IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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火影と海之の新たな姿。それは一夏や千冬達を圧倒したルーヴァを更に超えるものだった。新たな武装や力を手にしたふたりは遂にルーヴァを追い詰める。
……しかしその矢先、再び現れたオーガスによってルーヴァは回収されてしまうのだった。憎しみと共にオーガスは今度こそ自分の手で終わらせるとふたりに布告、時が来るまで精々楽しめと言って去っていく。全てが解決したわけでは無いものの、戦いが終わったその場所には笑いあうふたりがいた…。


Mission166 最低で最高のクリスマス

火影

「………………う、う~ん」

海之

「…………む」

 

火影と海之はほぼ同時に目を覚ました。目を開けると見覚えがある様な白い天井が見える。

 

火影

「……ここは…学園の、寮の部屋か?」

海之

「……」

 

そこは学園の寮だった、最後に覚えているのは夜明けの光がうっすら見え始めた時、あの忌々しい存在を倒し、オーガスとの再びの対峙。それが終わってから一緒に笑ったあの時。その先の記憶が全くない。ベッドに寝かされている事から考えるとあの直後に眠ってしまったのだろうか…?

 

火影

「俺達…どうして、こんなとこにいんだ?……今何時、だ?」

海之

「………さぁな」

 

頭だけを横に回してみるが時計は無い。

 

火影

「とりあえず…起きるか。………ん?」

海之

「……?」

 

ふたりはふと違和感を感じた。自分達の身体に何か別の重さを感じる。何か乗っている気がする。変に思ったふたりが確認しようと上体を少しだけそっと起こしてみると…重さの正体はすぐにわかった。

 

 

鈴・シャル・本音・簪・ラウラ・クロエ

「「「……すぅ……すぅ……」」」

 

 

火影のベッドには鈴、シャル、本音が。海之のベッドには簪とラウラが傍らで眠っていた。クロエはデスクで眠っている。何かしらの手当てを受けたのか本音以外の皆はテープが貼られ、包帯なども巻かれていて治療の後が見受けられる。だが様子からして治療が終わった後からずっと自分達についていてくれた事は想像できた。

 

火影・海之

「「………」」

 

ふたりは無理に動かしたら目を覚ますかもしれないと動かずにいた。

 

クロエ

「………ん」

 

すると暫くして椅子で長時間眠っていて身体が凝ったのかクロエが目を覚ました。

 

クロエ

「うん…こんな時間ですか…。私、すっかり寝ちゃって………!!」

 

後ろを振り向き、ふとふたりと目があったクロエ。その瞬間目覚めたばかりの脳が一気に覚醒する。

 

火影

「…よぉクロエ、おはようさん。寝坊だな」

海之

「俺達もだろうが」

クロエ

「………兄、さん、……兄さん!!」

 

眠っている鈴達の事を忘れ、クロエは半泣きのままつい大声を出してしまう。すると、

 

「…ん~」

シャル

「う~ん…なに~?」

本音

「…ほえ~」

「…ん」

ラウラ

「む、眠ってしまったか…」

 

クロエのその声がきっかけでふたりの傍で眠っていた他の皆も目覚めの予兆が起こる。

 

火影

「よ~おはようさん」

海之

「大丈夫か?」

鈴・シャル・本音・簪・ラウラ

「「「!!!」」」

 

特別な台詞でも何でもない簡単な毎日聞きそうな内容。しかし彼女達にとっては何よりも聞きたかった声。ずっと探し求めていた声。気が付くと、

 

「こぉんのぉバガァァァァァ!!」

本音

「わあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

シャル

「今までどこ行ってたのさぁぁ!!」

ラウラ

「探したんだぞ!必死に探したんだぞ!でも全然、全然見つからなくて…死んだと思ってたんだぞぉ!!」

「……」

 

皆火影と海之に強くしがみ付き、泣きながら声を上げていた。

 

火影

「…随分待たせちまったみてぇだな」

「随分じゃないわよ!一ヶ月よ!?私達がどんだけ泣いたと思ってんのよぉ!!」

シャル

「夢じゃないよね!?ほんとに火影と海之なんだね!?」

火影

「こんなに良い男が他にいるか?」

 

何時もの余裕ある笑みを浮かべてそう言う火影。

 

本音

「よがっだぁぁぁ!ほんどによがっだよぉぉぉ!!」

ラウラ

「散々心配させおってぇ!この馬鹿者どもがぁぁ!!」

海之

「…すまなかったなラウラ」

「……」

海之

「どうした簪。疲れたか?」

「…ううん。御免…御免ね。言いたい事…一杯あるのに…。本当に凄く嬉しいのに…上手に…言葉が出ない」

海之

「俺達も同じだ」

火影

「お前らが生きていてくれたんならそれでいいさ」

クロエ

「……」

 

その様子を遠慮がちで見つめるクロエ。

海之

「クロエ、お前にも心配かけたな」

火影

「…悪かったなクロエ」

クロエ

「!!……お……お兄ちゃあぁぁぁぁん!!」

 

親とも言える束が拉致され、義兄でもある火影や海之が生死不明の行方知れず。クロエは激しい悲しみに襲われていた。家族をいっぺんに失った気がした。でも束を助け出すまで泣くわけにはいかないとずっと抑え込んでいた。だが心ではわかっていてもクロエも17歳の少女。どうしようも無く感情が爆発する事もある。ましてやそれが嬉しさなら猶更である。クロエも駆け寄ってラウラ達と同じく寄り添った。

 

海之

「クロエお前その呼称は……まぁ今はいい」

火影

「そういや今日はクリスマスらしいな。…とんだクリスマスだな」

「ほんとよ!皆傷だらけだしクタクタだし、また泣かされるし!他に無い位最低よ!!ほんとアンタも海之も何回女の子泣かせれば気が済むのよ!!」

火影

「…わりぃ」

「なんで謝るのよ!」

火影

「…?」

「最低だけど…何より最高よ!」

シャル

「うん!最低で最高のクリスマスだよ!」

ラウラ

「全くだ!」

簪・本音

「「うん!」」

クロエ

「はい!」

火影・海之

「「……」」

 

皆は笑っていた。最高の笑顔で。

 

鈴・シャル・本音・簪・ラウラ・クロエ

「「「お帰り(なさい)!!」」」

火影・海之

「「………ただいま」」

 

……そんな彼らの部屋の前の廊下では聞こえてきたその声に密かに喜ぶ者達がいた。

 

千冬

「……ふっ」

真耶

「グスッ…良かった、です。ほんどに、よがったでずうぅぅぅ…」

「本音ちゃん…、簪様…、皆…。やっと笑顔になったわね…」

楯無

「いいんですか千冬さん?千冬さんもほんとは入りたいんじゃ?」

千冬

「…構わんさ。今でなくともどうせまた後で幾らでも話せる。生きているんだからな…」

 

