IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
……しかし逆に一夏達は驚かされた。実はこの日は偶然にも火影と海之の誕生日でもあったのだった。更にふたりは先日のトーナメントの労いを兼ねてケーキまで用意していた。その事に皆は何とも言えない気持ちになるがふたりからも心からの感謝を伝えられ、こういうのも悪くないか、と感じた。感謝会は無事?成功したのであった。
IS学園 寮内
ラウラ
「海之、魚の塩加減はこれ位で良いか?」
海之
「ああ問題無い。腹身の方から焼いていけ」
簪
「ねぇ海之くん。お味噌はこの位で大丈夫?」
海之
「…もう少し入れても良いだろう。溶かす時は煮詰めない様に弱火でな。俺は玉子焼きを調理するからそのまま頼む」
簪
「わかった」
一夏達による火影・海之への感謝会の翌々日。この日は日曜日で時刻は朝8時を回った所。火影達はたまには自分達で朝食を取ろうと食堂でなく寮の調理室に集まっていた。調理しているのは海之と彼の手伝いを願い出た簪とラウラ。そんな三人を共同スペースの椅子に座って皆は眺める。
楯無
「……」
本音
「どうしたのかっちゃん?」
楯無
「うん、簪ちゃん楽しそうだな~って思って」
箒
「確かに最近笑う事が多くなった様に感じますね」
シャル
「箒もそう思う?僕も簪と知り合ったのは最初のタッグマッチの時だけど…なんというか元気になったね」
セシリア
「やはり海之さんのお陰でしょうか?」
本音
「う~ん勿論それもあると思うけど~、元々かんちゃんはあんな感じだったよ~」
鈴
「そうなの?私達はこの数ヶ月のあの子しか知らないから分からないけど」
楯無
「小学生位迄はそうだったわね。でも中学生位から少しずつ静かになっていってしまったわ。私がロシアの代表になったりしてからね。弐式の件もあったし」
一夏
「その節は御迷惑かけてすいませんでした」
楯無
「ああ一夏くんは気にしないで良いのよ。あれは中途半端にした企業が悪いんだから。ほんと腹立つ話。まぁそんな感じで色々あったからね。…でももうそれは昔の話。あの子は今を頑張ってるわ。………皆、これからも簪ちゃんの良いお友達でいてあげてね?」
箒
「はい、勿論です」
一夏
「任せてください。海之と同じ位俺達も守ります」
楯無
「……ありがとう。でも一夏くんには私を守ってほしいなぁ♪」
そう言いながら隣の一夏に引っ付く楯無であった。
箒・セシリア
「「た、楯無さん!」」
鈴
「…こう見るとどっちが姉か妹か分からないわね」
シャル
「あはは。……あれ?火影はどこいったのかな?さっきから姿見えないけど」
本音
「ひかりんならさっき調理室の奥に行ったよ~。なんかあるのかな~」
シャル
「行ってみようか?」
簪
「皆~、できたから順番に回していって~」
鈴
「あ、はいは~い」
できあがったらしいので取り合えずそちらを用意する事にした。
…………
白ご飯、焼き魚(塩鮭)、味噌汁(ナメコとわかめ)、卵焼き、じゃこおろし、漬物と日本の朝の定番らしいメニュー。
鈴
「相変らず海之の卵焼きは美味しいわね~♪」
楯無
「ほんとね~!海之くん卒業したら更識家の板前にならない~?」
簪
「も、もうお姉ちゃん!」
本音
「かんちゃんのお味噌汁もラウランのお魚も美味しいよー」
一夏
「ほんとに旨いぜ」
海之
「それは何よりだ。簪もラウラも腕を上げたな」
ラウラ
「そ、そうか。何時でも結婚できる様頑張っている甲斐があった」
セシリア
「でも本当に夫婦みたいでしたわよお三方共♪」
簪
「ふ、夫婦って…、あぅ…」
シャル
「ふふっ、ところで火影どうしたんだろう?早くしないと冷めちゃうよ」
とその時、調理室の奥から、
火影
「待たせたな」
箒
「おお火影、先に頂いているぞ」
本音
「どしたのひかりん~?」
火影
