IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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一夏は簪と、箒は簪の姉である楯無と組むことが決定した。
一方、一夏と組めなかったセシリアはラウラと訓練している中、自分が一夏達と差ができ始めているのではないかという不安をさらけ出す。しかしラウラはそれを否定し、一夏の力になりたいと思い続ける限りもっと強くなれると助言する。セシリアはラウラの言葉に感謝し、同時にタッグを申し入れた。
同じ頃、整備室でパンドラの勉強をしていたシャルロットは、鈴と屋上で先日の出来事を思い出していた。共に改めて火影への想いを口にするふたりは、火影の「話していない事がある。話したらいれなくなるかもしれない」という言葉が気になりながらも火影の傍から離れないと改めて約束し、こちらも同時にタッグが完成したのであった。


Mission115 その笑顔のために①

一夏達出場者のタッグ相手が全員無事に決まって数日が経った。この日は学生も勤め人も嬉しい日曜。趣味に没頭したり旅行に行ったりデートしたりと彼等の目的は様々。しかも今日は何かしらのイベントでもあるのか街も何時もよりかなり賑わっている感じがある。

そんな中、島のとある駅前の広場にふたりの少女の姿があった。ひとりはこの日海之とデートの約束をしている簪。デートなので何時もより着飾っている様子。そしてもうひとりは、

 

「………なんでラウラがここにいるのさ?」

ラウラ

「ふふん、私は海之の夫だぞ?嫁の日々の行動を知るのは立派な役目だ」

 

ラウラであった。しかも彼女も着飾っている。

 

ラウラ

「……と、いうのは冗談だ。実は先日本音が零したのを偶然聞いてしまったのだ。お前が海之をデートに誘った、とな」

(…本音~)

 

心の中で本音をほんの少しだけ恨む簪であった。

 

ラウラ

「本音を責めないでやってくれ。あいつも悪気は無かった筈なのだ。…ただ…、それを聞いて私も妙に落ち着かなくなってしまって。そわそわしてしまって。お前に悪いと思ったんだが……、私もどうしても海之と過ごしたかった…。…御免」

 

簪のデートの邪魔をしてしまった事にラウラも少なからず申し訳なさを感じている様である。そんなラウラに簪は、

 

「……はぁ~、…もう良いよ。本音に悪気が無いのも知ってるし、ラウラの気持ちも分かるし。それに私から誘ってなんだけど…海之くんとふたりきりで一日過ごすのは、まだちょっと緊張するだろうから」

 

勇気を出して自分から海之をデートに誘った簪だがやはりずっと緊張していた様である。

……とそこに当の海之がやってきた。

 

海之

「すまない。待たせたな」

 

海之は黒っぽい服に青い上着、ブーツに手袋という格好だ。

 

「あ、海之くん。ううん、あんまり待ってないから大丈夫だよ」

海之

「…ラウラ?」

ラウラ

「あ、あの…」

 

ラウラがどう言おうか考えていると、

 

「折角だからラウラも誘ったんだよ♪」

ラウラ

「!簪…」

 

ラウラの代わりに笑顔でそう答える簪。

 

海之

「ふむ、そうか」

「うん♪」

ラウラ

「あ、ああ!」

(…ありがとう簪。この礼は必ずする)

(良いよお礼なんて)

海之

「…ふたり共。その服良く似合っている」

「! ほ、本当?こんな格好あまりした事無いから…、嬉しい」

ラウラ

「…嫁に誉めてもらうのは何度でも嬉しいものだな」

 

服を褒められた事に嬉しがるふたり。

 

「海之くんはやっぱり青色が似合うね。カッコいいよ」

ラウラ

「そうだな。青が好きなのか?」

海之

「…まぁそういう事にしておこうか。さて、ふたり共どこか行きたい所はあるか?」

ラウラ

「私は後で構わん。簪、どうだ?」

「……じゃあちょっと行きたい所があるんだけど…良い?」

 

 

…………

 

海之

「…ここは以前一夏達と来たゲームセンターだな」

 

簪に案内されながら来たのは以前一夏達と遊びに来た巨大ゲームセンターだった。

※Extramission01をご覧ください。

 

ラウラ

「…休日にしても随分人が多いな。何かあるのか簪?」

「…うん。あれ」

 

そう言って簪が指さしたのは催し物を記した掲示板。そこには、

 

「歴代ロボットアニメ展!本日のみの限定商品解禁!長い歴史の中でチャンスは本日のみ!」

 

アニメ好きな簪にとってはまさに喉から手が出る程嬉しい企画である。

 

「ご、ごめんね。わざわざこんな所に付き合わせちゃって…」

海之

「気にしなくて良い」

ラウラ

「うむ。付き合うぞ簪」

「……ありがとう。じゃあ行こ!」

 