 

…………

 

それから約数時間後、時刻は夕方に差し掛かりつつあった。

火影と海之はあの後、鈴達から自分達が戦った後に起こった事を聞いてみた。ふたりの思った通り、あの戦いの直後にふたりは笑った後でいきなりその場に倒れて眠ってしまったらしい。駆け寄ってきた皆は当然慌てたが運ぼうにしても自分達もクタクタで余力なく、唯一の男子である一夏も同じく消耗し過ぎて眠ったままで運ぶことができなかったため、やむなく千冬は真耶に救助を依頼。話を聞いた真耶は急いで救助隊と共に駆けつけ、学園まで連れて帰ってきたらしい。帰ってきてから一夏や彼女達は全員治療を受けたが、ひと月前に大怪我を負っていた火影と海之の傷はまるで何も無かった様に綺麗に消えており、眠っているのは緊張の糸が切れて気が抜けたのではないかという結論だった。そして今、すっかり回復した火影達はベッドから降り、千冬や真耶達と対面していた。

 

海之

「…千冬先生、山田先生。多大なるご心配をおかけし、本当に申し訳ありませんでした…」

火影

「俺達が奴等を倒せなかったせいで皆を危険に晒してしまいました…。本当にすみません」

 

深く頭を下げるふたり。

 

真耶

「そんな!ふたりは何も悪くありません!それより…本当によく生きて戻ってきてくれました!」

火影

「…ありがとうございます、山田先生」

楯無

「全く死ぬほど心配させて。この子達への償いはしっかりしなさいよ?」

「おふたりがいない間この子達本当に元気が無かったんですから」

「お、お姉ちゃんも虚もそんなのいいよ。ふたりが生きて帰ってきてくれたんだからそれで…」

「簪、こういう時は素直に受け取っていいのよ」

シャル

「そうだよ。こっちは散々心配させられたんだから」

火影

「…お手柔らかにな」

真耶

「ほら、先輩もなにか言ってあげてください」

千冬

「……」

 

すると千冬は無言のままゆっくりふたりに近づき、

 

 

パアァァァンッ!!パアァァァンッ!!

 

 

火影・海之以外

「「「!!!」」」

 

火影と海之に突然思い切り平手打ちをした。その威力に吹き飛んでしまうふたり。

 

ラウラ

「きょ、教官!?」

真耶

「先輩!何するんですか!?」

本音

「だ、大丈夫ふたり共~?」

火影

「あ、ああ…。いてて…」

海之

「……」

 

すると今まで黙っていた千冬が口を開く。

 

千冬

「……今のは」

真耶

「え?」

千冬

「今のは罰だ。沢山の人を悲しませたな。本当ならもう何十でも何百でも殴ってやりたいところだが…生きて帰ってきた事に免じて、この一発で多めに見てやる」

火影・海之

「「……」」

「千冬さん…」

千冬

「今の痛みを決して忘れるな。良いな?」

火影

「…はい」

海之

「…わかりました」

 

……ポンッ

 

すると千冬はふたりの肩に手を置き、

 

千冬

「……良く生きていてくれたな、…ふたり共」

火影・海之

「「……ありがとうございます」」

 

笑いながらそう言った。なんだかんだ言いながらも千冬もやはりふたりが帰ってきた事が凄く嬉しそうだ。

 

真耶

「本当に…素直じゃないんだから」

クロエ

「…ふふ」

 

そんな感じで緊張しながらの帰還の挨拶を終えたふたりに鈴達から当然の疑問が向けられる。

 

「…でもさ火影、それに海之も。本当に今までどこにいたのよ?私達この一ヶ月間はっきり言ってかなり探したのよ?」

ラウラ

「ああその通りだ。プライベート通信を使っても何の反応も無いし、衛星まで使ったが影も欠片も見当たらなかったんだぞ?」

「ふたりの傷もまるで無かったみたいに綺麗に塞がってるしね。それに…ふたりのISも変わってたよね?」

シャル

「凄かったよね。あの変なISも追い返したり、新しい装備やあの巨人?みたいなものでアンジェロ達なんか一蹴してたし。本当に一体何があったの?」

火影

「それは」

 

 

カッ!!

 

 

全員

「「「!」」」

 

火影が説明しようとしたその時、一瞬強い光が走った。そしてそこに現れたのは、

 

 

赤い剣

「地上の空気も久々じゃな、弟よ」

青い剣

「全くじゃな兄者よ」

 

 

先程火影が使っていた赤と青の双剣だった。その剣の柄頭の部分にある顔の様な飾りが流暢に喋っている。

 

赤い剣

「先程は時が無かったため省いたが…久しぶりじゃなダンテ」

青い

「随分幼くなってしまったなダンテ」

全員

「「「…………」」」

 

全員が言葉を失い、火影は頭を抱え、海之は無視している。

 

青い剣

「…兄者。こやつら何やら呆然としておるぞ?」

赤い剣

「ボウゼン?ボウゼンとはなんじゃ?」

青い剣

「ボウゼン、とは」

火影

「…そのやりとりはもう沢山だ」

赤い剣

「おおやっと喋りおったな。お主に売り払われて目にもの見せてやろうと思っておったが今は休戦じゃ」

青い剣

「聞いたぞ?どうやらご自慢の剣が使えぬらしいな?」

火影

「…全くあのお喋りども」

赤い剣

「それからそやつらが新たな同士か。随分幼き者達じゃ」

青い剣

「しかしダンテやあの者共が一目置いておる奴ら。見た目で判断は出来ぬぞ兄者よ」

赤い剣

「…イチモクオク、とはなんじゃ弟よ?」

青い剣

「一目置くとは」

火影

「それ以上やると本当に口縫い合わすぞ?」

赤い剣・青い剣

「「善処しよう」」

 

皆の前で火影とふたつの剣のやりとりが展開される。

 

「……ねぇ火影。確かこれってさっきアンタが使ってた剣よね?」

シャル

「…剣が…喋ってる…」

楯無

「勝手に出てくるって…まるで生きてるみたいね…」

本音

「カッコいい~~!」

 

本音以外の皆は喋る剣に言葉を失っている様だ。

 

アグニ

「おおそうじゃ、まだ名乗っておらんかったの。我の名はアグニ」

ルドラ

「我の名はルドラ」

アグニ&ルドラ

「「契約により、我ら兄弟が力となろう。ありがたく思うがいい」」

 

 

