IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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ある日の放課後、一夏達はクロエの入学祝いを行っていた。その中でクロエは束の妹である箒に何時か束と話してほしいとお願いする。箒の方も何れ話さなければと思っていたらしく、クロエの頼みを聞き入れるのだった。

その頃、火影と海之は整備室にいた。ふたりのIS、アリギエルとウェルギエルの不調は傷の再生能力にまで及んでいたのだ。命の心配をする真耶はこれ以上戦わないようふたりに頼むがふたりはそれを断り、これからも戦う事を宣言する。そんな火影と海之に真耶も千冬も諦めるしかなかった。

そして一方、ファントム・タスクのスコールとMの前に束が訪れていた。

※次回は7日(土)、8日(日)の連日投稿予定です。


Mission132 闇は兎を引きずり込む 

ファントム・タスクが拠点としているとある場所。そこに束が自らのロケットでやってきていた。その束をスコール、そしてMが出迎える。

 

「う~んやっと着いた~!」

スコール

「…ようこそお越しくださいました、篠ノ之束博士。さぞかしお疲れでしょう」

「いやほんと大変だったよ~!この場所地図にも載ってないんだもん~!しかも御丁寧に超高性能なカモフラまでしてあるし~、朝ごはんも食べずに来たからお腹ペコペコだよ~!」

スコール

「ふふ、それは失礼致しました。ですが何分この場所を他の人間に知られる訳にはいきませんので、どうかご了承頂ければ幸いですわ」

「……こいつが篠ノ之束」

「あれ~?もしかして疑ってる~?酷いな~、私こそ全てのISのお母さんである篠ノ之束さんだよ!ブイブイ♪」

「……」

スコール

「ふふ、元気なお方。…さて、折角ですからお食事等如何ですか?朝食も取られていないのでしょう?」

「ほんと~?ワ―イ♪」

 

そして束はスコールとMに連れられ、入って行った…。

 

 

…………

 

「…う~んこのお肉美味しいね~♪焼き加減も束さんの好みピッタシって感じだし♪ほら、良くレアとかミディアムとかだと血がしたたったりするじゃん?私あれ苦手なんだよね~、こんなウェルダン位が丁度ベストマッチだよ~!良いシェフ雇ってるね~♪」

スコール

「お褒め頂き恐縮ですわ」

 

束はスコールを前に食事をしていた。

 

「ま~でもギャリくんの腕にはまだまだ敵わないかな~♪ギャリくんは間違いなく世界大会金メダル級の料理人だから比べるのはシェフの子に酷だけどね~。あっ、ワイン貰うね♪」

 

そんな感じで食事を楽しんでいる束にスコールが話しかける。

 

スコール

「…さて、篠ノ之博士。御食事されながらでも構いませんので少々お話でもどうでしょうか?」

「ん~なに~?」

スコール

「まずは…そうですね。篠ノ之博士は……今この世界をどう思われますか?」

「おお、一発目からスケールでかい質問!そうだね~…ほんの数ヶ月前まではつまらないもんだって思ってたけど今は楽しいかな~?色々な物が見れたり知れたりできてるからね~♪」

スコール

「ふふ、それは宜しい事ですわ。…何かあったのですか?そう思わせる様な事が」

「うんあったよ~♪でもそれに関してはプライバシーに関する事だから出来れば秘密にさせてほしいな~。あっ、プライバシーと言えばスリーサイズに関してのお話も駄目だよ~?それは束さんにとって5本の指に入る位大事な事だからね~♪」

 

ファントム・タスクの幹部を前にしても自分を崩さない束であった。

 

「ね~?束さんからもひとつ質問して良い~?……君のその身体どしたん?」

 

束がそう言うとスコールはやや目を細める。

 

スコール

「………流石ですね。気付かれていたのですか?」

「束さんの心理眼をなめたらいかんヨ♪…ふむふむ…全身至るところに裂傷の跡。骨だけでなく広範囲の火傷もあるね~。オマケに左右の腕と右足が作り物か。…昔火事か爆発でも巻き込まれた~?」

