IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
…数刻後、当のオ―ガスは戻ってきたスコールからデータを受け取るとディスプレイに浮かぶ二体の機体を見ながら言った。
「…次は私自らが会うとしよう…。土産も添えてな…」
※また時間を頂きます。
IS学園 医務室
全てが終わった後、医務室には簪を庇って負傷した楯無が運び込まれていた。幸い気絶したり何日も治療が必要な程の怪我ではなかった様で、今は一夏と箒、そして簪が付いていた。
箒
「楯無さん、本当に大丈夫ですか?」
楯無
「大丈夫よ。先生も言っていたでしょ?目立った傷も無いし、こうして寝てるのも念のためで明後日にはもう通学しても大丈夫って」
箒
「ええ、それはわかってるんですが…楯無さんの場合そう言ってふざけてはぐらかす癖がありますから」
楯無
「心配してるのかけなしてるのかどっち~?」
簪
「……」
一夏
「…すいません楯無さん。俺があの時しっかり仕留めていれば」
楯無
「気にしなくて良いわよ一夏くん。あの時確かに一瞬反応が消えたんだから誰だって仕留めたって思うわよ。それにあの後しっかり倒してくれたじゃない。ありがとね♪」
一夏
「…でも火影達ならこんなミスはしないでしょうし…」
箒
「一夏、そう自分を責めるな。次への反省にすれば良い」
楯無
「そういう事よ一夏くん。過ちをただ否定的に捉えて自分を責めるのは止めなさい。何も生み出しはしないわ」
一夏
「……」
ガラッ
扉が開き、入ってきたのは火影と海之だった。
簪
「…あっ、海之くん、火影くん」
楯無
「あらふたりとも、もしかしてお見舞いに来てくれたの?」
海之
「ええ。…先生から話は聞きました。大丈夫ですか?」
楯無
「大丈夫よ。これでもロシア代表よ。それ程柔じゃないわ。先生が大袈裟に伝えてるだけだから」
扇子
(問題無!)
そんな彼女の調子を見て取り合えず安心したふたり。すると、
火影
「…みんな、本当にすまねぇ。折角お前らが真剣なケンカをしようとしてたってのに。…俺達がもっと注意していれば」
海之
「ああその通りだ。もっと俺達が気を配っていればお前達の勝負を邪魔される事も楯無さんが余計な傷を受ける事も無かった…。すまない」
そう言って深々と頭を下げる火影と海之。
一夏
「い、いやお前らが謝る必要なんてねぇって!」
箒
「そうだぞふたり共!ふたりがいてくれなければもっと被害が出ていたのだ!ふたりが謝る必要なんて微塵も無い!」
簪
「お願いだから頭を上げてふたり共!」
一夏達は必死でふたりを庇う。
火影
「しかし折角お前ら頑張ってたってのに…」
楯無
「火影くん。真剣勝負なんて何時でもやり直しできるわ。でも命にやり直しはできない。ふたりは私達や生徒達を救ってくれたのよ?この子達の言葉がそれを証明してる。だから自分達が悪いなんて考えるのは止めなさい。それは却ってこの子達に悪いわよ?」
簪
「そうだよ。それに私達が戦っている時もふたりは助けてくれてたじゃない。だからそんな風に思わないで。…お願いだから」
簪は海之の手を取って伝える。
一夏
「まぁそういう事だ。寧ろ俺達が礼を言わなきゃなんねぇさ」
箒
「その通りだ。ありがとうふたり共」
火影
「……ありがとよ、皆」
海之
「…すまない」
楯無
「海之くん、そこは「ありがとう」でしょ?」
海之
「……ありがとう」
一夏や楯無達の言葉に火影と海之は感謝した。
楯無