「アグニ&ルドラ」

嘗て火影(ダンテ)が使っていた双剣型の魔具。赤い剣が炎を司るアグニ、青い剣が風を司るルドラと言い、しかも兄弟でもある。

前世のとある場所で守護の任についていた所でダンテと対峙し、彼の力に感服し、新たな所有者として認め、協力するようになる。その力は確かなものであるが兄弟揃ってとにかく饒舌であり、ダンテはそれに辟易していた事も少なくなかった。リベリオンが使用不能になった代わりとして火影の新たな装備として追加された。因みに喋れるのは小型のSEバッテリーを搭載しているからである。

 

 

「は、はぁ…。よ、宜しくお願いします…」

本音

「宜しく~!じゃあふたりの事はアグリンとルドランって呼ぶね~♪」

「…本音ちゃん、お願いだから少しは驚きというものを覚えて?」

アグニ・ルドラ

「「……アグリン(ルドラン)とは何じゃ娘よ?」」

本音

「アグニだからアグリン、ルドラだからルドランだよ~♪これからはそう呼ぶね~」

アグニ

「むぅ…。どうもよくわからんが…問題ないか?」

火影

「おお全然問題ねぇよ。これも偉大な経験だ」

ルドラ

「…ふむ。ではそういう事にしておくか兄者よ」

 

そんなやり取りをしている内に火影はアグニ&ルドラを回収した。

 

ラウラ

「な、なんか随分変わった奴等だな…。もしかしてあれも魔具というやつか?」

火影

「…まぁな。あの口さえ無けりゃまだ爪の先程はマシなんだがな…」

本音

「え~なんで~?可愛いし面白いのに~」

「そんな風に思えるのはアンタだけよ多分…。そういえばさっきのふたり…ふたり?ってそんな事どうでもいいか、アンタの事…「ダンテ」って…」

「それってあのオーガスって人が言ってたのと同じ名前、だよね…?」

火影

「…ああ。それについても今度話す。ただ今この場で、ってのはちと待ってくれねぇか?あんま簡単な話じゃなくてな…。内容を整理する時間をくれ」

海之

「約束は必ず果たす。…頼む」

 

再び深く頭を下げる火影と海之。

 

シャル

「う、うん。わかったから謝らないでよふたり共」

千冬・クロエ

「「……」」

楯無

(…来るべき時が来た…って感じね…)

 

そんな感じで火影達が話ていると、

 

千冬

「それは何れの事として…今はそろそろ話を戻したいのだが?」

海之

「ああ申し訳ありません。俺達がどこにいたのかですね。…信じていただけるかわかりませんが…俺達はひと月前からずっと同じ場所にいたらしいです…。奴等に敗れ、海の底に沈んだその場所に」

全員

「「「…えっ!?」」」

 

これには流石に今まで以上に驚く皆。

 

千冬

「…らしいというのは?」

火影

「ひと月前奴らに敗れたあの時、俺達は海の底に沈みました。全身切り刻まれ、瀕死の重傷を負ってね。でもその時俺達のIS。正確にはそのコアですが。それが俺達の身体を隠してくれたんです。衛星とかセンサーにも、何にも見つからないように。それこそ生体反応もISの反応も隠してね」

千冬

「…お前達が死んだ様に見えていたのはそのためか…」

クロエ

「で、では兄さん達のISは…」

海之

「コアが俺達の身体の保護と同時に修理・改修したのだ。二次移行と同じ意味でいい。名前も特に変わらん」

火影

「まぁそれだと不便って言うならそうだな……シン、とでも付けといてくれ」

楯無

「シンって新しいっていう字?それとも真実の真?」

火影

「英語です。Sinと書いてシン、です」

真耶

「Sin…「罪」ですか?なんでそんな言葉を?」

火影

「それは」

鈴・シャル・簪・ラウラ・本音・虚

「「「勝手に話進めないで(ください)~!」」」

 

話についていけてない面々の特大の声が飛んだ。ふたりはその後、このひと月の間にあったことを詳しく説明するのであった。勿論その内容に唖然とされたことは言うまでもない…。

 

 

…………

 

一夏の部屋の前

 

 

…コンコン

 

火影

「一夏、起きてるか?」

一夏

「おお火影か!入ってくれ!」

 

火影と海之のふたりが入ってくると一夏がベッドに寝かされていた。傍には箒とセシリアが付いて看病していた。その彼女達にも少なからず治療の後が見られる。

 

「おお火影!海之!」

セシリア

「急に倒れられて心配しましたのよ!」

海之

「悪かったな」

「でも…本当に良かった!」

セシリア

「ええ、本当によく生きていてくださいましたわ!」

一夏

「だから言ったろ。必ずふたりは生きてるって」

「お前も一昨日まで死んだと言っていた癖に。全く」

火影

「ま、俺もこいつも何とか生きてるさ。お前は大丈夫か一夏?」

一夏

「もちろんさ!もう殆ど、イテテ!」

「無理をするな!まだ完治したわけじゃないんだぞ!」

一夏

「だ、大丈夫だって…。身体中の節々が痛い程度だし」

セシリア

「だとしてもです!」

火影

「ははは…、でもまぁこんだけ食欲あんなら大丈夫だな」

 

火影は脇にあった大量の果物の皮や食堂のトレーの量を見て半笑いになりながらつぶやいた。一夏の目に見える傷は思ったほど深くは無く、適度な治療で済んでいたのだがDNSの影響からか疲労が大きく、一時間前まで眠り続けていたらしい。もちろんその間箒とセシリアは一夏の傍を離れなかった。目が覚めた後の一夏はとにかく空腹だったらしく、大量の食べ物を要求してそれら全てを綺麗に平らげた事を目の前のそれが証明していた。

 

海之

「まぁ思ったよりも元気そうで何よりだ」

一夏

「おう!てかお前らこそ大丈夫なのかよ?」

火影

「問題ねぇよ。詳しくはまた後で話してやる。…てか一夏、先生から聞いたぜ?お前封印されてた白式のクリスタルを勝手に持ち出したそうだな?」

一夏

「だから違うんだって!寝てた俺の枕元に誰かがクリスタルを置いてったんだよ!そもそも俺白式のクリスタルがどこに保管されてたかも知らなかったんだしさ!もっと言えば俺に封印の解除方法なんてわかる訳ねぇだろ!なのに反省文100枚って千冬姉ひどくね!?」

火影

「まぁしゃあねぇんじゃねぇか?カメラには何も映って無かったらしいし。それに山田先生から聞いたが本来なら反省文どころか警察沙汰もおかしくない程らしいぜ。何しろ学園の最重要機密エリアなんだ。それに比べれば十分優しいかもしれねぇよ?」

「反省文なら時間をかければ何とかなるさ一夏♪」

セシリア

「ちょうど冬期休暇ですから頑張りましょう一夏さん♪」

一夏

「う~んでもなんか納得できねぇ~…」

海之

「そういうがふたりも鈴達も、命令に背いて出撃したとの事で反省文30枚と聞いたが?」

「う、うむ…」

セシリア

「まぁ仕方ありませんわね…」

 

