IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
そして気が付いた時、簪は今までと違う場所にいた。何が起こったのか困惑する簪のもとへと現れたのは彼女の武器であり、嘗てダンテが戦った魔界の上級悪魔、キングケルベロスであった。彼女の危機を救ったというケルベロスはこれからどうするのかと尋ねるが、一瞬の死の恐怖を味わったことで直ぐに返答ができず、ケルベロスはそんな彼女を見限ろうとする。
……しかし簪は仲間や大切な人達を救うためなら命を差し出す覚悟があると、そしてこれからも守るために戦いたいと打ち明ける。彼女の力強い答えを聞いたケルベロスはこれからも彼女の力になる事を約束。更に自らの眷属であるケルベロス(氷)を支援機として贈る。ケルベロス達の力を得た簪はグリフォンを無事撃破。今度こそ事態は収束すると思ったのだが…。
一夏に何があったのか、話は箒達がアンジェロ達を追いかけていった直後にまで戻る。
M
「貴様は私が倒す!織斑一夏!私の黒騎士の力を思い知るが良い!」
一夏
「千冬姉に手出しはさせねぇ!俺の白式の力を見せてやる!」ドンッ!
黒騎士を纏うMと一夏の戦いが始まった。一夏は先手を打ってMに攻撃を仕掛ける。
M
「相変わらず単調だな。しかも剣も持たんとは」
一夏
「俺の武器が剣と荷電粒子砲しかねぇと思うな!」
ギュィィィィンッ!!
すると一夏の左腕から突如ビームの爪の様なものが出現した。ラウラのビーム手刀より遥かに大きい、一見ビームクローのような物である。
M
「!」
ガキィィィィンッ!!
それをMは同じく展開させた大型のランスで防ぐ。
M
「…ほぉ、貴様のそれは荷電粒子砲以外にもそんな使い方があったか」
一夏
「剣と射撃の訓練で最近まで忘れてたんだけどな!でもこっちの方が荷電粒子砲よりもずっと俺向きだぜ!」
M
「自らのISの機能も把握できていないとは…。こんな愚か者に一度とはいえ追い詰められたと思うと…全く虫唾が走る」
一夏
「何をぉぉぉ!」
ガキンッ!ガキキキンッ!ガキンッ!!
一夏は左腕のビームクローで何度も襲い掛かるがMはそれを全て自分のランスで防ぐ。そんなうちに一夏は違和感を感じた。
一夏
「おい!なんでそっちから仕掛けてこない!さっきから受け止めてばかりじゃねぇか!」
M
「ほぉ、気付いたか。ただだた単純に攻めているだけだと思ったぞ。…心配しなくてもとっくに仕掛けている」
一夏
「何?」ドゴォォォンッ!「ぐあああ!」
その時一夏は後ろから何かに襲われる感じがした。同時にMはランスで怯んだ一夏を切り払う。
ガキィィィンッ!
一夏
「ぐぅっ!な、なんださっきの後ろか」ドォォォォンッ!「うわぁぁぁ!」
すると再び後ろから何かに襲われた。Mは離れているので剣などではない。銃の類でもない。
一夏
「な、なんださっきから!どこから撃たれてる!?」
一夏は周囲を見渡すが何もない。すると、
一夏
「…は!」
ガキィィンッ!
一夏が謎の攻撃に意識を飛ばしている間にMがランスで仕掛ける。それを間一髪雪片で防ぐ。
一夏
「ぐっ!」
M
「望み通り仕掛けてきてやったぞ。よそ見をしていていいのか?」
一夏
「くっ、ふざけやが」ドォォンッ!「うわぁぁ!」
すると再びどこからか攻撃を受けた。一夏は堪らず離れる。
一夏
「ど、どうなってるんだ!」
M
「私の攻撃を止めた褒美に種明かしをしてやるか」
ヴゥゥゥゥン…!
するとMの左右に突然ふたつの物体が姿を現した。形状はビットの様にも見える。
一夏
「! 何もない所からいきなり出た!?」
M
「ゼフィルスのシールドビットを改造したものだ。以前の様なシールド機能は無くなったが…そのかわりこいつには面白い機能があってな」
ヴゥゥゥンッ…!