スコール

「………折角の博士からのご質問なのでお答えしたいところですが…秘密にさせていただきますわ。女には秘密の引き出しが幾つもあるものですから」

「あーずる~!」

スコール

「ふふっ。………そう言えば博士、もうひとつお聞きしたいのですが…ある変わったISをご存じですか?赤色と青色のISで…一見双子の様に良く似ているのですが」

「うん、知ってるよー。あれって凄いね~!どっかから出てきたのか分からないけど黒いISやブッサイクなでっかい蜘蛛や鳥をバッタバッタ倒しちゃうんだもんね~♪興奮したよ~!」

スコール

「…やはり博士がお造りになったものでは無いのですね」

「うん違うよー。君は予想が外れてザンネン!束さんは造れないのでザンネン!…つーか束さんからしたらあの変な奴らの方が気になるんだよね~、一体どうやって造ってんのかね~?」

スコール

「…さぁ」

 

ウィィィンッ

 

とその時扉が開いた。

 

「…お知りになりたいですか?」

 

入ってきたのはふたり。ひとりはM。もうひとりは鼻の下から顎まで白髭がある茶色の目の男。

 

スコール

「あらオーガス、待っていたわよ」

「キミ誰~?」

「…貴様!」

オ―ガス

「M、下がっていろ」

「…は」

オ―ガス

「お見苦しいところを見せてしまい、大変失礼致しました。篠ノ之博士…ですね。この度はようこそお越し下さいました。…オ―ガスと申します。以後お見知りおきを」

「これはこれはご丁寧に~。私は全てのISのお母さんにして高名な、…あ、自分で言うのもおかしいか♪まぁいいや、篠ノ之束さんだよ~、ヨロシク~♪」

 

何時の様に元気な返事をする束。

 

オーガス

「ふふふ…元気なお方だ。…私も是非とも話をさせて頂きたいですね。できれば一対一で、同じ科学者として」

「うん良いよ~、じゃ早速レッツゴー♪あ、ごちそうさまね、あと話せて楽しかったよ!」

スコール

「私もですわ」

「主、私は」

オーガス

「いらん心配だM。下がっていろ。何があっても呼ばれるまで入ってくるな。良いな?」

 

そしてオーガスと束は部屋を出ていった…。

 

「……」

スコール

「まぁあの人がああ言うんだから大丈夫でしょう。M、片付けるの手伝ってくれる?」

「…ああ」

 

 

…………

 

オーガスの部屋

 

オーガスに連れてこられた束は彼の部屋で対面していた。

 

オーガス

「飾り気の無い無骨な部屋で申し訳ない。研究に勤しむあまりどうしても無頓着になる」

「ううん全然気にしなくて良いよ~♪私の部屋なんてもっと味気無いし~、お掃除してくれる子がいなきゃとっくにゴミ屋敷になってるよ~。寧ろ研究者たるもんはそっち以外あんま気ぃ付かないもんね。いんのかね、お掃除好きの研究者や学者って。あはは♪」

 

全ての元凶かもしれない男を前にしても束は何時もの様なおふざけを崩さない。

 

オーガス

「そう言ってもらえれば気が楽です。…しかし本当に来てくださるとは」

「当たり前じゃん~。あんなメールを見たら、ね」

 

 

…………

 

数日前、束の部屋にて

 

「…いっそメールも電話も閉じちゃおうか?でも稀に面白そうなものもあったりすんだよな~。例えば……………?」

 

その時束はあるメールに目が留まった。セキュリティにかけたがウィルスの類は無い。束は封を開いてみた。書かれていたのは一文のみ。

 

 

「171・286・275」

 

 

「171・286・275…………………ふ」

 

 

…………

 

「あの数字の羅列は一見なんの変哲もないけど、あれは英単語の出現度の数を指しているっていうのはすぐに思いついたよ。暗号解読の基本だもんね♪そして…答えがD・I・S、であることも」

オーガス

「…流石ですね。…回りくどい事をして申し訳ない。博士となんとか接触しようと色々試案を重ねた結果です。本当に限りない数の餌をばら撒きました。もちろんすべて違う竿でね。博士以外の者にも届いてしまった場合、読まれないようにする必要もありましたから。まぁ例え読まれても知らない者にとっては何の意味もなさない答えですがね。…しかし、こうして来て下さったということは…あの言葉の意味をご存じ、と捉えてよいのでしょうか?」

