IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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ドッペルゲンガーに殺されそうになった箒達を救った楯無、クロエ、そして千冬。箒達と入れ替わりで楯無とクロエはDアリギエルに、千冬はDウェルギエルに挑むが彼女達の力をもってしても敵は更に上を行っていた。楯無の起死回生の切り札である「ミストルテインの槍」も倒しきるに至らず、Dアリギエルは怒りのままふたりに牙を向ける。もはやこれまでかと誰もが思ったその時、飛び込んできたのは…!


Mission159 一夏、自らの闇と向き合う

楯無とクロエをDアリギエルの攻撃から守ったのは、DNSを起動した事による危険から封印されていた白式を纏った一夏であった。

 

一夏

「ゼィ、ゼィ、ゼィ……ま、間に合った!」

楯無・クロエ

「「一夏くん(さん)!」」

「い、一夏!何故お前がここに!?」

ラウラ

「それにあれは白式!封印されていたのではないのか!?」

一夏

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

ガキィィィィンッ!!

 

一夏は全力でDアリギエルの剣を押し返した。

 

Dアリギエル

「ナンダ~テメェ!マタシニタガリノ、ツイカカァ~?」

一夏

「人を飯の追加みたいに言ってんじゃねぇ!」

 

するとそこに千冬が飛んできた。

 

千冬

「一夏!何故お前がここにいる!それに何故白式を!」

一夏

「今はそんな事言ってる場合じゃない!先ずはコイツラを何とかするのが先だ!千冬姉は片方を頼む!こいつは俺が何とか抑える!」

千冬

「! お前…」

楯無

「よしなさい一夏くん!今の貴方が勝てる相手じゃないわ!私達が!」

 

楯無はそう言って一夏を止めようとするが、

 

一夏

「そんなボロボロじゃ説得力ないですよ楯無さん。……それに」

クロエ

「…それに?」

 

すると一夏は答えた。

 

一夏

「帰ってくる」

千冬

「…何?」

 

一夏

「あいつらは…、火影と海之は…、必ず帰ってくる!!」

 

 

…………

 

それは今から少し前の事…。皆と共に行けず、部屋に戻っていた筈の一夏だったが…。

 

一夏

「……」

 

その時、一夏は不思議な場所にいた。周囲は靄の様な霧に包まれて何も見えない。真っ白い空間。その中をぽつぽつと一夏は歩いていた。

 

一夏

「ここは…どこだ?。俺は確か、自分の部屋にいた筈…。…眠っちまったのか?じゃあ…これは夢か?……でも、なんか見覚えがある様な…」

 

どこまで行ったらいいのかわからないまま、そんな事を想いながら一夏は歩いていた。………するとその時、

 

「…やっと会えたね」

一夏

「!!」

 

突然後ろから聞こえてきた何者かの声に一夏は驚き、振り返る。するとそこにいたのは、

 

「驚かせてしまったのならすまない」

「…大丈夫?」

 

ふたつの白い影であった。声からして男性と女性のふたり。輪郭こそ辛うじて見えているがどんな顔かはわからない。ただ声色からして男性からは真面目な感じが、女性からは優しさを持つ感じが聞いて取れた。そして何よりも…、

 

一夏

「…その声…!」

 

一夏は再び驚いた。一夏はこのふたりの声に聞き覚えがあった。

 

一夏

「…俺の…夢に出てた、…いや聞こえた…」

 

数週間前、一夏の夢に突然出てきた謎の声とまさに同じものであった。あの時は身体も目も動かせなかったため、何もわからないままだったが。

 

「覚えていてくれたのね」

一夏

「ま、まぁ…何度も聞いたから…。姿は見えなかったけど…」

 

姿こそ見えなかったが一夏は不思議と警戒していなかった。もし目の前にいるふたりが敵なら自分が動けない時に既に何かされていてもおかしくないと思ったからだ。

 

「すまない。まだ会うのは早いと思ってね。…あの時の君は深く傷ついてた。心も身体も」

「貴方には時間が必要だった。だからその時までは会わないでおこうと思ったの」

一夏

「……」

「…だが事態はそうも言っていられない状況になっている様だ」

一夏

「…?」

「立ち話もなんだわ。まずはそこに…」

 

