IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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謎の黒いISとの戦いで行方不明となってしまった火影と海之。それにより多くの者が深い悲しみを抱えていた。

自分のせいと責め続け、訓練にも身が入らない一夏。
その背中を悲しい思いで見守る箒とセシリア。
愛する人を失い深く悲しむ簪とラウラ。
それを支える刀奈と千冬。

そして彼女達も…。


Mission154 悲しみに暮れる者達②

整備室

 

火影と海之がいなくなってから三週間ばかり過ぎたある日の放課後、そこには本音と少数の部員が活動を行っていた。

 

生徒1

「ねぇ本音、私今日部屋に泊まりに行こうか?」

本音

「ううん、大丈夫だよ~♪」

生徒2

「でも火影くんがいなくなっちゃってからずっとひとりじゃない。寂しくない?」

本音

「ぜ~んぜん~♪」

生徒3

「部屋の割り当てを変えてもらったら?」

本音

「ひかりんが帰ってくるまでの我慢だよ~♪」

 

火影が行方不明になってから本音はずっと同じ部屋でひとりでいた。それを心配していた他の生徒や真耶が部屋を変えたりしないかと提案しているが本音はずっと断り続けた。火影との部屋を解消するのはどうしてもできなかった。

 

生徒1

「…そう?ならいいけど…でも寂しくなったら言いなさいよ?」

本音

「ありがと~♪…あ、もう今日は終わりだね~。じゃあ私帰るね~、お疲れ様~♪」

 

そう言って本音は部屋から出て行った。その後ろ姿を他の者達は心配そうに見つめていた。

 

 

…………

 

火影と本音の部屋

 

ガチャッ

 

本音

「ただいま~♪」

 

扉を開けて本音は部屋に入る。……だが火影はいない。三週間前のあの日から。

 

本音

「やっぱり今日も帰ってないんだね~。もう~早く帰ってこないと怒るよひかりん~」

 

自分のベッドに寝っ転がり、足をジタバタしながら言う本音。

 

本音

「早く帰ってきてよ~。ひかりんのデザート食べさせてよ~」

 

次第に声が小さくなっていく。

 

本音

「帰ってこないと……こないと……」

 

ふと本音は火影のデスクを見た。その上には彼のエボニー&アイボリーが大事そうに箱に入れられて置かれている。簪と同じく、本音が自分で管理すると言い出したのだ。因みに彼のデスクもベッドも本音は自分のと合わせていつも掃除していた。それ位しか自分にできる事が無いと思うと悔しかった。

 

本音

「………」

 

本音はゆっくり火影のベッドに近づき腰かけるとそのまま力なく横たわった。周りに心配かけない様に普段通り振舞っている本音。火影が絶対帰ってくるという気持ちに嘘は無いがそれも限界に近づきつつあるのか、

 

本音

「…………ぐす、…ひっく」

 

誰もいない時はこうやってひとり涙することも多くなっていた。そんな彼女の左手薬指には火影から貰った赤い輝きの指輪がある。簪達の様に彼女もまたずっと付けている。

 

本音

(……ひかりん。私、いつもひかりんに守ってもらってばっかりで…負担かけちゃったよね…。ごめんね……。……でもやだよ、こんなお別れって無いよ…。私…まだ何にもお返しできてないんだよ?ひかりんと一緒にいて…とっても楽しかったのに…。もうデートねだったりしないから…。二度とストロベリーサンデー勝手に食べたりもしないから…。火影…………)

 

 

…………

 

「……ね、おい…ね」

 

直ぐ近くから声が聞こえる。

 

「…おい本音、起きろ」

本音

「う~ん…………!!」

 

眠っていたらしい本音は声の主を見て凄く驚いた。何故なら目の前にいたのは、

 

火影

「やっと起きたか。どうしたんだ?そんなにひどく驚いた顔して?」

本音

「ひ、ひひひひかりん!?どど、どうして!?いいいいつ帰ってきたの!?」

火影

「??なんの事だよ一体。それにひかりんって…その呼び方されたの学生以来だぜ」

本音

「? が、学生って、本音達まだ高校生だよ?う、ううん!そうじゃなくてひかりん本当に何時帰ってきたの!?皆心配してたんだよ!!」

火影

「?? お前本当にどうしたんだ?寝ぼけて現実と夢がごっちゃになってるのか?」

 

目の前の火影は本当にわかっていない様だ。

 

本音

「………夢?…あれが…夢?……本当に?」

 

一方の本音もひどく混乱している。

 

火影

「そんなんで大丈夫か?これから本番だってのに。皆もう待ってるぜ」

本音

「……待ってる?……そういえばひかりんなんでそんな恰好してるの?その恰好、まるで結婚式で使う衣装みたいだよ?あと…なんで私達こんな部屋にいるの?」

 

今目の前にいる火影は髪型もいつもの形じゃなく整えられ、しかも正装している。それに不思議がっている本音に火影は驚く事を言った。

 

