IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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ファントム・タスクの拠点ではMやスコールが自身のISの改造を完了させていた。そしてオ―ガスは自身の研究室で何やら作業を行っていたが、その完成のためには特別なコアが必要だという。しかしコアを造れるのはISの生みの親である束のみ。どうしたものかと考えていると謎の声が何やら提言するのだった…。

一方その頃、束はクロエと共に何やら作業を行っていた。束はクロエに全てが終わったら今度こそ自分は夢に向かって正しく向かう事を誓い、クロエもそれを支えると約束した。…その夜、束はあるメールを見て不気味に笑っていた。まるで物凄く面白い物を見つけた子供の様に…。

※次回来週です。


Mission127 感謝の心はお互いに

キーンコーンカーンコーン

 

 

IS学園 屋上

 

この日は11月6日。放課後、一夏に誘われて火影と海之以外のメンバーがここにいた。何故ふたりがいないのかと言うと一夏がここに集まる事を知らせていなかったからだ。その訳は、

 

シャル

「…感謝会?」

セシリア

「火影さんと海之さんにですか?」

一夏

「ああ。俺達日頃火影と海之には世話になってるだろ?訓練なり勉強なり。おまけにトーナメントの時も守ってもらったし。そのお礼も兼ねてやってみないか?っていう話」

「だからふたりは今この場にいないのか」

一夏

「どうせなら秘密にして驚かしたいだろ?…でどうだ?」

 

一夏からの突然の提案に皆は、

 

本音

「私サンセイ~!ひかりんとみうみうにお礼伝えた~い!」

「…そうね。私も賛成。今まで火影達には色々な事で驚かされっぱなしだし、たまには私達が驚かせるのも一興ね♪」

「そ、そんな深い意味はないと思うけど…。でも、私もやりたいな。海之くんにも火影くんにもいつもしてもらってばかりだったし」

「私もトムガールのお礼がしたいと思っていたしな。やってやるか♪」

シャル

「うん、僕も賛成だよ!」

ラウラ

「ああそうだな。夫として嫁を、姉として弟を気遣ってやろう」

セシリア

「私も賛成ですわ。これまでの御恩、おふたりに御返ししたいですから」

楯無

「皆やる気ね~。面白そうだから私も協力するわ♪」

 

こうして火影と海之への感謝会開催が決定した。

 

「…で、どういう事をするつもりだ一夏?」

一夏

「う~ん、最初は以前俺達がやった様な労い会みたいな形でと思ったんだけど…、でも料理に関してはここにいる大半のメンバーはふたりに敵わねぇだろ?」

セシリア

「う…、否定できませんのが辛いですわ」

ラウラ

「まぁここにいる中では……一夏と鈴位だろうな」

「確かに料理なら自信あるけど…あと箒も十分上手いじゃん」

楯無

「じゃあ旅行にでも行ってもらう?私達皆でお金出しあって~」

「そ、そういうのはちょっと違うと思う…」

本音

「う~ん、どんなものがいいのかな~」

シャル

「じゃあプレゼントとかってどう?僕達ひとりひとりからさ?」

ラウラ

「…そうだな。物によっては形に残るし、少なくとも驚かせられる事は違いない」

セシリア

「ええ、確かに良いかも知れませんわね」

一夏

「じゃあ皆それぞれふたりにプレゼントを渡すって感じで良いか!」

 

ふたりへの感謝会はプレゼント譲渡会に決まった。

 