そこには何故か丸い小さなテーブルと三脚の椅子があった。

 

 

…………

 

男性と女性と一夏は席に着く。

 

「御免なさいね。お茶を用意できないのが残念だけど」

一夏

「い、いえ…」

 

影とはいえ普段あまり会う事が無い様な雰囲気の女性に一夏はやや緊張している様子だが目の前の男の影に問いかける。

 

一夏

「…あの、幾つか聞いてもいいですか?…貴方達は…一体?」

 

すると男はこう答える。

 

「…私達が誰、か…そうだな。……遠い遠い、とてつもなく遠い世界から来た者、と言っておこうか」

一夏

「……?」

「何を言っているのかわからないかもしれないけど…でもそうとしか言えないの。そういう約束だから。でも安心して?私達は貴方の敵じゃないから」

一夏

「は、はぁ…」

 

疑問は残るが取りあえず改めて敵ではないと安心した一夏は次の質問をすることに。

 

一夏

「…ここは、どこなんですか?」

「ここは君の中さ。…まぁ正確には君に深く関するものの中、だがね」

一夏

「…俺の、中?じゃあ…やっぱ夢ですか?」

「当たらずとも遠からずだな。だがそういう解釈で構わんよ」

 

そう言われてとりあえずこの質問の答えを得た一夏は最も聞きたかった質問をする。

 

一夏

「…貴方達は…どうして俺の夢に?」

 

すると男はこう答えた。

 

「…君と話がしたかったからだ」

一夏

「…俺と、話?」

「そう、会って話したかった。だから来たんだ。あの子と、そして君の守護者に了承を得てね」

一夏

「…俺の守護者…?」

一夏

「まぁそれについては今はいいさ。とにかく君と話がしたいと思ったのだ。だが先ほども言った様に今より少し前の君は深く傷ついていた。だからそれが少しでも癒え、時が来るまで待っていたのだ」

 

すると男はいきなり一夏に尋ねた。

 

「…単刀直入に聞く。…君は、何故あんな事をした?」

一夏

「…あんな事…?」

 

男は続けた。

 

「君は…何故あの時力を欲した?」

一夏

「!!」

 

それだけで一夏は理解した。

 

「ひと月前のあの時、君はあの黒い者と戦い、敗れ、殺されそうになった。しかし直ぐに君を助けようとした者が現れた。確か君の…姉上だったか。とにかく彼女が殺されそうになった君を救った。そして彼女は君に手を出すなと言った。今出て行ったところで君が逆に倒されるのがわかっての事だろう」

一夏

「……」

「だが君は戦おうとした。あの様な妙な力を使ってまで。そして最後は力に振り回されるただの獣となって暴走し、挙句には自分の仲間達を襲った…」

一夏

「! あ、あれは!」

「全部が自分のせいじゃない」

一夏

「…!」

 

自分が言おうとした言葉をまるで分っていた様に先に言われ、一夏は黙ってしまう。

 

「確かにきっかけはあの妙な力だったかもしれん。だが君自身よくわかっている筈だ。原因は自分にあると。だから君はこのひと月の間、悔恨の念に苦しんできた。あの時、あれを使わなければあんな事は起こらなかったかもしれない」

一夏

「……」

「聞かせてほしい。君はあの時何故あんな事をした?」

一夏

「…それ、は…」

 

するとそれを横で聞いていた女も口を開く。

 

「ごめんなさいね。この人真面目な上に頑固なところがあって…。でも誤解しないで。貴方は決して悪い子じゃない。あんな事を望んでやる様な子じゃない。それは私達もわかっているわ。聞かせて?…あの時、貴方は何を思ったの?」

一夏

「……」

 

そう言われた一夏の頭にあの時の記憶が浮かぶ。

 

 

(俺は、俺は見てるだけしかできないのかよ。何もできないのかよ…!)

 

(あの時も、そして今も守ってくれてる……俺は何時も千冬姉に迷惑かけてばかりだ…)

 

(千冬姉の様に、火影や海之の様に…俺ももっと強い力が欲しい!)

