IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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一夏の前に突然現れたふたつの影。それはひと月ほど前に一夏の夢で語りかけてきた者達であった。ふたりは一夏に何故あのような事をしたのか、そして何故それ程まで力を欲したかと問いかける。過去の記憶を少しずつ引き出しながら一夏は語り続け、そしてその中で自分の知らない部分で火影と海之への嫉妬や恨みがあった事に気付き、謝罪の涙を流す。
そんな一夏を見たふたつの影は、一夏が少しずつ前に進みだそうとしているからこうして話ができる様になった事。そして自らの中に強い信念を持てばもう過ちは起こさないだろうと説き、続いて驚く事を言った。それは…、


Mission160 騎士の魂を継ぎ、白は覚醒する

「あの人達の事を伝えるのは私達じゃない。あの人達自身よ」

「そしてまもなく、彼らは全てを語ってくれる筈だ」

一夏

「…!!」

(火影と海之が…生きている!?)

 

ふたりの言葉に一夏は目を見張り、衝撃を受ける。はっきり言ってとても信じられなかったからだ。このひと月の間、必死で探したにも関わらず何ひとつ手がかりも見つけられなかったのだ。自分達だけじゃなく捜索隊にも、衛星にも、何の反応も出なかった。まさに絶望的同然だったのだ。普通からすればとても生きている様な状況ではない。しかし…この人達が嘘をついているとは思えない。

 

「…ただこれだけは伝えておこう。彼らもまた多くの絶望を経験してきた。…誰よりも。そして多くのものを失った。そのせいで時には道を誤った事もあったが、度重なる苦難を乗り越え、共に本当の強者となった者達だ」

一夏

(……?)

 

多くの絶望?失った?道を誤った?…一夏の心に疑問が浮かぶ。そういえば以前火影はこんな事を言っていた。

 

 

(もう無くしたくないのさ…。ちょい人より無くしたもんが多かったんでな…)

 

 

「そして彼らは…今も戦っている。生きるという戦いを。今までの自分とこれからの自分のために」

「そして何より、貴方やあの子達のためにね」

一夏

「…!!」

 

 

…………

 

一夏はある事を思い出していた。それは以前、夏季休暇中に家で千冬と過ごしていた時の事。

 

一夏

「………」

千冬

「…どうした一夏?難しい顔する等お前らしくない」

一夏

「俺だってたまにはそんな時あるっての。……なぁ千冬姉、火影と海之ってなんで旅客機を救ったのかな?」

千冬

「…なんだ急に?」

一夏

「いや…以前一緒に風呂入った時にその話になった時に火影が言ったんだ。飛行訓練中に見かけて、気付いたらそうしていたってな…。でも下手すりゃ自分達の方が死んでいたかもしれねぇ。救助隊を呼ぶっていう選択肢はあっても自分達で受け止めるなんてとてもできるもんじゃねぇ。ましてや旅客機に乗ってたのは皆見ず知らずの他人だ。幾ら両親を飛行機で亡くしたと言っても…」

 

あの時火影と海之は両親を失った様な出来事はもう起こしたくないという気持ちでふとそうしたと言っていたが…何故そこまでできるのかと一夏は思っていた。

 

千冬

「なんだそんな事か。…簡単だ、あいつらがそういう奴らだからだ」

一夏

「…へ?」

千冬

「誰かのためにという気持ちが人一倍強く、誰かを守るために自分を犠牲にできる。しかし家族や仲間のために自分も死なないという強い意志を持っている」

一夏

「……」

千冬

「他人とか関係なく誰も悲しませない。そのために最後まで諦めない。そういう奴らだ」

一夏

「…誰も悲しませない。最後まで諦めない…」

 

ピンポーン…ガチャッ

 

千冬

「ふたりが買い出しから戻って来たか。一夏、手伝ってやれ」

一夏

「お、おお悪い」

 

 

…………

 

一夏

(……あん時はあんまり良くわからなかったけど…今は少しわかった気がする。…諦めない、そして誰も悲しませない。それがお前らの信念…。そしてお前らは…今も生きるために戦ってる…。何度あんな目に会おうとも…。待っててくれている人達のために…)

 

 

(一夏、強くなれ。今度こそ本当に。俺達からの宿題だ)

 

(俺達にしかできない事がある。そしてお前にしかできない事もある)

 

 

一夏

(………)

 

暫くの沈黙が続いた後、一夏の口が開く。

 

