IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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火影と海之が行方をくらましてから三週間。
しかし彼女達の悲しみは未だ癒えずにいた。

気丈に見せつつも人知れず火影を想って涙を流す鈴、シャル、本音。
弱気になる千冬とそれをいつも以上に叱咤激励する真耶。
悲しみを力に変え、束を救う事を改めて誓うクロエ。

……だが時はそんな彼女達に更に過酷な運命を与えるつもりか、オーガスが再び動き出そうとしていたのであった…。


Mission155 再臨 黒の魔人

IS学園 1-1

 

千冬

「それでは本日の授業はこれまで!」

生徒達

「「「ありがとうございました!」」」

真耶

「今年一年、皆さんお疲れ様でした。本日をもって今学期の授業は最後になります。また来年、皆さんの元気な顔を見せてくださいね」

千冬

「冬期休暇だからといって浮かれんようにな!来年はもっと厳しくいく予定だから覚悟しておけ!」

 

火影と海之がいなくなってからひと月が経とうとしていた。今日は学園の二学期最終日。そして12月24日、クリスマスイヴ。学園も街もすっかりその雰囲気に包まれ、クリスマス一色に染まっている。

 

生徒

「ねぇねぇ!折角だからどっか行こうよ!」

「そうね!クリスマスなんだから楽しまなきゃね!」

「あ~あ、こういう時女子高なのが残念よねぇ~。男女共学なら良かったなぁ」

「修学旅行は行けなかったけどその分他の事で楽しまなきゃ!」

「あ!じゃあさ!この休みの間にどっか行かない?」

 

生徒達も皆これからの予定を組む者。来年に向けて計画を立てる者。別れを惜しむ者と色々だった。ひと月何事もなければファントム・タスクの件ももう昔の事と考えている者もいる。悲しみも時間がたてば薄れていく。そういうものである。

 

生徒1

「ねぇねぇ!箒ちゃん達はどうするの~?」

「あ、ああ…。私は…地元の神社に帰る、かな。年始の準備をせねばならん…」

生徒2

「デュノアちゃん達は実家に帰るの~?」

シャル

「う、うん…。実はまだ決めてないんだ…」

セシリア

「私もです…」

ラウラ

「…とりあえず保留だな」

生徒2

「そうなんだ~。よかったら一緒に遊ばない?クリスマスなんだから楽しまなきゃ♪」

生徒1

「そうだよ。火影くん達がいなくなって寂しい気持ちはわかるけどいつまでも落ち込んでちゃ駄目だよ~」

本音

「ごめんね~…」

シエラ

「ご心配おかけして申し訳ありません…」

 

多分彼女達が言う事も正しいのだろう。だが今の彼女達にそれはまだできそうになかった。鈴や簪も同じく。

 

生徒3

「…あれ?そういえば織斑くんは?」

生徒1

「織斑くんならもう出てったよ?」

 

 

…………

 

一夏の部屋

 

一夏

「………」

 

授業が終わると同時に一夏はすぐ部屋に戻り、自身のベッドに寝っ転がっていた。一夏もまた悲しみと自責の念は相変わらず続いていた。…しかしそれとは別に一夏には最近気になる事があった。

 

一夏

(……なんなんだ。……あの夢は……)

 

 

…………

 

二日前のある日、一夏は夢を見ていた。

 

「……」

一夏

(また…この夢か…)

 

それは二週間前みた夢と同じ夢。目も開かず足も動かせない状態でただ気配はすぐ近くに感じる。一夏はこの夢をよく見る様になっていた。そのいずれも話の内容は最初に見た時と殆ど同じもの。男の声が一夏に出会える日を望み、女が今はその時までゆっくり休めという内容。…しかしその日の夢は今までとはやや違っていた。

 

「……間もなくだ」

一夏

(……?)

「時が近づいている…。できればもう少し休ませてあげたいが…残念ながらそれは難しい様だ…」

一夏

(…何を言ってるんだ…?)

「ごめんなさい…。でもきっとあの子達は…。彼女達だけじゃ敵わない…、貴方の力が必要なの…)

一夏

(…俺の…力?)