ふたりのその言葉に簪は安心した様だ。

 

 

…………

 

催しは建物の二階にあるイベントスペースで行われていた。やはり凄い人だかりだ。

 

「すごーい!あのキャラクターのフィギュア、レア物だ~!あっ!こっちにはあのロボットの超合金まである!」

 

簪は興奮冷めやらぬ様子だ。

 

ラウラ

「ふふっ、簪の奴凄く楽しそうだな」

海之

「部屋で様々なアニメを良く見ているからな」

「わーわー!……あっ!ご、御免なさい。また私」

海之

「気にするな。それより何か目当ての物はあるのか?」

「え、え~っと…確か今回あれが出品されてるんだけど…………あっ!あった!」

 

簪が指さしたのはあるロボットのフィギュアだった。かなりのレア物なのかケースに一体だけ入っている。

 

ラウラ

「…凄いな。これだけ特注の箱だ。価格も他より高い。しかもこれ一体だけと書いてある」

「当然だよ!何しろ本当にめったに出ない限定版なんだから!それに私の一番好きな作品なんだ!」

海之

「それで今日はこれを買うのか?」

 

海之はそう思ったが、

 

「…ううん。とてもじゃないけどちょっと買えない…。実物を見れただけでも十分だよ。それ位レアで大好きな作品だから…」

 

そう言う簪であったが諦めきれてないのは明らかであった。そんな簪にふたりは、

 

海之

「…不足額は幾らだ?出してやる」

ラウラ

「それなら私も出そう。軍からの給金も入ったからな」

「えっ!?そ、そんな良いよ!私が勝手に欲しいだけだから!…あっ!」

ラウラ

「ふふっ、やっぱり欲しいのではないか」

「……」

 

本音が出てしまった事に簪は恥ずかしくて赤くなる。

 

海之

「時には甘えても構わん」

ラウラ

「そうだぞ簪。ああ少し私が多めに払おう。先程の礼だ♪」

「…………ありがとう!」

 

簪はとても嬉しそうだった。

 

海之

「礼とは何のだ?」

ラウラ・簪

「「秘密だ(だよ)♪」

海之

「?」

 

 

…………

 

ロボット展を暫く見た後、ゲームセンターを出た海之達は街の中のとある店に来ていた。

 

海之

「ここかラウラ?」

ラウラ

「あ、ああ。このブティックだ。クラスの女子達が噂しててな。これからの季節のための服を見ておきたくて…」

 

以前海之に服を買ってもらって以来ラウラは身だしなみやファッションに気をかける様になっていた。第一の理由はもちろん海之に相応しい女の子になるため。改めて以前の彼女からすれば考えられない事である。

 

「じゃあ入ろっか」カランッ

 

三人は扉を開けて店に入った。すると店員らしい女性が話しかけてきた。

 

店員

「いらっしゃいませ。どういった御用件でしょうか?」

ラウラ

「あ、あの…その」

 

すると海之が割って入った。

 

海之

「すまないがふたりの服を見繕ってくれ。支払いは自分が」

簪・ラウラ

「「えっ!?」」

店員

「…ふふっ、かしこまりました」

 

そう言うと店員は慣れた手つきで服を選んでいく。

 

ラウラ

「み、海之!見るだけで良いと言った筈だぞ!」

「い、良いよ海之くん!私の分まで!」

海之

「気にするな。この際だ」

店員

「…用意できました。こちらへどうぞ」

 

そう言われてふたりは試着室に行く。その間海之はその場で待っていたのだが、

 

海之

(………やけに視線を感じるが気のせいか…?)

 

海之は気付いてなかった。自分が良い意味で他の女性客や店員の注目を集めている事に。

一方試着室のふたりは、

 

ラウラ

(これも良いが…もっと可愛らしい感じの物の方が良いだろうか…)

(…どんな感じの服なら…海之くんに可愛いって思ってもらえるかな…)

 

やがてふたりは試着室の幕をほんの少しだけ開けて、

 

店員

「如何でしょうか?」

 

するとふたりは揃ってこう言った。

 

簪・ラウラ

「「……その…もう少し…可愛いのがいいです(いいな)…」」

店員

「…ふふっ、かしこまりました♪」

 

赤い顔でそう言ったふたりの意図を汲んだらしい店員は嬉しそうだった。

 

 

…………

 

ブティックでの買い物を終えた海之達。すると、

 

海之

「…ふたり共。もし良ければ少し寄っていいか?駄目なら遠慮なく言ってくれて構わん」

「えっ?ううん、全然駄目じゃないよ」

ラウラ

「気にしなくて良いぞ海之」

海之

「…助かる。幸い直ぐ近くだ」

 