「これを作ってたんだ」
見ると火影は両手に持っている物をテーブルの上に置く。
鈴
「…え!何これ!?」
それはまるで大きな薔薇の花。しかし良く見ると、
シャル
「…この匂い…林檎?」
火影
「ああ、林檎を薄く切って花弁の様に広げて焼くアップルパイだ。本音から貰った林檎があったからな、昨日夜に下処理しておいたんだ。デザートに食ってくれ」
本音
「わ~いありがと~♪」
ラウラ
「凄く綺麗な焼き色だな。流石火影だ」
セシリア
「ええ。林檎の赤色が引き立ってますわ」
楯無
「う~ん火影くんも捨てがたいわね~。私としては一夏くんに板前に来てもらいたいけど簪ちゃんからしたら海之くんだもんね~。いっそ火影くんはパティシエとして全員来てもらおっかな~?」
簪
「も、もうお姉ちゃんいい加減にして!」
火影
「ははは…、ほんとあんま似てねぇなこのふたり」
一夏
「まぁ確かにそれなら就職には困らないけど…」
火影・海之
((そういう意味じゃねぇって(ではないのだが)…))
楯無
(う~ん、ほんと難攻不落ね~。まぁでもその分陥落した時の喜びが増すってもんよ♪)
箒
(違うんだが…まぁ今回は良かったと思っておこう…)
セシリア
(今日だけは感謝致しますわ一夏さん)
鈴
(火影と夫婦になったらお店やるっていうのもありかな~♪)
シャル
(もし火影と…結婚できたら…毎日こうして一緒にご飯食べたいな~♪)
本音
(ひかりんがかっちゃん達のお家に来てくれたら一緒に働けるしデザートも食べれる~♪)
簪
(もうお姉ちゃんったら…。ま、まぁ海之くんと一緒に過ごせるのは良いけど…でもそうなったら毎日からかわれるだろうし…う~ん…)
ラウラ
(早く夫婦水入らず過ごせる様になりたいものだな)
少女達が各々想像している感じで朝食は進んでいると、
~~~~~~~~~~~
誰かの携帯が鳴った。
海之
「すまん俺だ。…千冬先生?」ピッ「はい。先生おはようございます。いえ大丈夫です、なんでしょうか?」
すると数秒程して、
海之
「………わかりました。では10時にアリーナに向かいます。はい、では後程」ピッ
火影
「召集か?」
箒
「しかもアリーナって………まさか…」
何かを感じ取った箒。
海之
「…ああ。そのまさかだ」
…………
IS学園アリーナ
朝食を終え、後片付けを終えた一行はアリーナに来ていた。千冬と真耶は先に来ていた。
本音
「も~ひかりんのアップルパイまだ食べて無いのに~」
簪
「大丈夫だよ本音。ちゃんと冷蔵庫に入れてきたから」
セシリア
「…それにしても今回は何の御用でしょうか?篠ノ之博士」
鈴
「多分だけど…束さんが造ってたって物ができたんじゃないかな?前に言ってたじゃん?」
シャル
「…あっ、確かパンドラ届けに来てくれた時にそんな事言ってたね。あと「真剣な遊び」だとも」
ラウラ
「しかしそれだけではどういった物かわからんな…」
一夏
「その事なのか千冬姉?」
千冬
「…いや、わからん」
真耶
「私達にも教えてくれないんです。見てからのお楽しみって言われて…」
箒
「姉が迷惑をかけてすみません…」
千冬
「気にするな箒。もう慣れている」
楯無
「まぁでも篠ノ之博士がそう言うんだからきっと私達を驚かせてくれる様な物だと思うわよ」
火影・海之
「「………」」
一夏
「どうしたふたり共?」
火影
「…いや…何でか分からねぇが…、なんか全く予想だにしてなかったもん造ってそうな気がして…」
海之
「……ああ」
鈴
「アンタ達がそう言うと妙に説得力あるわね。まぁ今は待ちましょ」
そして暫く待っていると…、
簪
「………あっ、何か見えるよ。もしかしてアレじゃないかな?」
簪が指さした方向から確かに何か向かって来るのが見えた。………しかし、
本音
「あれ~?なんかふたついない~?」
まだはっきり形は見えないが良く見ると確かにふたつ影がある様に見える。