ふたりも鈴達も今回は自分達にも責があるのは知っているので罰は受ける事にしていた。

 

火影

「……まぁそれはさておき箒、セシリア。悪いけどちょっとの間、俺らと一夏だけにしてくれるか?」

海之

「…頼む」

一夏

「…箒、セシリア。俺もふたりにちょっと話があるんだ。俺なら大丈夫だからさ」

「……ああわかったよ。では私達は食器を片付けてこよう。一夏を見張っていてくれよふたり共!」

セシリア

「ではちょっと行ってきますわ。一夏さん、くれぐれも動かないでくださいませ!」

 

そう言ってふたりは食器のトレーやゴミを片付けに行ってしまった。火影はソファーに、海之はデスクの椅子に座る。

 

一夏

「全く心配し過ぎなんだよふたり共」

火影

「まぁいいじゃねぇか。あいつらの気持ちもわかってやれ」

一夏

「それは十分ありがたいんだけどさ。なんであんなに必死なのかな?」

海之

「…今度あいつらに聞いてみろ」

 

ふたりはこれがきっかけで彼らの仲が少しでも進展する事を望んでいた。

 

火影

「そういや一夏、俺らもあの時一瞬だけ見たけど…、あの白いISはお前だったんだな。一体どうなったんだ?」

一夏

「ああ…実は俺もよくわからねぇんだよ。必死だったから。ただもう一度DNSを使ったんだ」

海之

「やはりDNSか…」

一夏

「ああ、あの時の俺にはあれを使うしか奴らと戦う方法がなかったから…。ただ…」

火影

「…ただ?」

一夏

「…ある人達に言われたんだ。憎しみや恐怖をも成長の糧としろ、って。そうすれば闇も光になるって。それを思い出して使ったんだ」

海之

「…ある人達?」

 

 

…………

 

一夏はあの時の経験をふたりに話した。

 

火影・海之

「「……」」

一夏

「あの人達は言った。どんな困難にぶつかっても自分の中にしっかりとした信念を持っていれば大丈夫だって。迷うなって。…だからもう一度DNSを使った」

海之

「…その結果、あの様な形になったのか…」

(…しかしあの様な悪魔は見たことないが…。しかも本来白式は白騎士になる筈だった。…一夏の何かが変えたのか?)

「しかし今回の白式は変化した姿のままだな。…次の移行を果たした、と考えるべきなのかもしれん」

一夏

「ああそこが何でかわかんねぇんだよな。まぁ名前は駆黎弩って言うらしいけど」

火影

「! 駆黎弩…?」

 

その名前を聞いて反応する火影。

 

一夏

「ああ。白式・駆黎弩(クレド)。それが今の白式の名前だ」

火影

「…………そうか。…あのオッサンが」

一夏

「えっ?」

火影

「ああこっちの話だ、気にすんな」

(…あいつが聞いたら喜ぶだろうけどな…。にしてもあのふたりが一夏を助けるとは…)

一夏

「ってかお前らのISこそだぜ!俺はあん時気絶しちまったから一瞬だったけど随分変わっちまってたじゃねぇか。おまけに箒達の話だとあの妙な奴も追い返しちまったみたいだし、俺達はおろか千冬姉だって歯が立たなかったのにさ」

火影

「…ああまぁな」

 

すると海之が口を開く。

 

海之

「…一夏、あいつは、奴は何だ?どうやって現れた?」

一夏

「え?ああそうか、ふたりは見てないのか。あれは…あの黒いウェルギエルが変化したんだ」

火影

「…!偽物のウェルギエルがだって?」

一夏

「ああ。俺達皆で必死で戦ってなんとかあの黒いアリギエルとウェルギエルを倒す寸前までいったんだけどさ。そん時、あのウェルギエルの方が何故かアリギエルを攻撃して…奴のコアを…食ったんだ」

海之

「!!」

火影

「…コアを食っただと?」

 

これには流石に驚くふたり。

 

一夏

「ああ…。そしてどういう訳かあんな姿になっちまった…。あれって何なんだろうな?」

火影・海之

「「……」」

 

ふたりはどう言ったら良いのかわからない様だ。

 

一夏

「でも流石火影と海之だよな。そんな奴でも倒してしまうんだから」

火影

「俺達は大した事はしてねぇよ。それに今回讃えられるのは間違いなくお前らだ」

海之

「その通りだ。お前達が精一杯戦ったからこそ、誰も死なずにすんだのだからな」

火影

「特に一夏、さっき楯無さんから聞いたがお前が一番皆を守って最後まで戦い抜いてくれようとしたらしいじゃねぇか。…ありがとうよ」

一夏

「ははは、そう言ってもらえるとなんか照れるな。それに後半は守るだけで手一杯だったけどな」

 

すると一夏は笑いながらもやや暗い表情になり、

 

一夏

「…それに、俺はお前らに礼を言われる様な資格は無ぇかもしれねぇ…」

火影

「…どういう事だ?まだひと月前の事気にしているのか?」

一夏

「…それだけじゃない。実は…」

 

 

…………

 

一夏は更にあの夢の中での出来事を話した。自分が火影と海之を尊敬する一方で抱いていた嫉妬やある種の憎しみを。そういう感情も確かにあったという事を。

 

火影・海之

「「……」」

一夏

「…俺さ、あの人達からそう言われた時、最初は信じられなかった。……でもこれまでのふたりの姿を見てきた自分の気持ちや言動を思い出して自覚したんだ。……俺はお前らが羨ましかった。あらゆる点でずっと前に行ってて、皆から信頼されてて、俺に無いものを持ってるお前らに…。俺は…そんなお前らに嫉妬してた。…恨んでもいたんだ…。だから…お前らに礼を言われる資格はねぇ…」

 

一夏は本当に申し訳なさそうにそう言って謝罪した。するとそんな一夏に対し、ふたりは、

 

火影

「…んだよそんな事かよ?」

海之

「ああそんな事か」

 

物凄く素っ気ない、全く気にしてなさそうな返事をした。

 

一夏

「……へ?」

火影

「なぁ一夏。人間誰しも自分が持ってねぇもんに嫉妬するもんだ。お前だけじゃねぇさ。たまたまお前が持ってないもんを持っていたのが俺らだった。それだけのこった。そして手に入れられないと分かるほど焦りや怒りを持つのも当然だ。大事なのはそれを自覚しつつ、決して間違えない事、努力する事だ。そうだろ?」