そう言って歩き出す三人。ほんの数分でたどり着いたのは一軒の家だった。

 

「…海之くん、ここは?」

海之

「今に分かる」

 

そう言って海之は家のチャイムを鳴らす。…少し経つとインターホンからではなく直接扉が開いた。すると、

 

 

「ワンッ!」

 

 

玄関から一匹の犬が飛び出してきた。

 

ラウラ

「わっ!」

「驚いた…。可愛いね」

海之

「……」

「ワンワンッ!」

 

まだ幼く見えるその犬はずっと海之の足元に付いている。やがて玄関から、ひとりの男の子と母親らしい女性が出てきた。

 

子供

「こらライフ!また…あっ、お兄ちゃん!」

母親

「まぁまぁ。お久しぶりです」

海之

「…ええ。元気そうですね」

男の子

「もちろんだよ!…でもちょっと悪戯好きになっちゃって困ってるんだよ~」

ラウラ

「…海之、この人達は?」

海之

「俺が以前散歩の時に出会ったのだ。…少し訳ありでな」

子供

「凄いんだよお兄ちゃんは!僕とライフの命を救ってくれたんだ!」

「……えっ?」

ラウラ

「君とこの犬の命を…?」

母親

「数日前の事です。ある御休みの日に私達がライフを散歩させていた際、途中でライフが急に走り出して、その時この子が謝ってライフの手綱を放してしまって…」

子供

「僕も直ぐに追いかけてなんとか追いついたんだけど、気付いたら道路に出てて…。そしたらその横をトラックが走って来たんだ」

簪・ラウラ

「「!!」」

 

話の内容に驚くふたり。

 

子供

「その時に助けてくれたのがお兄ちゃんなんだ。凄かったんだよ!道路の反対側から走って来て僕とライフを抱えて助けてくれたんだ!」

母親

「本当にあの時はありがとうございました。なんと感謝して良いか…」

海之

「気にしないでください」

「…やっぱり海之くんはヒーローだね」

ラウラ

「夫として誇らしいぞ」

 

海之を見つめながらそう話すふたり。そんなふたりに男の子が話しかける。

 

子供

「ねぇ、お姉ちゃん達お兄ちゃんの彼女~?」

「えっ!?」

ラウラ

「なっ!?」

母親

「こら!なんて事言うのこの子は!」

海之

「……」

「……ワンッ!」

 

 

…………

 

ちょっとした騒動も終わり、時間は昼をほんの少し過ぎた頃。海之達は昼食をとろうと海之の案内でとある日本料理店にいた。奥座敷で一息つく三人。

 

「あれ?メニューはないのかな?」

海之

「ああ、ここは主がその日仕入れた食材で料理を考えるのだ。故に決まった品書きは無い。苦手な物があれば言え」

ラウラ

「私は特に好き嫌いは無いから大丈夫だ」

「私も。…小さいけど立派なお店だね。どうやって知ったの?」

海之

「全くの偶然だ。ここの主曰く、どうも俺と火影に対して借りがあるらしくてな」

「海之くんと火影くんに?」

ラウラ

「借りとはどういったものだ?」

 

ふたりの質問に海之は答える。

 

海之

「当時ふたりもいたが…、以前俺と火影が良く行く喫茶店に強盗が乱入してきた時があったろう?覚えていないか?」

※Mission53をご覧ください。

ラウラ

「…あああの時か。良く覚えているぞ」

「あの時はふたりのおかげでみんな助かったね。それで?」

海之

「その時ちょうど店内の別の席にここの主の娘と孫がいたらしくてな。あの事件の後、話を聞いた主がマスターに俺と火影の事を訪ねてきたらしい。そしたら後日呼ばれてな、感謝と共に言われたのだ。何時でも店に来てくれ、俺達及び関係者は生涯サービスさせてもらうから、とな」

「そうだったんだ…。凄い偶然だね」

ラウラ

「うむ。しかしふたりだけでなく私達まで生涯サービスするとは…、余程感謝していたのだろうな」

海之

「大した事をしたつもりはない。それにお前達が無事だったならそれで良い」

簪・ラウラ

「「!…海之(くん)…」」

 

海之は何時もの彼らしい涼しい顔でそう言った。ふたりは海之の言葉を嬉しく思いつつ、運ばれてきた食事に箸を付けるのであった…。




次回に続きます。

この度章分けしました。
火影と海之には実家からのものだけでなく、レオナからも小遣いを頂いている設定です。一応ふたりはまだ高校生ですから。
あと海之の動物好きという設定をようやく出せました。

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