 

 

一夏

「………強くなりたいって、思った…」

「……」

 

一夏は静かに話し始めた。

 

一夏

「俺も強くなりたかった…。そして守りたかった…。火影や海之や千冬姉の様に、俺も、自分の大切なものを守れる様な…そんな人間になりたかった。そのために力が欲しかった…。役立たずに、足手まといになりたくなかった…。目の前で戦っている千冬姉の助けになりたかった…。だからあの時…」

 

 

(私の声に答えていただければ…貴方は力を手に入れられます。どんな者にも負けない、救世主の力が…)

 

 

一夏

「無力感に支配されてた俺は…あの声に答えてしまった。…DNSってやつが言う…どんな者にも負けない力っていうのが…欲しかった…。その力で千冬姉や皆の力になりたかった…」

「……」

一夏

「あんなひどい事をしようと思ってたんじゃない。ただ…強くなりたかっただけなんだ…」

 

力無き声で答える一夏…。すると今度は女の方が一夏にこう問いかける。

 

「……じゃあどうして、あんな事になったと思う?」

一夏

「…えっ」

「貴方の気持ちは間違っている訳じゃないわ。そして強くなりたいと思うのも決して悪いことじゃない。貴方が力を望んだのも、自分のためではなく誰かのため。そうよね?……じゃあ、実際力を持ってみてその後、貴方はどう思った?どう感じたか、思い出せる?」

一夏

「……」

 

 

(見える、見えるぞ、こいつの動きが全て!これが救世主の力!)

 

(どうした?さっきまで偉そうにしてたお前の力はそんなもんか?)

 

(俺も戦いたいんだ!もう守られてばかりじゃ嫌なんだ!)

 

 

一夏の脳裏に白騎士となった直後の自分の様子が浮かんでくる。そして第一に思ったことはというと…、

 

一夏

「………驚いた。そして…嬉しかった」

「……」

一夏

「俺の、いや正確には白騎士か…。その力であの時、Mをひとりで圧倒できた時、驚きと同時に俺だってやればできるんだっていう…嬉しさがあった。この力があれば負けない、もう役立たずじゃない。俺だって大事なものを守れる!火影や海之、千冬姉の様に戦える!だから…嬉しかった…です」

「…そうなのね…」

一夏

「…………だけど…」

 

 

(お前の方が強いなら俺なんて簡単に倒せるんじゃないのか!?)

 

(そんなんで世界最強のIS操縦者になりたいなんて聞いて呆れるぜ!)

 

(俺だけじゃなく千冬姉や束さんを散々馬鹿にしやがったお前を許すつもりはねぇ!)

 

(立てないなら、これで終わらせてやらぁ!!)

 

 

一夏

「……嬉しかったのは…最初の内だけだったかもしれない。…段々と、変わっていったかもしれない…」

「……」

「…どんな風に変わっていったと思うの?」

一夏

「……」

 

女の静かな問いかけに一夏は更に思い出し、感じた事を話し出す。

 

一夏

「最初は…力を手に入れた喜びが勝ってた…。でも…散々自分を痛めつけていた目の前のあいつを圧倒できているって思うと……妙に高揚した。いい気分だった…」

「……」

一夏

「それから暫くすると…さっきまで散々千冬姉や束さんや俺の事を馬鹿にしてたこいつを許せないっていう気持ちがどんどん大きくなっていった…。怒りがこみ上げてきて、憎しみが膨らんでいった。自分の感情が抑えきれなくなったとかそんなんじゃない、抑える気も起らなかった…。そして最後は……目の前のこいつをぶちのめしたいって、それだけしか…考えられなくなってた…。その後の事はあんまりよく覚えてない…。あの変な黒い影みたいなのに捕まって…、火影と海之に助けられるまで…。ただ…自分がどんな事をやっていたのかは…なんとなくだけど感じてた。自分の身体だから…。皆は操られていたからって言ってくれてるけど……、でもそれでも俺がやった事に変わりはない…」

「…辛かったわね…」

 

一夏が話し終えるとそれまで黙っていた男が話し出す。

 

「…確かに操られていたとはいえ、君のやった事に違いは無い。全ては……自らの「傲り」に負けた君自身にある」

一夏

「……俺の…傲り?」

 