火影

「おいおい本当に寝ぼけてんのか?まぁお前らしいけど。まるでも何も結婚式だろう、俺と本音の。因みに補足で言っとくと今教会だぜ?」

本音

「……………………!!!」

 

その言葉に暫し沈黙する本音。そして、

 

本音

「けけけけココココ、ケッコン式!?そそそそそれ本当!?わわわ私とひかりんの!?」

火影

「ニワトリかお前は。ああそうだ。ああそういや忘れてた。似合ってるぜドレス」

本音

「へ?…!!!」

 

驚きのあまり自分の事をすっかり忘れていた本音は目が覚めて初めて自分の姿を見た。そこには美しいウェディングドレスを纏った自分がいた。鏡に写って見てみる。

 

本音

「……これが……私……?」

火影

「ああそうだ。まぁ信じられないのも無理ないか。馬子にも衣裳って感じだしな♪」

本音

「あ~ひかりんひど~い!どうせ私には似合わないよー!」

火影

「ははは。…そうだよそれでこそお前だ。緊張してるなんてお前らしくねぇ」

本音

「う~しょ、しょうがないじゃない~。結婚式なんだから~!」

(……一番の夢が叶ったんだし)

火影

「ん?」

本音

「う、ううん、なんでもない。それより…ねぇひかりん~、私本当に似合ってないの~?」

 

すると火影は本音をそっと抱きしめ、

 

火影

「……んなわけねぇだろ。綺麗だ。とびきりな」

本音

「…!!」

火影

「ありがとよ本音。俺の家族になってくれて」

本音

「……うん!」

 

本音は嬉し涙を浮かべながら笑顔で答えた。

 

火影

「…幸せにする」

本音

「私は……もう十分幸せだよ…!」

 

 

…………

 

本音

「……………ん」

 

本音ははっと目が覚めた。どうやら火影のベッドに横になったまま眠ってしまっていた様だ。窓から見える空はうっすら夕闇に差し掛かっている。

 

本音

「私……寝ちゃって、……火影!!」

 

本音は火影を探すが……当然いる筈もなく、

 

本音

「………夢、か。………そうだよね。……そんな筈ないよね……」

 

今までの事は全て夢だった事に気落ちし、また火影のベッドに横たわった。思いだすのは…さっきの夢に出ていた火影の姿。

 

本音

(……でも、ほんとにこんな現実なら、夢見続けてた方が…良かったな……)

 

本音はただただ涙していた……。

 

 

…………

 

屋上

 

時間は変わってとある日の放課後。屋上に彼女の姿があった。

 

「……」

 

鈴だ。鈴は最近放課後によくここに来ていた。いろんな思い出があるここに。

 

「もう三週間なのね…。来週はクリスマス、か……。火影、アンタ本当にどこ行っちゃったのよ…」

 

鈴もまた誰もいないその場でひとり呟く。ふたりが、火影がいなくなってからの鈴はあからさまに元気が無かった。勿論周りに心配をかけないようにはしていたがその元気の無さは誰の目にも明らかだった。真実を知らない他の皆は気を使ってくれるがそれも彼女の心には真に届かなかった。

 

「でも、こんな事言うのもなんだけど……ちょっとわかってたかも、ってゆうかさ……」

 

 

…………

 

火影達が京都に向かう前日夜の事。この日鈴は課題を終わらせるのが遅れてしまい、風呂に入るのも随分後になってしまった。ゆっくり風呂を堪能し、部屋に戻る最中。

 

「あ~いいお風呂だった♪課題が難しかったから結構遅れちゃったけどまぁそのおかげであの広いお風呂を独り占めに…あ」

火影

「………」

 

鈴が共有スペースに差し掛かるとそこにはソファーに座る火影がいた。火影の方は彼女には気付いていない。

 

「ねぇひか……」

 

鈴は声をかけようとしたが途中で止めた。何故なら火影は自分のアミュレットを手に取り、何かを思うような表情をしていたからだ。

 

火影

「………」

(火影…?)

 

声をかけられず、でも離れる事も何故かできず。そんな感じで数十秒位過ぎ、火影が鈴に気付く。

 

火影

「ん?ああ鈴、どうした?」

「! あ、え、えっと…お風呂から帰る途中だっただけよ!ちょっとジュースでも飲もうって思って」

火影

「そうか」

 

そう言いながら火影はアミュレットを首に掛けなおす。そんなつもりは無かったのだが言った手前、鈴は自販機でジュースを買い、

 

「…隣いい?」

火影

「ああ」

 

鈴は火影の隣に腰掛ける。

 

火影

「こんな時間に風呂って遅いな。湯冷めすんなよ」

「うん、ちょっと課題が時間かかっちゃってね。……アミュレット見てたみたいだけどどうかしたの?」

火影

「ああちょっと考え事だ。心配すんな」

「そう」

(…きっと私にはまだ言えない事なのね…)

 

火影の返事に鈴は少し寂しく思った。すると、

 

火影

「…そういや鈴が髪下ろしてんの初めて見るな」

「え?あ、そうだっけ?」

火影

「ああ。…綺麗な髪だな」

「!…もう」

(ほんと恥ずかしげなく急にそういう事言うんだから…)

