IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
千冬
「すまんな海之。帰国早々私達の用事に付き合わせて」
真耶
「お疲れの所本当にごめんなさい」
火影達が沙雪の家でくつろいでいる時、学園に戻ってきた海之は千冬、真耶の作業の手伝いをしていた。一夏は帰ってきて早々反省文で忙しく、箒はその付き添い。簪や刀奈は虚と一緒に実家に帰り、クロエも手伝うと言ったのだが海之が自室で休ませている。
海之
「気にされる事はありません。山田先生は俺達がいない間ずっと学園に残っていてくださったのですから。千冬先生にはスメリアでの恩もあります」
真耶
「…本当に海之くんは大人ですね。もうちょっと甘えてもいいんですよ?」
千冬
「恩など感じる事はない。私も子供たちの笑顔を見て癒されたからな。こんな性格故付き合い方は難しいが…あの子達の笑顔を見ると…未来を作ってやらねばと思う」
真耶
「私も子供は好きです。海之くんはどうですか?」
海之
「…そうですね。今は千冬先生と同じ思いです」
千冬
「そ、そうか…」
真耶
「…ふふ」
同じと言われて恥ずかしがる千冬。それを見て微笑む真耶。するとそこへ、
ガラッ
?
「失礼します。……織斑先生。山田先生。お久しぶりです」
真耶
「…あ!」
千冬
「…おおお前か、ギャラクシー」
千冬がギャラクシーと呼んだのはひとりの少女。濃い緑のショートの髪型でマントの様な特徴的な衣装をIS学園の制服の上に纏っている。何か体操的なものをしているのか非常に脚線美である。
真耶
「お久しぶりですギャラクシーさん!何時こっちに!?」
少女
「昨日です。ご挨拶が遅れた事、申し訳ありませんでした」
千冬
「構わん。私達もいなかったからな。向こうでの訓練はどうだった?」
少女
「はい。問題ありません」
真耶
「それは良かったです」
彼女達の会話に海之は邪魔にならない様あえて入らず作業に集中する。
少女
「…先生。もしかしてこの方は…」
真耶
「ああそうでした!彼は私達のクラスの生徒さんです」
そう言われて立ち上がる海之。
海之
「一年一組の海之・藤原・エヴァンスです」
少女
「! やはりそうですか…貴方が双子の男子IS操縦者の。私はヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー、タイ代表候補の二年生です。宜しくお願いしますね」
海之
「ええ宜しく」
海之は握手をしようと手を差し伸べたが、
ヴィシュヌ
「あ、え、えっと…」
何故か手を取らなかった。
千冬
「すまん海之。ギャラクシーの家は母子家庭でな。更に学校も女ばかりで男と触れ合った事がほとんどないのだ。悪く思わないでやってくれ」
ヴィシュヌ
「すみません…慣れなきゃいけないとは思っているんですけど…」
海之
「いえいえお気になさらず。ところでギャラクシー…確か副生徒会長がその様な名前だった様な…」
千冬
「ああ彼女がそうだ。ただ一学期の終わりから留守にしていてな。母国のIS特別訓練校にコーチに行っていたのだ。彼女は小学生の頃にISを動かしてな。他の者より経験も長いのだ」
真耶
「それにギャラクシーさんはヨガとムエタイの達人でもあるんですよ」
海之
「それは凄いですね」
ヴィシュヌ
「大した事はありません。それを言うなら貴方こそ数々の噂は伺っています」
海之
「大した事はしていません」
ヴィシュヌ
「新学期からはこちらに戻るのでお会いする事もあるでしょう」
ふたりがそんな会話をしていると真耶がある事に気付く。
真耶
「……なんか海之くんとギャラクシーさんって似てますよね~」
海之・ヴィシュヌ
「「え?」」
真耶
「だってふたり共頭脳明晰だし操縦技術も凄いし体術も習得されていますし同じ生徒会ですし、おまけに今の受け答えまで」
千冬
「そういえばそうだな。海之も剣術と格闘主体だからな」
ヴィシュヌ
「そうなんですか。では是非今度お手合わせしたいです」
海之
「こちらこそ。改めて宜しくお願いします、ギャラクシー先輩」
ヴィシュヌ
「ええ、エヴァンスくん」
…………
~~~~~~~~
その夜、海之がひとり自室で休んでいると突然海之の電話が鳴った。…千冬からだ。
海之
「はい」
千冬
「海之か。こんな時間にすまんな。悪いが…急いで指令室まで来てくれないか?」
海之
「何かあったのですか?」
千冬
「少しな。…大丈夫か?」
海之
「問題ありません。直ぐに行きます」
…………
指令室
海之が来るとそこには千冬と真耶、そしてシエラ(クロエ)とヴィシュヌもいた。
海之
「遅くなりました」
