IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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鈴・ラウラ・セシリアが新たな力を得たその時、箒もまたDアンジェロと戦っていた。スタミナ切れが近づき、剣を持つ腕も疲れがピークに来ていた箒だったが目の前で一夏から貰ったリボンが断ち切られ、怒りを爆発、力とやる気を取り戻した。それによって自分の力は一夏への想いによって得られるんだと箒は悟る。そんな箒を応援するように紅椿が光を放ち始め、衝撃鋼化という新たな力を発動。自らの想いと束の想いの両方から力を得た箒は一気に敵を撃破するのだった。シャルロットも新たな武装でグリフォンを撃破し、全員何とか無事と安心する。
……するとそんな彼女達のすぐ傍に空間転移と共にグリフォンが出現し、同時に簪に攻撃してくるのだった。不意を突かれる形となった簪は…。


Mission144 簪、王との対面

グリフォン

「グアァァァァァッ!」ズギュ―――ンッ!!

「!!」

全員

「「「簪(さん)!」」」

 

グリフォンのレーザーは真っすぐ簪に向かう。思わぬ奇襲で避ける暇もない。直撃を覚悟し、簪は思わず目を閉じる。

 

 

…キィィィィィィィィンッ!

 

 

その時彼女の手の中にあったものが光を放ち始めたのだった。彼女に受け継がれたあれが…。

 

 

…………

 

「……………………………?」

 

簪は不思議に思った。いつまでもグリフォンの攻撃が来ない。何故かと簪はゆっくり目を開けてみる。

 

「……!!」

 

???

 

そこは今までの、自分がいた場所とは全く違う場所だった。周りは白い霧に覆われていて向こう側は全く見えない。そして自分は空を飛んでいたはずなのに地に足がついている。おまけに弐式も展開していない。わかっているのは周りに皆も敵の姿も全くなかった事。

 

「ここ………どこ?……皆、どこ!?返事して!」

 

必死に皆を呼ぶ簪だったが、

 

……………

 

しかし簪の声に答える声はなかった。簪の心はどんどん不安になる。

 

「………私、もしかして……死んだの?…………今の、グリフォンの攻撃で」

 

頭に過るのは最悪の結末。静寂が支配する空間。

 

 

……ズンッ

 

 

「……!」

 

その時遠くから何か音が聞こえた。気のせいではない。そしてそれはよく聞くと、

 

……ズンッ……ズンッ……ズンッ……ズンッ……

 

「……な、なに!?」

 

一定のリズムで聞こえてくる。それはまるで…

 

ズンッ……ズンッ……ズンッ……

 

「……足音?…動物?で、でもこんな大きい足音立てる動物なんて…!?」

 

…ズンッ…ズンッ…ズンッ…ズンッ……

 

足音らしいそれは段々と大きくなっている。つまり霧の向こうから自分の今いる所に近づいてきていると簪は理解した。

 

「に、逃げなきゃ!」

 

恐怖のあまり簪は逃げようとするが、間もなく自分の意変に気づく。

 

「…?な、なんで?足が動かな……!!」

 

簪は動かない自分の脚を不思議に思って見てみた。

 

(嘘…!足が…凍ってる!?)

 

いつの間にか自分の足先から膝辺りまで氷に覆われていることに。気づかなかったのは冷たさを感じなかったからだろうか。そうこうしている間にも足音らしい音は近づいてくる。

 

ズンッ…ズンッ…

 

「い、いや!助けて!お姉ちゃん!海之くん!皆!」

 

動くこともできず、周りに誰もいない事をわかっていながらも声を立てる簪。足音は数メートル先まで迫ってきている程近づいていた。そして……

 

ズンッ!…ズンッ!

 

「!!」

 

やがてそれは霧の向こうからゆっくりと姿を表した…。

 

 

「………」

 

 

簪の考えていた通りそれは確かに動物、近いなら豹の様な顔をしている。だがその大きさは他の動物とは比べものにならない程大きい。しかし何よりも驚くことは、

 

 

「…頭が……三つ!?」

 

 

目の前のそれは三つ首の、三つの頭を持っていた。それが千切れた鎖を引きずってゆっくり歩いてきたのだ。見たところ毛がほとんどなく、強固な肉体のその全身はうっすら氷に覆われている様に見える。そして真ん中の頭はよく見ると口の端から冷気が、向かって右側の頭は炎が、左側の頭は電気が漏れていた。それが今、簪の目の前で足を止め、動けない簪を見下ろしている。