セシリア
「確かにふたつ見えますわね…。ひとつはロケットでしょうか?火が見えますわ」
千冬
「恐らくブースターだろうな。多分あちらが束のロケットだろう。しかしもうひとつは…」
そしてロケットと別のそれは更にスピードを上げ、火影達の上空を超高速で通り過ぎ、その後急旋回してこちらに向かって降りてくる。そしてその姿が次第にはっきり見えてくると、
火影・海之
「「!!」」
楯無
「え!?」
千冬
「なに!?」
一夏
「お、おい火影!海之!あれって!?」
皆大きく目を開き、本当に凄く驚いた。何故ならその姿は………………アリギエルやウェルギエルとそっくりだったからだ。
…………
それはゆっくり上空から火影達の所に降りてきた。火影のアリギエルや海之のウェルギエルと非常に良く似ている機体。従来のISに見られない位の薄い装甲。黒いバイザーで顔部分が覆われた頭部。爪が生えた様な手足。
大きな違いは3つあった。アリギエルは炎の様な赤、ウェルギエルは深い海の様な青だがこれは白、純白に近い白色をしている。
そして前者の二体はまるでロングコートを着ている様に見えるのに対し、これはロングスカートを履いている女性の様なデザインをしている。
そして最も大きな違いは……、
本音
「キレイ~!」
箒
「…まるで天使の翼だな」
そう、アリギエルとウェルギエルは悪魔の様な黒い翼だが目の前にあるそれは天使を思わせるような白い翼があったのである。女性的な白いボディと翼も重なり、それは「天使」と呼ぶに相応しかった。
火影・海之
「「……」」
流石の火影達も驚いているのか黙っている。と、
ズドォォォォォォンッ!……パラパラ……
その少し横で束のロケットも遅れてお馴染みの不時着をしたのだった。謎のISにすっかり目が行ってロケットの事を忘れていた多くの者はその衝撃で豪快に尻餅を付いたりこけたりしてしまった。
真耶
「いたたた…び、吃驚しました」
シャル
「す、すっかり忘れてた…、束さんのロケットの事…」
ラウラ
「う、迂闊だった…」
箒
「…ハァ、…もう姉さん…」
パカッ!
するとロケットの横の扉が開き、普通に束が現れた。
束
「いや~皆おまっとさんでした♪ごめんね~少し遅れちゃったよ~!あっ!何時もの挨拶がまだだったね!天知る地知る人が知る!皆の永遠のアイドル!アイデアのピッチングマシーン!ISのイヴ!篠ノ之束さん参上~!」
全員
「「「………」」」
束
「ふっふ~ん♪流石の皆も驚いて声も出ない様だね!今回のコンセプトは、まずこの子を颯爽と登場させてそちらに皆を釘付けにし、そこにロケットによる時間差不意討ち!更に三連続来るか!?と思いきやそこはあっさり束さん登場!というある意味期待を裏切るやり方!いや~毎回皆面白い様にかかってくれるから束さんも遣り甲斐があるってもグホッ!ヘヴァッ!ヘブシッ!」
腹へのブロー、顎へのアッパー、頭への拳骨振り下ろしという千冬の三連続が見事に決まった。
束
「さ、流石ちーちゃん…。三連チャンには三連チャンという訳かね…」
千冬
「期待を裏切るやり方を好むなら今度はこちらもそうしてやろうか?」
束
「ヒエー!箒ちゃーん、ちーちゃんが苛めるよ~」
箒
「自業自得です」
一夏
「ははは、このやりとり見るの今年だけで何回目だろ?……ってそんな事どうでも良かった!束さんこのISは何なんすか!?」
セシリア
「そうですわ!なんでこれ程までおふたりのISに似てるんですの!?」
簪
「もしかしてこれが…篠ノ之博士が造っていたっていう…」
鈴
「で、でも確か火影達のISは束さんでも造れないって…!」
皆はまだ驚きが冷めない様だ。
火影
「…束さん教えてください。…これは一体…?」
海之
「それも気になるが…、まさか動かしているのは…」
束
「ふっふ~ん、流石みーくん。察しが付いた様だね♪」
カッ!