「…でもプレゼントといっても何を贈ってあげたら良いんだろう?海之くん何か欲しいものがあるとか聞いた事ないや…」

本音

「みうみうも~?ひかりんもそうなんだよ~」

セシリア

「一緒のお部屋のおふたりもご存知ないんですの?」

シャル

「一夏はどう?ふたりとそんな会話した事ない?」

一夏

「……うーん言われてみれば俺も無いかも」

「確かに聞いた事ないわね…。というのもあのふたりって全くと言って良い位欲が無いのよね~」

「そうだな。いつも私達に与えてくれるばかりで…」

楯無

「まぁでも実家があのエヴァンス家だから大抵の物はあるだろうけどね~。そう考えるとプレゼントも難しいわね…」

ラウラ

「しかしプレゼントは気持ち、と聞いた事があります。気持ちを込めれば例え大した事ないものでも嬉しいんじゃないでしょうか?」

「め、珍しくラウラが正論言ってる…!」

楯無

「う~んそれもそうね~。プレゼントと言えばお誕生日とかだけど…みんなどう?ふたりは何かくれたりした?参考に聞いときたいんだけど」

本音

「したよー。ひかりんはバースデーケーキを焼いてくれて、みうみうはその時その時の旬の果物をくれるんだ~。しかも凄く高いんだよー!私はさくらんぼだった~!」

一夏

「そう言えば俺は誕生日無花果貰ったな。めちゃくちゃ旨かったからあっという間に食っちまったぜ」

「私の時はマンゴーだったな」

シャル

「料理と果物…、ふたりの得意分野だね」

「ねぇ~、もうそれぞれが自信ある物で良いんじゃない~?誕生日って訳じゃないんだからさ?ラウラじゃないけどプレゼントは気持ちとも言うし」

「…そうだね。意見が同じだとプレゼントが被ってしまう可能性もあるもんね」

一夏

「よし!じゃあ一週間で考えようぜ。開催はその日の放課後って事で良いか?」

全員

「「「りょ~かい!!」」」

 

こうしてふたりへのプレゼント譲渡会は一週間後の11月13日に決まったのであった。

……ただひとつ心配ごとが。

 

楯無

「ねぇ本音~?口が滑ってふたりにばらしたらダメよ~?」

本音

「なんで私だけ~!?」

 

皆、本音の口の軽さを心配していた。本音は反論するが、

 

鈴・シャル

「「…お嫁さんの想像…」」

「…海之くんとのデート…」

本音

「…………気を付けます~」

 

何も言い返せなかった…。

 

 

…………

 

そして一週間が経ち、予定されていた11月13日となった。放課後、火影と海之は一夏に呼ばれて寮のとある部屋に向かっていた。

 

火影

「なんだろうな一夏の奴。俺達に話があるって。話なら食堂とか教室で話しゃ良いのに。他の奴に聞かれたくない話なんだろか?」

海之

「行けばわかるだろう」

火影

「…もしかして箒とセシリア。あっ、今は刀奈さんもか。皆の気持ちに気付いてどうすれば良いかの相談か!?やっと気付いたかあいつも!!」

海之

「どうだかな。可能性は低いぞ?」

火影

「…………だよなぁ」

 

一夏との付き合いはまだ数ヶ月だがその鈍感さはふたりとも熟知していた。

 

火影

「…しかし一夏が呼んだとなると間違いなく皆も絡んでんだろうな。今日に限って皆早く帰っちまったし。もしかしたら一緒にいんのかね」

海之

「さぁな。しかしもしそうなら好都合だ。あれの具合は良いか?」

火影

「ちょっと早いけど良い頃合いだぜ。しかし偶然ってあるもんだな。ちょうどこの日に出すなんてよ」

 

そんな話をしながら歩いているとやがて指定された部屋にたどり着く。

 

火影

「…ここか?」

海之

「…らしいな」

 

コンコンッ

 

火影

「一夏いるか?来たぞ~」

一夏

「お、来たか。入ってくれふたり共」

 

ガチャッ

 

そう言われてふたりは扉を開け、部屋に入る。中には一夏がひとり、そしてその部屋にはやや大きいテーブルが置かれている。

 

海之

「…?随分大きいテーブルだな」

火影

「どうしたんだコレ?」

一夏

「まぁこれからわかるって♪さぁ座って待っててくれ」

 

そう言って一夏はふたりをテーブルに座らせると自分は部屋の外に行ってしまった。

 

火影

「…?なんで出て行くんだ?」

海之

「……」

 

ふたりが不思議がっていると、

 

ガチャッ

 

火影・海之

「「!」」

 

扉を開けて一夏が入って来た。但しその後に箒達も続いて。

 