 

三つ首の獣

「グルルルゥゥゥゥ……」

「あ…ああ…」

 

あまりにもその異形な姿に恐怖し、涙を浮かべ、声も出せない簪はその場に座り込んでしまう。そんな簪に獣の中央の首が顔を近づける。

 

獣(中央の首)

「………」

「ひっ…!」

 

怯える簪を黙って見る獣。そして暫くして動きがあった。

 

獣(中央の首)

「……………………なんと弱い」

「! え!?今…喋った!?」

 

言葉を発する獣。簪は驚きの余り声が変になる。

 

獣(右の首)

「弱い。そして脆い…。奴等はこんな弱き人間に我を託したのか…。全くなめた真似をしてくれる。表に出ていけさえすれば直ぐに食い殺してやるものを」

「……!!」

 

簪は一瞬「食い殺す」という言葉に動揺したが声には出さなかった。目の前の獣は言葉を続ける。

 

獣(左の首)

「……だが貧者とはいえ、それでも奴等が見込んだ人間。本来の力を失ったとはいえ我を短い時の中で操るとは…多少の見込みはあるという訳か」

「…え、…操る…?」

 

何を言われているのかわからない様子の簪。

 

獣(中央の首)

「…立て人間よ。食いはせん」

「……」

 

相変わらず茫然としている簪に目の前の獣は、

 

獣(中央の首)

「…立てぇぇぇい!!」

「は、はい!!…わっ!とっと…」

 

そう言われて簪は思わず直ぐ立ち上がる。足が凍っているのでよろけそうになるが何とか立てた。

 

獣(中央の首)

「それで良い…」

 

中央の首が代表しているのか左右の首はもう喋らない様だ。

 

「あ、あの、…何もしない…の?」

「望むなら骨まで平らげてやるが?」

「い、嫌ですごめんなさい!………あの、…言葉が通じるなら良いんだけど、……貴方は?」

 

何もされないのと話が通じる事に安心したのか、少しずつ冷静になりながら簪は目の前の獣に問いかける。すると獣は答えた。

 

ケルベロス

「……我は王。全てのケルベロス族を統率する王よ…」

「…え、…ケルベロス?私のケルベロスと…同じ名前!?」

 

その名前に簪は驚く。

 

ケルベロス

「驚くことは無い。何故ならそれは我なのだからな」

「…え?それってどういう…?」

ケルベロス

「言葉の通りだ。貴様の持つ魔具「ケルベロス」は我が力が変化した物よ」

「! 私のケルベロスが…貴方!?」

 

衝撃の事実に驚きを隠せない簪。ケルベロスは更に続ける。

 

ケルベロス

「最も真に変わったものでは無いがな。最早我は現実では姿を表すことは叶わぬ故…」

「…え、現実ではって、ここは現実じゃないんですか?…じゃあ私はやっぱり…」

 

ケルベロスの言葉に自分はやはり死んだのかと思う簪だったが、

 

ケルベロス

「案ずるな人間。現実では無いが冥府でもない。…ここは貴様の中、正確には貴様の纏っているものの心の中だ。そこに我が力を繋いでこうして姿を見せている。周りの霧はそのためだ」

「纏っているって…弐式の事?心って…コアの事かな?……あの、さっき何があったんですか?」

ケルベロス

「貴様があの下らん傀儡に撃たれかけた時、我が力を開放して救ってやったのだ。ありがたく思え」

「そ、そうなんだ…、ありがとうございます。………!で、でも皆はどうなったんですか!?もしかしてあの攻撃で!皆まだ戦ってるんじゃ!」

ケルベロス

「心配はいらん。ここは外の世界と違い、時という概念は無い。あの瞬間で時は止まっている」

「!…そ、そうですか」

(時の概念とかなんかわからない事だらけだけどもう今はどうでもいいや…)

「……あの、もうひとつ聞きたいんですけど、…なんで私を?」

ケルベロス

「…始めから総て話さんとわからんのか?」

「ご、ごめんなさい。ちょっと頭が混乱しちゃって…」

ケルベロス

「…まぁいい。…貴様が託された者だからだ。奴等からな」

「…え、託された?…束さんの事かな?それか…」

 

簪が考えているとケルベロスが先に言う。

 

ケルベロス

「しかし姿を見せただけで震えて動けない様な小娘に我を与えるとは…。我も随分なめられたものよ」

(…驚くなという方が無理だと思う…)

 

そんな事を心で考えながら簪は聞いてみる。

 

「あの…貴方が言っている人って、…もしかして海之と火影っていう人達ですか?」

ケルベロス

「…?何を言って……そうか、奴らは今はそんな名だったか。…そうだ、奴らは我らに力と自らの強い意志を示した。それ故に我も力を貸してやることにしたのだ」

「やっぱりそうなんだ…」

(…でも…一体いつの事なんだろう…?前に生徒会室で聞いた時もそんな話はなかったな…。もしかして、前に海之くんが言ってた大罪っていうのと何か関係があるのかな…?)