一夏
「き、消えた!」ドォォンッ!「ぐっ!」
一夏の目の前でビットは忽然と姿を消した。更にそれからほぼ一瞬で一夏に先の様な衝撃が走った。
一夏
「くっ、姿を現したり消したり……まさか!」
M
「わかったようだな。今のも、そして先の攻撃もあれによるものだ。ステルス迷彩で回りに溶け込み、その状態のままレーザーもしくは直接攻撃もできる。ハイパーセンサーにもレーダーにも映らない」
一夏
「ステルス…だって!?くっ、厄介なもんを…!」
M
「さぁ、さっさとアレを使ったらどうなんだ?貴様お得意の零落白夜を」
一夏
「何!?」
M
「はっきり言ってやろう。あれを使わない限り私を一気に倒す事は不可能だ。本気で私を倒そうと考えるなら残された全ての力を使ってあれに懸けるしかないのではないのか?」
一夏
「あれはとっておきだ!そう簡単に出すのは惜しいんだよ!」
一夏は強がるがMは見抜いていた。
M
「正直に言え。貴様のISは通常よりもエネルギーの消耗が激しい。武装もエネルギー消費量が大きい武装ばかりだ。荷電粒子砲に至っては数発であっという間にエネルギー切れを起こしてしまう。違うか?」
一夏
「…くっ」
M
「おまけに今回はあのSEを回復してくれる赤いISもいない。SEをよく考えながら戦わねばあっという間に戦闘不能になるだろう。故に荷電粒子砲も零落白夜も無駄に使えんのだ。…無様なISだな。取り巻きがいないとまともに戦えないのか?」
一夏
「なんだと!?」
M
「貴様など私が直接手を出すまでも無い。こいつらに任せよう」
ガシャガシャンッ!ビュビュビュビュンッ!
Mは再びビットを展開した様だ。目に見えない衝撃が一夏に襲い掛かる。
一夏
「くっ!見えないうえにセシリアのビット以上に縦横無尽に襲ってくる!たった二機しかねぇってのに!」
M
「貴様は私に指一本触れることもできず、そいつにISも身体も削り取られるのだ」
一夏
「そうはいかねぇ!アラストル!トムボーイ!」キィィィィィィンッ!
一夏はアラストルのスピードUPの機能をトムボーイの出力で上げ、離脱しようとする。だが、
一夏
「このスピードについてこれるか!?」ガキィィィンッ!「ぐあ!…な、何!?」
急に一夏を襲う一撃。だがやはりMは動いていない。
一夏
「Mは動いていない。……まさか今のも!」
M
「言ったろう?スピードに特化していると。そいつのスピードは以前貴様と戦った時のスピードを計算して作ってある。その妙な籠手と剣のスピードにも対応可能だ」
一夏
「くっ!まさかアラストルとトムボーイを加えたスピードにまで追いついてくるなんて!」
M
「まだ言葉を発する余裕があるな。…ではこれはおまけだ!」
ズドドドドドドドッ!
Mは更に自らの腕部から機関砲を乱射してきた。
一夏
「くっそ!考えさせる気もねぇって事か!」
一夏は目に見えない敵の相手をしながら対策を必死に考えていた…。
…………
???
その頃、オーガスはMを通じてその光景を見ていた。
オーガス
「…ククク、Mの奴随分張り切っているようだな…」
(さぁ…、果たしてこの戦いで奴のあれが機能するかな…)
ウィィィン
スコール
「オーガス、入るわよ」
オーガス
「スコールか…。ご苦労だったな」
スコール
「ほんと苦労したわ。久々の戦いだったといってもね。私達のISは皆ボロボロだし、オータムやあの子達も強がっていたけど戻ってきたらすぐに眠ったわ。また暫く治療が必要ね。…あの子は?」
オーガス
「問題ない。…だがまだまだ甘いな。まだ切り札を隠しているとはいえ、愚かにも自らの手の内を敵に教えるとは」
スコール
「それだけ自信があるって事じゃないの?」
オーガス
「…まぁ奴の好きにさせておくか。それよりどうだ?実際奴らと戦ってみた感想は」
スコール
「……そうね。確かに強いわ。力は勿論だけど……なんというか、それ以上に強い信念がある。正直子供とは思えないわね。……ああ、あと変な事言ってたわ」
オーガス
「…どんな事だ?」
スコール
「確か……悪魔でも人を愛する、とか」
その言葉を聞いたオーガスは不気味に笑った。
オーガス
「…………そうか…悪魔、か。………クククク」
スコール
「……?ああ、あと御免なさい。オータムがあんな馬鹿な事したのは私達を助けるためで」
オーガス
「馬鹿な事?……ああ、あの蠅を落としかけた事か?気にするな。予定に変わりはない。寧ろ奴らの力を確実に消耗することができた分よくやったと言っておこう」
スコール
(…蠅…)