「…さて、じゃあ私は少し寝ようかしら。これでも一応今日明日は怪我人らしくしてないとダメだからね。私でも織斑先生のお説教は勘弁してほしいし♪」
一夏
「ははっ、違いないですね。じゃあ俺達は帰ります」
箒
「では失礼します。お大事になさって下さい」
簪
「私も」
するとそこに海之が入る。
海之
「簪、試合が終わったら楯無さんに言いたい事があったのだろう?」
楯無
「…えっ?」
簪
「へっ!?」
火影
「…ああそうだったな。俺達は先に行ってるぜ」
箒
「…うむ!ではな簪。ほら一夏、行くぞ」
火影と箒は少なからず気付いた様だ。
一夏
「…? まぁいいか。じゃあ簪、後でな」
そう言って皆出て行った。残ったのは刀奈と簪だけだ。
※ふたりきりなので刀奈とします。
刀奈
「……」
簪
「…え、えっと…」
暫し沈黙が流れる…。すると、
刀奈
「…簪ちゃん。ちょっとお話しない?…簪ちゃんさえ良かったらだけど」
簪
「えっ、……う、うん」
簪は刀奈の直ぐ傍に移る。…しかしそれでもふたりきりになるのが久しぶりな事もあってか、妙に緊張して何を話したら良いのか分からず困っていた。
簪
「……」
刀奈
「…ねぇ簪ちゃん」
簪
「…えっ?」
刀奈
「私、海之くんの事好きになっちゃった」
簪
「…………………………ふぇ!?」
予想外の告白に思わずうろたえる簪。すると、
刀奈
「…ぷっ、あはははは!」
突然大笑いしだす刀奈。
簪
「お、お姉ちゃん!?」
刀奈
「あははは…御免御免、まさかそんなにうろたえるなんて!あははは」
どうやら先程の告白は簪をからかうためにやった様だった。
簪
「も、もうお姉ちゃん!何言ってるのこんな時に!」
刀奈
「だから御免なさいってば♪でも少しは緊張ほぐれた?」
簪
「……ほぐれたも何も吹き飛んじゃったよ。…もう」
刀奈
「それは良かった♪…でもあんな冗談丸出しの告白であそこまで焦るなんて。よっぽど海之くんの事が好きなのねぇ♪」
簪
「……うぅ」
実際間違ってはいないので言い返せない簪。
刀奈
「……簪ちゃん。さっきは守ってくれてありがとうね」
簪
「…えっ?」
刀奈
「ほら、私が一夏くんを助けた時にレーザーに撃たれそうになった時守ってくれたじゃない?ありがとうね」
簪
「う、ううん、大した事はしてないよ。…それにそれを言うならお姉ちゃんの方が私を守ってくれたし。…でもそのためにお姉ちゃん怪我しちゃって…、ごめんなさい」
簪は自分のせいで刀奈が怪我してしまったと落ち込んでいる様だ。そんな彼女に対して、
刀奈
「…当たり前でしょう?大事な妹なんだから」
簪
「…え」
その言葉に簪は少し動揺していた。
刀奈
「良い簪ちゃん?簪ちゃんは私の妹。この世でたったひとりだけの大事な妹なのよ。守りたいと思うのは当たり前じゃない。この傷も妹を守れた言わば名誉の負傷なの。決して無念とかそんな風に思ってないわ」
簪
「……」
刀奈
「簪ちゃん、例え簪ちゃんが私をどういう風に思っていても、…例え嫌っているとしても、それでも良い。簪ちゃんが毎日元気でいてくれたら…私は幸せなの。どうかそれだけは信じてほしい…」
簪
「…お姉ちゃん」
刀奈は今まで伝えたくても伝えられなかった気持ちを簪に話した。そしてそれを聞いた簪の心に先程海之から言われた言葉が浮かんだ…。
…………
それは試合前、海之が簪と一夏の元を訪れていた時だった。
簪
(……ありがとう海之くん。…もう大丈夫)
海之
(そうか)
そう言われて海之は簪から離れる。すると、
海之
(…簪、今回の件が終わったら…刀奈さんとちゃんと話せ。勝敗に関わらずな)
簪
(…えっ?)