すると目の前のISは光を放ち、展開を解除する。
千冬
「!」
真耶
「えっ!?」
ラウラ
「あ、貴女は!」
海之
「…やはりか…」
謎のISを纏っていたのは……、
クロエ
「…こんにちは」
束の助手であり、娘の様でもあり、先日火影と海之の妹にもなったクロエだった。しかし、
火影
「クロエ…お前だったのか。てかお前その髪、それにその目…」
火影はやや驚いた。腰の辺りまであったクロエの髪が襟首当たりまでバッサリ切り揃えられ、ボブカットになっていたからである。更にカラコンを入れているのか目の色も灰色になっている。
クロエ
「はい。少し事情がありまして束様に切って頂いたんです。似合っていますでしょうか?」
本音
「久しぶりクーちゃん!似合うよ~。なんかカッコいい」
鈴
「……本音、少しは驚きなさいよ。…ってそうじゃなかった!髪型もそうだけどさっきのIS、クロエが動かしてたの!」
クロエ
「はい、御無沙汰しております皆さん」
箒
「…これは予想外だったな」
一夏
「あ、ああ全くだぜ…」
ラウラ
「………」
シャル
「どうしたのラウラ?」
ラウラ
「い、いや、…何でもない…」
海之
「クロエ、先程のISは……まさかお前の?」
クロエ
「はい、海之兄さん」カチャッ
火影
「!お前それ、…俺達のと同じ」
火影は再び驚いた。クロエが首からぶら下げていたのは赤い宝石のまわりに銅(アカガネ)色の縁が掛かったアミュレット。それは火影と海之のアミュレットと見た目全く同じ物だった。
クロエ
「そうです火影兄さん。これが私のISの待機状態です。束様にお願いしてお揃いにして頂きました」
束
「長男のみーくんが金、次男のひーくんが銀だからクーちゃんは銅にしたんだ♪粋な計らいでしょ~♪」
火影
「は、はぁ…」
海之
「…ハァ」
クロエは微笑み、束は楽しそうに笑い、火影と海之は驚きからか何んとも言えない表情だ。
……その一方、一部の者はそれとは別に気になる事があった。
鈴
「…ね、ねぇクロエ~、ちょっと聞いて良い~?…今アンタ火影の事……兄さん、って言わなかった…?」
簪
「う、うん。…それに海之くんの事も言ってたね…」
クロエ
「はい。火影さんと海之さんは私の兄さんです」
千冬・真耶・ラウラ以外
「「「「いやだからなんでですか(ですの)!?」」」
事情を知る千冬と真耶以外は先のISと同じ位驚いていた。ラウラは何も言わなかった。
千冬
「…お前達、その件については後にしておけ。……束、そろそろ聞かせて貰おうか?先程のISについて」
真耶
「それに先程クロエさん、あれを私のISと言ってましたが…それってもしかして」
束
「じゃあクーちゃん、一旦それを渡してもらって良い?」
そう言われてクロエはアミュレットを束に渡した。束はそれを再び展開する。
箒
「白いアリギエル…、いやウェルギエルか…?」
楯無
「やっぱり火影くんと海之くんのISにそっくりねぇ。見た目はスカートとか履いてて女性っぽいけど」
一夏
「束さん…なんなんですかこのISは?」
束
「じゃあ説明するね~♪」
すると束はそのISの横に立ち、
束
「きっかけはこんなの造ってみたい!っていう束さんの真剣な遊び心だった!しかし!やがて皆を助けたいという束さんとクーちゃんの熱い想いによって生まれ変わった!これこそアリちゃんウェルちゃんの兄妹機にしてクーちゃん専用機!その名もベアトリスだよ~♪」
火影・海之・千冬
「「「…!」」」
一夏
「な、なんだって~!」
箒
「アリギエルとウェルギエルの…兄妹機!?」
鈴
「ベアトリス…!」
セシリア
「しかもクロエさんの専用機!」
本音
「すごーい!」
シャル