「餌と竿ってわたしゃ魚かい!…まぁいいや、もし宜しければ聞かせてほしいな、君のご自慢の発明を。いや宜しければじゃなく聞かせてね、っていうか聞かせろ!」

 

束はやや高い声で問いかける。

 

オーガス

「ふふ、そうですね。折角こうしてお越しいただいたのです。私からも聞いて頂きたい事もありますし、答えさせていただきましょう。…それで何からお聞きしたいですか?」

「話がわかって助かる~♪…じゃあまずあの妙な黒い奴とか奇妙な蜘蛛とかモンスターみたいな鳥とか、全部君が造ったもの?」

 

するとオーガスは答える。

 

オーガス

「ええ、あれは私が造ったものです。…そういえば篠ノ之博士。以前博士のコンピュータにハッキングした事、深くお詫び致します。博士は既にご存じかと思いますがアンジェロやファントムは自立起動型の兵器です。動力は単純にバッテリーですから生産も容易いのですが、開発の参考としてコアの寸法を知りたかったのです。如何に無駄なく造るためにはコアの場所にそれを持ってくるのが一番ですからね」

「ハッキングについては今はもう良いよ。どうせ大した情報は取られてないし。…でもなんであんな形にしたわけ?蜘蛛とか鳥とかさ?」

オーガス

「そうですね。小さい子供が自分のヒーローや怪獣等を考えるのと一緒と思っていただければ良いですよ。………まぁ強いて上げるとすれば、人間で言う、昔の思い出、でしょうか」

「…思い出?」

 

思い出、という言葉に束は引っかかった。火影達が言うにはあれはかつて過去の彼らが戦った相手を模したもの。それが思い出とはどういう事だろうかと。

 

オーガス

「…ええ、とるに足らない思い出です。…さて、次は何をお聞きになりたいですか?」

「…うーんとね~、じゃちょっと難しい質問。君はなんであんな物造れんの?君って一体何者?」

 

束の質問にオーガスは、

 

オーガス

「私が何者かですか…。そうですね、博士は自分が何者かお答えになれますか?」

 

束の質問にオーガスは、逆に問いかけた。

 

「私?私は私だよ~」

オーガス

「……ほう、至極簡単にして神のごとき答え。私は私…。私も同じですよ、篠ノ之博士。オーガスという紛れもない普通の人間です。…今はね」

「えっ?」

オーガス

「いえいえ、こちらの話です」

「……」

 

嫌な男だ。と束は思った。一見紳士ぶりを装ってはいるがその目は決してそうではない。話の中で手掛かりの様なことはちらつかせるが答えは決して話さない。こちらを試している。そう思った。

 

「…じゃあそろそろ本題に入ろっか。DISって何なのか、なんであんなもの造ったのか」

 

埒があかないと思った束は本題を切り出した。自分が最も聞きたかった事を。

 

オーガス

「……宜しい。博士はVTSをご存知ですか?まぁ貴女には愚問かもしれませんが」

「もちろん知ってるよ。ISの損傷度や操縦者の精神状態、更に願望等が加わって過去のモンドグロッソ優勝者の姿や力をコピーする。その代わり代償として操者への負担が大きく、場合によっては命の危険もある。全くふざけた商品だよねー」

 

束は思う通りに言った。

 

オーガス

「…ええ。私も同感です。あんな出来損ないは世に出すべきでは無い。………ですが博士、私はVTSの機能でひとつだけ評価している点があるのです」

「ん?」

 

束は心の中で密かに喜んだ。ようやくこの男の真意を聞くことができると思ったからだ。

 

オーガス

「篠ノ之博士。博士は今のこの人の世をどう思いますか?」

「…急になにさ?」

 

するとオーガスは話し出す。

 