シエラ
「海之兄さん」
ヴィシュヌ
「お疲れ様です。エヴァンスくん」
真耶
「御免なさい海之くん。本当に休んでいただく暇もなく…」
海之
「気にしないでください山田先生。それより何があったのです?」
すると千冬が口を開く。
千冬
「…少々、いやかなり困った事になってな。お前達にも手伝ってもらいたく呼んだ。早速だが本題に入る。現在IS学園のセキュリティ及びシステムが一斉にダウン。状況からして…ハッキングを受けているものと推測される」
それを聞いて一気に動揺が走る一同。
ヴィシュヌ
「…しかし先生、学園のシステムはその重要度故、外部からは独立したシステムである筈では?」
真耶
「はい、確かに学園のデータベースは外部からは手が出せない様になっていますが…」
シエラ
「しかしできない事はありません。但しそれにはかなりの知識といくつかの条件が必要ですが」
手段は少ないが方法はあるとシエラは断言した。束の娘で弟子たる彼女だからこそわかる事だろう。
海之
「…とすると悪戯目的は勿論、単なるテロリストとは思えませんね…」
(そして多分奴の仕業でもない。奴ならこんな手段は今更使わないだろう)
ヴィシュヌ
「偶発的なものでも無いですね。何らかの明確な目的があって行っている筈です」
真耶
「し、しかし一体誰が…?この学園は国際法で一切の干渉は認められていない筈なのに…」
海之
「このような事をする奴らにそのような文句は通じませんよ山田先生」
千冬
「しかしこれは由々しき事態だ。ここには個人情報のみでなく代表候補やそのISのデータも含まれている。だがそれらがある場所はデータベースの奥の奥。しかもそこに辿り着くまでには何重もの独立したセキュリティを突破しなくてはならない。そう簡単には出来ない筈。その前に原因を排除し、システムを復旧させなければならない。不幸中の幸いかどうかはわからんが今は学園に残っている生徒は少ないため他の生徒への実質的被害はほぼ無いだろう。しかし逆に言えばそれだけ対処できる人間がいない事も意味している」
ヴィシュヌ
「私達だけで対処するしかないという事ですね」
シエラ
「私はISがまだ修理中のため後方支援をします。申し訳ありません…」
海之
「気にするなシエラ。それで俺達はどうすれば?」
海之の問いに真耶が答える。
真耶
「海之くん、ギャラクシーさん。おふたりには電脳ダイブを行い、原因の排除に向かって頂きたいんです」
聞きなれない言葉だが海之達はそれに反応する。
海之
「電脳ダイブ…。確か…IS操縦者の意識をISの同調機能とナノマシンの信号伝達によって…」
ヴィシュヌ
「仮想化及び視化して仮想世界、いわば電脳世界へと侵入する技術よ。私も実際試した事は無いけれど」
真耶
「そうです。これならば例えばコンピュータウィルス等の様な目に見えぬ相手にも直接且つ迅速に対応する事が出来ます」
千冬
「お前達はこれを用いて電脳世界に侵入し、システムダウンの原因を排除してもらいたい」
シエラ
「その後、私がシステムの復旧作業に入ります」
ヴィシュヌ
「シュヴァイツァーさんはそんな事ができるんですか?」
シエラ
「え、ええまぁ」
海之
「……」
真耶
「どうしました海之くん?」
海之
「…先生、外部の方にも警戒を敷いた方がいいと思います」
ヴィシュヌ
「…そうね。それがいいかもしれない」
真耶
「どういう事ですか?」
真耶の問いかけに海之は答える。
海之
「考えたくはありませんが…敵方も電脳ダイブを行い、サーバに直接侵入しようとしている可能性もあるのではないかと」
ヴィシュヌ
「…低いけどありえない事は無いですね。それにもしダイブを行っている間、その者の意識は電脳世界に行っているため身体は無防備になる。全員がダイブを行い、任務完了まで野ざらしなんて危険を冒すとは思えない」
海之
「ええその場合一隊がダイブを、もう一隊がそれを援護している可能性があります。そうなると敵は外部、恐らくすぐ近くにいる可能性も…」
シエラ
「警備システムをダウンさせたのも脱出を容易にするためとも説明できますね」
千冬
「ひとりが内の、もうひとりが外の排除という事か…、良いだろう」
ヴィシュヌ
「では私がダイブを行います。海之くん、外の方は頼みますね」
海之
「了解です。先輩もお気をつけて」
ヴィシュヌ
「ええ貴方も」
…………
「電脳世界」
仮想空間、サイバースペースと呼ばれることもあるその世界はコンピュータやネットワークの中に広がるデータ領域であり、多数の利用者が自由に情報を流したり情報を得たりすることが出来る非現実の空間。そんな空間に複数の影が怪しい動きを見せていた。
?