一夏

「………俺」

「……」

一夏

「…俺、あいつらが死んだって聞いた時…、どうしたらいいのか…分からなくて。あいつらみたいに強くないし頭も良くないし…。責任の取り方も…分からなくて…。4年前に俺を誘拐したのがあのオーガスとか、千冬姉が白騎士だったとか、雷に打たれた様な衝撃がいっぺんに来た気がして、もう訳分かんなくて…。何もかも…正直どうでも良くなっちまってた…」

「……」

一夏

「……でも、…貴方達の言葉を聞いて…、そしてさっき自分と向き合ってみて思った。……やっぱり、俺も強くなりたい。今度こそ本当に。火影や海之や、千冬姉の様に、本当に強い人間になりたい。……きっとすげぇ辛い思いしたり、また何度もやられたりするだろうけど…、それでも、俺も戦いたい。それが正しいとかどうかじゃなくて…俺も、あいつらの仲間として…俺の心が望んでいるのが…それなんだ…!」

「……」

一夏

「だから…俺も戦う!ファントム・タスク…いや、あのオーガスって奴と!皆を守るために!そして…俺にしかできない事を見つけるために!!」

 

一夏ははっきりと言った。

 

「…貴方…」

「……その気持ちを決して忘れるな。それを忘れず、それだけの信念があれば、君は私などよりもずっと立派な騎士だ…」

一夏

「…?」

 

一夏は男の「騎士」という言葉が一瞬気になった。

 

「……さて、随分と長く話してしまった様だ。外の世界では、今頃君の仲間があの黒い存在達と戦っている頃だろう」

「貴方も行ってあげて。そして…守ってあげて?」

一夏

「…はい!…あっ、でも…今は俺、白式が…」

 

一夏の白式はひと月前からずっと封印されており、その場所は一夏にもわからない。今封印を解除してくれと自分が言っても許可を貰えるとは思えなかった。

 

「それなら大丈夫だ。君の守護者がなんとかしてくれる」

「だから貴方は何も心配しないで?」

一夏

「は、はぁ…」

 

一夏は心配するなと言われたので多分大丈夫なのだろうと思った。不思議なものだ。ほんのひと月位、しかも夢でしか出会わず、ふたりの正体も顔もわからない。だが一夏は何故か目の前のふたりを信用していた。火影と海之を知っているからというのも理由のひとつではあるが。多分女性からの慈愛に満ちた心と、男性からの厳格ながらも深い思いやりの心を感じての事だろう。そして先ほどの「騎士」という言葉。だから一夏は聞いてみる事にした。

 

一夏

「…あの…最後に俺からひとついいですか?もし良かったら…俺も貴方について聞いてもいいですか?貴方が何者なのか、そして…過去に何があったのか」

 

一夏は男が何者なのかを少しでも知りたいと思った。

 

「…貴方…」

「…何故そんな事を聞きたいんだい?」

一夏

「……わかりません。でも、ただ知りたくなった、では理由になりませんか?」

「……」

一夏

「貴方はさっきここでの時間はゆっくりと言ってました。だから教えられる範囲でいいのでもし良ければ…教えてください」

「……」

 

暫し考えた後、やがて男はゆっくりと話し始めた。

 

「………私は昔、ある団体に属していた。嘗て世界を救った伝説の英雄を祭る宗教団体だった」

一夏

「え?……世界を、救った?」

「ふふ、それについては気にしなくて良いさ。ともかく当時私はその教団に仕える騎士団の長、騎士長の職を務めていたんだ」

一夏

「…貴方が…騎士…」

「そして教団の目的もまた世界の救済。教団に属する者として、そして守護の剣である騎士長として、私は様々な任務にあたってきた。救済には混沌が必要であると。それが正義だと。そうすれば皆が救われると信じて。そのためにどんな苦痛にも耐えてきたし、命に関する問題も少なくなかった。結果多くの罵詈雑言を浴びせられたり中には自分の中で納得しきれない任務もあったが、いつか人々はわかってくれる。多くの人達を守るため救うためには仕方がない。そう思っていたのだ…」

一夏

「……あの、すいません。失礼とは思いますけど……そんなの」

「ああそうだな。今思えば決して褒められる事ではなかったかもしれん。…だが当時の私にはそれがわからなかった。騎士にとって主の命令は絶対。全ては教団のため、理想のため、そして守る者のために。その信念のもとに私は働き続けた。………あの時が来るまでは」

一夏

「……あの時?」

「ある日の事だ…。その日は教団にとっての最も大きな計画が実行される日だったのだが…邪魔をする者達がいたのだ。ひとりは教団を潰そうとする者。もうひとりは…教団の隠された真相を知り、裏切った者」