オーガス

「…篠ノ之博士、私は常々思うのです。人の世とはなんと不安定で矛盾に満ちて不公平であると。同じ人間同士でありながら人種の違いや肌の色の違いという理由による差別。思想の違いや宗教の違いでいつまでも終わらない紛争や戦争。優れた力や才能を持っていながら経済的な格差、運の良し悪し、時には時期尚早という何とも下らない理由で陽の目を見る事ができずに終わる者もいる現実。優れたものを生み出しながら無能な人間達にあざけ笑われ、夢を叶えられない者もいる。……貴女には良くわかるでしょう?」

「……」

 

束は昔の事を思い出していた。自分のISを馬鹿にしていた者達の事を。

 

オーガス

「そこで私がVTSで優れていると思っている事ですが…、それは「願いによって力を得られる」という事です。これは実に素晴らしいと私は思うのですよ。人は皆一度は夢を見るものです。叶えたいと思う願いがあるものです。そして…誰しもが力を望むものです。しかし先程私が述べた通り各々の理由で叶わず、悲しみ嘆く者もいる。いや殆どがそうでしょう。それが「強い願い」を持てば力が手に入る。人種の違いも肌の違いも経済的な差も、あまつさえ男と女の差別も無い。もちろん他にも努力する事はありますがね。どうです?画期的とは思いませんか?」

「……」

 

束はただ黙って聞いている。

 

オーガス

「しかしながらVTSは過去のIS操者の力しか再現できない。つまりそれ以上にはなれない。それでは大した意味がない。だから私はVTSに代わる新たなシステムを開発したのです」

「…新たなシステム…?」

オーガス

「ええ、DNS。Dreadnoughtsystem。それこそDISを生み出す力。そして可能性を秘めた力。…そう、DNSは過去のデータ等当てにしない!使う者の願いが強ければ強い程DNSは真価を発揮する!正に無限の可能性!夢を叶える力!残念ながら今はISにしか組み込めない為に女にしか使えませんがね。しかし何れは男も使える様にするつもりですよ。いやそれだけじゃない、男も女も、子供も老人も誰もが力を手に入れられるようになる!DNSの恩恵を!DISの力をね!」

「……!」

 

オーガスは両手を大きく開き、笑いながら声高々に言った。その表情は若干狂気付いている様にも見える。

 

オーガス

「くくく、つい興奮してしまいました。申し訳ない。……さて篠ノ之博士。話をお教えしたお礼という訳ではありませんが、ひとつ私のお願いを聞いて頂けませんか?」

「……なに?」

オーガス

「そんな緊張なさらず。……実は私はあるISを造ろうと思っているのです。それも少々変わったISを。具体的な構成はほぼ完成しているのですが…ひとつだけ大きな問題がありましてね。…しかも貴女にしか解決できない問題が」

 

ISにおいて束にしか解決できない問題。束は直ぐに理解した。

 

「…コア…」

オーガス

「くくく、その通り。残念ながら肝心のコアのいちからの造り方がどうしてもわからない。既存のコアやISのコア情報等も試してみましたがどれも一致しなかったのです。故に全く新しい「それだけのコア」を造る必要があるのです。…引き受けていただけませんか?我らの夢を叶えるために」

「……」

(…我ら…?)

 

束は黙っていたがひとつ尋ねる。

 

「……君の夢って何?」

 

オーガスは答えた。

 

オーガス

「…私は昔、ある者達と力比べの様なものをしていましてね。勝った者が上に、上手くいけば全てを手に入れられる筈だったのです。……しかしそれは妨げられた。しかも二度も。一度目は優れた力を持っていながら全てを捨て去って生ぬるい世界で生きる事を選んだ愚か者に。そして二度目は……中途半端な存在に。私は二度も自分の夢を妨げられたのです。だから今度こそ叶えたいのです」

「……」

オーガス

「どうでしょう?同じく夢を否定された似た者同士、仲良くしようじゃありませんか?」

「!!」

 

このオーガスの一言が束の逆鱗に触れた。

 

「…ふっざけるなよクソジジイ!!私とお前が似た者同士だと!?一緒にすんな!それに黙ってただただ聞いてりゃふざけた事ばかり言いやがって!あんな醜いもんが人の夢をつかむための力だと!?御託は寝言までにしろ!」

オーガス

「……」

 