海之

「お前は自分が犯した事にずっと責任を感じていた。そしてもう二度としないと誓ったのだろう?ならばそれで良い」

一夏

「……」

火影

「あと礼を言われる資格はねぇとか何だよ資格って?お前はあいつらを守ってくれたんだ。それに礼を言う事にいちいち資格や許可がいんのか?違うだろ?」

海之

「もしお前がそれでも礼を言われるのを拒むのならば勝手に聞き流せば良いだけの事だ」

一夏

「……」

火影

「それによ?お前は俺達が羨ましいっつってたが俺らもあんだぜお前に」

一夏

「…へ!お前らが俺に?何だよそれ!?」

火影

「それはだな…」

海之

「ああそれは…」

 

火影と海之は何か言おうとする。しかし、

 

火影・海之

「「…………」」

 

ふたりは無言になり、何も言わない……。

 

一夏

「……?どうした?」

火影

「…………どこだっけか?」

海之

「…………ああどこだろうな?」

一夏

「そこなんか言うとこじゃね!?」

 

~~~~~~~~~~

そう言われて三人は笑う。

 

火影

「ははは。まぁそんな冗談はさておきだ。ひとつだけあるとすれば…お前はまだ失わずにいるってことかな?」

一夏

「…失わずにいる?」

海之

「……そうだな。お前はまだ何も失っていない。まぁ親がいない事をのぞけばだが…お前はまだ間に合った。支えてくれる者達がいた。……どこかの誰かと違ってな」

一夏

「……?」

 

一夏はふたりが言っている事がわからなかったが…ふたりの言葉にはなんとも言えない感情があるのが見て取れた。そして今度は火影が口を開く。

 

火影

「……一夏、聞け。お前や皆の傷が治ったら…前に医務室でした約束を果たそうと思う」

一夏

「…医務室での約束?」

火影

「…前にお前がオータムに襲われた時の約束だ」

一夏

「!それって…」

海之

「……」

 

すると火影は静かに、しかしはっきりと言った。

 

火影

「ああ…俺達の事を話してやる。俺とこいつの話せなかった秘密、過去。俺達のIS。そして…ダンテとバージルという名の正体。…全てだ」

 

 

…………

 

??? Mの部屋

 

 

「……」

 

その頃、Mはひとり自分の部屋にいた。部屋の電気も消して。ひと月前、一夏と千冬との戦いで深い傷を負ったMはその後集中治療室で2週間ほど治療を受けた後、リハビリと訓練に励んでいたのだが…。

 

「…織斑一夏…。…織斑千冬…。奴らだけは……奴らだけは許さん…絶対…絶対に!!」

 

どうやら一夏と千冬に完敗したショックは相当に大きかったようである…。

 

コンコン

 

オーガス

「…Mよ、いるか?」

「! は、はい!」

 

ウィィィィン

 

するとオーガスがMの部屋に入ってきた。慌てて部屋の電気をつけるM。

 

「も、申し訳ありません」

オーガス

「構わん。身体は大丈夫か?」

「は、はい。問題ありません。それにあれ位大した事はありません!」

オーガス

「…そうか。…最近随分訓練に励んでいる様だな?」

「当然です。織斑一夏に、織斑千冬に勝つために」

オーガス

「ククク…そうか。いい憎しみだ。お前ならきっともっとDNSを使いこなせるだろう」

「あ、ありがとうございます。必ずご期待に応えてみせます。織斑姉弟を倒し、そしてあの赤と青の兄弟もいずれは」

 

そう言った途端オーガスの声色が変わる。

 

オーガス

「…いや、奴らには手を出すな」

「…え?」

オーガス

「奴らは私の獲物だ。私が倒す。それにお前では絶対に奴らには勝てん」

「! し、しかし」

オーガス

「黙れ!」

「!!」

 

オーガスの激しい口調にMは一瞬言葉を失う。

 

オーガス

「わかっていない様だからもう一度はっきり言っておこう。お前では奴らには勝てん、絶対に。奴らの事はお前には関係ない。口出しするな。お前は織斑一夏と織斑千冬の事だけ考えていればいいのだ」

「……」

オーガス

「わかったな?」

「………はい」

 

力無く返事するM。

 

オーガス

「Mよ、あの時の恩を忘れてはいないだろうな?」

「と、当然です!決して忘れは致しません!生涯永遠に!」

オーガス

「…いい子だ。ではな。先ほどからオータムがDNSをより引き出す方法を教えろとしつこいのだ」

 

そういうとオーガスは出て行った。

 

「……」

 

部屋には再び力無く項垂れるMがひとり残され、

 

スコール

「……」

 

その様子を人知れずスコールは静かに聞いていたのだった…。

 

 

…………

 

IS学園 廊下

 

 

場所は再び学園。火影と海之が一夏と約束を交わしてそこから夕食、更に大浴場でひと月ぶりの風呂に浸かったふたりは自分達の部屋へ向かっていた。

 

火影

「考えてみりゃひと月ぶりに飯食ったのか…。よく生きてたな俺ら」

海之

「仮死状態だったのだから当然だろう」

火影

「つっても髪も伸びてねぇし…まさかあいつらが切ってたって事ねぇよな?」

海之

「……よせ」

 

火影と海之は目覚めた時、あれから既に一ヶ月も過ぎていたという事にやや驚いた。髪も伸びていないし筋肉も衰えていない。しかし世間の雰囲気を見ると確かに時が過ぎていたのだなと感じた。

 

火影

「ギャリソンやレオナ叔母さん達にも年が明けたら一回謝りに行かねぇといけねぇかもな…。幾ら信じてくれてても心配はかけ過ぎただろうし。……ハァ、レオナ叔母さんの剣幕が目に浮かぶぜ…」

海之

「…仕方がない。実際多大な心配をかけたのだ。今回は甘んじて受けよう」

火影

「……あと海之」

海之

「…ああ、…わかっている」

 

先程一夏とも約束したがふたりは皆にも真実を話す事を決めていた。自分達がどういう存在なのか、過去に何があったのか、そしてオーガスとは何者か。文字通り全てを…。

 

火影

「驚くだろうな皆。まぁ当たり前か。驚かない方が無理ってもんだ」

海之

「…大丈夫か?」

火影

「何がだ?」

海之

「真実を知ったらあいつらに拒まれる可能性もある、という事だ」

火影

「心配すんな。最初っから覚悟はしてるさ。お前は?」

海之

「愚問だ」

火影

「そう言うだろうと思った」

海之

「………ただ」

火影

「?」

海之

「失いたくない…と思うものができたというのは…弱くなったという事だろうか?」

 

海之の質問に火影は、

 

火影

