこかに行こうとしたら…その時は僕達で止めよう。力ずくでも。僕もそのためならリヴェンジでもアーギュメントでもなんでも使うから」
さり気無く恐ろしい事を言うシャルロット。
鈴
「……ふふっ、何それ。めちゃくちゃ怖いんだけど?……でもそうね、シャルの言う通りね。万一の時は無理やりにでも止めましょ!なんなら大泣きして訴えましょ!可愛い恋人候補達を置いてどっかいなくなっちゃうなんて許されるとでも思ってんの!?とかね♪」
シャル
「うん、そうだよ!それでこそ僕やみんなが知ってる鈴で…、僕の恋のライバルだ!」
どうやらシャルロットの言葉で鈴は元気を取り戻した様だ。そんなに鈴に対して彼女は言った。
シャル
「あっ、そうだ。すっかり忘れてた。ねぇ鈴、もしタッグマッチの相手が決まってないなら…僕と組まない?」
鈴
「…ふふっ、もちろんよ!宜しくね、シャル!」
シャル
「うん!」
色々あったが無事に鈴とシャルロットのタッグも完成し、無事に皆ペアが決定したのであった。
一夏と簪
箒と楯無
セシリアとラウラ
鈴とシャルロット
それぞれタッグ完成しました。
※また時間を頂きます。