 

簪が考えているとケルベロスが話しかける。

 

ケルベロス

「…それでどうするのだ人間?」

「…え?どうする、って?」

ケルベロス

「再び表に出ていくか?言っておくが我が貴様を助けるのはこの一度きりだけだ。二度目は無い。再び先の様な事があれば貴様は只ではすまん」

「…あ…」

 

簪は先程の事を思い出していた。ケルベロスの言う通り、あの時救われなければ死んでいたかもしれない。死ぬまではいかなくても大怪我を負ったのは避けられなかっただろう。一瞬ではあったがあの時の恐怖ははっきりと簪の記憶に焼き付いていた。

 

「……」

ケルベロス

「恐怖したか?」

「……」

ケルベロス

「もう戦うのは嫌になったか?」

「……」

 

簪が黙っているとケルベロスは、

 

ケルベロス

「…………所詮この程度か。どうやら奴らの見込みは外れたようだな」

「…え?」

ケルベロス

「本来我を操るには多少なりともその資格を、力を持つ者である事を示さねばならぬ。奴らが、あの者たちが王たる我を託すのにふさわしいと思った者。どれ程の者かと期待し、何れそれがわかる時が来ると思っていたが…、一度の恐怖を味わった位で足が竦んで動けなくなるとは…。奴らの見込み違いだったか…」

「…海之くんと火影くんが、…私を…」

 

そう言ってケルベロスは身体の方向を変え、歩き出そうとする。

 

「…ど、どこ行くの?」

ケルベロス

「恐れる者に力を与える意味は無い。我は出ていく」

「出ていくって…どうやって?さっき貴方は現実には帰れないって…」

ケルベロス

「…確かに真の我ならば出ていく事はできん。ならあの傀儡共と同じようにやるまでよ」

「…傀儡…って、グリフォン、とかの事?」

ケルベロス

「さよう。奴らと同じ様な機械の身体であれば可能だろう。貴様の持つそれを力の媒体とし、我は復活する。そして奴らの身を骨まで食らってくれるわ」

「!! そ、そんな!お願い!そんな事止めて!!」

 

必死に止める簪。そんな彼女にケルベロスは言う。

 

ケルベロス

「…では貴様が身代わりになるか?そうすれば表の人間共は助けてやろう」

「……え」

 

そう言われて簪は一瞬黙る。

 

ケルベロス

「我は偉大なるケルベロス族の王。先ほども言ったが戦う意志も持たぬ者に使われる意図はない。しかし弱き者とはいえ貴様は我を手にする者だ。貴様が割れの腹を満たし、力となるというのであればその意志を認め、外の者達だけは助けてやろう。どうだ?」

「……」

 

簪は答えられなかった。このままでは皆がグリフォンもろとも目の前のこの獣に襲われる。それに対して自分が犠牲になれば少なくとも皆が襲われることはない。しかしそれは自分の死を意味する。「死」。その言葉が簪の言葉に封をしていた。

 

ケルベロス

「できぬだろう?しかし気に病む事は無い。所詮人間は誰も自分が助かれば良いのだ。自分さえ助かれば他はどうなっても良い。それが人間の本性だ。貴様に限ったことではない」

「……」

ケルベロス

「…我はそろそろ行くぞ。空腹なんでな」

 

そう言ってケルベロスは簪に後ろを向けて去ろうとする。

 

「……待って!」

 

突然声を上げる簪。ケルベロスは立ち止まり、簪の方へゆっくり振り向く。

 

ケルベロス

「……」

「……本当に、私を食べたら……皆を襲わないなら……いい。私を……食べても良い!」

 

そうはっきり答える簪。

 

ケルベロス

「……ほう。貴様、仲間の為に命を捨てるというのか?」

「……うん!」

ケルベロス

「死が怖くないと?」

「怖いよ!当り前じゃない!だって死んじゃうんだもの!正直こうやって貴方と向かい合っているだけでも凄く怖いよ!怖くない訳ないでしょ!」

 