「…どうだ?」
「最後のウォールを突破するまでにはもう暫く時間がかかります」
「そうか…ちっ、やはりIS学園のセキュリティ。何重にも防壁を敷いている様だな。警備システムをダウンしているとはいえ今の現状は向こうも気付いている筈だ。急がねばならん、もし織斑千冬が出てきたりなどすれば」
「大丈夫ですよ。現在学園の警備体制は最低限しか機能していないという情報を掴んでいます。それにいざという時は外部の隊を」
とその時、
ヴィシュヌ
「何をしているんですか?」
?
「「「!!」」」
声をかけられた事でその者達は振り向くと…そこには電脳世界にダイブしてきたISを纏ったヴィシュヌがいた。赤や黄色やオレンジの配色が目立ち、脚部の装甲が他の部分より大きく、巨大な弓があるISである。
ヴィシュヌ
「ダイブは初めてですが現実とそれ程の違いは感じませんね。…それにしてもまさか本当に直接サーバへの侵入を試みるなんて…。エヴァンスくんの推測が当たったわね」
?
「ちっ!予定よりも早かったな…」
「だが見たところ相手はひとり。しかも織斑千冬でもない」
「見た所専用機の様だな。ならば逆にそのISのデータもいただくとしよう」
ヴィシュヌ
「ひとりだと思ってあまり甘くみられない方が良いですよ。貴女達全員拘束させていただきます」
?
「馬鹿め!我々に敵うと思うなよ!」
「我々に失敗は許されんのだ!」
ヴィシュヌ
「…ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー。ドゥルガー・シン。いきます!」
電脳世界でのヴィシュヌと謎のIS部隊との戦いが始まった…。
…………
一方その頃、現実世界の学園の一画でも複数の影が動いていた…。
?
「…隊長、βチームはどうやら同じくダイブしてきた者と交戦状態に入った様です」
「交戦だと?織斑千冬か!?」
「…いえ。ですが専用機を纏っている事からどこかの代表候補ではないかと」
「…そうか。ならば丁度いい。それもある程度は予想済みだ。直ぐに片づけて目当ての情報とまとめてその専用機も」
ボンッ!!!
?
「「「!!」」」
するとその時、その者達の周囲に凄まじい爆煙が上がった。
?
「な、なんだ!?」ドゴッ!「ぐあっ!」
「どうした!」バキィッ!「ぎゃあ!」
次々と悲鳴を上げる謎の者達。煙に紛れての突然の奇襲に直ぐに対応できないでいる。するとそのうちのひとりがセンサーで確認する。
?
「! た、隊長!何者かが煙に紛れて我々を」ドゴッ!「ぐほ!」
「ちぃ!どこだ!?」
そしてやがて煙が晴れていき、周囲が見える様になると、
海之
「護身用のグレネードがまたこんな形で役立つとは」
そこには手に刀を持ち、謎の者達を数人ダウンさせた海之がいた。
?
「こ、子供!?」
海之
「俺の読みが正しかったな。やはり外部にも敵がいたか」
?
「何故ここがわかった!警備システムは完全にダウンした筈なのに!」
海之
「ダウンさせたなら戻せばいいだけの事だ」
?