「……待っている。君を…」

 

 

…………

 

一夏

(…なんなんだよあの夢は…。時、って…。それに…俺の力、だって…?…俺の力なんて…)

 

そう思いながら一夏はあの約束も思い出した。

 

 

(一夏、強くなれ。今度こそ本当に)

(俺達からの宿題だ。時間かかってもちゃんとやれよ)

 

 

一夏

(……でも…その答え合わせをしてくれるお前らが…いねぇじゃねぇか……)

 

 

…………

 

時刻は更に過ぎ、夜。

二学期が終わったという事もあって生徒の中には既に実家や自国に帰郷している者や街に繰り出している者もおり、普段と比べて随分静かだった。一夏や箒、鈴達は実家にも自国にも帰らず、引き続き寮に残っていた。そして時刻が間もなく日を超えようとしていた頃…。

 

 

一夏の部屋

 

一夏

(……そろそろ寝る準備すっか…。またあの夢見るかもしれねぇけど……)

 

~~~~~~~~~~

するとその時、一夏の電話が鳴った。

 

一夏

「……千冬姉から?」ピッ

 

一夏は電話に出る。

 

千冬

(…一夏か?夜分にすまんな。もう眠っていたか?)

一夏

「いや…大丈夫だ。…それよりなんだよ千冬姉?こんな時間に」

 

一夏は千冬に問いてみる。すると、

 

千冬

(……緊急事態だ。すまんが今すぐ指令室に来てほしい)

一夏

「…緊急事態?」

千冬

(ああ。詳しくは来てから説明する。来れるか?)

一夏

「…わかった」ピッ「……緊急事態?」

 

一夏は電話を切り、着替えて指令室に向かう事にした。とりあえず制服に着替えて部屋を出ようとすると、

 

「一夏!」

 

箒だけでなく他の皆もいた。どうやら彼女達も千冬から同じ様に連絡を受け、一緒に指令室に向かっている様だった。

 

一夏

「箒、皆も…」

「……」

セシリア

「一夏さんにも連絡がきたんですの?」

一夏

「ああ…。それより緊急事態って?」

ラウラ

「わからん。だが教官がそう仰る以上ただ事ではなさそうだ」

シャル

「急ごう!」

 

とりあえず皆揃って指令室に向かうことにした。

 

 

…………

 

指令室

 

ガラッ

 

一夏達が指令室にやってくるとそこには千冬と真耶、そして楯無、クロエがいた。

 

ラウラ

「教官!」

「千冬さん!」

千冬

「…来たか」

クロエ

「皆さん…」

セシリア

「山田先生。…それに楯無さんとクロエさんも…?」

真耶

「申し訳ありません皆さん…」

楯無

「こんな遅くに御免ね皆」

「大丈夫ですよ。…しかし緊急事態って一体なんですか?」

シャル

「僕達を呼んだってことは……まさか、またファントム・タスクですか!?」

真耶

「……」

 

真耶は何も答えない。代わりに千冬が真剣な表情で答える。

 

千冬

「……よく聞け。ここから遠く離れたとあるポイントに…再びアレの反応が出た」

セシリア

「…アレ…?」

「先生、アレって…一体なんですか?」

 

他の皆も同じ事を聞きたそうな顔をしている。

 

千冬

「……ひと月前の奴ら、といえばわかるか…?」

一夏

「…ひと月前………!」

「ま…まさか!?」

「まさか…千冬さん!」

 

一夏達は皆同じ答えに達したらしい。そして次に千冬が言った言葉に全員が衝撃を受けた。

 

千冬

「…そうだ。再び奴らが現れた…。あの、黒いアリギエルとウェルギエルがな」

一夏

「…!!」

「あの時の奴らが!?」

シャル

「そ、そんな…!あいつらは火影と海之が倒した筈じゃなかったんですか!?」

セシリア

「そ、そうですわ!先生も仰ったじゃないですか!反応は全て消え……あ、も、申し訳ありません皆さん…」

一夏

「……」

「気にしないでいいわよセシリア…」

ラウラ

「しかし教官!セシリアの言う通り、奴らの反応は確かに消滅したと!」

千冬

「…確かにあの時、奴らの反応はレーダーから消えた…。それについては確かだ。私もずっと見ていたからな。……だが…」

 