一夏

「裏切り者…ですか?」

「……」

「私も当然その者達の討伐任務に就いていた。しかしその途中で思いもよらない事が起こった。教団が…自分達の目的のために、私の大切なものに手を出そうとしたのだ。何も知らない…、私の最も大切な存在に…」

一夏

「……え?」

「……」

「その時私の中の何かが弾けた。私は自分が忠誠を誓った教団に……初めて反抗した。今までどんな事にも堪えてきた私が初めて自らの主に剣を向けたのだ。その時に問われたよ、「何故だ?」と。向こうはまさか私が裏切るとは思っていなかったらしい。私自身もそれまで教団を裏切る等露ほども思っていなかったからね……。主の問いかけに私は答えた、

 

「貴方が語る理想の世界のために私はなんでもやってきた。だが貴方は利用した、私の大切なものを、何も知らない最も大切な者を。それだけは許せない」

 

と…」

一夏

「……」

 

それは何よりも強い意志が込められたひとりの男の言葉だった。

 

「教団のために私は命も魂も、自らの意志さえも捧げてきたが…彼女を利用した事だけは許せなかった。私の心が…それだけはどうしても認めなかったんだ…」

一夏

(……それって)

「……」

「私は戦ったが…敢え無く意志半ばで倒れてしまった。私は真に大切なものを…私自身の手で守ることができなかった…。そして気付いた、今まで私が教団のため、世界のためと斬り捨ててきた者達。そんな弱い人々こそ私が守りたかった者達だったのだと…。気付いた時にはもう手遅れだったが…」

一夏

「……」

 

一夏はただただ黙って聞いていた。正しいと信じて自らの全てを捧げてきたものの真の姿。そして皮肉にもそれによって思い出した自身の本当の願い。しかしそれはとうとう叶えられないまま命を終えてしまった。男の無念は相当のものだったろう…。

 

「つまらない話を聞かせてしまったね…。守りたいものに気付く事も守る事もできず、全てを捧げたものへの忠義も信念も折れてしまった。誰一人救う事もできなかった。そんな下らん情けない男の話さ…」

「……」

 

女はそう言う男をじっと見つめている。すると一夏が話し出す。

 

一夏

「……貴方の信念は……折れていないと思いますよ?」

「……え?」

一夏

「貴方のした事は確かに間違っていたかもしれません…。でも貴方は最後まで戦ったんでしょう?自分の大切なもののために、死ぬまで…。結果的に貴方自身の手では助けられなかったのかもしれませんし、その事件があったから気付く事になったのかもしれませんけど…でも貴方の最後にとった行動は…間違ってないと俺は思います。大切なもののために戦い抜いた。…貴方は…立派な騎士だと思います」

「……」

「…貴方…」

一夏

「それにさっき貴方は誰一人救えなかったと言いましたけど…少なくとも俺は貴方に救われた気持ちがしますよ?貴方の言葉で…俺はもう逃げるのをやめよう、戦おうって思えました」

「……」

 

男は一夏の言葉に暫く黙っていたがやがて自らも話し出す。

 

「………私は…、自分の手で何も救えなかった。ずっと心残りだった…」

一夏

「……」

「この世のどこでもない遥か遠くの場所から絶望に打ちひしがれる君の姿を見た時…まるであの時の私を見ている様だった……。そして思った。あんな若い、これからの希望溢れる少年に私の様な思いをさせたくない、と…。だから…私は君を助けるために来た……つもりだったが、……助けられたのは私の方だったのかもしれんな……。改めて君と話せて良かった」

一夏

「…俺も同じ気持ちです。…あの、その貴方の大切な人は…結局どうなって?」

「ああ、大丈夫だ。ある人が救い出してくれたよ。私が死ぬ間際にお願いしたのだ。「救ってやってくれ」と。その人は願いを叶えてくれた」

一夏

「そうですか…良かったですね」

「ああ。……さて、すっかり長くなってしまったな。もう戻ると良い。君の世界へ」

一夏

「あっ、そうだった!……?でもどうやって?」

「君が来た道を真っすぐ戻れば良い。それと…最後にもう一度聞かせてくれ。君は再び戦うのだな?」

一夏

「はい!」

 

一夏の迷い無き答え。それに男は言った。

 

「……わかった。では、私も力を貸してあげよう」

一夏

「力を貸すって……どうやって?」

「直ぐにわかるさ。君はもうその方法を知っている筈だからね。…ただ、これももう一度言っておく。強い力には魔力が付きまとう。そして常にその者を闇に誘い込もうとしてくる。決して忘れるな。でないとまた、先日の君の様な事になるぞ」