火影

「…えっ、え?」

海之

「…?」

 

何が起こっているのか分からなく茫然とするふたり。

 

「ふふっ、驚いている様ねふたり共♪」

シャル

「第一段階大成功だね♪」

一夏

「じゃあまずは誰から行く?」

「じゃあまずは私から。鈴等は後が良いだろう」

「うん、お願い」

 

そう言って箒は手に持つ紙袋をふたりに渡す。中に入っていたのは…冬向きの手袋とマフラー。色違いで火影は黒、海之は白だ。

 

火影

「…もしかして俺達に?」

「ああ。ふたりとも季節に関わらず手袋をしているからな。これから寒い季節になるし。火影は私服が赤色だから黒で、海之は青色が多いから黒よりも白が合うと思ってな。良い物だから良かったら使ってくれ」

海之

「…良くはわからんが…くれるのであればありがたく頂いておこうか」

 

 

…………

 

次に渡してきたのはセシリア。彼女もそれぞれに小箱を渡す。中に入っていたのは…高級な紅茶の缶だった。

 

海之

「…これも俺達に?」

セシリア

「私が一番好きな紅茶葉ですの。おふたり共、特に海之さんは紅茶がお好きなのは知っていますし、火影さんもデザートの時によく飲まれていますから。良ければ召し上がってください」

火影

「あ、ああ、ありがとう。頂くぜ」

海之

「セシリアは紅茶にこだわりがあるからな。楽しみにさせてもらおう」

 

 

…………

 

次に渡してきたのはシャルロット。彼女が渡したのはセシリアのよりも小さい小箱。中に入っていたのは…腕時計だった。どちらもアナログ時計だが形は微妙に違う。火影のはメカニカルな、海之のはどちらかと言えばシンプルなデザインだ。

 

シャル

「火影は銃とかバイクとか使ってるからどちらかと言えば機械的なイメージがあったんだ。海之は刀とか本とか良い意味で古風だからシンプルなのにしたの」

火影

「そうなのか。ありがとよ」

シャル

(…因みに火影の時計の裏に僕の名前があるのは僕だけの秘密♪)

 

 

…………

 

次に出てきたのは本音。本音が出してきたのは果物。火影のは林檎、海之のは葡萄だ。

 

本音

「かっちゃんかんちゃんのお家でおススメを聞いたんだよ~。良い物だからきっと美味しいと思うな~」

火影

「そいつは楽しみだ」

本音

「ひかりん~、今度それ使ってデザート作ってね~♪」

「…本音、目的が違ってるんじゃない?」

 

 

…………

 

次に出てきたのはラウラ。ふたりに箱を渡す。紙や木ではない頑丈なケースだ。中に入っていたのは、

 

火影

「ナイフとはなかなか驚きのプレゼントだな」

海之

「…只のナイフでは無い。軍や警察で使われている様なナイフだ」

ラウラ

「そうだ海之。私が所属するドイツ軍正式採用の物だ。ちょっとした刃物が必要な時に使ってくれ」

一夏

「さ、さすが軍人…」

ラウラ

「本当ならUSPでもと思ったのだがあれはやや問題があるらしくてな」

火影・海之以外全員

「「「問題どころじゃない(から)!」」」

 

 

…………

 

続いて出てきたのは鈴。部屋の厨房から何かを持って出てきた。

 

「はいどうぞ♪」

 

鈴が持ってきたのは…ラーメンだった。

 

火影

「どうしたんだコレ?」

「私が一番得意な事って言ったら料理だからね♪だから一番好きなラーメンにしたの。ああ後麺もスープも自家製よ。数日前から部屋で仕込んでたんだ♪」

一夏

「流石は鈴だな」

火影

「へ~、じゃあ遠慮なく。…………」

「……ど、どう?」

 

鈴はやや緊張して感想を待つ。今までもそうだったがやはり火影の感想は気になるらしい。

 

火影

「そんな緊張すんなって。…凄ぇ旨ぇよ、鈴」

「…!」

 