「…確かにここまでそっくりだと兄妹っていってもおかしくないね」
ラウラ
「…ベアトリス…、貴女の専用機…」
皆その内容に驚きを隠せない。
簪
「じゃ、じゃあこのISもアリギエルやウェルギエルと同じ第0世代っていう事ですか!?」
束
「…う~んそこはちょっと違うんだよね~。というのもふたりのISは傷が瞬時に再生するという点。そして操縦者と共に成長するという点のふたつの大きな特徴があるんだけど…残念ながら再現できなかったんだよね~。だって剣が貫いたり銃弾が撃ち込まれたりってそんなの危険極まりないでしょ~?だからこの子は従来のISと同じくシールドや絶対防御はあるんだ。だから準0世代、って感じかな?」
真耶
「よ、良かった、シールドや絶対防御はあるんですね。それだけでも少し安心です…」
千冬
「しかし準と言うからにはなにかあるのだろう?」
束
「ふっふっふ~!流石ちーちゃん♪当然そこはただでは転ばない束さん!」
鈴
「…なんか違う様な…?まいっか、で、どこが違うんですか?」
束
「確かにベアトリスはアリちゃんウェルちゃんの様に傷は治る事はない。その代わりにSEが自動回復されるんだよ~♪」
千冬
「なんだと?」
シャル
「そんな事ができるんですか!?」
束
「できるよ~♪というか皆もう見てるじゃん」
一夏
「え?……あ」
箒
「紅椿の…絢爛舞踏ですか?」
束
「そ!あれを応用して造ったんだ♪云わば箒ちゃんの紅椿の絢爛舞踏自分だけバージョン、って考えてくれたら良いかな~」
セシリア
「確かにそれなら納得いきますわね…」
皆がベアトリスの機能に驚く中、海之が束に質問する。
海之
「しかし束さん。何故態々俺達のISに似せたんですか?」
楯無
「…そうですね。別に新しいデザインでも良い様な気がしますが?」
束
「うん。きっかけは…確か臨海学校の時かな?ほら、あの時ひーくんとみーくんがふたりであの黒いISを全滅させたでしょ?それを見てどうしても造ってみたいなぁって思ったんだ!カッコ良かったしね♪でもアリちゃんウェルちゃんの情報はふたり共絶~対教えてくれないし~、でも諦めきれなくて、それなら自分で造ってみるしかないかなぁって」
千冬
「それで造ったのがこのISという訳か…」
束
「うん。でも実を言うとこの子はあくまでも束さんの趣味、興味本位で造ろうと思った試作品。だから例え完成しても本当は表に出すつもりは無かったんだ。最初武器も付けて無かったんだよ」
簪
「えっ、そうなんですか?」
ラウラ
「ではどうして…?」
その質問にクロエが口を開く。
クロエ
「…私が束様にお願いしたのです」
本音
「ほえ?クーちゃんが?」
束
「…うん、そうなんだ。ほら、前ここの学園祭の時にファントム・タスクの襲撃があったでしょ?あの時の戦いやひー……、まぁその時の出来事があって、何日か経ってからクーちゃんが言いだしたんだよ。もし完成したらこの子に乗せてくれないかってね」
火影
「…クロエ、お前何故そんな事を…」
クロエ
「……守りたいと思ったからです。皆さんや兄さん達が戦っているのに…私は自分が何もできないのが悔しかった…。そして火影兄さんが皆さんを守るために行った行動を見て…より気持ちが強くなったんです。…私も…私の大切なものを守るためにできる事をしたいって!」
鈴
「…クロエ、アンタ…」
束
「最初はもちろん駄目って言ったよ。だってクーちゃんは束さんのかわいい娘だもん。娘を戦わせるなんて嫌じゃん?…でもこの子の気持ちの強さを知って聞いてあげる事にしたんだ。徒に庇ったり守ったりする事だけが親の愛情じゃないしね、子供の意志を尊重するのも親の役目だから」
海之
「……」
火影
「お前…」