一夏

「……」

「今の貴方ならきっと大丈夫よ。…貴方のしようとしている事は正しい。自信を持って。迷う必要なんて無いわ」

「自分を見失うな。何があっても」

一夏

「……はい!…あの、また会えますか?」

「……ああ必ずな。…さぁ、行きなさい」

「おふたりに宜しくね」

一夏

「ありがとうございました!」

 

ふたりにお礼を伝えると一夏は真っすぐ走って行った……。そんな一夏を後ろで見えなくなるまで見送るふたつの白い影

 

「……行ったか」

「良かったわね、兄さん」

「……ああ」

「なんだかあの子、子供の頃の兄さんに似てるわ。それにあの人にも」

「昔の私はあんな感じだったのか…」

「…あら?でもあの子が兄さんにもあの人にも似てるという事は…兄さんとあの人も似てるっていう事に」

「それはありえんな!…まぁ良い」

「ふふ…」

 

そんなやりとりをしているふたりのすぐ傍に近づく者がいた。帽子をかぶった白い少女。それは一夏が以前、夢の中で出会った少女だった。

 

少女

「彼は行ったみたいね。…よいしょっと」

 

そう言いながら少女は先ほどまで一夏が座っていた椅子に座る。

 

「無理を言ってすまなかったね…。こんな場まで設けてもらって」

少女

「別にいいわよ。ちょっと驚いちゃったけどね。ある日突然ここに入ってきて「彼と話をさせてほしい」って言われた時には」

「申し訳ありませんでした」

少女

「…でも私だけじゃ多分、彼を立ち直らせることは出来そうになかったわ。それ程まで傷ついていたんだもの…。だから貴方達には感謝してるわ。私のマスターを助けてくれて…ありがとう」

「お役にたてたのなら嬉しいです」

少女

「貴方達の正体が気になるところだけど詮索するのはやめておくわ。悪い人じゃないのはわかったし、それにどうせこれきりなんでしょ?」

「ああ。もう会う事もないだろう。……彼を頼む」

少女

「言われるまでもないわ。彼は私のマスターなんだから♪」

 

そう言うとふたりは再度一夏の走って行った方角を見つめていた。

 

(彼を、あの子達を守ってやってくれ…。…スパーダの息子である貴方達ならば…」

(信じています…。叔父様、そして…義御父様…)

 

 

…………

 

一夏の部屋

 

一夏

「……ん…」

 

一夏は目を覚ました。やはりどうやら眠っていたらしい。

 

一夏

「…俺…眠ってたのか?……なんか、長い夢を見てた気が……はっ、そうだ!寝てる場合じゃねぇ!早くしないと皆が!…くっ、でも白式が…………!!」

 

 

…………

 

IS学園 指令室

 

真耶

「先輩…。皆…」

 

その頃真耶は指令室から皆の無事を願っていた……。するとそこに、

 