鈴は嬉しそうだ。海之も同意見だった。余談だがイベントが全て終わった後、彼女のラーメンは皆に振舞われた。

 

 

…………

 

次は順番的に簪だが横に一緒に楯無もいる。楯無は火影に、簪は海之に紙袋を渡す。すると簪が話し出す。

 

「あ、あの海之くん。そして火影くん。…ありがとう」

海之

「…?どうした?」

楯無

「あらあら、後で皆で言うつもりだったのに。我慢できなくなったのかしら~」

火影

「どういう事ですか?」

「…あの、私がここまで成長できたのも…お姉ちゃんと仲直りできたのも…全部ふたりのおかげだから…。だからありがとう」

海之

「気にするな。お前の心の強さがもたらした結果だ」

「ううん、そんな事ない。本当にふたりのお蔭だよ」

楯無

「貴方達の影響は思ってるよりもずっと大きいのよ?…私だって同じ」

「お姉ちゃんとふたりで作りました。上手じゃないけど…、良かったら使ってください」

 

箱には男性用のハンカチが入っていた。火影のは赤い、海之のは青い糸で複雑な刺繍が入っている。細かい作業が得意な簪らしかった。

 

 

…………

 

そして最後は一夏となった。一夏が持っているのは今までに一番小さい小箱だ。

 

ラウラ

「随分小さい箱だな?」

「ああこの大きさだとまるで鍵くらいしか入らんぞ?」

一夏

「まあ開けてくれればわかるさ」

 

そう言ってふたりは箱を開ける。中には、

 

火影

「…鍵?」

シャル

「まさか本当に鍵が入ってたよ」

セシリア

「一夏さん、これは何の鍵ですの?」

一夏

「ああそれは俺と千冬姉の家の鍵だ」

海之

「…何?」

本音

「え――!」

一夏

「夏休みの時にふたりを泊めてたのを思い出してな。ほら、ふたりの家ってスメリアだろ?それで気軽な連休なら家に泊ってもらうのもいいかなって。ゴールデンウィークとかな。千冬姉にも相談して決めたんだ」

「よく千冬さんが許可したわね?」

一夏

「そんな反対もしなかったぜ?どちらかと言えば嬉しそうだったな。…つー訳で遠慮せず来てくれ」

火影

「あ、ああ」

海之

「…感謝する」

 

ふたりはこの時偶然にも同じ事を思っていた。

 

火影・海之

((…箒とセシリアにやれ(よ)…))

 

 

…………

 

そんな感じで皆のプレゼント譲渡が無事に成功したところで、

 

火影

「…あの、そろそろ聞いて良いか?皆どうして」

 

 

全員

「「「いつもありがとう(ありがとよ)!!」」」

 

 

火影

「…へ?」

海之

「…?」

 

火影の声を遮る様に皆一斉に声を出す。ふたりはまるで分からないという表情で目をキョトンとさせている。

 

「ふふっ、大成功だな♪」

セシリア

「ええ。おふたり共勘がよろしいですから成功するか不安でしたが上手く行きましたわね♪」

本音

「私も無事約束守れてほっとした~!」

海之

「…どういう事だ?」

「御免ね海之くん。…私達、海之くんと火影くんに感謝の気持ちを伝えたくて」

火影

「感謝の気持ち?」

シャル

「僕達…いつもふたりに御世話になってるでしょ?ISの訓練も勉強も。更にファントム・タスクとの戦いじゃ何時もふたりに守ってもらってるじゃない?」

「おまけに臨海学校の時や学園祭の時はふたりに本当に助けてもらっちゃってたしね。大袈裟じゃなく命まで助けて貰ったともいえるわ」

ラウラ

「しかし私達は与えてもらってばかりで今までお礼的な事を何もしてこれなかった。だから少しでもしてやりたいと思ったのだ。まぁこれは一夏の提案だったんだけどな」

楯無

「私は皆ほどふたりと付き合いは無いけど簪ちゃんと仲直りできたっていうとっても大きな恩があるからね。協力させてもらったのよ♪」

火影・海之

「「……」」

一夏

「ふたりには本当に感謝してんだ。この前のタッグマッチといいな。だから少しでも伝えたいってこんな事を考えたんだ。だまってて悪かったな」

 