「馬鹿な!こんな短時間でだと!?」
海之
「生憎こちらには世界最高の科学者の弟子がいるのでな。カメラのシステムだけなら造作もない。さて…貴様らには聞きたいことがある。そこに寝ている者達共々連行させてもらうぞ」
?
「何をふざけたことを。たかが子供ひとりに我々が捉えられるものか。……そうか、貴様が噂の男子IS操縦者のひとりか。ならば丁度いい、逆に貴様のISを頂くとしよう」
海之
「その子供ひとりに既にお仲間は何人か沈められた様だが?」
?
「たわけ!予想だにしない奇襲で少々油断しただけよ!」
「貰い受けるぞ!貴様のISを!」
そう言い放って海之に向かって行く者達。
海之
「……」
…………
その光景を海之が忍ばせたカメラから見ている千冬、真耶。クロエ。
真耶
「まさか…本当に学園に侵入しているなんて…」
千冬
「統率された動き、そして学園のセキュリティを破るほどの知識…間違いなくどこかの部隊だな。しかも持ち運びできる程の電脳ダイブを行える装置まで用意しているとは…軍の新兵器か…?」
するとシエラがその隊の特徴から割り出した。
シエラ
「……装備等や相手の言葉の特徴からデータ称号完了。99、9%の確立で米軍特殊部隊「アンネイムド」の実働部隊と断定しました」
真耶
「べ、米軍!?」
千冬
「…アンネイムド。…聞いた事が無いが」
シエラ
「当然です。記録は愚か存在の証明がなにひとつない。隊員達も国籍も人種もバラバラで共通点もありません。正に名無し、幽霊の様な部隊です」
千冬
「…よくそんな部隊と判明できたな?」
シエラ
「人のやる事に完璧はありません。目には目をというやつです。勿論証拠は一切残していませんのでご安心を」
真耶
「で、でもアメリカが関係しているなんて…、こんなことが公にでもなれば間違いなく国際問題ですよ!それがわかっていない筈は…」
千冬
「……」
沈黙して何かを考えている千冬。すると、
真耶
「! せ、先輩大変です!ギャラクシーさんとの連絡がとれません!ジャミングの様なもので阻害されています!」
千冬
「何だと!それでギャラクシーは!?」
真耶
「…わかりません。戦闘が継続中である位しか…」
千冬
「……」
…………
一方その頃、アンネイムドの部隊はウェルギエルを奪うため、海之に襲い掛かるが、
隊員
「ぐ、ぐぐぐ…」
「ば、馬鹿な…」
「こんな子供に…」
重厚な装備を纏っている隊員達は軽装な海之に既に何名かダウンさせられていた。
海之
「……」
隊長
「くそ!一度にかかれ!」
隊長らしい男の指示で周囲から三人の隊員が海之に一斉に向かう。しかし、
海之
「はっ!」
ドゴッ!バキィィッ!ガガガガガ!
隊員
「「「ぐあああああ!!」」」
ひとりは蹴りを顔側部に、ひとりは腹部に刀の峰打ちを、もうひとりは持っていたスタンロッドを腕を掴まれて逆に自分が受ける事になり、結局三人ともダウンしたのであった。
隊員
「ば…かな…」
「くそ!こうなったら銃を使え!」
「し、しかしもし殺しでもしたら!」
「麻酔弾ならなんとでもなる!撃て――!!」
ズダダダダダダダダダ!!
そして隊員たちは海之に向かって銃を撃つのだが、
キキキキキキキキキン!!
海之は刀を回転させてそれを受け止め、打ち返した。
隊員
「じゅ、銃弾を受け止めて跳ね返しただと!?」
「な、なんて奴だ」ドゴッ!「ぐあ!」
倒れているひとりの腕に刀を押し当てる海之。
海之
「喚くな、薄汚い血を流していないだけでもありがたく思え」
隊員
「なんだ…なんなんだお前は!?」
海之
「只の人間だ。今はな」
千冬
「…海之!」
とそこへ戦闘服らしい身軽な服装に着替え、手に刀を持った千冬が後ろからやって来た。
海之
「千冬先生。どうしてここへ?」
千冬
「お前達だけに戦わせるのも悪いからな。…海之、ここは私に任せろ。この程度ならISが無くとも何とかなる。お前はギャラクシーの応援に行ってやれ。先ほどから連絡が取れん」
海之
「! わかりました。…頼みます」ジャキッ
海之はそう言うと自分の刀を千冬に渡し、ヴィシュヌの救援に向かった。
千冬
(迷うことなく「頼みます」か…。私を信用してくれているのだな…)
心の中でそう呟くと千冬は二刀流を目の前の者達に向き直し、
千冬
(ならば…その信用に応えるのが私の役目だ!)