オーガスは束の怒りの言葉を黙って聞いている。

 

「ISはあんな醜いもんになるためにあるんじゃない!ましてお前のためでもない!ISは未来のためのもんだ!宇宙開拓のためのもんだ!全てのISは…私の夢のためのもんだ!」

オーガス

「…ですが貴女はその夢を否定され、自ら壊したではありませんか」

 

オーガスは白騎士事件のことを持ち出した。

 

「…ああそうだよ。あの時の私はISを否定された怒りに任せてあんな事件を起こした。結果自分で宇宙という夢を遅らせる原因を招いた訳だ。今思えば全く愚かで滑稽だよ……」

オーガス

「……」

「でも私を信じてくれた人達もいた。私なら夢を叶えられる、頑張ってねって言ってくれる人達がいた!私があの事件を起こしても信じてくれていた!自分の故郷が危なかったにも関わらずね!」

オーガス

「……」

「私の犯した罪は決して消えやしないさ。それは認めるよ。でもそんな私を今でも応援してくれている人達がいる。あの人達や皆のために今度こそ夢を叶えてみせる。それが私の償いだ!私はもう間違えない!だからお前の願いも聞き入れない!」

 

束は目の前のオーガスを指さして宣言した。そんな束にオーガスはため息をついて返事する。

 

オーガス

「……ハァ、…仕方ありませんね…。しかし私も今度こそ自分の夢を諦めるわけにはいきません。少々強引ですが無理にでも従っていただきましょうか」

「そう上手くいくかな~。こう見えても私はそこら辺の奴なら触れさせる前に倒せる自信あるよ。おまけに薬なんかも効かない。まさに細胞レベルでオーバースペックなのさ!私とまともに肉弾戦で戦えんのはせいぜいちーちゃんかひーくんかみーくん位だね。君は一見、つーか絶対3人程の力は無いね。てか私がここに来たのは君の正体を掴むためだからね。最初から協力するつもりはないよ!」

 

大げさに聞こえるが束は実際のところ極めて強い。体格にも似合わず格闘ではそこらの者では全く歯が立たない程。更に冗談でなく自白剤等の薬も効かない。まさにオーバースペックである。

 

オーガス

「…ええ。確かに肉弾戦では貴女には敵わないでしょうね」

 

そう言いながらオーガスは余裕の表情を崩さない。

 

オーガス

「ですから……こうするまで」

 

 

…ヴンッ!

 

 

「……え?」

 

オーガスがそう言うと突然部屋の電気が消え、目の前にいたオーガスが見えなくなった。束は自分の身体も見てみるがそれすらも見えない。正に暗闇だった。

 

「何の真似か知んないけどこんなので私が驚くとでも思ってんの?」

 

束はオーガスに尋ねたが返事は無い。すると、

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「!?」

 

突然束の周囲に映画のようなビジョンが現れた。よく見るとミサイルや戦闘機、戦艦、衛星と様々な軍事兵器が映し出されている。そして同時に一体のISの姿が映し出された。

 

「…あれは……白騎士!?」

 

それは10年前、束が世界で自初めて造ったIS、白騎士だった。

 

「…じゃあこれは…この映像は…!」

 

束は理解した。白騎士、そして数多くの軍事兵器。目の前に映し出されているのは…白騎士事件だった。

 

 

「ミサイルが、ミサイルが飛んでくる!!」

「死にたくない!死にたくない!!」

「ねぇお母さんお父さん…私達、死んじゃうの?」

「なんで、なんでこんな事に…」

「誰か!誰か助けて!!」

………

 

 

「!?」

 

束は目を開いた。耳に突然響いてきたのは数多くの悲鳴。死を覚悟した者。母や父にすがる子。自らの運命を呪う者。そんな者達の絶望の声だった。

 

「……篠ノ之束」

「! 誰だ!?」

 

突然それらの声に交じって束は自分に呼びかける声が聞こえた。それはオーガスとは違った声だった。

 

「……これはおまえのせいだ。お前が起こした悲劇だ」

「! どういう事だ!?」

「お前が引き起こした白騎士事件とやらのために多くの者が恐怖した。運命に絶望した。己の死を覚悟した。…おまえのせいだ」

「! 私のせい…!?」

 