 

そう言いながらも鈴は嬉しかった。我ながら単純と思うが好きな人に綺麗と言われて悪い気はしなかった。

 

火影

「…どうした?」

「…ううん。あそうだ火影、明日気を付けてね」

火影

「そちらもな」

「私達は学園にいるんだから大丈夫よ。…ねぇ火影、修学旅行だけどさ?一緒に回ってくれない?」

火影

「ああ構わねぇよ」

「ほんと?約束よ!ふたりでだからね♪」

火影

「シャルや本音はどうすんだ?」

「ダーメ、初日はふたりで回るの♪それに三日もあるんだから機会あるわよ。だからしっかり予習してきなさいよ!」

火影

「…ああ頑張ってくるよ」

 

 

…………

 

(……あの時の火影の表情、そして言葉。考えたら幾ら視察って言ってもそんな急に行く必要なんて無いし、休日に行っても全然問題無い筈なのにいきなり翌日って…。なんか妙な予感がしたのよ……)

 

そう言いながら鈴は自分の薬指に嵌めている緑色の石が光る指輪を見る。

 

(一緒に京都回るって……約束したじゃない……)

 

ガチャッ

 

とその時屋上に繋がる扉が開いた。

 

シャル

「…あれ?」

 

入ってきたのはシャルロットだった。

 

「あ…シャル」

シャル

「鈴、ここにいたんだ」

「…うん。ごめん、私に用事があったの?」

シャル

「あ、ううん。そうじゃないんだけど驚いちゃって」

「…まぁ座りなさいよ」

シャル

「…うん」

 

そして鈴とシャルが並んで座る。

 

鈴・シャル

「「………」」

 

互いに暫し黙る鈴とシャル。きっとシャルも鈴と同じく思う事があるのだろう。すると鈴の方から話しかけた。

 

「また今日も行くの?」

シャル

「…ううん、本当なら行きたいんだけど山田先生が休めって言って今日は中止」

「たまにはそうするべきよ。アンタもラウラも無茶しすぎなんだから。シャル達まで倒れたら元も子もないでしょ?箒やセシリアは一夏が気になって仕方ないし」

シャル

「…うん」

 

シャルやラウラは時間ができればずっと火影と海之の捜索を続けていた。最近は簪やクロエも参加している。箒とセシリアも参加を希望したが鈴達はふたりに一夏についててあげてほしいと言って断っていた。

 

シャル

「……綺麗な夕日だね。あの時と同じ」

「……」

シャル

「……ねぇ鈴。僕、思い出すんだ。ここに来るといつも。あの時火影が…僕達の事。僕を…好きって言ってくれたこと…今でも…」

「………」

 

鈴は何も言わない。

 

シャル

「火影ってずるいよね…。僕達をこんなに好きにさせておいて、僕達の気持ちを…全部聞かないままいなくなっちゃうなんて…本当に…ずるいよね」

「………」

 

鈴はずっと俯いている。

 

シャル

「それにさ、火影っていつも余裕ある顔していつも僕達の先を行ってたよね。この前の感謝会でも脅かすつもりが結局僕達の方が驚かされちゃったし。スメリアで僕達にこの指輪買ってくれたし。この前なんかほっぺたにキスまでされちゃって…。いきなりすぎて心臓飛び出すかと思ったよ…」

 

そう言いながらシャルは薬指の白い輝きの指輪を見る。

 

「………」

シャル

「でもやっぱり一番驚いたのは僕達を好きって言ってくれた時、かな。驚いた以上に嬉しかったけどね。初恋だったし。ほら、初恋って上手くいきにくいって言うじゃない?火影って恋愛とか興味無さそうだったし、海やプールでも僕達と普通に遊んでたし、もうちょっと意識してくれてもいいんじゃないの~?僕達皆気合入れて水着探したのにぁって。あはは…」

「………」

 

シャルは火影との思い出を話す。しかしその声はだんだんと悲しみの色が見え始める。対して鈴は黙って聞いている。

 

シャル

「全部終わったら…聞いてほしい事があったのに。もっと…ずっと…」

 

シャルは今にも泣きそうだ。

 

シャル

「……でも、火影はもう」

 

バタッ!

 

シャル

「!」

 

すると突然それまで黙っていた鈴が突然立ち上がり、シャルの前に立った。

 

「……なんでよ」

シャル

「…え?」

「なんで…あいつの事過去形みたいに言うのよ!」

シャル

「!!」

 

鈴はそう叫んだ。凄く怒っている表情で。

 

「なんであいつの事もうこの世にいないみたいな言い方するのよ!シャルは火影が死んだとこみたの!?シャルはあいつの「身体」じゃなく「死体」を探してるの!?」

シャル

「!ぼ、僕はそんなつもりじゃ!」

「じゃあなんであいつの事、もう死んだと決まったみたいな話し方するわけ?実際その目で見たわけじゃないのにさ!あんた火影の事誰よりも想ってるんじゃないの?なのに生きてるって信じてないの?あんたの火影への気持ちはそんな程度なわけ?もしそうだとしたら随分いいかげんね!そんな気持ちならその指輪外しなさい!」