皆それぞれ心からの感謝の気持ちを伝える。

 

火影・海之

「「……」」

楯無

「あれ~、もしかして感動のあまり言葉も無い~♪?」

 

火影と海之は無言だった。すると、

 

 

火影

「……ふ、ふはははははははは!!」

海之

「…ふっ」

 

 

火影は豪快に、海之は口角を上げて笑った。

 

一夏

「…え?」

「な、なんで笑っているんだ?」

「ど、どうしたのよ一体?私達本気で!」

 

予想外の反応に他の皆も驚く。

 

火影

「くくくっ、いや悪い悪い。そういう事か~、納得したぜ」

シャル

「…納得?」

 

すると次に火影と海之が言った言葉が皆を沈黙させた。

 

 

火影

「ああ、皆には言ってなかったが実は今日11月13日は俺と海之の誕生日なんだよ。でもそれを皆知らねぇ筈なのにプレゼントくれっから何で知ってんのかな~って思って。でもそういう事なら納得できたぜ。…ほんとありがとよ」

海之

「今日をもって17となる。改めて宜しく頼む。そして……ありがとう」

 

 

全員

「「「…………」」」

 

一夏達はその内容に驚き、言葉を失っている様だ。

 

海之

「そういえばここに皆がいるのは好都合だ。火影」

火影

「了解。ちょっと待ってな」

 

そう言って火影は一旦外に出て行った。

 

「…ね、ねぇ海之くん。さっきの話……本当…?」

セシリア

「今日が…おふたりのお誕生日だという話ですが…」

海之

「ああ。正確にはこの世に誕生した日という意味では無く、俺と火影が両親に見つけられた日がこの日なのだ。だから今日を誕生日にしている。分かりやすいだろうと思ってな」

 

ガチャッ…ガラガラ

 

とその時火影が戻って来た。但し普通にでは無い。ホテルで料理を運ぶ際に使われる様なワゴンを押してだ。

 

火影

「待たせたな、ケーキ持って来たぜ。バターにドライフルーツ、チョコレートにあとケーゼクーヘンだ。お前らのタッグマッチの労いに用意しておいたんだ」

海之

「まだ熟成しきっていないが食ってくれ」

本音

「わーい!ひかりんとみうみうのケーキ♪」

本音以外

「「「……え――――――――!!!」」」

 

 

…………

 

本音

「やっぱり美味しいね~♪」

本音以外

「「「………」」」

 

その後、皆で火影達のケーキを食べているのだが何故か本音以外は皆浮かない顔をしていた。

 

火影

「…あれ、もしかして口に合わなかったか?」

シャル

「う、ううん凄く美味しい!……美味しいんだけど…」

「…ああ。本当に美味しいんだ。…でもな…」

一夏

「……素直に喜べねぇ…」

楯無

「まさか365日ある中でよりによって今日がふたりの誕生日だったなんてねぇ~」

 

どうやらふたりを驚かせようと思っていたのが逆に自分達の方が何倍も驚かされた事に微妙な感じになっている様だった。

 

海之

「…もし悪い事をしてしまったのならすまなかった」

「う、ううんそんな事無い!謝らないで海之くん」

ラウラ

「ああそうだ。お前達は何も悪く無い。ただ…タイミングが悪かっただけだ」

セシリア

「本当に偶然とは恐ろしいものですわね…」

「火影~、なんで今日が誕生日って教えてくれなかったのよ~」

火影

「聞かれなかったからな。…それにどっちかと言えば誕生日の事は思い出さない様にしてたんだよ」

一夏

「え?」

「何故だ?」

火影

「父さん母さんの事を思い出しちまうからな…」

「……あ」

 

ふたりはこの日にエヴァンス夫妻に出会い、助けられた。彼らが生きている時はそれは盛大に御祝いしたものだった。だがその夫妻が亡くなってからは控えめにしていた。ギャリソンやレオナ達もそれは分かっていた。

 