「……心配すんな。前に俺言ったろ?「無くしたから強いんじゃねぇ。失いたくねぇから強いのさ」ってな」

海之

「!……そうだったな」

火影

「ああ。…じゃあまた明日な」

 

そんな事を口にしながら火影は自分の部屋の前に辿り着き、扉を開ける。

 

ガチャッ

 

火影

「なんか帰ってきてから寝てばっかいる気が」

シャル

「あ、火影。お帰りなさい。お風呂気持ちよかった?」

本音

「ね~、ほんとに私ひかりんの隣じゃダメなの~?」

「アンタは火影が帰ってきてからずっとくっついてたでしょ。それに普段から相部屋なんだからこれ位譲りなさい」

火影

「………」

 

火影は一瞬固まり、言葉を失った。自分と本音の部屋に何故か寝間着姿の、リボンも外した鈴とシャルがいたのだ。いやそれだけならただ遅くに遊びに来ただけと考える事も出来なくもない。彼女達は普段から一緒にいる事も多かったし、ましてや火影が帰ってきたという事もある。色々話したいと思う事もあるだろう。だから自分の部屋にいる事も珍しい事ではない。火影が黙った最大の理由は別にあった。

 

火影

「……おい」

本音

「な~に~?」

火影

「なんで俺のベッドと本音のベッドが……くっ付けられてんだ?」

 

そう。火影が驚いたのは彼女達がいた事ではなく、自分と本音のベッドがくっ付けられていた事だった。自分が風呂に行く前とそこが完全に模様替えされていたのである。

 

シャル

「あ、あははは…、やっぱりそこが気になる…?…うんとね…」

本音

「かっちゃんの命令なんだよ~」

火影

「…は?楯無さん?」

「あ、あのね。アンタと海之がお風呂に行った直ぐ後にね。私達のところに楯無さんから伝言が来たのよ…。コレなんだけどさ」

火影

「…手紙?」

 

そう言って火影は渡された手紙を見ると、

 

 

「大事な人が帰ってきて良かったね!…という訳で!生徒全体の事を考える生徒会長の私から提案します!新学期始まるまで想い人の部屋で一緒に過ごしてみたら良いんじゃない?準備はしておくから♪行くか行かないかは君達に任せます。じゃあ後は君達でごゆっくり~♪」

 

 

火影

「………」

 

火影は手紙を握りつぶしたい感情に囚われたがそれ以上に呆れて物も言えない様だ。

 

本音

「私もびっくりしたよ~。ひかりんがお風呂行ってから数分位したらたくさん人が来てさ~。あっという間にベッドを移動させちゃうんだもん~」

シャル

「でもまさかこんな状態とは思わなかったね。ああ因みにだけどラウラにも来たんだ。多分海之と簪の部屋も同じ事になってると思うよ」

「そういえば箒のところにもなんか手紙が来てたわね。…何かしら?」

 

火影は天を仰ぎながら頭を抱える。

 

火影

「っっったくあの人は……。てかこれは単に提案であって命令じゃねぇだろ?別に無理に付き合わなくても良かったんじゃねぇのか?」

「そ、それは…」

シャル

「ま、まぁそう、なんだけど…」

 

鈴とシャルは顔を赤くしながら返答に困った。その様子からどうやら行かないという選択肢は彼女達の中に無かった様である。こんな寝方をするのは計算外だったかもしれないが。

 

火影

「海之の野郎もさぞ驚いてる事だろな。いや飛び越えて呆れてるか。……ハァ、折角風呂入ってきたのにまたドッと疲れた気がする。狭いだろうしお前らで使ったらどうだ?俺はソファーでも構わねぇぜ?」

「だ、大丈夫よ!ほら!お布団じゃないとちゃんと疲れとれないでしょ?」

シャル

「う、うん!だから僕達の事は気にしないで火影もベッドで休んで?」

本音

「そうだよ~。皆で一緒に寝た方が楽しいよ~!」

 

火影のその言葉に三人は直ぐに反応して止める。それを聞いてやむ無く火影もベッドで寝る事にするが、

 

「…あ!い、言っとくけど一緒に寝るからって変な考え起こさないでよ!」

火影

「…?なんだよ変な考えって。ほら寝るぞ」

 

 

…………

 

そうこうしている内に四人は寝る体制に入った。ふたつのシングルベッドをぴったりくっ付けたその寝床はやはり多少狭くはあるものの何とか四人入る事はできた。上から見てみて鈴とシャルで火影を挟む形。鈴の反対隣に本音がいる。火影は端で良いと言ったのだがこういう形になったのだ。だが涼しい顔をして仰向けで寝ている火影に対し、鈴達は緊張がピークだった。

 

火影

「………」

(……やばい、緊張して全然寝れない…!お姫様抱っこや人工呼吸はされた事あるけどそれと全く違う…!一緒に寝るってこんなに違うもんなの…?)

シャル

(や、やっぱり四人で寝るとお互い近いなぁ。こんなに顔が近かったら…寝返りうった時とか誤ってキスとかしちゃったりするかもしれないなぁ…。って何考えてるの僕!)

本音

(む~~~次は絶対私がひかりんの隣だからね~!)

 

鈴達三人がそんな風に其々思っていると火影が上を向きながら口を開く。

 

火影

「…なぁ鈴、シャル、本音、ちょっといいか?」

「え?」

シャル

「何?火影」

本音

「ほえ?」

 

火影の真面目な声に疑問符が浮かぶ鈴達。

 

火影

「……聞いてくれ。一夏やお前らの怪我が治ったら……お前らに洗いざらい全てを明かそうと思う。俺と海之の事。あのオーガスって野郎についても何もかも…全て」

「……」

シャル

「…火影…」

本音

「ひかりん…」

 

三人はそれ程驚かなかった。火影と海之が戻ってきてからもしかしたら予感はしていたのかもしれない。

 

火影

「もう隠し事はしねぇ。…そして、それを聞いたうえで俺達の事を判断してくれ。もう一緒にいたくねぇって言うなら遠慮なくそうしてくれ。そうされても仕方ねぇ。でも…話さなきゃならない」

 

そんな火影の言葉に対して鈴達は答えた。

 

「…わかった」

シャル

「…うん」

本音

「わかったよひかりん…」

火影

「……」

 

火影も覚悟しているのか黙っている。しかし続いて鈴達は言った。

 

「…でもね火影、もう一度言っとくわ。アンタと海之が例え何者であっても、私達はアンタ達を信じてる。これだけは絶対変わる事はないわ」

シャル

「そうだよ火影。それに一ヶ月前言ったでしょ?僕達を泣かせた責任取って貰わなきゃ」

本音

「私達の気持ちは変わらないよひかりん~♪心配しないで~」

 

三人は火影を見ながら笑顔でそう宣言した。

 

火影

「………」

 

鈴達のその言葉に暫らくきょとんとする火影。

 

シャル

「…火影?」

本音

「ひかりん?」

「ど、どうしたのよ?」

火影