傲りという言葉が気になった一夏は聞き返す。

 

「さっきこの子も言ったが…、君の「強くなりたい」「弱いのは嫌だ」「敵を倒したい」「馬鹿にした者にやり返したい」等の気持ち。人なら誰しもが一度は思う事だ。ましてや君みたいな若者なら尚更な。それは確かに間違ってはいないかもしれない…。だが、そういった感情にはある強力な「罠」が絶えず付きまとう」

一夏

「……罠?」

「君が持った力への強い「欲望」や、それを持つ者に対する「嫉妬」。負けたくないという「不安」や「恐怖」。馬鹿にされた者に対する「憤怒」や「憎悪」。そういった感情は時には確かに力を与えるが、時にはその者自身を大きく変えてしまう。それまで保っていた自分を簡単に闇の世界へと誘ってしまう。いわば魔力の様な危険性を孕んでいる」

一夏

「……魔力………!」

 

 

(恐れることは無い。ただ受け入れるのだ。そして委ねるが良い。力という魔力に!)

 

 

「君の言う通り最初は強くなりたい、守りたいという純粋な気持ちだっただろう。だが君は自分が手に入れた強大な力を振り回している内に、いつの間にかその力に酔っていた。最初の気持ちを忘れ、ただ目の前の敵を自分の圧倒的な力の前にひれ伏せさせたい。そう変わっていった。違うかい?」

一夏

「……」

 

図星だったのか一夏は何も言わなかった。男は続ける。

 

「そして戦い続けている内に君の中にある種の傲りが生まれた。偶然的に手に入れた力をあたかも自分の力と思い込み、この力があれば何にも負けはしないと。その瞬間、君の中の均衡が崩れた。君が本来の君でなくなった。君自身が生み出した傲りに敗れた。そうでなければ自分を見失う事も無かったかもしれない…」

 

一夏

「……」

 

 

(勝負に卑怯もくそもない、だから俺もそうさせてもらった!)

 

(自分よりも弱いと思っていた奴に見下される気分は!?)

 

(これが俺の力だ!お前が蔑んだ俺の力だ!)

 

 

一夏はただただ男の言葉を黙って聞いていた。思い出せば確かに自分は戦う者としてあるまじき事を言っていたりもしていた。卑怯な真似等自分が一番嫌っている筈だったのに…。

 

「君は…あの妙な力でも白騎士でもない、君自身に敗れたのだ。私はそう思う」

一夏

「……そう、ですね…」

 

一夏は認めるしかなかった。すると男は一夏に再び尋ねる。

 

「……では、君にもうひとつ聞きたい。君は何故力を欲した?」

一夏

「……?それは…さっきも言ったようにあいつらや千冬姉の様になりたいって…」

 

一夏は答えた。だが男はそれを遮ってこう言った。

 

「確かにそれも理由のひとつではあるかもしれない…。だが私はもっと別の理由もあると思っている。君があのDNSとやらを起動させるほど力を欲した理由…、それは…君が憎しみを持ったからだ…。彼らにな」

一夏

「!!」

 

その言葉に一夏は大きく目を見張った。そしてすぐ様強く反論する。

 

一夏

「彼らって…火影と海之の事か!?俺があいつらに憎しみを持っただって!?そ、そんな馬鹿な事あるはずねぇ!!」

「……」

 

だが男はそんな一夏の反論を否定し、言葉を続ける。

 

「君は自分が知らない内に彼らを恨んでいた。もっと言えば嫉妬していた。違うかい?」

 

そう言われて一夏は思わず立ち上がって更に反論する。

 

一夏

「ち、違う!あいつらは俺の親友だ!何度も俺や皆を守ってくれたんだ!寧ろ千冬姉と同じ位目指してる奴らだ!それなのにあいつらを恨んでなんかいる訳ねぇじゃねぇか!!」

 

だが男は言葉を続ける。

 

「本当にそうか?確かに君の彼らに対する友情はあるだろう。だが君自身知らない無意識の領域で、君は嫉妬してもいた。自分と同じ力を動かせる資格を持ち、学ぶ場所も時間も同じ。なのにあらゆる点で既に自分の遥か先をいき、僅かな期間で多くの者に頼られ、慕われる様になった彼らに」