シャル

「!…僕の、僕の火影への気持ちがいいかげんだっていうの!?酷いよ!いくら鈴でも許さないよ!」

 

鈴の言葉にシャルもたまらず立ち上がって怒る。しかし鈴は負けずに言い返す。

 

「本当に好きならあいつの亡骸でも目にするまで絶対に生きてるって信じるもんじゃないの!?私は火影が生きてるって信じてる!本音なんて見てみなさいよ!あいつが生きてるってずっと信じ続けて部屋を絶対変えようとしないし、あいつの荷物を絶対渡そうともしない!少なくとも今のあんたよりよっぽどあいつの事想ってるわね!」

シャル

「…僕が、僕がこの三週間どんな気持ちで探したと思ってるの!?学校が終わったり休日もいつも探しに出て、それでも何ひとつ手がかりが無い。ラウラに協力してもらって衛星で探したり、お父さんに頼み込んで捜索隊まで出してもらったりしてるのに………でも、何も…」

「……」

 

火影と海之が行方不明になった後、シャルは実家のデュノア社社長の父親にふたりの捜索をお願いしていた。シャルの父親からしても火影は会社にも自分にも恩人であるため、彼女の願いを了承した。しかしそれでも未だ有力な情報はない状況だった。

 

シャル

「僕だってふたりが、火影が生きてるって信じたいよ!心の底から信じたいんだよ!……でも、もうあれから三週間も…何の音沙汰も」

「三週間でも三ヶ月でも三年でも関係ない!ふたりは、火影はきっと生きてる!私達のところにきっと帰ってきてくれる!」

 

鈴は泣きながらそう叫ぶとその場に座り込んだ。

 

「だって…、だって、こんな終わり方、あまりにもふたりが、かわいそう過ぎるじゃないのよ…。生まれてすぐに生みの親に捨てられて、凄く良い人達に助けられたのにその人達もあんな形で失って、それでも間違う事なく、誰よりも優しくて誰かのためにっていう気持ちで全身埋め尽くされている様な人に育ったのに…。もし、もしこの世に神様がいるのなら、なんでふたりばかりこんな目に合わせるの…?なんで、なんでなのよ…。ううっ…」

シャル

「…鈴…」

 

シャルもその場にしゃがみ込む。すると鈴は彼女にしがみつき、

 

「ねぇ…シャル。火影の事が好きなら…あいつが死んだなんて言わないでよ…。お願いだから…。信じる者は救われるって言うじゃないの…。だから、シャルも信じてよ…」

シャル

「…鈴…」

「神様でも悪魔でもなんでも良いから…、私達にふたりを、あの人を返してよ…。お願いだから…私からあの人を…火影を取り上げないでよぉぉぉ…」

シャル

「……」

 

鈴はシャルの腕の中、小さい声で訴えた。

 

シャル

(………ねぇ、火影。三週間前のあの日、火影達また多くの人を助けたんだってね…。あの後帰ってきた山田先生から聞いたよ。翌日の新聞やニュースでもそれで持ちきりだった。「飛行機を救った赤と青の奇跡の光再び」って。…それから数日後に学園にたくさんの感謝の手紙が届いたんだよ。火影達がここの生徒って知った乗客の人達やその家族の人達が送ってくれたんだって。よく簪が言ってるけど…火影も海之も本当にヒーローだよね。………でもね、火影。こんな事言ったらきっと多くの人に怒られるだろうけど、多分火影も怒るだろうけど、僕は誰よりも君に、火影にいてほしかったよ…)

 

そんな事を考えているとシャルの瞳からも涙がこぼれる。鈴はずっと彼女の腕の中で泣いている。

 

シャル

(ねぇ火影。僕も信じるから…お願いだから…帰ってきてよ。僕、まだ気持ち全部伝えきれてないよ?……鈴や本音を笑顔にできるのは…僕を笑顔にできるのは…火影だけなんだから、君だけなんだから…。うぅぅ…)

 

空の色はあの時と同じく美しいオレンジ色と夕日。しかしあの時とは全く違う意味の涙がふたりを悲しみに染めていた…。

 

 

…………

 

職員室

 

また別の日にはこちらでも…。

 

真耶

「……はい。わかりました。ありがとうございます。また何かありましたらご連絡致します」

 

職員室では真耶が誰かに電話していた様だ。

 

ガラッ

 

するとそこに千冬が戻ってきた。

 

真耶

「先輩、お疲れ様です」

千冬

「ああ…、すまんな留守番させて。訓練に手間取ってしまってな」

 

Mによる学園襲撃のあったあの日から学園は更なる襲撃に備え、警備体制の強化や教師陣の訓練、学校行事の変更等、千冬達教師陣の業務はいつも以上に多忙となっていた。だが中にはファントムやグリフォンという存在に相変わらず怯えている者がおり、それを叱咤激励するのも千冬の役目だった。