簪は大声でそう反論する。

 

「……でも私が死ぬこと以上に、皆が死んでしまうかもしれないのはもっと嫌なの!お姉ちゃんが、海之くんが、本音が、火影くんや皆、私の大切な人達が危険な目に合うのはもっと嫌なの!私の命ひとつで皆が助かるかもしれないのなら…私はどうなってもいい!」

ケルベロス

「……」

「それに…さっき貴方は人間は全部自分さえ助かれば良いって思ってるって言ってたけど、でも決してそんな人ばかりじゃない!確かに貴方の言う通りそう言う人が多いのは事実だよ。だから戦争とかいろんな事件が何時まで経っても絶えない…。何年、何十年、ううん何百年経ってもずっと…人は学習してないって言われても仕方ないと思う…」

ケルベロス

「さよう。それが人間だ」

「…でも全ての人がそうって言ったらそれは絶対間違ってる!少なくとも私の知ってる人は皆そんな人じゃない!自分の身を犠牲にしても、盾にしても、大切なものを守る。そんな優しい心の人ばかりだよ!私も何回も助けられた!だからこそ好きになった!凄く感謝してる!だから…私も命を懸けて、大切なものを守りたいの!」

ケルベロス

「……」

「だからお願い!皆を襲わないで!私ひとりの命で済むなら…そうして!!」

 

簪は両手を広げて必死で訴える。

 

「……」

ケルベロス

「………良かろう。ならば、望み通り食らってくれるわ」

 

そう言うとケルベロスは再び簪の方に身体を向き直す。そして鼻先を簪に近づける。

 

ケルベロス

「グルルルルル……」

「……」

 

簪は涙を浮かべながらも怯まず向かい合う。

 

ケルベロス

「…グアアアアアオォォォォォォ…」

「ひっ……!」

 

目の前で大音量の咆哮を上げるケルベロス。簪は怯えるが先ほどの様に座り込む様な事はせず、立っている。そんな簪を見てケルベロスは、

 

ケルベロス

「…………………これか」

「…………え?」

 

突然ケルベロスが発した言葉に簪はきょとんとする。

 

ケルベロス

「自らを盾としても想う者を守ろうとする力。それが奴らが貴様に見た強さ、という訳か…。」

「…私の…強さ?」

ケルベロス

「友を思う心、というものか。我も嘗て同胞の仇を打とうと奴に挑んだ事がある。似た様な事かもしれんな。……以前の我なら下らんと思うたが、何故か今は不思議と面白い気分よ。…我もあやつらの毒に当てられたか。……ふっふっふっふ…」

 

笑った様な気がしたケルベロス。

 

「……あの、…食べ…ないの?」

ケルベロス

「魂まで吸いとってほしいのか?」

「……皆を襲うなら」

 

そういう簪の表情は真剣だ。

 

ケルベロス

「落ち着け人間。…もう良い」

「!…じゃ、じゃあ何もしないの?…本当?」

ケルベロス

「そう申しておる。第一貴様ひとり如きで我が腹が満たされる訳なかろう。……それにやりかたはどうあれ、汝は我に示した」

「ほ、本当に…本当?」

ケルベロス

「そんなに疑うなら今すぐ食らってやっても良いぞ?」

「し、信じます!許してください!」

 

簪は再度謝る。

 

ケルベロス

「更に申せば貴様は大事な事を忘れている。今の我は貴様の纏うそれによって力を得ている身。貴様の死は我の死をも意味するのだ。云わば真の主よ。貧弱極まりない主だがな」

「ご、ごめんなさい。……あれ?じゃあさっきの私を無視して外に出ていくっていうのは…」

ケルベロス

「当然我の戯言だ。ああでも言わぬ限り言葉を発しなかっただろう?」

(………王様の割にはなんかずるいなぁ)

ケルベロス

「…何か言いたそうだな?」

「う、ううん!何でもないよ!」

 

簪は慌ててごまかした。

 

ケルベロス

「…まぁいい。……にんげ、いや娘よ。今一度問う。汝はどうしたいのだ?」

 

ケルベロスの問いかけに簪は、

 

「……私は……戦いたい。守るために、皆の力になりたい。でも私はまだまだ弱い。だから…貴方さえ良ければこれからも、私に力を貸してほしい…!」

 

そうはっきり答えるのだった。

 

ケルベロス

「……良かろう。娘よ、弱さを自覚しているのであれば、強くなれ。そして足掻け。恐れるな」

「……うん。わかった」

 

簪はケルベロスに約束した。

 

ケルベロス

「では汝を現実に戻すとしよう。それから…汝に我が眷属をひとつ使わす。使いこなしてみせるが良い」

「…眷属?」

ケルベロス

「直ぐにわかる。…では帰るがいい。汝のいるべき場所へ…」

 

 

…………

 

グリフォン

「グアァァァァァッ!」

 

ズギュ―――ンッ!!

