IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
「…ヒック、グスッ…」
あれからしばらく束は泣き続けてやっと落ち着いてきた。彼女が泣いている間は本当に大変だった。父さんと母さんの名前を叫びながら謝ったり、僕たちの名前を呼びながらぎゅうぎゅう抱き締めたり、クロエがその度に束をあやしたりしていた。
「落ち着いたか?」
「……うん。ありがと。もう大丈夫。ふたりもクーちゃんもほんとにゴメンね」
「気にするな。多少驚いたが」
「私も驚きました。でも少し良かったです。束様の意外な一面を知る事もできましたし♪写真撮っておいて良かったです♪」
「えっ!クーちゃん写真撮ってたの?!」
私は超焦った!あんなの記録されたら!
「撮ってません。冗談です♪」
「! もうやめてよクーちゃん~」
~~~
またみんなで笑った。
そうしてる中で火影は束に聞きたい事があった事をすっかり忘れていたのを思い出して聞いてみる事にした。
「なぁ束さん。今さらなんだけどなんでこの飛行機あんな大事故起こしたのに今も問題なく飛べてるんだ?大した修理もしてないのにさ」
「あぁそういえばまだ説明してなかったねひーくん。あれはフェイク、ニセモノなんだよ。言ってみれば3D映像と束さん特性のでっかい蚊取り線香が燃えただけ♪」
「…なんだそのひーくんって?」
「火影くんだからひーくんなんだよ。因みに海之くんはみーくんね。今後はそう呼ぶからね♪これってスッゴい名誉な事なんだよ!君たちも遠慮なく呼ばせてくれたまえ!」
((ハァ…))
すっかり元に戻った彼女に安心した反面火影らは心の中でため息を吐いた。
「話を戻そう。あの事故はフェイクだと言った。何故そんな事を?」
「それは勿論君たち、いや正確には君たちのISに会いたかったからだよ♪」
「…アリギエルとウェルギエルの事か?」
「アリギエルとウェルギエル?そういう名前なんだね!まぁとにかくあのISに会いたかったんだよ。この束さんが知らないISなんてあるはずないと思ってたからね。でもどこから来るのかわからなかったし、普通のやり方では出会えそうもない。そこであの航空機墜落未遂事故を思い出したんだ。あの飛行機と全く同じ時間に全く同じルートで全く同じ事故を再現すればいつか出会えるんじゃないかって。ほとんど賭けみたいなものだったけどでももう出会えるなんて私って運が良い~♪でもまさか双子のISだったなんて!しかも操縦者がどちらも男だったなんて!流石の束さんも驚きのハーモニーだよ♪」
束のマシンガントークも復活したようだ。
「……会ってどうする?奪うつもりだったか?」
この女の事だからそれ位の事はしたがるだろう。本来ISは国が所有・管理するが俺たちの機体は父の会社の功績から特例として俺たちの所有物として認められている。だから俺たちの意思で使う事ができるし、受け渡しもできる。まあ勿論渡すつもりは無いがな。
「そうしたかったんだけど……止めた!」
「え?」
「どうしてですか束様?あんなに喉から手が出るほど欲しがってましたのに?」
意外な答えに束以外のみんなが驚いた。
「うん、最初は勿論そのつもりだったんだけどね…。束さんならそんな事わけないし。でもあの子たちの操縦者がひーくんとみーくんとわかって、なんでかその気急降下?あとアルティスさんたちの話聞いたら更に自由落下?まぁとにかくそんな気分になったわけ。だからふたりが話してくれる様になるまで待つのも良いかなと思って。それにこの子達なら間違ってもあの子たちを悪い事に使ったりしないだろうしね」
「…束さん…」
「……」
「束様…」
思いもよらない束さんの言葉に三人は少し感動しかけた。が…、
「まぁ細かく調べられなくても大まかならいくらでも調べられるからね~♪」
「「「…ハァ」」」
束以外のみんなは前言撤回した。
「……その代わりといってはなんなんだけど…、ひーくんとみーくんにひとつお願いがあるの」
束さんは突然火影と海之に提案してきた。
「なんだ?」
「君たちIS学園って知ってる?」