職員

「や、山田先生!大変です!」

真耶

「どうしました!?」

職員

「し、信じられないんですが…封印していた筈の白式のクリスタルが…消失しました!」

真耶

「!!そ、そんな!だってあれは」

 

~~~~~~~~~

とその時、指令室のアラームが鳴る。

 

真耶

「! な、何ですか!?」

職員

「……学園内にIS反応!…こ、これは!?」

 

 

…………

 

その時、一夏は走っていた。その手には白式のクリスタルが握られていた。

 

一夏

「誰が持ってきてくれたのかはわからねぇけど…今はそんな事気にしちゃいられねぇ!!反省文なら後で幾らでも書いてやる!百でも千でも万でも!!…千や万はきついなやっぱ」

 

そんな事を言いつつも一夏は走りを止めなかった。向かう場所は決まっている。

 

一夏

「…あの時、俺の心が弱かったから…。俺は…あいつらを助ける事が出来なかった…」…グッ!

 

一夏はクリスタルを持った拳を握りしめる。…その中でクリスタルが淡く輝き始める。

 

一夏

「…だけど、だけど何でか今は信じられる!火影も海之も…絶対生きてるって!!」

 

そして一夏の身体が光り出す。

 

一夏

「俺は戦う!あいつらのためにも!今度こそ守ってみせる!絶対に…誰ひとり死なせねえぇぇぇぇぇぇ!!」…カッ!!

 

 

…………

 

こうして一夏は復活した。白式・雪羅を纏い、戦い、守るために。

 

一夏

「…帰ってくる」

千冬

「…何?」

一夏

「火影と海之は…必ず帰ってくる!!」

鈴・シャル・簪・ラウラ

「「「!!」」」

一夏

「だからそれまでは…俺が戦う!」ジャキッ!ドンッ!

 

一夏はDアリギエルに向かっていく。

 

ガキィンッ!

 

Dアリギエル

「ドードー!マルデウシダナ、ソレトモウマカ?」

一夏

「牛でも馬でもねぇ!俺は織斑一夏だ!」

Dアリギエル

「ソウカヨ!オレハ」ドゴッ「ブッ!」

 

Dアリギエルが名乗りきる前に、一夏は思い切りのヘッドバッドを顔面にくらわした。

 

一夏

「いっててて…!これは何度も使えねぇな…」

Dアリギエル

「テメェ!ナノリノサイチュウデコウゲキスンノハ、ルールイハンダロガ!」

一夏

「お前らのルールなんて知るか!」

 

そう言うと一夏はトムボーイ+電撃をチャージしたアラストルとビームクローで斬りかかる。しかしDアリギエルはそれをリベリオンとイフリートで冷静に全て対処する。

 

ガキィィィンッ!ドゴッ!ドゴオォォォッ!キィィンッ!

 

一夏

「はぁぁぁぁぁ!」

Dアリギエル

「ケケケ!ミエミエナダナ!」

 

ガシッ!ガシッ!

 

一夏の繰り出されたアラストルとビームクローをDアリギエルはイフリートで掴み、止めた。

 

一夏

「剣を手で受け止めた!」

Dアリギエル

「ミエミエダッツッタロウガ!ソンクライノコウゲキ」ドゴォ!「グホッ!」

 

一夏はその瞬間、掴まれたアラストルから手を離してトムボーイを付けた拳で思い切りパンチを喰らわせた。

 

Dアリギエル

「イテテ…、テメェマタコシャクナテヲ…」

一夏

「武器が使えねぇなら出来る攻撃をすりゃいいんだ!そん位覚えとけ!」

Dアリギエル

「ナラコッチモブットバシテヤル!」

 

そんな一夏の戦いの様子を見ていた箒達は、

 

「い、一夏…?」

シャル

「なんか一夏ちょっと変じゃない?」

「あいつは元々変だけど…もっと変になったみたいね」

ラウラ

「あ、ああ。なんというか吹っ切れた様な感じがする…。一体何があったんだ?」

楯無

「…でもあんな攻撃は何度もできない筈よ」

セシリア

「…?そ、それはどういう事ですか?」

クロエ

「…白式のSEですよ。一夏さんの白式はSE消費量が普通のISよりも大きい機体です。そしてここに来られた時に既に息が上がっておられました…。これは想像ですが白式の最大スピードで来られたんだと思います。アラストルとトムボーイの機能も使って」

「…そうか。一夏のSEは多分殆ど残っていない。恐らく荷電粒子砲も零落白夜も使えない位…」

楯無

「ええ。だからこそどんなに少しでもダメージを与えようとしているんじゃないかしら」

「そんな…」

楯無

(…それにあの敵は火影くんのコピーだとしたら…決して単なる馬鹿じゃない。もしかしたら向こうもその考えに気付いているかも…)

 

……そして楯無の不安は的中した。暫く撃ちあった後、一夏の様子に変化が見られた。

 

ガキィィンッ!

 

一夏

「ゼィ、ゼィ、ゼィ…」

Dアリギエル

「ケケケケ!ドウシタ?サッキマデヨリイキオイガオチテルゾ?エネルギーヤベェノカ?」