 

千冬

「あいつらの家への連絡は終わったのか?」

真耶

「はい丁度。先程ギャリソンさんに…」

 

火影と海之がいなくなった事は当然スメリアのふたりの家にも既に知らされていた。当然ふたりの叔母にあたるレオナにも…。しかし、

 

千冬

「…どんなご様子だった?」

真耶

「何も変わっておられません。今まで通り、何時も通りにされておられるとの事です…」

千冬

「そうか…」

 

ふたりの事はずっと前に知らせていた。しかしふたりの家では捜索なども最低限しか行っていない。葬式なんてものも行わず普段通りに過ごしていた。それにはこんな訳がある。

 

 

…………

 

ふたりがいなくなった日の翌日。千冬と真耶は当然ふたりの家に連絡した。

 

ギャリソン

「…そうですか……、火影様と海之様が…」

千冬

「…はい…」

真耶

「私がついていながら…私が、私があの時、無理にでも止めていれば…!謝って済む訳ありませんけど…本当に、本当に申し訳ありません!!」

 

ひとり京都に残っていた真耶も戻ってきてから自分を責めていた。自分があの時無理にでも止めていればふたりが生きていたかもしれないと。

 

千冬

「よせ真耶、お前だけのせいではない。私も同じだ…。私はふたりを守る立場でありながら…ふたりを守れなかった。…私のせいだ…」

真耶

「いえ先輩!私が悪いんです!傷ついているのがわかっていながらふたりを行かせてしまった…。私が、私が殺してしまったのと同じです!私は教師失格です!!」

千冬

「真耶、あまり自分を責めるな…」

 

千冬と真耶がそんなやりとりをしているとギャリソンが切り出す。

 

ギャリソン

「…先生方、どうかその様な事は仰らないでください。先生方がその様な事を仰られるのは火影様も海之様も望まれていない筈です」

千冬

「……」

真耶

「す、すいません…」

ギャリソン

「それに…私共はおふたりを信じておりますから…」

千冬

「…え?」

真耶

「ど、どういう事ですか…?」

ギャリソン

「はい。実は一昨日…」

 

ギャリソンは静かに話し始めた。

 

 

…………

 

それは京都出発前日の夜の事。

火影と海之はテレビ電話でスメリアの自宅に電話していた。

 

火影

「よぉギャリソン、遅くに悪いな」

ギャリソン

(滅相もございません。おふたり共お元気そうで何よりでございます)

海之

「お前もな。皆やレオナ叔母さんもお元気か?」

ギャリソン

(はい。皆変わらずにおります。しかしこの様な遅くにどうなされたのですか?)

海之

「ああすまんな。………もしかすると…明日から暫く連絡できなくなるかもしれん。俺も火影も。大事な用事ができたのだ。とても大事な、な…」

火影

「具体的な内容は言えないんだけどな」

ギャリソン

(…かしこまりました。それでは何かありましたら学校の方に)

海之

「いや、すまんが…学園の方にも連絡しないでもらえると助かる。先生方も皆も忙しいだろうしな……」

ギャリソン

(………)

 

ギャリソンは何も言わなかった。学校の用事に連絡するなと言う程の重大すぎる事などあるはずない。しかしふたりの言葉の調子から何かただ事ではないと悟ったのだろう。夫妻が亡くなってから親の様に接してきた彼だからこそだろうか。すると火影が続けた。

 

火影

「…まぁひとつだけ言っておくとだ。心配すんなってギャリソン。もしかしたら簡単に済むかもしれないし、案外なんでもないかもしれない。まぁ何れにしても次大型の休みがあったら帰るからその時はまたお前の料理食わしてくれな」

海之

「ああその通りだ。ギャリソン、例え何があっても何も心配する事は無い。信じてくれ、俺達を。そして守ってくれ。俺達の、お前や皆の家を」

 

火影と海之は何も心配する必要はないというメッセージを伝えた。それに対してギャリソンは言った。

 

ギャリソン

(……これから冷えてきますから、どうかお風邪を引かれぬ様お気をつけて。……行ってらっしゃいませ)

海之

「…ありがとう」

火影

「おう、ギャリソンも風邪引くなよ。レオナ叔母さん達にもよろしくな」

 

 

…………

 

ギャリソン

「火影様と海之様の御身に何がおありになったのか…、私共にはわかりません。…しかし、おふたりがこれまで通り何も変わらずに待っていてほしいと仰るのであれば、私共は火影様と海之様を信じるのみでございます…」

千冬・真耶

「「………」」

 

ふたりはギャリソンという人物に感服していた。親代わりでもある彼も火影と海之を心底心配している筈だ。きっと自分達以上に。しかしギャリソンはふたりを信じると言った。例えどんな絶望的な状況でも。ふたりの言葉に従って……。そして火影と海之はこうなる事をある程度予測していたのかもしれない。だから余計な心配をかけないように連絡していたのだ。

 