すると千冬は目の前のモニターを付ける。

 

一夏達

「「「!!」」」

 

一夏達は皆目を見開いた。そこに映っていたのは

 

 

Dアリギエル・ウェルギエル

「「……」」

 

 

あるポイント上空で静かに佇んでいる…あの時の黒いアリギエルとウェルギエル。夜なので真っ暗闇だが月の光で姿が確認できる。血の様な光を放つ目と口も。そしてすぐ傍にはどうやっているのか空中で停止しているオーガスもいた。

 

「そ…、そんな…」

楯無

「これは今から約10分前、偵察機が録画した映像よ」

真耶

「先輩の指示で急遽そのポイントに飛ばしたのです。そしたらこれが映っていました…。この直後に撃墜されましたが」

「……」

ラウラ

「それで今奴らは!?」

クロエ

「それが…出現した地点から全く動いていないんです」

セシリア

「動いていない?」

千冬

「そうだ。奴らは動いていない。まるでその場で何かを待っている様に」

シャル

「…待っているって…何を…?」

 

とその時ラウラが気付く。

 

ラウラ

「…!この場所は…ふたりの反応が消えた場所では!?」

一夏

「…え」

セシリア

「本当ですわね…」

「しかし…何故また同じ場所に…」

千冬

「わからん…。だがもしかしたら…確認しに現れたのかもしれん」

「…確認?」

 

するとその質問に楯無が答える。

 

楯無

「…ふたりの生死の確認よ」

「…!」

「…奴らもふたりが生きているかもしれない、と考えていると?」

楯無

「可能性の話だけどね…」

(あのオーガスの正体はアルゴサクスという火影くんが過去に倒した悪魔。そして奴も二人の正体を知っている。ならふたりの危険性を十分知っている筈だし…)

クロエ

「そして最初の疑問の答えですが…彼らは兄さん達を、そして私達を待っているのではないでしょうか…」

楯無

「ええ、私も同じよ。自分達が出れば間違いなく私達も来る。そう思っているのでしょうね…」

一夏

「……」

 

ガラッ

 

すると鈴が扉を開けて出ていこうとする。

 

「鈴!」

真耶

「鳳さんどこ…って、まさか!」

「……」

楯無

「……行くつもりなのね?鈴ちゃん」

千冬

「危険すぎる。お前が行った所で何ができる」

「……わかってます。火影や海之が仕留め損なう程の相手ですもん。私なんかじゃとても適わない事位…」

千冬

「そうだ。お前では勝てん。ここにお前達を呼んだのは奴等が生きていたという事を知らせるためであって戦いに行かせるためではない。行くことは許さん、命令だ」

 

はっきり力強い言葉で静止する千冬。だがそんな千冬に対して鈴は負けずに言い返した。

 

「………でも、それでも…私には理由があるんです。あいつらと戦う理由が」

シャル

「鈴…」

「あいつらは、私から大切なものを奪った…。私は…あいつらだけは絶対に許す事はできません!」

 

鈴の言葉にはこれまでに無い程の怒りと強い意志、そして覚悟が含まれている様に感じられた。

 

千冬

「鳳…」

真耶

「でも鳳さん!」

「命令違反としてどんな罰を与えられても構いません。でも…私はあいつらをこのまま…!」

 

鈴は全く引く気が無い様だ。すると、

 

ラウラ

「悔しいのはお前だけじゃないぞ鈴」ポンッ

「…ラウラ」

 

そう言ってラウラが微笑を浮かべながら鈴の肩を叩く。

 

ラウラ

「…私も行く」

真耶

「ボーデヴィッヒさん!?」

千冬

「…ボーデヴィッヒ。それは軍の正当な任務か?よもや私情ではあるまいな?」

 

千冬はラウラに発言の真意を問いた。

 

ラウラ

「……私の任務は脅威となる敵の殲滅若しくは捕縛」

千冬

「それは知っている。任務からすればお前の行動は正しいだろう。だが今のお前の行動はそれとは別のものを含んでいる様な気がする。…もう一度聞く。それは軍人としての行動か?それとも…お前個人としてか?」

ラウラ

「………」

 

暫しの沈黙の後、ラウラは答えた。

 