一夏

「!…くっ」

Dアリギエル

「アノイキヅカイ、ソシテタンジュンバッカナコウゲキ。テメェ、ハナカラアトガネェヨウダナ!」

 

ドゴォォォォッ!

 

一夏

「ぐああ!」

 

片手のイフリートによる攻撃を正面から受ける一夏。

 

Dアリギエル

「エネルギーヲネコソギツカワセテカラ、ユックリイタブッテヤロウトオモッタガ…モウアキタ」

一夏

「くっそ…!」

Dアリギエル

「キタイハズレモイイトコダゼ。マエノオレラハアンナズタボロデモ、オレラヲハンゴロシ二シタッテノニヨ。マ、シンダヨワッチィヤツラノコトナンザドウデモイイガナ」

一夏

「…!」

Dアリギエル

「サテ…モウイイカゲンアキタ。…ソンジャ!」ジャキッ!ドンッ!

 

そういうとDアリギエルはリベリオンを構え、全速で一夏に向かう。

 

セシリア

「一夏さん!!」

「一夏!逃げろぉ!!」

Dアリギエル

「ソロソロ、シニヤガレェェェ!!」

 

Dアリギエルはリベリオンを動かない一夏に向けて振り下ろした。……しかし、

 

ガキィィィィィンッ!!

 

Dアリギエル

「!」

 

攻撃は一夏の雪片によって見事に受け止められた。

 

「一夏!」

楯無

「あ、あいつの攻撃をあんな綺麗に受け止めた!」

一夏

「……確かに、滅茶苦茶強えぇな。……だが、それだけだ!」

Dアリギエル

「ナニィ~?」

一夏

「…お前ら…自分達が火影と海之っつったな?あいつらが弱いっつったな…?」

 

ドンッ!!

 

Dアリギエル

「!」

 

一夏は全力で押し返す。

 

一夏

「ざけんな!あいつらがお前らに負けたのは…お前らが強かったからじゃねぇ!俺の…下らねぇ馬鹿野郎のせいで大きな傷を負ってたからだ!さっきお前らが本気で戦って死にかけたって言ったのがいい証拠だ!そうでなきゃあいつらがお前らに負ける訳ねぇ!!」

Dアリギエル

「…!」

一夏

「あいつらはお前らなんかとは全く違う!お前らなんかよりずっと強えぇ!あいつらはいつも大切なもの、守るもののために命がけで戦ってんだ!」

 

ガキィィィン!

 

一夏

「お前らがやってんのは只の暴力だ!それ以外の何でもねぇ!!」

 

ガキィィィン!

 

Dアリギエル

「……!」

千冬

「一夏!」

シャル

「凄い…一夏が押している!」

一夏

「お前らなんか火影や海之と比べる価値もない!あいつらみたいな信念も無い!自分の力を徒に振り回してるだけのクソヤロウだ!!」

 

一夏はそういい放った。それは同時にあの時の自分にも向けた様に見えた。

 

千冬

「……あいつ」

Dウェルギエル

「ナニワラッテンダテメェ!オラァァァ!」ズドンッ!!

千冬

「はぁぁぁぁ!」ズドンッ!!

 

 

ガキキキキキキキキキキキ!!

 

 

Dウェルギエルと千冬はお互い突進し、黒い閻魔刀とレッド・クイーンの剣先が激しくぶつかって力の押し合いになる。

 

Dウェルギエル

「オオオオオオオ!!」

千冬

「ぬぅぅぅぅぅぅ!!」

 

 

キィィィィィィィィンッ!!

 

 

暫く押し合ったが決着がつかず、両者離れる。

 

Dウェルギエル

「ククククク…イイネイイネ!マエノオレホドジャネェガ、ホントテメェモヤルナァ?」

千冬

「私如きの力を跳ね返せない様じゃ貴様も海之には程遠いな。一夏の言う通りだ」

Dウェルギエル

「ア~?テメェ、カンチガイシテネェカ?」

千冬

「…!」

Dウェルギエル

「モシカシテオレモアイツモ、ホンキデヤッテルトオモッテンノカ?」

 

Dウェルギエルの不気味な言葉に千冬は顔が険しくなる。そして一夏に押し返されたDアリギエルは、

 

Dアリギエル

「……ナカナカイッテクレルジャネェカ、ガキガ!」

 

そういうとDアリギエルは剣を向き直し、

 

Dアリギエル

「タシカニ、ヤツラ二オレラハ100%デタタカッテシニカケタ。…ダガナ」ドンッ!!

一夏

「!!」

 

ガキィィィンッ!!

 

Dアリギエルの凄まじく素早い剣が襲い掛かる。

 

一夏

「ぐっ!」

Dアリギエル

「テメェナンカニャ…50%デモジュウブンスギルゼェェ!」

 

ズドドドドドドドドドッ!!

 

一夏

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

Dアリギエルの凄まじい突進と連続突きが襲い掛かる。そのパワーは先ほど迄よりも更に強かった。その威力に一夏が吹っ飛ぶ。

 

千冬

「一夏!」

 

ガキンッ!

 

Dウェルギエル

「タニンノシンパイヲスルヨユウガアンノカァ?…テメェニヨ!」