千冬

「…ギャリソン殿。海之くんと火影くんは…本当にいいご家族に恵まれたのですね…。みっとも無い事を申し上げる様ですが…正直羨ましいです」

真耶

「はい…。そして大人としても教師としても恥ずかしいです」

ギャリソン

「何を仰います先生方。私など皆様に比べたら大した事は御座いません。それにおふたりは先生方の事をとても信頼されておられます。お優しくお強く、いつも自分達の事を考えてくれる素敵な先生と。以前私にそう話しておられました」

真耶

「火影くんと海之くんが…」

千冬

「……」

 

 

…………

 

千冬

「本当に強い人達だ…」

真耶

「ええ本当に。…でも…あの子達は…」

千冬

「ああわかっている…。一夏の奴などあれからずっと自分を責め続けて訓練にも気が入っていないからな。全く…落第しても知らんぞ…」

 

ふたりも一夏や鈴達の心の悲鳴を痛い程理解していた。一夏に厳しく言うが千冬も真に怒りはしていない。姉として弟の気持ちはよくわかっているから。

 

千冬

「…お前は大丈夫か?」

真耶

「……正直全く大丈夫って言ったら嘘になります。でもギャリソンさんのお話を聞いて決めたんです。私もふたりを信じようって。私にできるのは…それしかできませんから」

千冬

「そうか…」

真耶

「先輩もでしょう?ふたりが死んだなんて思っていないでしょう?」

 

真耶は千冬に聞いた。きっと信じていると返してくると思った。

 

千冬

「……」

真耶

「…先輩?」

 

だが以外にも千冬からの返事は無かった。すると、

 

千冬

「……わからない」

真耶

「えっ?」

千冬

「お前の言う通り…勿論信じたい気持ちが大部分だ。あいつらが負けたなんて今でも正直信じられんよ…。しかし以前ボーデヴィッヒと話した時に…あいつが言っていたのだ。「どんなに探しても見つからない。反応が消えたという意味がどういうことか」とな。当然…私もどういう意味かわかっている」

真耶

「……」

千冬

「鳳達の気持ちも重々承知しているし、お前の言っている事もわかる。だが…私は実際レーダーであいつらの反応が消えたのをこの目で見たのだ…。いつまでも引きずる訳にはいかない。私にはやらなければならない事があるからな。そのためには…ちゃんと現実を受け止めなければ…ならないと思っている。例え…あいつらが…死」

 

 

パァァァァァンッ!!

 

 

千冬

「!!」

 

すると突然真耶が千冬の頬を叩いた。思わぬ行動に千冬は酷く驚く。

 

千冬

「ま、真耶!?」

真耶

「何頼りない事言ってるんですか!先輩はふたりを信じていないんですか!?今までどんなことがあっても諦めずに私達やあの子達を守ってくれたふたりを!戦ってくれたふたりを!それがあのふたりに対する先輩の気持ちですか!?」

 

真耶は今までにない位凄く怒った顔をしている。

 

真耶

「皆苦しいんです!皆悲しいんです!ギャリソンさん達だってきっと本当はそうに違いありません!でも信じてるんです!ふたりが生きているって!可能性がどんなに低くてもそれでも信じてるんです!なのに…あの子達の教師である私達が信じてあげなくてどうするんですか!私はそんな先輩見たくありません!」

千冬

「…真耶」

真耶

「それに先輩は海之くんの事が好きなんでしょう!?今までにない位ビビってきたんでしょう!?そんな人を簡単に諦めちゃっていいんですか!?想い人なら信じぬいてあげなきゃ駄目じゃないですか!!」

千冬

「い、いや…ちょっとそれは意味が違う」

真耶

「意味とかそんな事関係ありません!とにかくもう一度言わせてもらいます!自分の生徒を教師が信じてあげなくてどうするんですか!それはあの子達の教師として当然なんじゃないんですか!?」

千冬

「……」

 

真耶の目元には涙が浮かんでいた。

 

真耶

「わかってますよ……私だって。でも、諦めちゃったら…そこで終わりじゃないですか…。お願いですから…先輩もそうしてくださいよ…。でなきゃ…ふたりが可哀そうです……」

千冬

「真耶…」

(…私は…)

 

千冬は何も言わず真耶の言葉を聞いていた。可能性は限りなく低い。ふたりの生存を示す証拠もない。ほとんど絶望的なのもわかっている。でも真耶は最後まで信じると決めた。それが自分にできる唯一の事だと思ったから。そんな彼女を見ていると千冬は自分が酷く弱い人間と思うのであった…。

 

 

…………

 

会議室

 

またとある日の秘密の会議室。そこにはひとりの少女がいた。

 

クロエ

「………」

 

クロエである。秘密という事以外何の変哲もなく、窓もひとつも無い部屋だがクロエにとってこの部屋は火影や海之、そして束と一緒にいた場所。沢山話したり秘密を共有したり、ふたりから義妹と認められた、それなりに思い出もある場所であった。

 

クロエ

「……束様…」

 