「あぁ、ISを動かせる人のためにISを学ぶために造られた日本にある学校……まさか」
「ど、どうした海之」
海之はいきなり理解した様だ。そして海之は答えた。
「この人…俺たちにIS学園に行けと言いたいんだ」
「へっ?」
火影は自分の耳を疑った。しかし海之は嘘を言う様な男ではない。
「ピンポーン!大正解!いやみーくん頭良いね♪その通り!君たちにIS学園に行ってほしいんだよ!知ってるかもしれないけどISは本来女性にしか動かせない。男性しかも双子の男性操縦者なんて世界からしたら超超レア物なんだよ!!君たちも多分大丈夫とは思うけど今後どうなるかわからない。世界は君たちみたいな良い子ばかりじゃないからね!あ、束さんも一緒か♪まあ君たちを守るという意味でも行ってほしいんだよ!それにIS学園は生徒の人権も最大レベルで保証されてるからね!ましてや君たちスメリアでしょ?二重の意味で安心!ブイブイ!あっ、そうだ!なんなら今からでも転校届けを!」
返事を聞く暇もなく束は電話を手に取ろうとする。
「ちょ、ちょっと待て!僕たちまだ行くなんて一言も行ってねぇし!僕たちもう高校行ってるし!もっと言えば行く理由が0だし!」
「ああ。それにISを動かせる男性操縦者はまだいるだろう?織斑一夏、あの世界一のIS操縦者、織斑千冬の弟が。そちらの方が俺たちよりよほど貴重だと思うが」
そう、実は例外はふたりが初めてではない。織斑一夏。世界一のIS操縦者でありブリュンヒルデと呼ばれる生きる伝説、織斑千冬の弟。彼もまたISを動かせる男である。彼は本来別の学校を受けるつもりだったが、誤ってIS学園の試験会場に入ってしまい、そこに置かれていたISを偶然にも動かしてしまったのだ。これは世界的トップニュースして取り上げられ、瞬く間に彼の名前は世界中に知られてしまった。彼の身を案じた姉千冬はその後、IS学園に彼を転入させることを決めたのである。
「世界初の男性操縦者の織斑一夏。しかもその姉の織斑千冬は生きる伝説。これほどの貴重な存在はそうそういないだろう。そんな所に俺たちが行って更に余計な混乱を招きたくない。それにあんたも言ったが一応俺たちには国の後ろ盾もある。安全は問題無い」
海之の言葉に火影も同意した。すると束はやや真剣な表情で答えた。
「うん、だからこそ君達に行ってほしいんだよ」
「…というと?」
「実は…織斑一夏と織斑千冬は私の幼馴染なんだ。束さんはいっくん、ちーちゃんと呼んでる。今回の件でいっくんはきっと世界中から注目される。良い意味でも悪い意味でもね。でも候補生でも代表でもないいっくんには君達の様な国の後ろ盾もない。どちらかといえば国の宣伝、研究材料として利用されると思う。ちーちゃんは確かにいっくんのお姉さんだけど、ブリュンヒルデという立場的な問題もある。いわばこれは君達にふたりを守ってほしいという束さんとしてのお願いも含まれているかな」
「……」
「それにもうひとつあります。実は今年束様の妹の箒様がIS学園に入学する事になっているんです。ですが束様は白騎士事件からあまり箒様と交流できず、いえ正確には箒様が束様を避ける様になってしまいました。束様はそれに苦しんでおられます。表には決して出しませんけどね。でも束様にとっては数少ないお友だちとご家族ですから」
「…だから代わりに僕達に傍にいて守ってほしいと?」
「私はそう思います。私からもお願いします。束様の願い、引き受けて頂けませんか?」
「……」
世界初の男性IS操縦者の織斑一夏。
その姉でありブリュンヒルデでもある織斑千冬。
ISの生みの親である篠ノ之束。
その妹の箒という女性。
一夜にしてこれ程多くの存在を知ってしまったのはなにかの運命か。それとも神の悪戯か。
本当なら関わらない方が良いのかも知れない。転生者である自分たちはおそらくこの世にいない筈の人間だ。そんな自分たちが表舞台に立ったら思わぬ弊害が出るかもしれないのだから。
…だがこの世に自分達を転生したあの少女の言葉を思い出してしまう。
(…みんなを守ってほしい。あなたたちなら…)
……暫くの考慮の後、火影は口を開いた。
束の願いに対して火影・海之の出した答えは!?