千冬

「くっ!さっきまでよりも速い!」

Dウェルギエル

「チョイパワーヲアゲテミタノサ!サァテメェハアトドレクライモツカナァ~?」

千冬

「…言った筈だ!私は…負けられんのだ!!」

 

敵の攻撃に千冬は一夏の救援に行くことができない。

 

一夏

「ぐっ…、くっそ…」

「一夏!それ以上は無茶だ!」

一夏

「大丈夫だ!それより皆は下がってろ!まだ戦えるレベルまで回復していないだろ!」

セシリア

「ですが!」

楯無

「それは貴方のほうこそでしょう!零落白夜も使えないのに無茶だわ!」

一夏

「俺は大丈夫!!」

全員

「「「!!」」」

 

皆全員、一夏の力強い言葉で黙ってしまう。

 

一夏

「こんな事で諦めたら…もうすぐ帰ってくるかもしれねぇ火影と海之に怒られるからな!」

 

一夏は笑みを浮かべてそう言った。

 

「…もうすぐ…帰って、くる…!?」

「…海之くんと火影くんが…!?」

Dアリギエル

「ナ~二フザケタコトイッテンダァ~?マエノオレラハシンダゼェ?」

一夏

「あいつらは死んでねぇ!」

 

そう言って一夏は再び前に出て雪片を構える。

 

Dアリギエル

「マダアキラメネェノカ?」

一夏

「当たり前だ!言った筈だぜ。あいつらが帰ってくるまで戦うってよ!」

Dアリギエル

「ケケケ!キアイダケハイイガヨ?オレハマダゼンリョクノハンブンモダシテネェンダゼ?」

ラウラ

「なん、だと…!」

シャル

「そんな…まだまだ力を残してるの…?」

 

皆はその言葉に驚きを隠せない。しかし一夏だけは違った。

 

一夏

「へへ…そうかい。なら安心したぜ。そんな程度なら俺でも余裕で倒せるからな!」

 

嬉しそうにそう言う一夏だが一夏の方も決して余裕がある訳なく、SEも危険領域寸前、寧ろ満身創痍に近い状態だった。

 

一夏

(流石火影達や千冬姉を追い詰める程の奴等だ…。零落白夜も使えねぇしSEも余裕がねぇ、今のままの俺じゃとても敵わねぇ…どうする?………)

 

 

(苦しみや恐怖も己の糧とするのだ。そうすれば闇も光となる)

 

(君はもうその方法を知っている筈だ)

 

 

一夏

「!」

 

 

(これが俺の力だ!お前が蔑んだ俺の力だ!)

 

 

一夏

「…く」

 

一瞬、言葉がよぎるが同時にあの時の映像もフラッシュバックする一夏。しかし、

 

 

(自信を持って。迷う必要なんてないわ)

 

 

一夏

「!……」スッ

 

すると一夏は雪片を下ろして無防備の体制になる。

 

シャル

「!剣を下ろした?なんで!?」

 

そしてそれを見て唯一それを使った事があるラウラが気付いた。

 

ラウラ

「!…まさかお前、またアレを使うつもりか!?」

一夏

「……」

 

一夏の沈黙は肯定の表れだった。

 

「あれって…DNSというやつか!?正気か一夏!」

セシリア

「無茶ですわ一夏さん!」

楯無

「止めなさい一夏くん!危険すぎるわ!」

「また暴走でもしたら洒落にならないわよ!」

 

当然皆は止める。そんな皆に対して一夏は言う。

 

一夏

「だがそれしか今の俺があいつらと戦う方法は無ぇ。それに…あの声はそうは言ってなかった!信念を持って進めって、自信を持って迷うなって!」

ラウラ

「…あの声?何を言っている!」

一夏

「大丈夫だ…。俺を信じてくれ!」

クロエ

「一夏さん!」

 

そして一夏は両手を広げて力強く訴えた。

 

一夏

「ドレッドノートシステム!もう一度俺と白式に力を貸せ!!皆を守るための!今を切り開くための力を!!」

楯無

「一夏くん!」

「一夏よせぇぇぇ!」

 

そして白式のインターフェースにあの文字が浮かんだ。

 

 

ーDreadnoughtsystem 起動ー

 

 

ゴオォォォォォォォォォォォォォ!!

 

一夏の力への強い願望がDNSを起動させた。そして同時に一夏の身体が白式ごと黒い炎に包まれる。

 

一夏

「ぐあああああああああああああああ!」

 

そしてやはりその炎に苦しむ一夏。

 

セシリア

「ああ!!」

シャル

「い、一夏が真っ黒な炎に包まれた!?」

Dアリギエル

「ケケケケケケケケ!」

 

Dアリギエルは苦しむ一夏を見て笑っている。そしてその姿はこちらも確認していた。

 

千冬

「…!一夏の奴!またDNSを!」

Dウェルギエル

「カカカカカカ!ナ~ニヤッテンダァ、アレ?」

千冬

「くっ!」ドンッ!

Dウェルギエル

「オット!ニゲラレネェトイッタハズダゼェ~?」

千冬

「どけぇぇぇぇ!!」

 