 

全員

「「「簪(さん)!」」」

 

…キィィィィィィィィィィンッ!

 

(! ケルベロスが!)

 

バシュゥゥゥゥゥッ!

 

ケルベロスが光を放ったと同時にグリフォンのレーザーが何かに弾かれたかの様に消える。

 

セシリア

「! レーザーが弾かれました!」

「な、何が起こったの!?」

 

光が徐々に強くなっていく。そして、

 

 

シュバァァァァァァァァァァァ!!

 

 

「!!」

ラウラ

「うわ!」

シャル

「な、何この光!?」

「簪!」

 

ケルベロスの放つ光が真っすぐ見れないくらい強いものになり、皆思わず目を閉じる。

 

セシリア

「い、今のは一体………!」

ラウラ

「なっ!」

「か、簪!?」

「……」

 

 

「グルルルルルルル……」

 

 

その場にいた全員が一瞬言葉を失った。簪の打鉄弍式の背後にグリフォンやファントムとほぼ同じ位の大きさの機械の獣が存在していたからだ。狼の様な風貌で四つ足。最大の特徴は三つの頭がある事。どれも首輪をしており、そしてその口からは冷気に似たものが溢れている。よく見ると皮膚表面にもうっすら氷が張っている。ファントムが火、グリフォンが雷と例えるならこの獣は氷だろうか。そんな異形な存在が簪の直ぐ後ろにいた。

 

 

「…ガアァァァァァオォォォォォォ!!」

 

 

「ななななな、ナニアレ!?」

ラウラ

「怪物!?頭が三つもあるだと!?」

「ま、まさかあれもグリフォンやファントムと同じものか!?危ない簪!離れろ!」

セシリア

「い、いえ、お待ち下さい箒さん。何か変ですわ」

「………」

「……守って…くれたの…?」

「グルルルルル……」

 

その機械の獣はまるで簪の指示を仰ぐかの様に簪に顔を近づける。

 

シャル

「あの獣、簪の言う事を…聞いてる?」

「力を…貸してくれるの?」

「……ガアァァァァオォォォォォッ!」

 

その獣は暫し黙った後、高々と咆哮を上げた。

 

「……ありがとう。……宜しくね」

 

何を言っているのか他の皆にはわからなかったが簪はそれを肯定の印だと受け取ったようだ。そして簪は目の前のグリフォンに目を向け、宣言した。

 

「行って、……ケルベロス!」

ケルベロス

「グアァァオォォォン!!」ドンッ!

 

簪の指示でケルベロスは駆け出す。ケルベロスの脚が付く場所には自らが生み出す冷気によるものだろうか、空気が凍って足場となるようなものが形成され、それによってまるで宙を駆ける様な動きで移動できていた。

 

グリフォン

「グオォォォォッ!」

 

それと同時にグリフォンも突進する。

 

ドオォォォォォォォォォンッ!!

 

ケルベロスとグリフォンが正面からぶつかり、そのまま機械の獣同士の高速戦に突入する。互いの突進の衝撃がぶつかり、爪が斬りかかる。グリフォンのクチバシが刺さり、ケルベロスの牙が食い込む。

 

グリフォン

「グオォォォォォォォッ!」

ケルベロス

「ガアァァァァァァァッ!」

「ナナナ、ナンカモノスゴイコトニナッテナイ!?」

シャル

「ま、まるで怪獣映画みたいだね…」

「わ、私達は入らない方がよさそうだな…」

 

多くが呆然としている中、簪が動く。

 

セシリア

「…簪さん?危険ですわ!」

「あの子だけ戦わせるわけにいかないよ」

ラウラ

「あ、あの子って…、やはりあれを動かしているのは」

 

言い切る前に簪も戦いに参加する。グリフォンの注意をこちらに反らすために春雷を撃った。

 

グリフォン

「!…グオォォォォォッ!」ドドドドドドドドドドドドッ!