ラウラ

「……申し訳ありません教官。…でも私は知ったんです。使命よりも大切なものがあると…。今の私は軍のため、国のために戦う事ができません…」

 

軍人としてでなく人として戦いたい。それがラウラの答えだった。

 

千冬

「お前…」

シャル

「ふたりだけなんてズルいよ。僕も行く」

「…私も」

 

更にラウラに続きシャルと簪も行くと言い出す。

 

クロエ

「シャルロットさん!」

楯無

「駄目よ簪ちゃん!それに皆も冷静になりなさい!これは明らかに罠よ!わかってるでしょう!」

 

堪らずクロエも楯無も止める。しかし、

 

シャル

「…はい、わかってます。罠だって事も…そしてあいつらの強さも…。でも…僕も鈴やラウラと同じなんです。あいつらは…あいつらだけは許せない!僕達から…僕から大切な人を奪ったあいつらだけは!」

「お姉ちゃん御免なさい…。でも、私も戦いたい…。海之くんと火影くんのためにも…!」

楯無

「簪ちゃん…」

真耶

「皆さん…」

 

シャルと簪の強い意志に楯無も真耶も何も言えなくなってしまう

 

「大丈夫です先生。死ぬつもりはありません。もっと言えば負ける気も更々ありませんから」

「どんなに強くても無敵なんて無い筈だよお姉ちゃん。奇跡起こしてみせるよ」

「…そうだな。私も行こう。一本の矢より三本の矢だ。それに…奴等には私も用がある」

セシリア

「皆さんだけ行かせたりなんてしませんわ」

「箒、セシリア…」

千冬

「……」

 

千冬は何も言わなかった。もしかしたらこうなる事は少なからず予想していたのだろう。どんなに止めても彼女達の決意が変わらない事も…。

 

一夏

「…俺も」

 

すると彼女達も見て一夏も一緒に行こうと言い出そうとするのだが、

 

「…アンタは来なくていいわ一夏」

 

背を向けながら鈴が一夏の言葉を止める。

 

一夏

「!」

「聞いたわよ。アンタ最近碌に訓練もせずずっとふさぎ込んでるらしいわね…。そんなアンタが一緒でも大した意味は無いわ。それに今のアンタには白式も無い。そんなアンタに一体何ができるっていうの?」

一夏

「だ、だけど…」

「足手まといなのよ!!」

一夏

「…!!」

 

一夏にそう厳しく言い放つと鈴は走っていった。

 

シャル

「鈴!」

「行こう皆!」

箒・セシリア

「「一夏(さん)…」」

ラウラ

「行くぞふたり共!」

 

シャル達も鈴を追いかけて出て行ってしまった。

 

真耶

「皆さん!」

千冬

「くっ…更識、クロニクル!お前達も行ってくれ!」

楯無・クロエ

「「はい!」」

千冬

「…真耶、暮桜の用意を」

真耶

「し、しかし先輩。また以前の様な事になったら…」

千冬

「構わん。あいつらだけを行かせるわけにはいかない。急げ!」

一夏

「………」

 

 

…………

 

とある海の上空。空は月の光だけが浮かぶ闇夜。皆は全員でオーガス達が待ち受けるポイントに向かっていた。

 

「……」

「…なぁ鈴、お前さっきのアレは少し言い過ぎではないのか…?一夏とて」

楯無

「いいえ箒ちゃん。酷かもしれないけど確かに今の一夏くんはまともに戦えないわ。白式も無いし…。それに…鈴ちゃんはきっと一夏くんを想ってああ言ったのよ。多分箒ちゃんやセシリアちゃんの事もね」

「…え?」

セシリア

「私達も、ですか?」

ラウラ

「私もそう思います。酷い事を言うようだが…今の一夏が来てもこの中で一番やられる確率が高い…。もしそうなったら箒やセシリアもまともにいられないだろう?」

シャル

「…じゃあ鈴のさっきの言葉はわざと?」

「そっか…。鈴は一夏だけじゃなく箒やセシリアも守るためにあんな事を…」

「……これでも一応あいつの幼馴染ですから。あいつの事は多少は知っているつもりです。追い打ちをかける様な言葉になりましたけど…でもこのままあいつが戦いに出ても多分…。もう…大切な誰かが消えるのは見たくないんです…」

クロエ

「鈴さん……」