「さぁ、選手交替の第2ラウンドといこうじゃないか」
隊員
「お、織斑千冬…伝説のブリュンヒルデ…!」
千冬
「かかってこい。但し…勝敗は決定しているがな!」
…………
その頃、電脳世界ではヴィシュヌとアンネイムドIS部隊との戦いが続いていた。
ヴィシュヌ
「はぁ!!」ドゴォォォ!
隊員
「ぐあぁぁ!」
ヴィシュヌの蹴りが相手のひとりに決まる。彼女のIS「ドゥルガー・シン」はムエタイが得意な彼女に合わせて蹴り主体な攻撃を得意とするISであった。真耶の言う通りその実力は高く、対複数ではあるが互角に渡り合っている。
隊員
「くそ!代表候補にしては中々やる!」
しかしやはり数の差も無視できず、彼女の方には疲労が見えていた。
ヴィシュヌ
(くっ…やはりひとりでこの数を相手にするのは少々欲張りでしたね…。ジャミングされているのか通信もできないし…、先生方が気付いてくれている事を祈るしかないですね…)
隊員
「落ち着け!どんなに強かろうが相手はひとりだ!圧し進んでかかれ!」
ドドドドドンッ!
ヴィシュヌ
「くっ、考えている暇はありませんね!はぁぁぁぁ!」ドドドドドンッ!
ヴィシュヌはそう言うと向かってくる敵に対し、弓型の武器で複数の粒子弾を発射した。その攻撃に複数が巻き込まれるがギリギリで躱した者が接近戦を仕掛ける。
隊員
「喰らえ!」…スカッ!「!!」
しかしヴィシュヌは華麗な動きでそれを回避する。ヨガとムエタイにより得られた身体の柔軟性を利用した見事な回避である。
ヴィシュヌ
「遅いですよ!」ズガンッ!!
隊員
「うわぁぁ!!」
そして敵の上部から再び蹴りを喰らわせる。
隊員
「そこだぁ!」
ヴィシュヌ
「! しまった!」ドゴォォ!「きゃあぁぁ!!」
後方から迫っていた別の敵が攻撃を繰り出した。少なからず消耗していたヴィシュヌはその攻撃を喰らってしまう。すると、
隊員
「今だ!リムーバーウェーブを照射しろ!」
「はっ!」
ババババババババババッ!!
ヴィシュヌ
「!!」
敵はヴィシュヌの周囲に謎の赤い光を照射した。……しかし痛みは無い。
ヴィシュヌ
「な、何なのこれは……!!」
キュゥゥゥゥゥンッ
すると何故かヴィシュヌのISが強制解除されてしまった。彼女は直ぐに再展開しようとするが、
ヴィシュヌ
「! どうして!?ISが展開できない!」
隊員
「どうだ!我らの新兵器、リムーバーウェーブは!この光を受けると強制的に一定時間ISの展開が無効になるのだ。同じ相手には通じないがな」
ヴィシュヌ
「くっ、卑怯な…!」
隊員
「恨むのならばダリル・ケイシーを恨むのだな!」
「収穫は多ければ多い程いい!お前のISもいただくぞ!」
そして敵の魔手が戦闘不能になったヴィシュヌに向かう。
ヴィシュヌ
(!!……お母さん!!)