束は驚愕した。…いや心の底ではわかっていたかもしれない。しかし今までそれをはっきり誰かに言われたことがなかった故、驚いてしまったのかもしれない。

 

「そうだ…全てお前のせいだ」

「で、でもあの事件では誰も死んでない!誰も傷ついていない!どこにも被害は出てない!全部白騎士が!」

「目に見える傷はな」

「…!!」

「篠ノ之束、お前のせいで多くの者が傷ついた。一生消えない程の恐怖を与えた。心の傷を作った。お前がIS等造らなければ、こんな事は起こらなかったのだ。…全てお前のせいだ」

「!!」

 

これ以上人々の悲鳴を聞きたくないと束は自分の耳を塞いだ。しかし声は束にはっきり伝わってくる。まるで自分の中から聞こえてくる様に。

 

「お前は自らの夢を叶える事で罪を償うと言った。同じ言葉をこの者達の前で言えるか?そんな事でお前の罪が償えると思うのか?お前があんな物を生み出したのがそもそもの始まりだ。そうでなければあのような悲劇は起こらなかったのだ。…全てお前のせいだ」

「…やめろ…やめろ!!」

 

彼女の心には大きなダメージとなっている様だ。

映像の人々の声も本当で無いかもしれない。だが当時の生の声など録音されている筈も無い。録画もされているとは思えない。だが今の束にはそんな事を考える余裕は無かった。

 

 

…ヴンッ!

 

 

「…!?」

 

すると突然その場の映像や声がぴたりと止んだ。そして次に映し出されたのは……ある飛行機の映像だった。

 

 

……ドガァァァァァァァァンッ!!

 

 

「!?」

 

突然映像に映る飛行機が爆発し、炎上した。

 

「お前を信じた者の死だ。あれもお前のせいだ」

「!!…ま、まさか…」

「気づいたか。……もうひとつ真実を教えてやろう。あれには………」

「!!!」

 

それを聞いた途端束の目が今まで以上に大きく開かれた。

 

「……それが真実だ」

「そ、そんな……。そんな事、そんな事全く…」

「…お前のせいだ。お前が殺したんだ」

「ちが…違う…」

「お前が元凶だ。お前のせいだ」

「…いやだ…いやだ…!」

 

束は目も耳も閉じるがそれでも飛行機の爆発音、そして謎の声、そして束を責める声は止まない。

 

お前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだ…

 

「誰でも良い!箒ちゃん…ちーちゃん…いっくん…クーちゃん…ひーくん…みーくん…誰か、誰か助けて!!」

 

無意識からか束は目も耳も塞いだまま走り出していた。この場からただ逃げたい。その気持ちしか無かった。すると、

 

「姉さん!」

「…!!」

 

突然束を呼びかける声がした。よく見ると箒だった。笑顔だった。

 

「姉さん大丈夫です!私はここです!」

 

箒は束に手を差し伸べる。

 

「箒ちゃん!」

 

束も箒に向かって手を差し伸べた。そしてふたりの手が結ばれる。

 

…ドロドロドロドロッ

 

「…!?」

 

すると突然箒の表情がドロドロに崩れ始め、別の顔になった。その顔は言った。

 

 

「我に従え、…篠ノ之束ぇぇぇ!!」

 

 

「~~~~~~~~~~~~~~~~」

 

 

…………

 

数分後、

 

ウィィィィン

 

「主」

スコール

「お話は済んだ…ってあら、寝ちゃったの?」

オーガス

「うむ。話疲れた事と酒による酔いのためか眠られてな」

「………」

 

束は寝息を立てて眠っている。

 

オーガス

「スコール、部屋までお連れしろ。十分な休息を取れるように。それから…博士は暫くこちらにおられるそうだ」

スコール

「え?…そう、それは楽しみね。…わかったわ」

 

そう言ってスコールは束を運んで行った。

 

オーガス

「…Mよ」

「は」

オーガス

「仕事に掛かろう…」




束が聞かされた真実とは。
そして束に聞こえた声とは。

次回より新展開です。
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