「…そ。じゃあ私は部屋に戻るわね。休みたいし」
そう言ったスコールが部屋を出ようとすると、
オーガス
「奴らに学園襲撃の事を教えたのは何故だ?」
スコール
「………別に。個人的な約束よ」
ウィィィン
オーガス
「ふん」
(……悪魔でも人を愛するか。………奴も嘗て同じ事を言った。………クククク。全く、親子共々愚かな奴等よ…)
…………
場所は戻って一夏とMの戦い。スピードでビットを撒くことができず、更に見えない敵ということも重なり、一夏は苦戦していた。雪片とアラストルの二刀流で防御重視で被害を最小限にしつつ対策の手段を考えていた。
M
「何時まで逃げ回っているつもりだ?荷電粒子砲やその剣の雷弾を使っていないとはいえ、そのままでは何れエネルギー切れになるぞ?」
一夏
「くっ!お前にそんな事言われなくても俺が一番よくわかってらぁ!」
M
「ならさっさと零落白夜を使ったらどうだ?私は無防備だ。一撃必殺できるかもしれんぞ?」
言葉の通りMはビットを動かす事だけに集中していて一向に攻撃してくる気配がない。まるで己の獣を使って獲物を刈り取る主人の様だ。すると、
一夏
(確かにこのままじゃああいつに一撃入れる前にやられちまう!……こうなったらアレを使うしかないか!SEを結構使ってしまうけど今の俺にできる方法といえばこれしかねぇからな!)ジャキッ!
一夏は何かを思いついたのかアラストルをしまい、雪片を両手で持った。そして目に見えぬビットが一夏に向かって迫ってきた………その時、
一夏
「…食らえ!零落白夜!」キュイィィィィィィンッ!
一夏は零落白夜を起動させた。
M
「それで斬るつもりか?だが貴様に私のビットの動きを……何!」
ババババババババババババッ!
Mは驚いた。一夏の雪片から発せられたエネルギーがまるで一夏を覆うような形に変化したのだ。すぐ直前にまで迫っていたらしいビットは避け切れず、広がったエネルギーにぶつかる。
M
「なんだあの形態…バリアか?しかしそんなものなど私のビットには……!」
Mはバリアらしきエネルギーにぶつかったビットを回収しようとした。しかしどういう訳かコントロールできず、ぶつかったところで止まり続ける。
ガガガガガガガガガガッ!
M
「どういう事だ…!?何故ビットが………!まさか…そのバリア、先ほどの零落白夜の…!」
一夏
「ああ!零落白夜のエネルギーをバリアにできるのさ!これにぶつかったビームやレーザーはエネルギーを失って消滅する!こういう突撃型のビットなら打ってつけだぜ!」
どうやらビットは零落白夜のバリアでSEを失ったため、機能不全に陥っていたらしい。
一夏
「今だ!はぁぁぁぁ!」
ザンッ!ザンッ!…ドガァァァァァンッ!
一夏は機能停止したビットを切り裂いて破壊した。
M
「くっ…、成程…考えたな。確かにそれならビットも効かんか…。しかしそんなものを今まで使わずに温存していたという事は…それもSEの消費が大きいようだな」
一夏
「まぁな。零落白夜一発分位使ってしまう。だけどこれでビットは使えねぇ!さぁ男らしく剣での勝負だ!」ジャキッ!
再び雪片を構える一夏に対し、Mは、
M
「私は女だ!……いいだろう。ビットなどで沈んでもらっては私もつまらん。望み通り相手をしてやる。……こいつでな」
そう言ってMは手を前に出し、
M
「さぁ…白と黒の激突の時だ」ジャキッ!
一夏
「………え!?」
一夏はMが持つその剣に激しく動揺していた。Mが持っていたそれは…一夏の雪片と見た目は全く同じもの。正に色だけの違いであった。
M
「ふっ、流石に驚いたようだな」
一夏
「お前、その剣はまさか!?」
M
「…そうだ。これは黒騎士と同じく私専用の剣。名を「
一夏
「コクノウ…だと!?」
M
「貴様らを倒すのにこれ以上のものはあるまい。貴様と織斑千冬の雪はこの黒き焔が消し去ってやる。そして貴様の白式も絶望という闇に沈めてくれるわ」
一夏
「ふざけんな!それは千冬姉と俺のもんだ!名前だけでなく色まで変えやがって!許さねぇ!」
雪片への思い入れが強い一夏は以前ラウラがDNSで変化した姿が偽物の雪片モドキを持っていた時、激しく怒っていた。今回、しかも黒く染め上げられただけでなく名前まで変えられた事で以前よりも怒りは大きかった。それ故かやや感情的になる一夏。
M
「ならば私を倒して見せろ。貴様お得意の零落白夜で我が黒焔を断ち切ってみたらどうだ?」
一夏
「…いいだろう!その言葉後悔するなよ!」キュイィィィィ……!!