「…鈴、ありがとう」

セシリア

「ありがとうございます…鈴さん」

楯無

「ふたり共、お礼を言うのは後よ。今更だけど力は敵の方が遥かに上。はっきり言って勝ち目は殆ど無い。でも約束しなさい。絶対生きる事!どんなにかっこ悪くても生き残れば勝ちって言うし!無理に倒さなくても追い返せれば十分!いいわね?でなきゃ何時か帰ってくるかもしれない未来の旦那様にも会えないわよ!」

シャル

「だ、旦那様って…」

「勿論です!あいつには言いたい事が山ほどありますから!」

「うん!わかってる!」

ラウラ

「ふふっ、初にして最大の夫婦喧嘩を味合わせてやる」

クロエ

「私も死ねません。束様をお救いするまでは!」

「その通りだな!」

セシリア

「はい!」

 

望的な状況下の中、皆気持ちを入れ替える様に楽しそうに気合を入れるのだった。

 

「……ところで鈴、こんな時で何だが…お前は先ほど一夏を大切、と…」

セシリア

「ま、まさか鈴さん…!」

「ふふん♪いらない心配よふたり共。私のタイプは銀髪で赤い目の苺が好きな、そんな子供っぽい変わり者な奴よ♪」

シャル

「え~残念だなぁ。ライバルが減ったと思ったのに~。あははは♪」

 

 

…………

 

一夏の部屋

 

一夏

「……」

 

あの後、一夏は千冬から自室待機を命じられ、ひとりベッドで横たわっていた。

 

一夏

「……」

 

 

(余計な真似するな!)

(一夏行け!今のお前じゃ足手まといだ!)

(足手まといなのよ!)

 

 

一夏

「…俺は…俺はどうしたらいいんだ……」

 

自問自答し続け、そして答えが出ないまま一夏の意識は薄れていった……。

 

 

…………

 

楯無

「……!見えたわ!」

 

先頭を飛ぶ楯無が指差した先には…、

 

オーガス

「……」

Dアリギエル・ウェルギエル

「「………」」

 

オーガス、そして黒いアリギエルとウェルギエルが待っていた。

 

楯無

「皆行くわよ!くれぐれも警戒を怠らないで!」

全員

「「「はい!」」」

 

楯無から支持された皆は距離を測りながら相手の動きを見る。……しかし向こうは佇んでいるだけで一切動きが無い。

 

「…どうしたんだ?向こうからも私達は見ている筈だ」

シャル

「…わざわざ自分達が行く必要はない。来るなら来い。という意味かも」

「面白いじゃないの。なら望み通り行ってやるわよ!」

クロエ

「皆さん油断しないで下さい!」

 

そう言いながら箒達は最大限の警戒を張りつつもゆっくりと近づく。……そしてすぐ近くにまで来ることができるとオーガスは何やら書物に目を通している。だが彼も黒い二体もその傍で何もせず動かない。

 

オーガス

「……」

Dアリギエル・ウェルギエル

「「………」」

シャル

「やっぱり…、後ろの二体のISは…あの時の…」

「本当に生きていたのか…!」

「あの人、本を読んでる…?」

ラウラ

「おい貴様!敵を前にして何をしている!」

 

目の前に箒達がいても何ひとつ変わらずに本に目を通すオーガス。すると、

 

オーガス

「…お前がいつの日か出会う災いはお前がおろそかにしたある時間の報いである…」

セシリア

「…えっ?」

オーガス

「…勝利とは、最も忍耐強い者にもたらされる…」

 

何やら呟くオーガス。どうやら本に書かれている一文の様だ。

 

シャル

「…ナポレオンの言葉…?」

オーガス

「書物とは中々面白いものだ…。私が持った数少ない戯れのひとつだ。…これが人間の言葉で言う趣味、というもの」

 

そう言ってオーガスは手に持った本を綴じる。

 

オーガス

「ようこそ…、冥府の世界への特等席へ」

クロエ

「やはり私達が来ると予測していたんですね」

オーガス

「姿を見せれば必ず来ると思っていましたよ。そして見事に来られた。正に光によって来る羽虫の如しですねぇ、クククク…」

ラウラ

「…貴様ぁぁ!」ジャキッ!ズドンッ!!

 

怒りのあまりラウラはレール砲を撃った。しかし、

 