海之
(今のお前はもう昔のお前では無い筈だ。関わろうとしなかった一夏とこうしてタッグを組み、刀奈さんとも正面から向き合おうとしている。お前は強くなった。…もう大丈夫だ)
簪
(…海之くん…)
海之
(溜めこんだものを吐き出せ。心を伝えるんだ)
…………
簪
「……ねぇ、お姉ちゃん」
刀奈
「何?」
簪
「……少し、私のお話、聞いてもらっても良い?」
刀奈
「…勿論」
やがて簪はゆっくり話始めた。
簪
「……正直に言うね。……私、お姉ちゃんの事…羨ましかった」
刀奈
「…羨ましい?私が?」
簪
「…うん。…私とほんの一年しか違わないのに…ロシアの国家代表にまで上り詰めて、ひとりでISを組み立てて、頭も良くて、本当に私に無いものを全て持っていた様な気がして…」
刀奈
「…そんな事…。それに私のISは…」
簪
「…うん、わかってる。…でも前の私は…そんな風に考える余裕無かったから。私の専用機の事もあったし…。…正直、なんでこんな家に生まれてしまったんだろうって思った事もあった。完璧なお姉ちゃんがいるのに…なんで更識の妹として生まれてしまったんだろうって。双子じゃないけど、優性と劣性、どちらもいなきゃいけないのかなって…」
刀奈
「…そ、そんな事!」
簪
「大丈夫、今はそんな風に思ってないから安心して?昔の話。……だから私、とにかく頑張ろうって思った。企業から弐式の権利を買い取って、ひとりでイチから全部やって、ひとりで完成させて証明したかった。私でもできるんだって。…お姉ちゃんに…負けないって」
刀奈
「……」
刀奈は只黙って聞いていた。
簪
「…でも…ダメだった。私だけじゃ…何もできなかった。皆が、海之くんがいなきゃ…何にもできなかった…。弐式の完成も…みんなと並んで戦う事も…一夏くんとタッグを組もうとも…お姉ちゃんと真っ向から戦おうって思う事も…何もできていなかった。それどころか…お姉ちゃんに怪我までさせちゃって…。…御免なさい。…御免…なさい」
簪は涙を流し始めた。すると、
スッ…
簪
「!」
刀奈
「……」
刀奈は簪を抱きしめていた。
簪
「…おねえ…ちゃん」
刀奈
「御免ね」
簪
「…えっ?」
刀奈
「御免ね。…簪ちゃんがそんなに思い詰めていたなんて考えて無かった。…自分を劣性とまで思っていたなんて」
簪
「……お姉ちゃん。それは昔の」
刀奈
「昔の話でもよ。……御免ね、……本当に御免ね」
簪
「……」
見ると刀奈もうっすら涙を浮かべている。簪はそんな刀奈の背中に手を回し、
簪
「…お姉ちゃん」
刀奈
「…何?」
簪
「…さっきお姉ちゃんが私を庇ってくれた時、…私、はっきりわかった。……私は、お姉ちゃんがいなきゃダメなんだって。お姉ちゃんがいてくれなきゃダメなんだって。…お姉ちゃんがいなくなったら…ダメなんだって…」
それは簪の本心だった。そして刀奈も、
刀奈
「…バカねぇ簪ちゃん。そんなの…私も当たり前じゃない。私も簪ちゃんがいなきゃダメなのよ。多分、いえ、きっと簪ちゃんよりもずっと…」
簪
「!…………うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
簪の目から大量の涙が溢れ出た。刀奈はそんな彼女を優しく抱きしめ続けた。
…………
……その時部屋の外では、
虚・本音
「「………」」
見舞いに来ようとしていた虚と本音がいた。
虚
(…本音ちゃん)
本音
(うん、分かってるよお姉ちゃん。今はふたりきりにしてあげよ♪)
虚
(…ようやくおふたりの時間が進みそうね)
本音
(ちょっぴり時間はかかったけどね~。…でもやっぱり姉妹だね~。本当はお互い大切に思っていたのにね~)
虚
(…そうね。ある意味似た者同士ね。…さぁ、邪魔者は去りましょうか)
本音
(そうだね~。っあ、そうだ!)
ギュッ
本音はそう言うと虚の左腕に抱きついた。
虚
(ちょ、どうしたの?)