一夏は雪片に白式のSEをチャージする。更にトムボーイも使って出力もアップさせる。ギリギリまで送ったらしく次の一回で決めるつもりだ。それに対してMは手に黒焔を持ったまま動かない。
一夏
(動かないだと…?どういうつもりかわからねぇけど…でもあいつだけは許すわけにはいかねぇ!あいつの言う通りあの偽物の雪片をぶった切る!)ドンッ!
一夏は真っ向から向かっていく。そして、
一夏
「食らえ!零落白夜ぁぁぁ!!」
一夏は全力でそれを当てようとしていた。………すると、
ヴィィィィィィィィン
一夏
「!?」
突如Mの持つ黒焔に変化があった。何も無かった黒い刀身に更に黒いオーラの様なものが纏われた。そして、
M
「貴様にそれは使いこなせん!!」
Mはその状態の黒焔で斬りかかってくる。
ガキキキキキキキキキキキキッ!!
一夏の零落白夜状態の雪片とMの黒きオーラを纏う黒焔がぶつかった。
一夏
「! な、何!?くっ、負けてたまるかぁぁぁ!!」
M
「おおおおおおおおお!!」
ギリギリギリギリギリギリッ
ふたりの剣が激しくぶつかる音を立てる。だが一夏は不思議だった。零落白夜がここまで手こずる事に。本来バリアを切り裂く零落白夜はもっとすんなり切り裂く事ができる筈なのだ。シルバリオ・ゴスペルと戦った時もそれは変わらなかった。
一夏
「はああああああああ!」
M
「ぬうううううううう!」
やがて、
キィィィィィィィィィィンッ!!
一夏
「うわああああああああ!」
パワーの差か残りSE量で負けたのか、一夏は押し返されてしまった。地面にぶつかり、倒れ込む一夏。
M
「はぁ…、全力でいったにも関わらず思った以上に手こずったな。その妙な籠手のためか」
一夏
「くっ、そんな…馬、鹿な…!零落白夜が…押し返されるなんて…!」
M
「SE吸収機能も起動しなかったところを見ると…同じ機能のぶつかり合いで相殺されたか」
一夏
「お、同じ機能だと!…まさか!?」
雪片と同じ剣。そして先ほどの刀身を纏うオーラの様なエネルギーは正に、
M
「…零落闇夜…」
一夏
「なに!?」
M
「
一夏
「…ふ、ふざけんな…、雪片だけじゃなく零落白夜まで盗んだのかよ…!卑怯な事しやがって!」
M
「…卑怯だと?貴様は聖者でも相手にしているつもりか?戦いに卑怯も何もない。どんな手を使っても勝たなければ意味がない。でなければ死、あるのみだ」
一夏
「そんなものは戦いなんていわねぇ!只の殺し合いだ!」
M
「…貴様は本当に生ぬるい世界で生きてきたのだな…。それが今の敗北に繋がった事に気付かないか?」
一夏
「…何!?」
M
「教えてやろう。実力よりも、そしてISの機能よりも貴様と私の決定的な差。それは…殺意。殺す覚悟よ」
一夏
「…!殺す覚悟だと…!?」
殺すという言葉に驚いている一夏にMは続けた。
M
「貴様は私を絶対に倒すと言ったな?…だが貴様はどんな状況であろうと、例えどんなに憎い相手でも、その相手の命を絶つ事まではできんだろう?貴様の言う倒すという意味はあくまでも「相手を戦闘不能にし、動けない状態にする事」。違うか?」
一夏
「……」
一夏は反論できなかった。Mの言う事は当たっていたからだ。例えMがどんなに憎くても許せなくても、その命を奪う事までは考えていなかった。
M