「……問題の前に答えるのは反則だぜ。…ははは」

鈴・シャル・本音

「「「あはははは♪」」」

 

 

…………

 

ほぼ同時刻。こちらは海之と簪の部屋。そして予想通りこちらもこうなっていた。

 

海之

「………」

(し、心臓の音聞こえてないかな?うるさくないかな?…さっきからまるで耳元に聞こえる位音立ててるのがわかる…)

ラウラ

「よ、嫁の隣で…しかも同じベッドとは激しく緊張するものなのだな…。半年前私はこんな事、普通にしようとしていたのか…」

クロエ

「ラウラ、貴女なんという事を考えているのですか…」

 

火影達が前述の様な事になっている一方、海之達もこのような状況になっていた。簪とラウラが海之を挟むようにし、クロエがラウラのもう隣にいる。クロエがここにいるのは鈴達と同じく「お兄ちゃんと一緒にいたら?」という楯無の提案。最初は躊躇したが結局来てしまった。まぁ理由はそれだけではないのだがそれについては後程。

 

海之

「全く楯無さんは…」

「御免ね海之くん…。本当にお姉ちゃん何考えてるのよもう…」

海之

「気にするな簪。お前のせいではない。それより大丈夫か?」

「う、うん。ちょっと近いけど大丈夫だよ」

(……それに、やっぱり私も嬉しいし…)

海之

「窮屈では無いかラウラ」

ラウラ

「あ、ああ大丈夫だ。問題ない」

海之

「クロエ、お前は?」

クロエ

「は、はい…大丈夫です。束様ともこうしてよく一緒に寝ていましたから…」

海之

「そうか…。もし寝にくいなら俺はソファーで眠るから遠慮無く言え」

「だ、大丈夫だよ。私達は全然」

ラウラ

「ああそうだ。気にするな。一緒に眠れ」

 

そんな風に話していると海之がクロエに話しかける。

 

海之

「…クロエ」

クロエ

「はい。なんですか?」

海之

「今言う事ではないかもしれないが…束さんの事、本当にすまなかった。俺達がもう少し気を付けていれば…」

クロエ

「あ、謝らないでください海之兄さん!兄さんは悪くありません。それにそれを言うなら…私が一番悪いんです。一番…あの方のお傍にいたのに…」

ラウラ

「クロエさん、それは違います。貴方だけのせいじゃありません」

「そうだよクロエさん。…助けよう。必ず、私達皆で」

海之

「その通りだ。不幸中の幸いかもしれないが奴はまだ束さんを必要と言っていたのだろう?うかつに手を出すとは思えん」

「うん、そうだね」

クロエ

「…はい!」

 

クロエは少し元気を取り戻したようだ。

 

海之

「…ところでクロエ、それにラウラ。以前より随分打ち解けたようだな?」

ラウラ

「そ、そうか…?もしそうだとすると…嬉しいが」

クロエ

「私も…ですか?…よくわかりません…」

海之

「…まぁ慌てる事はない。前にも言ったがお前達はこれからだ」

「…?」

 

ラウラとクロエの完全な雪解けも何時か必ずやってくる。海之はそう信じていた。そして、

 

海之

「三人…いやクロエは知っているな。簪、ラウラ」

「何?海之くん」

ラウラ

「なんだ海之?」

海之

「多分火影の奴も鈴達に話しているだろうが…、約束通りお前達に全てを明かそうと思う。俺達の今まで隠してきた事。そして、前に俺が言った俺の大罪というものについても…全てな」

簪・ラウラ

「「……」」

クロエ

「海之兄さん…」

 

簪とラウラもまた、鈴達と同じく予感していたのかさほど驚いてはいなかった。

 

海之

「その結果、俺達を拒絶しても何も言わん。いや寧ろされて当然なのだ」

「それ以上言わないで海之くん。知るのが全く怖くないと言えば嘘になるけど…私は海之くんを信じてるから」

ラウラ

「お前も火影も私の家族だ。家族は信じあうものだ。お前達が何者だろうと。余計な心配するな」

海之

「……」

 

ふたりの真っすぐな想いに黙る海之。

 

クロエ

「想いって…いいものですね、兄さん」

海之

「……そうだな」

 

そんな感じでこちらも床に着いた。

 

 

…………

 

そしてもうひとりの男子、一夏の部屋では。

 

一夏

「…あの…皆さん?というか楯無さん?ひとつお聞きしたい事があるんですが…」

楯無

「なに~?一夏くん?」

「わ、私もお聞きしたいことがあります!」

セシリア

「私もですわ!それになんでずっと看病していた私達じゃなく楯無さんが一夏さんのお隣なんですの!」

 

やはりというか、こちらでは一夏・箒・セシリア・楯無が一緒のベッドで寝ていた。一夏の隣はジャンケンの結果、箒と楯無が入った。セシリアは箒の隣になり、残念そうだった。同室の楯無がこうしたのでクロエもひとりで寝るよりは…、そう思って海之の部屋に行ったらしい。

 

楯無

「だって~ジャンケンで勝ったんだからしょうがないじゃない♪明日もちゃんとやるから♪」

「明日もするつもりですか!?…というより鈴や簪達のためならわかるんですけど…なんで私達まで」

楯無

「あの子達だけ過ごすなんてずるいでしょ~?ついでよついで♪なんなら無理に参加しなくても良いわよ~?」

「そ、それだけはできません!」

セシリア

「わ、私もできませんわ!皆さんを放っておいたらどうなるかわかりませんもの!」

「ななな、何を言うセシリア!私がそんな事するわけないだろう!」

一夏

「…あの、俺一応ちょっとした怪我人なんすけど?」

楯無

「そうよふたり共~、騒いだら一夏くんの怪我に響くわよ?」

箒・セシリア

「「うう…」」

 

それを言われると黙るしかないふたり。

 

楯無

「でも一夏くん本当にかっこよかったわね~。私感動しちゃった♪」

「…ああ。私も同じ気持ちだ一夏。よく…助けに来てくれた」

セシリア

「キャノンボール・ファーストの時もそうでしたが本当にご立派でしたわ」

一夏

「ははは、最後はいつも通りあいつらに見せ場を譲りましたけどね。……でもそう言ってもらえたら嬉しいです。それに…」

「それになんだ?」

一夏

「…火影と海之が言ってくれたんです。「あいつらを守ってくれてありがとう」って。…素直に嬉しかったっす」

セシリア

「…一夏さん…」

一夏

「…俺思い出したんです。前にあいつらに言われた事」

楯無

「…何?」

一夏

「前にあいつらと風呂入った時、言われたんです。「俺達にしかできなことがあるように、お前にしかできないことがある。そしてそれはお前にしか見つけられない」って… 。…それで…なんとなくだけど…わかった気がするんです。火影や海之みたいに…皆を守れる様な男になる事。守るために戦える男になる事。それが俺のやるべき事だって。そして決めました。…もうふたりを、火影と海之の背中を無理やり追い続ける事はしない。俺は俺として、織斑一夏として強くなる。誰にも思いつく事かもしれないけど…俺頭そんな良くねぇし」

 