本音
(ただお姉ちゃんに甘えたいだけ~)
虚
(……ふふ)
ふたりはそっと医務室の前から離れた…。
…………
その頃、火影達は食堂に集まり、彼女達の事情を皆に話した。
鈴
「……そっか、あのふたりそんな事があったのね」
セシリア
「簪さんが随分気合い入っていたのはそういう理由があったんですのね。知りませんでしたわ」
一夏
「俺も火影達から教わって初めて知ったんだ」
火影
「つっても俺も知ったのは最近だけどな」
箒
「一夏とタッグを組んだのもそういう理由だったわけだな。…す、すまん一夏、そうとは知らずにあの時」
一夏
「ああそれはもう良いって。…かなり恐かったけど」
セシリア
「ほ、本当にすいませんでした一夏さん」
シャル
「…でも大丈夫かな簪。ちゃんと気持ち伝えられてるかな?」
海之
「…大丈夫だ。きっとな」
ラウラ
「ああ。あいつは、簪は心配するほど弱くない。海之の言う通りきっと大丈夫だ」
その言葉に皆頷く。
鈴
「…ああそうだ火影。全然関係ない話なんだけど…、あんたさっき私達を助けてくれた時、私達に謝ってたよね?アレってなんで?」
シャル
「…そういえばそんな事あった気がする」
ふたりはあの時の火影の「悪い」という言葉が気になっていたので聞いてみる事にした。
火影
「…ああそれはな…、守り切れなかった事に謝ったんだよ」
ラウラ
「? どう言う事だ。お前も海之も私達を守り切ってくれたではないか?私達だけじゃない、生徒も観客も」
他の皆も同意している。
海之
「…いや、俺達はお前達の勝負を守り切れなかった。お前達の頑張りを、意気込みを無駄にしてしまった」
火影
「ああそうだ。地下から来る事を想像していなかったのは俺達のミスだ。そのせいで楯無さんまで怪我してしまった。…悪い」
ふたりは再度謝った。そんなふたりに皆は、
シャル
「…はぁ、もう何言ってんのさふたり共。ふたりがいてくれたから僕達みんな助かったんだよ?ふたりがいなきゃあんな数の敵、とてもなんとかできなかったし、ファントムも倒せなかったかもしれない。だから全くそんな風に考えないで?」
セシリア
「そうですわ。おふたりがいてくれなければ間違いなくもっと多くの被害が出ていましたわ。下手すれば死傷者まで出ていたかもしれません。おふたりが責めを感じる必要なんて全くございませんわよ」
ラウラ
「そうだぞ。寧ろ感謝してもしきれん。私達だけでは皆を守りきる事はできなかった。ファントムを倒すだけで手一杯だったろう。あの時あの場にいた命を守ったのは間違いなくお前達だ。何、勝負なんて何時でもできるさ」
鈴
「アンタ達が責任を感じやすい性格っていうのは知っていたけど…、まさかここまでなんてね。火影も海之も、そんな風に考えるのは止めなさい。私達皆アンタ達に感謝してるんだから。ね?」
そう言って鈴は手を火影の肩に置く。
箒
「はは、やられたなふたり共」
一夏
「そういうこった。ふたり共全然気にすんな」
火影
「…ありがとよ」
海之
「…すま、…いや、ありがとうか」
彼等の言葉に感謝するふたりだった。
一夏
(…でもやっぱり凄ぇなぁふたり共。たったふたりであれだけの敵を倒して皆を守り切った。……俺にもふたりみたいな力があればなぁ…)
火影
「…さて、もう今日は代休らしいし夜までまだ時間あるし、久々にあの店のストロベリーサンデー食いに行くか」
シャル
「あ、僕も行く」
鈴
「じゃあ皆で行きましょ」
箒
「一夏、行くぞ」
一夏
「お、おう!」
おまけ
その頃、医務室の簪と刀奈は、
刀奈
「じゃあ私は今度こそ少し眠るわね。これでも一応怪我人だから」
簪
「あ、うん。じゃあ私は帰るね。また明日来るよ」
そう言って簪が帰ろうとすると、
刀奈
「あっそうだ簪ちゃん。簪ちゃんが一夏くんとタッグを組んだのって…やっぱり海之くんの後押し?」
簪
「…えっ、…うん、そう。海之くんが応援してくれたの。お姉ちゃんと話す勇気が持てたのも海之くんのおかげ」
刀奈
「そっか~。やっぱり旦那の言葉は勇気が湧くのね~♪」
刀奈は笑いながらそう言った。
簪
「!!ななな何言ってるの!?私と海之くんはまだ…」
刀奈
「まだ~?」
簪
「!だ、だからそうじゃなくって…、も、もうお姉ちゃん!早く寝て!怪我人でしょ!」
刀奈
「はいはい♪…でも困ったわね~、この歳でまだ叔母さんになるのは早すぎだわ~♪」
簪
「…? お、叔母さんってそれ……!!!…もう知らない!!」
簪は真っ赤になって帰路に就くのであった。