「図星の様だな。だが私は違う。私は相手の命を奪う事等なんとも思っていない。立ちはだかる敵は殺す。弱き者が死に、強き者が生き残る。それが戦いのルールだ。貴様やあの女達の覚悟など私のそれに比べればひよっこと同じよ」
一夏
「ひよっこ…だと!ふざけんな!お前やあのオータムを倒すためなら俺は!」
M
「では貴様、今の零落白夜の威力を最大限で使わなかったのは何故だ?」
一夏
「…!」
M
「貴様は既に知っているのだろうが…貴様の零落白夜や私の零落闇夜はISのバリアを貫通し、SEそのものに直接ダメージを与える事ができる。これが何を意味するか、つまり下手をすれば相手を直接傷つける事ができるという事。最悪命に関わる傷を付けるという事だ」
一夏
「……」
これもMの言う事は当たっていた。零落白夜は己のエネルギーを使ってシールドを切り裂き、相手のエネルギーそのものにダメージを与える。ISはSEが無ければ動かないため、完全に決まりさえすればまさに一撃必殺の剣になる。ではISやシールドはおろか操縦者にとっての最後の壁でもある絶対防御も起動できない程までエネルギーが無くなればどうなるか?操縦者を守るものがなにも無くなる裸同然という事になる。以前ラウラが鈴とセシリアを襲った時、ダメージが危険領域に達するまでダメージを与えた事があった。その時でもふたりは命の危険はないものの怪我を負っていた。もしSEに与えるダメージが大きすぎ、絶対防御も起動しないそんな状況でもし剣が止まらなかったら……そんな怪我の比ではない。
M
「貴様は相手を過剰に傷つけすぎる事を恐れ、能力の出力を調整していた。あくまでも相手のISの戦闘力を奪う程度にまでな。だから貴様は何時までも本気を出せない。その籠手を使っても私の本気の一撃を消し去るのがやっとだ。それが生ぬるい世界で生きてきた貴様の限界だ」
Mは一夏に吐き捨てる様に言う。そんなMに対して一夏は反論する。
一夏
「…生ぬるい世界だと!?俺はそんな風に思ったことはねぇ!親こそいねぇし小さい頃にさらわれたりした事もあったが、俺は今に満足している!千冬姉がいて!箒達の様な仲間がいて!親友がいる!俺の世界を馬鹿にするのは許さねぇ!そういうからにはお前はさぞ立派な世界を生きてきたんだろうな!?」
一夏のその言葉にMは、
M
「………ああ、生きてきたさ。…そして味わってきた…。地獄以上の残酷さをな」
一夏
「…地獄以上の…残酷…?」
その言葉に一夏は驚く。
M
「…しかし貴様らはともかくとして…、あの妙な兄弟、火影と海之だったか。奴等もまた貴様らとは違う生き方をしてきた様に思えるな。でなければあれ程戦い慣れているとは思えん。そう考えれば奴等は貴様らより我々に近いかもな」
一夏
「火影と海之がお前らに近いだと!?ふざけた事を言うんじゃねぇ!」
M
「……無駄話は最早終わりだ。まだ織斑千冬が残っているんでな」
そう言ってMは黒焔を振り上げる。
一夏
「…くっ!」
M
「無念を抱いたまま逝くがいい!…死」
ドォォォォォォォォン!!
一夏・M
「「!!」」
突然別の方向から破壊音がした。見ると一夏とMを覆っていたシールドのある部分が破壊され、大穴が空いていた。
一夏
「な、なんだ!?」
M
「……馬鹿な…、シールドが破壊されただと…!?」
…ヴゥンッ!!