一夏

「! そ、それはあいつらがそんだけ良い奴だし、それに頭も俺よりずっと良いし強いから!」

「そうだな。しかし彼らもただの人間には違いない。化け物でも、ましてや悪魔でもない。歳も君とひとつしか変わらない。なのに君よりもずっと強く、常に君や友達を導いてきた。大勢の人を救った。自分には出来ない様々な事を次々にやってのけた。それを見て君はただただ関心を持っただけだったか?君は先ほど言った筈だ。「彼らのようになりたい」と」

 

その言葉に一夏は言葉が詰まる。

 

一夏

「…そ…それは…」

「人は自らに無いものを持つ者に嫉妬するものだ。ましてやそれが自分に近しい者ならば猶更ね。そしてそこから憎しみが生まれる。…もう一度聞く、君は彼らを真っ白い気持ちだけで見ていたかい?」

一夏

「……」

 

一夏は信じられない、信じたくないという気持ちだったが男の言葉に少しずつ自信が揺らぎ、力なく椅子に座りなおす。

 

一夏

「……俺が……火影と海之に……嫉妬?……俺が?」

 

すると今度は女がゆっくりと立ち上がり、不安を和らげる様にその手を一夏の肩に優しく置き、言った。

 

「焦らないで。わからない時は落ち着いて過去に問いかけてみて?そうすれば見つからない答えも見えてくる事があるわ…」

一夏

「……」

 

その言葉に一夏は落ち着いて考えてみた。自分が火影と海之と過ごしてきた時の事…。

 

 

セシリアとの代表決定戦の後に行われたふたりの試合。初めてふたりの戦いを見た時、既に戦い方も動きも訳がわからなかった。自分とは比べ物にならなかった。ただただ凄いと思った。

 

鈴とのクラス対抗戦で来襲してきたアンジェロ。自分は全く歯が立たなかったのにふたりはあっけなく倒した。

 

タッグマッチで自分を圧倒したひとり。ラウラを命がけで助けたひとり。その後のファントムをも簡単に倒してしまったふたり。自分は見ているしかできなかった。

 

臨海学校で100もの敵から皆を守ったふたり。多くの者がふたりに救われた。

 

ファントムを数分で片付けたひとり。自分が敵わなかったオータムを圧倒したひとり。しかもそのひとりは仲間を守るために自分の腕を犠牲にした。自分にはとても無理だった。

 

キャノンボール・ファーストや第二回タッグマッチでもふたりは多くの人を守り、感謝の言葉を受けていた。そして京都でも再び大勢の人を救った。最後は破壊者になった自分を救ってくれた。大怪我を負ってまで。なのにそれでもふたりは戦った。自分や仲間を守るために…。

 

 

一夏

「……」

 

同時にそれを見た時の自分の言葉や気持ちも思い出してくる。

 

 

(お疲れー!すげーな二人共!俺驚きの連続だったぜ!!)

 

(あいつらには度々驚かされるなぁ~)

 

(下手すりゃ自分達の命が危なかったかもしれねぇのにさ。俺ならとても無理だ)

 

(凄ぇなぁふたり共。たったふたりであれだけの敵を倒して皆を守り切った…)

 

(俺はまだまだ、って事か……)

 

(あいつらは常に俺の遥か先を行ってるんだよな…。俺にもあんな力があれば…)

 

 

一夏

「…………………そう、か…」

「…何?」

「……」

 

やがて一夏は再び静かに話し出した。

 

一夏

「最初、学園に入学した時からもう…俺の理解が及ばない位、とんでもなく強かったあいつら…。俺や箒達が手こずったり倒せなかった相手を…簡単になんとかしちゃったりしたあいつら…。たったふたりで多くの人を守ったあいつら…。俺…そんなあいつらが……羨ましかったんだ…。だから…俺もそうなりたいって思った…。頑張って、あいつらみたいな人間になりたいって…」