ガキィィンッ!

 

それは横から入ったDウェルギエルの刀によって弾かれてしまった。

 

ラウラ

「ちぃっ!やはり駄目か!」

 

ズドンッ!……ドガァァンッ!

 

ラウラ

「ぐっ!」

 

すると後ろにいるDアリギエルがエボニーのビームを撃ってきた。ギリギリだったが何とかシールドで防ぐラウラ。

 

「ラウラ!」

セシリア

「大丈夫ですか!」

ラウラ

「あ、ああ…」

オーガス

「一回には一回、悪く思われませぬ様…」

シャル

「な、なんて早撃ち…。それにあれ…火影のハンドガン!?あんなものまでコピーしてるの!?」

「あの弾き方…前に海之がやったのと同じやり方だ…!」

 

武装だけでなく戦術までうりふたつである事に驚きを隠せない箒達。すると楯無がオーガスに話しかける。

 

楯無

「貴方が火影くん達が言っていたオーガスね。会うのは初めてだわ。…更識家17代目当主、更識楯無よ」

オーガス

「これはこれは…、オーガスと申します。とはいえ短い出会いですがね」

楯無

「貴方達が私達を待っていたのはわかったわ。…でもなんでよりにもよってこの場所に?」

オーガス

「……ふむ、かの高名な更識当主の頼みとあっては多少の相手をせねば失礼。何故この場所か……宝探しとでも言っておきましょうかね」

クロエ

「…宝探し?宝って…」

 

するとオーガスは答えた。

 

オーガス

「お知りになりたいですか?奴等の死体ですよ」

「!死体、だと!?」

「まさか…海之くんと火影くんの事!?」

 

するとオーガスの表情がより一層狂気を含んだ。

 

オーガス

「クククク…、そう。奴等が単なる物質となった証。命が止まった証。私にとってこれほどの宝はない。最もこれ程探しても指一本見つからないという事は鮫か鯨にでも丸飲みされたのかもしれんがな。ハッハッハッハ!」

Dアリギエル

「ケケケケケケケケ!」

Dウェルギエル

「カカカカカカカカ!」

 

オーガスだけでなく傍にいる黒い存在も笑う。

 

鈴・シャル

「「…!!」」

セシリア

(御ふたり共どうか落ち着いてください!相手にしたら駄目ですわ!)

クロエ

「貴方の後ろにいるのは…」

オーガス

「そうだ。こいつらが奴らを殺してくれた。嘗ての自分自身に殺されるとは何とも滑稽だな」

「! 嘘よ!火影と海之がアンタ達なんかに!」

ラウラ

「そいつらが嘗てのあいつらだと!?ふざけた事を言うんじゃない!」

「それに何故そいつらがここにいる!そいつらは火影と海之が倒した筈だ!」

オーガス

「…確かに奴等はこいつらを戦闘不能になるまで破壊した。あれほどの傷を負っておきながら大したものだ。だが倒しきるには至らなかった。故に直してやったのだが…どういう訳か思考回路と言語機能が多少狂ってしまってな。最早こいつらはただの獣と同じよ。私がこの場からいなくなれば目の前にあるもの全てを破壊するだけの存在となるだろう」

楯無

「…なんですって!」

クロエ

「そんな…そんなものを放っておいたら…!」

 

オーガスの言葉は皆を戦慄させた。火影と海之を倒した程の存在。見る者を一瞬で震え上がらせる程の殺気と狂気を含んだ存在。そんな者が野に放たれでもしたら……。

 

オーガス

「そしてもうひとつ。私から客人、貴様達への贈り物のためだ」

「贈り物…だと!?」

「私達に…?」

 

するとオーガスは再び実に楽しそうに言い放った。

 

オーガス

「わからんか?……ククク、貴様等にも今まで面白い遊戯を見せてもらった礼として、奴等と同じ場所で眠らせてやろうと思ったのだ。深く慕う者達と同じ場所で永久の眠りにつけるのだ。これ以上の贈り物はなかろう?先に逝った奴等もさぞ喜ぶことだろう」

「!……どこまで人を、ふたりを侮辱すれば気が済むのよ!」

シャル

「なんでそこまでふたりを憎むの!?火影と海之がお前達に何をしたっていうのさ!」

オーガス