嘗てラウラと同じ様に生み出され、ひたすらに凄まじい訓練を受けてきたクロエ。しかしドイツ政府はそんな彼女を失敗作と見捨てて放棄した。着の身着のままの状態で。そしてとある場所でとうとう力尽き倒れた。人は死ぬ前に今までの思い出や後悔が走馬灯の様に浮かんでくる事があるという。だが彼女のそれまでの思い出と言えば地獄の様な訓練の日々のみ。死の恐怖は不思議と無かった。自分の死に場所はここ。そんな感情だけ。

 

クロエ

「…ですが私は…束様に出会った」

 

そんなクロエを束が本当に偶然拾い、治療し、食べ物を与えた。ほんの出来心だったのかもしれない。当時の束は今と違ってフランクではなかったから。だが助けられて数日後のある日、束はクロエに言った。

 

 

(今日から君はクーちゃんって呼ぶね~♪)

 

 

何故か束はクロエを気に入った。理由を聞いても「なんでって気に入ったからだよ~ん♪」と言われるのみ。不思議で変な人だとクロエは思った。何故こんな扱いをされるのかも全くわからなかった。……しかし不思議と嫌な感じはしなかった。

 

「この人となら…一緒にいてもいいのかな?」

 

今まで人のぬくもりを知らず、戦いしか知らなかった少女が初めて持った感情だった。新しい人生を見つけた瞬間だった。

 

クロエ

「…そして私は…兄さん達に出会った」

 

それから数年後の今年初め。再びクロエは自分に深く影響を与える人物と出会った。火影と海之という双子の兄弟。束以外の人間と殆ど接触したことが無いクロエだったが初対面から何故か怖くなかった。歳が同じ位という事もあるだろうが。向こうも自分に全然分け隔てなく接してくれるのが妙に安心できた。そして何時でも頼れって言ってくれた。そんな事を言ってくれたのは束以外で初めてだった。……不思議と胸が熱くなった。そしてクロエは、

 

 

火影

(じゃあ今日からクロエは俺達の妹ってわけだな)

海之

(妹なのだろう?遠慮する必要はない)

 

 

ふたりの義妹になった。束のおかげで人間本来の豊かな感受性を取り戻したクロエは凄く嬉しかった。束以外にも自分に家族ができた。大切な人ができた。束と火影と海之が自分の生きる範囲を、視野を広げてくれた。……それなのに、

 

「…束様、火影兄さん、海之兄さん。……皆、皆いなくなってしまいました。……私は、私はまた…ひとりになってしまった……」

 

束は敵に捕らわれて安否不明。そして火影と海之も今は消息不明。クロエは一度に家族を無くしたという現実を未だ受け止めきれず、深い悲しみに心が支配されていた。若干17歳という少女には無理ないかもしれない。

 

クロエ

「…兄さん…、約束したじゃないですか…。また私に…料理を教えてくれるって………」

 

 

…………

 

それはまだふたりが京都に行く数日前のある日の休日、クロエは火影と海之に料理を見てほしいとお願いしてきた。その日たまたまやる事が無かったふたりはクロエのお願いを聞いてあげる事にした。同じく退屈していた一夏、更に箒も参加している。とりあえずクロエが束のお願いで一番作る事が多いというものを作ってみたのだが…、クロエ含め全員出来上がったものに言葉を失っていた。

 

火影

「…こりゃあ…」

海之

「………」

「…料理が苦手…という話は聞いてたが…、これはなかなか…」

クロエ

「………」

一夏

「クロエ…何を作ろうとしたんだ?」

 

するとクロエは小さい声で言った。

 

クロエ

「………ケ…です…」

火影

「……俺の耳がおかしかったら悪い。今なんつった?」

クロエ

「……コロッケ……です…」

 

それを聞いてまず一夏が質問する。

 

一夏

「えっと…先ず真っ先の疑問なんだけど…、コロッケって個体だろ?なんでこんなスライムみたいな形になる?」

 

今皆の目の前にあるのは…真っ黒なスライムだった。漆黒、闇といってもいい位黒一色である。

 

クロエ

「わからないんです…。何度やってもこうなってしまうんです」

「…すまん。私からも質問したいんだが…材料は?」

クロエ

「全て通常のものです…。教本に従って用意してます…」

火影

「本に従ってっつー事は材料のせいじゃねぇな。………ちょい待て、って事は作り方も当然見たんだよな?」

クロエ

「………はい」

 

クロエ曰く教本通りに材料も揃えて作ったという。

 

一夏

「……あの、因みに束さんはこれを?」

クロエ

「…はい。いつもこんなものや同じく炭みたいな固体を召し上がっておられます。私に気を使って下さっているのか…いつも完食されて」

「そ、そうなのか…」

 

実際束はクロエの料理を何時もさぞ美味しそうに完食している。それが彼女を思ってなのか、それとも見た目がこんなでも普通に食べられるからなのか。

 

火影

「……とりあえず…、一回もらって良いか?」

一夏

「お前すげぇな。…っあ、ご、ごめんクロエ」

クロエ

「ご、ご無理なさらなくても…」

火影

「気にすんな」

 