するとそんな一夏に箒達は、

 

「…十分立派な答えだよ一夏」

セシリア

「ええ、本当に」

楯無

「恥じる事なんて決して無いわ」

一夏

「……ありがとうございます」

 

そう言われた事に安堵する一夏であった。そしてその安心感を持ったまま寝ようとすると、

 

楯無

「じゃあますます元気になってもらわなきゃね♪明日はもっと手厚~い看病してあげるわ~♪」

「ず、狡いですよ楯無さん!交代交代の筈でしょう!」

セシリア

「そうですわ!それに明日は私の番です!」

一夏

「…俺寝たいんですけど…」

 

すると楯無が、

 

楯無

「ああそれから皆にも教えるけど一夏くん、箒ちゃん、セシリアちゃん。私の事はこれからは刀奈って呼んで。私の名前なの」

「…刀奈?では楯無、とは?」

刀奈

「立場上の名前よ。でももうあのふたりの事に比べれば隠しておくのも馬鹿馬鹿しくなっちゃった。だからこれからはそう呼んでね?」

セシリア

「わ、わかりました。…刀奈さん」

一夏

「……ああだからのほほんさん、楯無さんをかっちゃんと呼んでたんですね。…あ、ところで」

刀奈

「何~?」

一夏

「なんで一緒に寝るのがのほほんさん達のためなんすか?」

箒・セシリア

「「……ハァ~」」

刀奈

「…オーガスより強敵かもしれないわね」

 

 

…………

 

少し時が過ぎ、IS学園 中庭

 

また、ここではこんな事があった。皆がすっかり眠りについてから数刻後、学園寮から出てきた影があった…。

 

千冬

「……ふぅ、今日はこの時期にすれば比較的暖かい方だったが夜中になるとやや冷えるな…」

 

そこには寝間着姿の上に簡単な上着を羽織った千冬がいた。どうやら夜中に目が覚めてしまい、風にでも当たろうと思って出てきた様だった。因みに眠っていたので髪も束ねていない。

 

千冬

「まぁでも軽く散歩する程度なら何とかなるか。………ん?」

 

千冬は気付いた。少し離れたベンチに誰かが座っている。外灯のおかげでうっすらではあるが確認できた。銀髪の、下ろした髪が。

 

千冬

(銀髪…火影か…?)

 

千冬は特徴からして火影と思い、近づいてみる。…だがそれは違った。

 

千冬

「…! み、海之…!」

 

それは火影ではなく、同じく寝間着姿で上着と首にマフラーをした髪を下ろした海之だった。

 

海之

「…千冬先生?どうしました?」

千冬

「あ、ああ。ちょっと目が覚めてしまって風に当たりに…」

海之

「そうでしたか、俺も同じです」

 

それだけ言うと流れで千冬は海之の隣に座る。すると、

 

海之

「先生これを」

 

そう言って海之は自身の上着を脱いで渡そうとする。しかし千冬は大丈夫と断る。

 

千冬

「い、いやいい。お前が寒くなるだろう」

海之

「…ではせめて」

 

そういうと海之は立ち上がり、自身の白いマフラーを千冬の首に回す。

 

千冬

「!!」

海之

「ここにおられる間だけでも。お風邪を引かれたら大変です」

千冬

「あ……ありがとう」

 

つい今まで海之の首に巻かれていたためか、僅かに残る温もりに千冬は自分の顔が熱くなっていくのを自覚する。

 

千冬

(…海之の…マフラー…)

海之

「…どうかしましたか?」

千冬

「なな、なんでもない!…と、ところで、お前が髪を下ろしているのを見るのは初めてだな」

海之

「あまり好きではないんです。それにああしなければ火影との区別がつきにくいですからね」

千冬

「ふふっ、確かにな」

海之

「…そういえば先生の束ねておられない髪型も初めてですね」

千冬

「あ、ああ。先ほどまで眠っていたからな…」

 

どうも調子が狂う事を危惧した千冬は話題を変える事にした。

 

千冬

「そ、そういえば海之、あと火影と一夏もだがお前達の部屋に更識の奴が何やらしでかしたそうだな?」

海之

「はは…、ええ実は…」(事情説明)

千冬

「………全くあの馬鹿者は」

海之

「正直最初は言葉が出ませんでしたが…でもそのおかげで話せた事もありますし、今は気にしていません。簪もラウラもクロエも疲れたのかぐっすり眠っています」

千冬

「……何かあったのか?」

海之

「…ええ。あいつらに約束したんです。一夏や皆の傷が癒えたら…その時に全てを話す、と」

千冬

「……成程な」

 

遂にその時が来たか、と千冬は思った。そしてもしかしたら多分火影も鈴達に話しているかもしれないとも。

 

千冬

「あいつらはなんと?」

海之

「…何があっても…受け入れると…言ってくれました。俺達の過去に何があったとしても」

千冬

「…そうか」

 

その答えに千冬は安心した。しかし海之は言う。

 

海之

「……ですが正直、とても信じてもらえるかどうか…。ましてや俺は…」

 

海之の頭に自分の過去の姿が蘇る。

 

千冬

「…海之、過去と今は違う。あいつらはお前達を信じている。だからお前もあいつらを信じろ」

 

海之に千冬は安心させる様にそう言った。

 

海之

「……はい」

千冬

「それに私は…お前を信じている…」

海之

「え?」

千冬

「い、いやなんでもない…。……あ」

 

すると空から…ちらほらと雪が降ってきた。

 

海之

「…雪ですね」

千冬

「…ああ。…雪だな。クリスマスはもう終わってしまったが」

海之

「そういえば昼に鈴が最低だけど最高のクリスマスと言っていました」

千冬

「…最低だけど最高のクリスマス、か。……ふっ、確かにその通りかもしれんな…。私にとっても」

海之

「…先生にも?」

千冬

「あ、ああまぁな。……まぁひとり足りないんだが」

海之

「……助けますよ。必ず」

千冬

「…ああ。必ずな」

 

千冬と海之の脳裏にはひとりの知人がいた。

こうして彼ら、そして彼女達は最低だけど最高のクリスマスを過ごしたのだった。

 

そして物語は……翌年へと進む。




これからは約数話ほど平和な話が続く予定です。

個人的感想ですがアグニ&ルドラは本音と相性よさそうな感じしてます(笑)
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