「答える必要はない。貴様ら如きに理解等できん。……だがそうか、奴等は伝えていないのか。クククク…知られるのが怖かったのか。とんだ臆病者だな。ダンテはともかくバージルの奴は本当に弱くなったものだ」

「火影と海之が…臆病者ですって!」

「そんな事は断じてない!ふたりは誰よりも勇気ある者達だ!」

セシリア

「貴方何様のおつもりですの!?まるでご自身が神であるかの様に話されますわね!」

 

するとオーガスはその質問に言葉を返す。

 

オーガス

「神ではない。私は偉大なる我が神の代弁者。我が神の代行者だ」

シャル

「…何を言ってるのこの人…?」

「もうひとつ答えろ!姉さんは無事なのか!」

オーガス

「篠ノ之束の妹か。心配するな。あの女にはまだ役立ってもらわなければならんからな。奴らの抹殺というひとつの目的が達成された今、我らの大願成就も近い」

 

するとある言葉に楯無が反応する。

 

楯無

「…我ら…ですって?貴方の後ろに誰かいるって事…?」

オーガス

「……遊びはこれまでだ」

 

シュンッ!

 

すると後ろにいる二体が動き出し、拡張領域を開いて何かを取り出す。それは…、

 

「…!」

シャル

「あれは…火影のイフリート!?」

「それにもうひとつは…刀の破片…?…!」

ラウラ

「まさか…海之の刀の破片か!?」

 

それはまさしく火影のイフリートの片腕。そして海之の閻魔刀の破片だった。

 

「あれがあるという事は……」

セシリア

「…そんな…」

刀奈

「……」

クロエ

「兄さん…!」

 

それを見た彼女達の心が絶望に染まる。どんなに絶望的状況でも心のどこかで可能性を信じていた。ふたりは生きているという可能性を。だが目の前に現れたそれを見てその僅かな可能性すらもほぼ消えてしまったという現実が彼女達を打ちのめした。

 

オーガス

「ククク…わかったか?奴等の死が真実であると。これで安心して死ねるだろう。本当ならもう少し宝探しを続けたいところだったが蠅がうるさい故、処分してからでも遅くはなかろう」ヴゥゥゥゥンッ

 

するとオーガスは転移を発動させた。

 

「待て!逃げる気か!」

オーガス

「…逃げる?」…サッ

 

 

ピカッ!…ズドオォォォォンッ!!

 

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

オーガスが手を上げた瞬間、箒の上空から黒い雷が襲いかかった。

 

楯無

「箒ちゃん!」

ラウラ

「箒!大丈夫か!?」

「ぐっ…、あ、ああ…。心配するな…」

シャル

「な、なに今の?雷?あいつが起こしたの!?」

オーガス

「二度とその様な事をほざくな。蠅にも及ばぬ虫けらが。…お前達、遊んでやれ。精々悔いを残さず死ねる様にな。ハッハッハッハッハ!!」

 

それだけ言うとオーガスは転移し、消えた。

 

Dアリギエル

「アイツラシンダ……シンダ。バラバラナッタ」

Dウェルギエル

「…コンナフウニナ!」

 

 

バキィィィィィィィィィンッ!!

 

 

全員

「「「!!」」」

 

黒いアリギエルとウェルギエルは皆の目の前で、それを粉々に握りつぶしてしまった。

 

Dアリギエル

「バラバラ…コワレタコワレタ!ケケケケケケ!」

Dウェルギエル

「ツギオマエラ…ケシテヤル!カカカカカカ!」

「…アンタ達ぃぃぃぃぃ!」

シャル

「よくも…よくも火影と海之を!」

「絶対…絶対に許さないから!」

ラウラ

「倒す!」

クロエ

「兄さん達の仇!」

楯無

「女の恨みの怖さを教えてあげるわ!」

「あの人を救い出す迄は死ねんのだ!」

セシリア

「お覚悟を!」

 

悲しみを怒りに変え、少女達は挑むのであった。




※次回は22日(土)の予定です。
最近本当に暑いですね。暑さに負けない様、少しずつですが応援してくださっている皆様のために頑張ります。
UAが150000に到達しました!ありがとうございます。
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