スライムを箸で切り(因みに中身も真っ黒)、口に運ぶ火影。

 

「ど、どうだ…?」

火影

「……………?」

 

疑問符を浮かべる火影。それを見て海之も食べてみる。

 

海之

「……………??」

一夏

「ど、どうしたんだよふたり共?」

 

何故か火影だけでなく海之まで大量の疑問符を浮かべ、言葉を発しないまま二、三度確認する様に食べる。

 

火影・海之

「「…………???」」

 

何口も食べている事から危険ではないと思った一夏と箒も食べてみる。

 

「こ、これは!?」

一夏

「…コロッケだ。しっかりコロッケの味だ!」

クロエ

「………」

 

ふたりは大変驚いた。それと同時に火影と海之の疑問符の意味も理解した。目の前のそれはコロッケとは似ても似つかない真っ黒いスライム。箸で切った感触も食感も。しかしその味は正にコロッケそのものでじゃがいもや肉の風味もしっかりとある。一体どうなっているのだろうか…?

 

クロエ

「あとパンも焼くんですけど…、そちらも幸い味はパンなんですけど…、ナイフも通さない位硬くなっちゃうんです…」

一夏

「どうやって切ってんだ!?」

クロエ

「そのまま切らずに召し上がってらっしゃいます…」

「…姉さんの噛む力って一体…」

火影

「揚げてるつってもここまで黒くはならない筈なんだが…」

海之

「何故粘性を持っているのだ…?」

 

様々な疑問が浮かんでいる中、当のクロエは更に落ち込む。

 

クロエ

「やっぱり私には料理なんて無理なんでしょうか…?」

火影

「いやクロエ、諦めんのは早いって。今度は俺達も見ててやるよ。材料が間違ってなくて本通りにやってるという事は基本は間違ってない筈だし」

海之

「そうだな。先ずはもっと簡単な物から始めよう」

クロエ

「…しかし兄さん達はお忙しいのでは…?」

 

クロエはふたりの身を心配するが、

 

火影

「俺達の事は気にするな。今度束さんを喜ばせてやれ」

海之

「そういう事だ」

クロエ

「…ありがとうございます!」

 

クロエは嬉しそうだ。

 

一夏

「面白そうだ♪俺も暇があったら教えてやるさ」

「私も手伝うぞクロエ」

クロエ

「一夏さんも箒さんもありがとうございます」

火影

「そうと決まったらとりあえず目標は…年末の年越しそばが綺麗に調理できるまでだ」

海之

「頼むぞクロエ」

一夏

「教える側の責任…重大だなこりゃ」

クロエ

「ええ!?…わ、わかりました!頑張ります!」

 

 

…………

 

クロエ

「また…教えてくれるって、言ったじゃないですか…。…約束は、守らなきゃ…駄目じゃないですか……」

 

深い悲しみに襲われながら消えそうな声で呟くクロエ。……しかし、

 

クロエ

「…………まだだ」

 

彼女は泣かなかった。

 

クロエ

「そう、まだです。自分にはまだやる事があります。束様を助けるという…大事な使命があります。泣くのはそれが終わってからです。それまで…泣く訳にはいきません!」

 

クロエは今の悲しみを力に変え、何としても束を救い出すと固く誓った。そして、

 

クロエ

「……でも…兄さん。もし…どこかで生きておられるなら……どうか、……どうか」

 

誰もいない静かなその部屋でクロエはひとり奇跡を願っていた…。

 

 

…………

 

???

 

その頃…、

 

ウィィィン

 

スコール

「入るわよオーガス」

 

ここはオーガスの部屋。そこにスコールが入ってきた。

 

オーガス

「…スコールか…、何か用か?」

スコール

「聞きたい事があって…。あの子達のISにもDNSを搭載したそうね?…それはあの子達の意志?」

オーガス

「そうだ。…それが?」

 

オーガスはまるで興味無い様に聞き返す。

 

スコール

「……いえ、それならいいわ。あの子達の意志を尊重する。それより…ねぇ、ほんとにまたあれを使うつもり?危険すぎない?」

オーガス

「構わん。もはや存在意義は果たされている。精々実験材料として役立ってもらう」

スコール

「……」

オーガス

「Mはどうしている?」

スコール

「訓練もしながらリハビリ頑張ってるわよ。止めたんだけど聞かないのよ。今度こそ今度こそって言って」

オーガス

「そうか…いい傾向だ。M、そしてオータムの奴も己の憎悪をどんどん膨らませている。それがDNSの力を更に引き出すだろうからな。クククク…」

 

オーガスは実に楽しそうに笑った。

 

スコール

「……」

オーガス

「話はそれだけか?では戻れ、これから実験だ」

スコール

「……ええ」

 

そしてスコールは部屋を出て行った。オーガスは引き続き目の前の端末に集中する。

 

オーガス

「……あと一週間というところか。ククク…精々これを使わせる位頑張ってくれよ人間共…」




※次回は15日(土)の予定です。
最近急に暑くなってきましたね。熱中症に皆さんお気をつけください。
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