シャル

「ご、御免なさいふたり共…」

海之

「気にするな。それに今日は良い日だった」

「…え?」

火影

「ああ、お前らの温かい気持ちをたくさん受け取ったからな。だから良い日だったぜ」

 

ふたりも心からの感謝を伝えた。

 

本音

「…えへへ♪」

一夏

「…へへ。そう言ってもらえて良かったぜ。…おし!御返しにお前らのケーキ全部キレイに食ってやるからな!」

「おい一夏、数は決まってるんだぞ?」

セシリア

「大丈夫ですわよ。そんなに焦らなくてもこちらにおかわりもありますわ」

楯無

「はぁ、仕方ないわね、こうなったら私もやけ食いしてやる~♪」

 

どうやら一夏達は元気を取り戻したようだ。

 

火影・海之

「「…ふっ」」

「どうしたのよ火影?」

ラウラ

「海之?」

 

微笑んだふたりは揃って言った。

 

 

火影・海之

「お前ら(お前達)やあいつらが笑ってんのが(笑っているのが)俺達にとって最高の礼だからな」

 

 

本音

(……ひかりん~!)

(…海之くん。本当に…ありがとう…)

シャル

(火影……。もう、ほんと敵わないなぁ~♪)

ラウラ

(海之、火影。お前達が家族で私は幸せだぞ…)

(…はぁ、惚れた女の弱みって思うしかないかなぁ。……好きだよ、火影)

 

予定外の事もあったがふたりの事を改めて強く想う少女達。そして良き友たち。お互いの企画は無事大成功?したのであった。

 

 

…………

 

数刻後、千冬の部屋の前。時間はすっかり夜になっていた。

 

千冬

「……おや、もうこんな時間か。では私も風呂に行くかな」

 

そう言って仕事を中断し、風呂支度を済ませた千冬は部屋を出て行こうとすると、

 

ガチャッ…コンッ

 

千冬

「?」

 

扉を開けると何かが当たった様な気がした。見るとドアの下に小さい箱がある。

 

千冬

「なんだ…?…箱と手紙?」

 

箱には手紙が添えられてた。中を開けて見てみると、

 

 

(一夏より話を聞きました。あんな大切な物をありがとうございます。お礼という訳ではないですがケーキを置いておきます。もし良ければ召し上がってください。  海之)

 

 

千冬

「………」

 

千冬が箱を開けると中にはバターケーキとケーゼクーヘンがあった。バターケーキをほんの少しつまんで口に運ぶ。

 

千冬

(………ふっ)

 

千冬は微笑みながら心の中でそう思うと箱を閉じ、冷蔵庫に入れて再び浴場に向かって歩き出した。




おまけ

火影と海之の感謝会(誕生日会)から二日後…、


「クーちゃん~、遅れるよ~!」
クロエ
「は、はい!」

どうやら束とクロエはどこかに出かける予定の様だ。


「まぁ忘れ物があっても直ぐに取ってこれるから大丈夫だよ。じゃあ行くよ~♪」

そう言ってふたりが操縦するロケットは出発した。


「いよいよだねクーちゃん♪緊張してる?」
クロエ
「は、はい。こんな事は初めてですから…」

「そだね~。でも大丈夫だよ!今のクーちゃんにはお兄ちゃんもいるんだもん♪」
クロエ
「だ、だからお兄ちゃんじゃ……ハァ。……ですが本当に大丈夫でしょうか、こんないきなりで」

「大丈夫大丈夫~♪ちーちゃんと私はこの世で一番の仲良しだもん!どんな無茶振りも聞いてくれるよ~!ふふっ、皆の驚く顔が目に浮かぶね~♪」

そう言って束は笑いながら自らのロケットを飛ばしたのであった。

クロエ
(はぁ……本当に大丈夫でしょうか……。まぁそれについては成る様になるしかありませんね。頑張りましょう)

するとクロエは何やら首からぶら下げている物を手に取り、

クロエ
(これから宜しくお願いしますね。………………ベアトリス)


※11は秘数字では特別なものとの事、13は「13日の金曜日」から考えました。

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