「……」

一夏

「でもどんなに頑張っても訓練しても…敵わなかった。やっと傷ひとつ付けられたと思ったら…あいつらはすぐにもっと先に行ってしまって…全然追いつける気がしなかった…。今思えば当然だったかもしれない。あの千冬姉でさえ「ふたりに勝ったら自分にも楽に勝てる」って言ってた位だったから…。でもだからといって決して偉ぶったりしないで…、寧ろ気ぃ配ってばかりいて…いつも俺や皆を守ってくれた…。まだ会って一年も経ってないけど、そんなあいつらを千冬姉や皆が強く信頼してた。あの人嫌いの束さんでさえ…。そんなあいつらが…羨ましかった…」

「…そうなのね…」

一夏

「そしてある時、あいつらの覚悟を聞いた。どんなに傷ついても守るために戦い続けるって…。悔しかった…。改めて自分との差を思い知らされた。俺も負けない位頑張っているのに…なんであいつらの背中は…こんなに遠いんだろうって…。次第に自信が無くなり始めてきてた…」

「……」

 

自らの心に隠れていた感情を吐露した一夏。ふたりの事を親友と思っている気持ちに嘘はない。しかし自分にはこんな隠れていた感情があった事に衝撃を隠しきれない様子。

 

一夏

「アンタの言う通りだ…。俺は…火影と海之に、あいつらの強さに…嫉妬してた…。俺よりもずっと慕われてるあいつらを…密かに恨んでたんだ…。そんな…俺の下らねぇ恨みが…火影と海之を…殺してしまったんだ!」

 

一夏は涙を流しながら言った。認めるには勇気がいったが…受け入れなければならないと思った。それが死んだふたりに対するせめてもの謝罪だった…。

 

スッ…

 

一夏

「…!」

 

すると女が一夏の身体を包み込むように優しく抱きしめながら声をかけた。

 

「よく頑張ったわね…。自分の罪を認める事はとても勇気がいる事。本当に…よく頑張ったわ」

「ここは時間の流れがゆっくりだ。…泣きたいだけ泣くといい」

一夏

「……~~~~~~~~」

 

女の腕の中で一夏は静かに泣いていた…。

 

 

…………

 

そしてそのまま暫く時が過ぎた。最初泣き続けていた一夏は段々落ち着いてきた様だった。

 

一夏

「……すいません」

「良いのよ、涙は悲しみを流し去ってくれるものだから」

一夏

「…なんか、母親に包み込まれてたみたいに、安心できた感じがします」

一夏

「あら、これでも20代の頃の姿と声で来たんだけど?貴方みたいな大きい子のお母さんってちょっと複雑ね~」

一夏

「そ、それはすいません。……ん?姿で来たって?」

「ふふっ、気にしないで」

「…君は過去の自分と向き合った。そして自らの罪を意識した。今の純粋な涙を、そして打ち明けた時の想いを忘れない様にな」

一夏

「……はい」

 

一夏は男に忘れないと約束した。すると男は尋ねる。

 

「…わかった。……さて、最後に聞こう。これから君はどうする?」

一夏

「…え?」

「君は自分を見つめ、過去の自分と対話した。そして意識し、友を想って涙を流した。もう今までの君ではない。では…これからの君はどうしたい?」

一夏

「……これからの、俺は…どうしたいか…?」

 

いきなりの質問に一夏は戸惑っていると、

 

「…ねぇ聞いて。私達がこうして貴方に会えたのは…貴方が意志を見せてくれたからなの」

一夏

「…俺の…意志?」

「気付いているかはわからないが…君はつい最近、どこかで前に進もうとふっとでも思ったことがある筈だ。例えば…もう一度守りたい、戦いたい、とかな」

 

そう言われて一夏は思い出した。先ほどドッペルゲンガーが出現した時、自分も戦いたいと思ったことを。

 

一夏

「あ、あれは…皆だけに戦わせる訳にはいかないと思ったから…。それに足手まといって止められちまったし…」

「しかし君はその時、確かに足を前に出した。例え止められようとも。私達がこうして君と出会い、対話できるのは今までの止まっていた君が少しでも前に進みだそうとしたからだ。そうでなければ今こうして私達が会う事もできなかったろう」

「貴方の一歩でも進もうという気持ちがこの機会をつくってくれたのよ」

一夏

「……」

 