M
「! ぐっ!」ドガァァァァンッ!「うわぁぁぁぁぁ!!」
すると砂煙の中から突然今度は衝撃波の様な一閃がMに向かって襲い掛かってきた。Mは瞬時に受け止めたが不意打ちを食らった形で吹き飛ばされる。
M
「な、何!?」
一夏
「い、今のは…!」
一夏とMは攻撃が飛んできた方向に集中する。やがて煙が晴れるとあるひとりの影が見えた。
一夏
「…!」
M
「…貴様は…!」
千冬
「……」
そこにいたのは黒い全身装甲のISを纏い、右手に雪片壱型を持った千冬だった。先程の衝撃波はそれから起こされたものだった様だ。
千冬
「…無事か?一夏」
一夏
「ち、千冬姉!」
M
「…織斑…千冬!!」
一夏とMは揃って驚く。特にMの驚きは激しい。
千冬
「すまない。遅くなってしまった」
一夏
「い、いや大丈夫だ。…てか千冬姉!そのIS!」
千冬
「…そうだ。暮桜…、封印されていた私の専用機だ。時間がかかったが…漸く蕾が開いてくれた。…それより…アレはなんだ?」
一夏
「あ、ああ。あいつはMだ。そして…あいつのISは…黒騎士っていうあいつの専用機らしい。前ん時より遥かに強くなってる!」
千冬
「!……黒騎士、…黒騎士か…」
何かを思うような表情の千冬。
一夏
「……千冬姉?」
千冬
「…何でもない。…一夏、お前は下がっていろ。後は私がやる」
一夏
「! だ、大丈夫だ!俺もまだ戦える!」
下がれという千冬に対し、一夏はそう言うが、
千冬
「…お前の白式はもうSEが尽きかけている。戦っている間に万一切れたらどうする。それにお前自身ももうスタミナが切れかけているだろう」
実際千冬の言う通りだった。キャノンボール・ファーストの時も本来白式はSE切れを起こしていた。箒の紅椿の絢爛舞踏が無ければ続けて戦えなかっただろう。白式の残りSE量はあと僅かであった。
一夏
「だ、だけど千冬姉だけ戦わせるなんてできるかよ!」
千冬
「大丈夫だ。お前達を守るのは私の役目だ。……それにあいつは…」
千冬はMを見て言葉に詰まる。
一夏
「…なんだ?」
千冬
「…私に任せろ一夏。……頼む」
一夏
「!……」
一夏は内心とても驚いた。千冬の「頼む」という言葉に。生活面ではよくあるがそれ以外では千冬が自分にお願いする事など極めて珍しい。千冬の態度を見て一夏は何を察した。母親代わり、守護者、そして唯一の家族である彼女の何かに気付いた。故に一夏は大人しく従う事にした。
一夏
「……わかった。…千冬姉、気をつけろよ!」
千冬
「ああ任せておけ」
一夏は少し離れ、千冬は前に出てMと対峙した。
千冬
「……」
M
「……会いたかった。会いたかったぞ!織斑千冬!」
長年の友に会ったかの様にMは歓喜の声を上げる。そんなMに対して千冬は言った。
千冬
「……私は二度と会いたくなかったがな…。会う事もないだろうと思っていた」
そんな事を話した千冬に一夏は、
一夏
(…どういう事だ?千冬姉は…あいつと会った事があるのか…!?)
M
「織斑一夏は最早何もできん。貴様を倒せば奴を仕留める等簡単な事よ!」
千冬
「一夏にこれ以上手出しはさせん」
M
「…それが貴様の専用機か?」
千冬
「…ああ、そうだ」
M
「そいつは良い。貴様とはいえ訓練機が相手ではつまらん。本気の貴様を倒してこそ意味があるというものだ」
千冬
「…私に勝てると思うか?…甘く見られたものだな、小娘」
M
「!……いいだろう、ならば貴様から地獄に送ってやる!先に逝って弟を待っているがいい!」ジャキッ!
Mは手に持つ剣を目の前の千冬に向ける。
千冬
「……」ジャキッ!…ドスッ!
そして千冬も手に持つ雪片を地面に突き立てて構える。
M
「死ね!織斑千冬!全ての業を背負ったままな!」
千冬
「…私はまだ死ねん。そして…お前は私が止める!」
黒騎士と黒き戦女神の戦いが始まろうとしていた。
一夏
(千冬姉……。……ちくしょう、俺は、俺はまた守られてばかりなのか……。俺にも、俺にも力があれば……あいつらみたいな力が……)
※次回は6日(土)の予定です。
黒騎士の武装は部分的に以下の通りオリジナルを加えてます。一夏とは正反対のイメージで作りたかったです。
「黒焔(コクノウ)」
形は一夏や千冬が使う雪片と全く同じもの。
色は雪片の白の部分が漆黒になっている。
「白き雪をかき消す黒き焔」という意味でMが名付けた。
「ステルスビット(フェンリル)」
ゼフィルスのシールドビットを独自に改造したもの。シールドを外した代わりにハイパーセンサーやレーダーにも映らない特殊迷彩機能があり、いかなる場所にも溶け込む。レーザーを撃つこともできるがビット自体で突撃もできる。スピードに特化しており、以前アラストルとトムボーイの機能を知ったMがその対策として作り上げた。
「零落闇夜(れいらくあんや)」
黒騎士の単一特殊能力。
機能は一夏の白式が持つ零落白夜と同じく、シールドを切り裂き、相手のエネルギーに直接ダメージを与える事ができる。更に与えたダメージの分を自らのSEに還元する。零落白夜と同じく一撃必殺の剣ではあるが同じエネルギー同士でぶつかると機能が相殺され、純粋な力の勝負になる。