束の言う通り、ふたりはクロエの瞳の奥に強い意志があるのを感じ取った。
千冬
「しかしクロエ、お前ISは…」
クロエ
「それなら御心配には及びません。必要な事は行ってきました。それに……私は本来これが役割ですから…」
箒
「…役割?」
ラウラ
「………」
束
「心配はいらないよ。クーちゃんの技術は束さんが保証する。ベアトリスの方も問題ない。だからこの子の好きにさせてあげてほしいんだ。お願い」
クロエ
「お願いします、皆さん」
全員
「「「………」」」
全員どうしようか考えている様子だった。そんな中火影がクロエに言った。
火影
「…………条件がひとつ」
クロエ
「…?…はい、なんでしょう?」
火影
「…死ぬな。危なくなったら直ぐに助けを求めてこい。それが条件だ。でなきゃ認めねぇ」
火影の言葉には絶対そうしろという雰囲気が見てとれた。
クロエ
「…はい。御約束します」
火影
「もう誰も死なせたくねぇんだ。…仲間や大切な人、ましてや家族はな…」
クロエ
「!……家族……私が、ですか…?」
海之
「…妹なのだろう?」
クロエ
「…!」
一夏
「へへ、クロエは俺達の友達だからな。助けるのは当然だぜ?」
鈴
「……はぁ、しょうがないわね。そんなにやる気なら断る訳にはいかないじゃん。但し、火影の言う通り助けが必要なら何時でも呼びなさいよ?」
シャル
「うん、絶対だよ?クロエちゃんも僕の大事な友達なんだからね」
箒
「ああその通りだ。友達は助け合うものだからな」
セシリア
「一緒に戦いましょう。お互いの大切なものを守るために」
簪
「宜しくお願いします。クロエさん」
楯無
「まぁ皆ならそう言うと思ってたわ。こちらこそ宜しくね♪」
ラウラ
「……宜しく、お願いします」
本音
「私は皆と違って戦えないけど一杯応援するよ~!」
皆はクロエの気持ちをくみ取ったようだ。
クロエ
「…ありがとうございます、兄さん。皆さん」
束
「良かったね~クーちゃん♪」
千冬
「…やれやれ、全くどいつもこいつも世話ばかりかける事しおって…」
真耶
「ふふ、でもそう言いながら先輩嬉しそうですよ?」
千冬
「……気のせいだ」
束
「よし!そういう訳で意気込みタイムと宣誓タイム終了~!では次はこの子の能力お披露目会行こう!という訳で誰かクーちゃんと試合やってくれない~?実戦形式で紹介した方がわかりやすいでしょ~?」
一夏
「あっ、じゃあ俺が相手しても良いですか?新しいISと戦ってみたいです!」
箒
「…全く子供なんだから…」
束
「OK~!クーちゃん良い~?」
クロエ
「はい、問題ありません。宜しくお願いします」
そして一夏とクロエは準備に入るのだった…。
おまけ
一夏とクロエが試合の準備を進めている間、皆は改めてあの質問をしてみる事にした。
鈴
「…あの~火影、そろそろ聞いて良い~?……火影と海之がクロエのお兄さんって…どういうわけ?」
シャル
「そ、そうだ忘れてた!どういう事火影!?」
火影
「ああそれは…」
火影と海之はいきさつを話した。
海之
「…という訳らしくてな」
簪
「そうなんだ…。だからふたりの事をお兄さんって言ったんだね」
箒
「最初にまずそこを説明してくれたら驚かなかったぞ」
セシリア
「でもクロエさんも大変でしたのね。同年代の方と今まで過ごされた事が無いなんて」
本音
「クーちゃん可哀想…」
ラウラ
「……」
楯無
「でもやっぱりふたり優しいわね。クロエちゃんの頼みとはいえあっさりOKするなんて」
火影
「大した事無いです」
海之
「ああ」
疑問は無事解決した。…だが少女達は思った。
「「「これ以上ライバルが増えなくて良かった…」」」
と…。
※次回は2月2日(日)の予定です。