千冬は全力でDウェルギエルを排除しようとするが敵は繰り出される剣を全て跳ね返す。

 

Dウェルギエル

「オ~、テメェモマダチカラ、ノコシテタカァ!」

千冬

「どけと言っている!貴様に構ってる暇はない!」

Dウェルギエル

「テメェニハナクトモ、オレニハアルンダヨネェ~!」

 

Dウェルギエルに邪魔されて助けに向かえない千冬。一方皆は一夏を止めようと近づくのだが、

 

「くっ!なんて炎!とても近づけない!」

一夏

「ああああああああああああああ!!」

ラウラ

「一夏!白式を解除しろ!」

楯無

「死んでしまうわよ一夏くん!」

「一夏止めろ!止めてくれ!」

 

皆必死に一夏に解除するよう呼びかける。

 

一夏

「負けて、堪るか…!負けて堪るかぁぁぁ!!」

 

しかし一夏は焼かれながらも止めようとしない。

 

「何言ってんのよ!本気で死にたいの!?」

一夏

「……こんな」

クロエ

「…えっ?」

一夏

「こんな痛みがなんだってんだ!!あん時、あん時火影と海之から食らった拳はもっと…もっと痛かったんだぁぁぁぁぁ!!」

 

絶叫を上げながらも自分が白騎士の時に受けた火影と海之の拳の痛みを思い出し、負けまいとする一夏。

 

 

…………カッ!!

 

 

するとその時、不思議な事が起こった。

 

シャル

「…え!?」

セシリア

「な、なんですの!?黒い炎が…白い光に!」

 

一夏を覆っていた漆黒の炎が突然、光を放ち始めた。通常ならば炎は光によって爆発霧散する筈なのだが。その光はどんどん強くなり、

 

「一夏!」

一夏

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

……シュバァァァァァァァァァァッ!!

 

 

「うわっ!」

「な、何!?」

千冬

「…一夏!!」

Dアリギエル・ウェルギエル

「「!?」」

 

あまりの光の強さに皆も敵も怯んだのだった…。

 

 

…………

 

そしてその様子はこちらも見ていた。

 

オーガス

「…!」

スコール

「…何?…あの光は…?」

オーガス

(……違う、DNSに…あのようなものは…)

 

 

…………

 

「嘗ての私が望んだ力……。今思えば…忌々しき力だったかもしれん。しかしあの時の力が…こうして未来溢れる少年の力となるなら…、それだけでも価値があるというものだ。……戦い抜け。君の信念のままに…」

 

 

…………

 

 

……シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……

 

 

「くっ…い、一夏!」

セシリア

「どうなって……!」

千冬

「あれは…!?」

 

一夏と白式を覆っていた光は徐々に弱まっていき、皆は光の中にいる筈の一夏を見て…一瞬言葉を失った。

 

 

白銀のIS

「……」

 

 

光が晴れて現れたIS。それは従来の物とは大きく違った。

全体的に白く輝く全身装甲で、胸部と鋭い爪が付いている脚部には青い装甲が見られる。

猛禽類を思わす様な頭部。その頭部には左右に開く様な形をしている翼の様な装飾があり、その真ん中には天使の輪に似せたリングの様な角飾り。

右手には雪片でもアラストルでもない金色に輝く剣。色こそ違うがその刀身にはどこかしら雪片の面影がある。

最も特徴的なのは右側しか生えていない鳥に似せた様な巨大な翼。そして左側には左腕全体を覆いつくす程の青き盾があった。

 

セシリア

「あ、あれは…?」

Dアリギエル・ウェルギエル

「「……?」」

千冬

「…白騎士…、いや違う…!」

セシリア

「…一夏…さん?」

 

その空間にいる誰もがその未知のISに驚いている様子だ。そして、

 

白銀のIS

「……クレド」

クロエ

「…!その声は一夏さん!」

「一夏!お前なんだな!…良かった!」

一夏

「白式…駆黎弩(クレド)…。それがこいつの名前…。そしてこれは…雪片・参型」

「白式・駆黎弩(クレド)…?」

シャル

「それが雪片?それに参型って!」

一夏

「その説明も後だ…」

 

そう言いながら一夏は先ほど名乗った雪片・参型を構えた。

 

一夏

「勝負はまだ終わっちゃいねぇぞ!!」




※次回は再来週の3日(土)になる予定です。

本業が最近忙しくて遅れます事、本当にすみません。

一夏の白式の新形態詳細は次回で明らかにしていく予定です。もしよろしければお楽しみに。戦いはまだ続きます。

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