 

邪魔をされた事に怒ったのか、グリフォンは銀の鐘を簪に向けて撃つ。

 

「! 簪!」

ケルベロス

「オォォォォォォォォッ!!」

 

キイィィィィィィィンッ!…ドドドドドドドドドドンッ!

 

グリフォン

「!」

 

するとケルベロスの力によるものか、氷の壁が簪の周囲に形成された。それによって銀の鐘の攻撃が防がれ、簪への攻撃が通らずに終わった。

 

「ありがとう!良い子ね!」

シャル

「あの三つの頭の奴…やっぱり簪を守ってる!」

セシリア

「じゃあやっぱりあれは簪さんの…!」

「どうやら間違いないようだな。先ほど簪はあの獣をケルベロスと言ったし」

「今度はこっちの番だよ!…山嵐!」

 

バリバリバリンッ!ドドドドドドドドドッ!

 

簪は山嵐を発射した。氷の壁を突き破り、ミサイル群がグリフォンに向かう。グリフォンは追尾してくるミサイルを避けるために旋回する。

 

グリフォン

「グオォォォォォォ……」

 

ドドドドドドドドンッ!

 

するとグリフォンも逃げ回る間にチャージしていたのか銀の鐘を起動させ、それを迫りくるミサイルめがけて発射。結果全てのミサイルを撃ち落とす。

 

「ケルベロス!お願い!」

ケルベロス

「オォォォォォォォ……」

 

キィィィィィン……ドドドドドンッ!

 

ケルベロスの力か、周囲の空気中の水分が凍りだした。…それは次第に巨大な氷柱となり、それが矢のようにグリフォン目掛けて発射される。

 

ズガガガガガガガガッ!!

 

グリフォン

「グオォォォォォォォ!!」

 

氷の矢はグリフォンの翼に立て続けに命中。それによって翼は破壊され、銀の鐘が発射不可能になったと同時に大ダメージを受けた様だった。

 

「よし!とどめ行くよケルベロス!合わせて!」

ケルベロス

「グルルルルルルル……」ギュオォォォォォォォ……

 

三つの口にそれぞれエネルギーがチャージされる。そして、

 

ケルベロス

「…グアァァォォォォォォッ!!」

 

ドギュ―――――ンッ!!

 

三つの口からエネルギーが撃ち出され、更にそれはひとつにまとまって高出力のレーザーとなった。レーザーの軌跡が凍り付いていることからそれは氷のブレスといえるものであった。

 

「春雷…行けぇ!」ズギュ――――ンッ!!

 

反対側から簪も春雷をグリフォンにロックオンして発射した。

 

グリフォン

「!!」

 

 

ドガガガガアァァァァァァァン!!!

 

 

 

両者から挟まれる形で攻撃を受けたグリフォンは木端微塵に破壊されたのだった。

 

「やった……。はぁ……」

ケルベロス

「オォォォォォォォォォ……」

 

ケルベロスは咆哮をあげると光に包まれて消えた。

 

「…ケルベロス。…ありがとう」

 

手に持つそれに向かって簪は感謝を告げるのだった。そんな簪の下に皆が飛んでくる。

 

セシリア

「簪さん、大丈夫ですか!?」

シャル

「って言っても結構大丈夫だったよね。…っていうか凄いねさっきの!」

ラウラ

「ああ全くだ。しかしあれは何なのだ?」

「あ、うん。あれはケルベロスだよ。わかりやすく言えば…私のお友達、かな」

「お、お友達って…。ってかやっぱりケルベロスって」

「皆、興味あるのはわかるが今は早く学園に戻ろう!一夏が心配だ!」

セシリア

「そうですわね!急いで」

 

~~~~~~~~~

 

とその時、ラウラに通信が入った。

 

ラウラ

「はい。…教官!ええこちらは皆無事です。………なんですって!一夏が!?…了解しました」

「ラウラ!今のはどういう意味だ!?」

セシリア

「一夏さんがどうかされましたの!?」

ラウラ

「……一夏は……」

 

果たして一夏に何があったのか…?




※次回は30日(土)の予定です。

アンケートにご協力頂きましてありがとうございました。
結果と致しましては、今後のストーリーを知りたいという票20、知りたくない票が10と、知りたいという意見が倍という事でした。ですのである時点で今後のストーリーを一話分(おまけ程度)を使いまして告示する予定で進めております。知りたくないという方のご意見も大切にさせていただきます。

重ねてありがとうございました。
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