そう言われて一夏は思った。確かにあの時自分は一瞬でも戦いたいと思った。皆と共に、火影と海之の命を直接的に奪ったあの黒い存在と。すると男は一夏の気持ちを察してか、

 

「君が望む事、それは君自身が一番よくわかっている筈だ。そして君にはそのための力がある。君だけの力が」

一夏

「…俺だけの、力…」

 

一夏だけの力。それは決まっている。だが…、

 

一夏

「……でも、怖いんだ。もしまた白式で戦って…前の俺みたいになったら…そう思うと…」

 

白騎士となって暴走した時の事はあまり覚えてはいないがあの時の様な感覚を再び味わうかもしれない事に一夏は恐怖していた。もしまた力に暴走してしまったら…。そんな一夏に男は言った。

 

「…君は「信念」という言葉を知っているか?」

一夏

「…え?」

「自分が何があっても絶対に正しいと信じている事だ。信念は持った者は強い。そして人を成長させる。それは過去の偉人達も言っている。「信念は人を強くする。疑いは活力を麻痺させる。信念は力である」と」

一夏

「…信念…」

「君とて同じだ。君も自らの心にあんな事はもう二度と起こさないという、それこそ例えどんな暴風や竜巻が来てもびくともしない、大地に力強く根を張った大樹の様な強い信念を持てば、これから先どんな戦いでもあの時の様な間違いはもう決して起こしはしない筈だ」

一夏

「…強い信念…」

「そしてそれは…彼らも持っていた筈」

 

 

(誰に命令された訳でも無い。俺達の本能に従って、守るために戦い続ける)

 

 

一夏

「…!」

「…本当なら戦いなんて無い方がいい。争いなんて誰も望んでいない。…しかし残念ながら…この世にはそうでない者もいる。あの者達の様に…」

一夏

「……ファントム・タスク。……いや、オーガス…」

「間違いを犯す者が人間ならば、それを止めるのも人間でなければならない。本来なら君や彼女達の様な未来溢れる若者にそんな辛い役目をさせたくはない。ましてや奴は「私達と同じ世界の者」なのだからな…。だが私にはどうすることもできない…。肉体を失っただけでなく、この世の存在でない私には…」

一夏

「…?」

「それができるのは君達だけならば、君達に託すしかないのだ…。数多くの困難が襲いかかるだろう。しかし神は乗り越えられない者に試練をお与えになりはしない。必ず乗り越えられる。信念を持って進み、そして…本当の強者(つわもの)となれ」

一夏

「……本当の、強者(つわもの)…?」

「苦しみや恐怖さえも己の成長の糧とするのだ。そうすれば闇も光となる筈だ」

一夏

「…苦しみや恐怖を…糧に…」

「何かのために戦う者は、背負うもののために一度たりとも負けることは許されない。それはとても険しく難しい事だ。だがこれまでの経験や苦難、そしてこれからの未来で時には打ちのめされる事もあるかもしれない出来事。それらを受け入れ、自らの信念のもとに諦めずに前に進もうとする者こそ、本当の強者(つわもの)たりえる。…君の友の様にな」

一夏

「……!」

 

男の言葉を聞いて一夏は驚いた。まるで火影と海之の過去の事を知っているかの様な言い方だったからだ。

 

一夏

「…貴方は知ってるんですか?…あいつらの事…」

「……」

「私達もその人達に助けられたの…。ううん、私達だけじゃない、たくさんの人が…」

 

それが誰なのか名前は言わなかった。だが一夏には彼等とは間違いなくあのふたりの事だという妙な確信があった。だから一夏は聞いてみようと思った。何故ふたりを知っているのか、そしてふたりの過去に何があったのか。…だがそれは止められた。

 

一夏

「…あの」

「貴方の聞きたい事はわかるわ。でもそれを伝えるのは私達じゃない…。あの人達よ」

一夏

「…え?」

「彼らの過去は私達が勝手に語って良いものではない。まもなく彼らは自ら全てを語ってくれる筈だ」

一夏

「!!」

 

二人の言葉を聞いて一夏は目を見張った。

 

 

一夏

(あいつらは…火影と海之は…生きている!?)




※次回は19日(土)の予定です。

一夏に話しかけているのが誰なのか、次回明らかになる予定です。

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