目を閉じて悔し涙を浮かべるヴィシュヌ。最早これまでかと思った……その時、
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
隊員
「きゃあああ!」
「ぐああああ!」
「うわあああ!」
ヴィシュヌ
「!!」
突然響く敵の悲鳴。何事かと驚いたヴィシュヌは顔を上げる。
海之
「………」
そこには両手両足にベオウルフを展開し、全身から青い光を発して輝くSin・ウェルギエルを纏った海之がいた。
隊員
「な、何だ!?」
「全身装甲のISだと!?」
「何時の間に!全く動きが見えなかったぞ!」
海之
「ご無事ですか先輩」
ヴィシュヌ
「その声…エヴァンスくん!どうしてここへ!」
海之
「向こうが目処がつきましたので山田先生に送っていただきました。先輩は下がっていてください。後は自分が」
ヴィシュヌ
「あ、貴方ひとりなんて無茶です!私も」
海之
「貴女に何かあれば貴女の母親が悲しむ。貴女の教え子達も」
ヴィシュヌ
「!!」
海之
「安心してください。先輩は俺が守ります」
ヴィシュヌ
「海之くん…」
隊員
「…貴様まさか、双子の男子IS操縦者か!」
海之
「貴様らの下らん小細工も此れまでだ。既に外の奴らは千冬先生に片付けられている。逃げ場はない。大人しく投降しろ」
隊員
「なんだと!?」
「ほ、報告します!外の隊と連絡が取れません!」
「……くっ、こうなればお前達を人質にして活路を開くまでだ!」
海之
「まだ諦めんか」
隊員
「舐めるなよ!お前にも味合わせてやるわ!我々の底力を!」
「リムーバーウェーブ照射!」
ヴィシュヌ
「! 海之くん逃げて!」
バババババババババ!!
そして敵はリムーバーウェーブを海之に向け、再度射出した。その光に当てられる海之。
ヴィシュヌ
「ああ!」
隊員
「ははは!どうだ!このリムーバーウェーブの前ではどんなISでも……!?」
敵は目を疑った。確かに海之の纏うウェルギエルに光は当たっている。しかし…ウェルギエルには何の変化も起こらなかった。
海之
「……それで、どんなISでもなんだ?」
ヴィシュヌ
「! 海之くん!大丈夫なの!?」
隊員
「リムーバーウェーブが通用しないだと!?」
「ば、馬鹿な!現状いかなるISにも対処できる筈なのに!」
海之
「リムーバー…成程、一夏が食らったというIS強制解除装置か。しかし生憎だがこいつの中にいる奴らはこんなもので何とかできる程大人しい奴らではない。…そして」
カッ!!
海之がそう言うと彼の背後に黒い光が現れて弾け、
ナイトメアV
「……」
海之とヴィシュヌを守る様に出現したナイトメアVが敵を見下ろしていた。
ナイトメアV
「……」ギロッ
隊員
「なんだこいつは!」
「うわぁぁ!」
「ば、化け物だ!」
ヴィシュヌ
「ひとつ目の巨人!?」
海之
「どうやら勝手に触れられてお怒りの様だ。…遊んでやれ」
…………
朝までにはきれいさっぱり終わっていた。システムはクロエによって急速に修復され、学園に侵入してきた者達は海之や千冬、ヴィシュヌによって全て倒され、逮捕された。……しかし、
真耶
「どういう事ですか!?襲撃してきた人達は全て本国に送り返すって!」
逮捕されたアンネイムド隊員達は日本で刑を受けることなく、本国に移送される事になったのであった。しかも世間には知られない様密かに。捕まえて早々警察からその連絡があり、千冬からそれを聞かされた真耶が憤慨している。
真耶
「此方はシステムをハッキングされてほぼ無防備の危険に晒された上、ギャラクシーさんは負傷、しかも拉致の危険まであって本当に危なかったんですよ!?それなのに向こうが罪に問われないってどういう事ですか!?」
千冬
「……」
ガラッ
その時扉が開き、ふたりの女性が入ってきた。
?
「それについては私達が説明するぜ」
ナターシャ
「久し振りですね…千冬」
千冬
「ナターシャか…。それにイーリス」
イーリス
「久々じゃねぇか千冬。前のモンドグロッソ以来だな」
ひとりは嘗てのシルバリオ・ゴスペルのパイロットである米空軍パイロット、ナターシャ・ファイルス。そして男の様な喋り方のイーリスという女性。名をイーリス・コーリング。彼女もナターシャと同じく千冬の学友であり、現時点でのISアメリカ代表であり、ナターシャの上官でもある。
千冬
「お前達がここにいるという事は…」
ナターシャ
「ええそう。隊の者達は私達が連れて帰ります」
イーリス
「今回の騒動はうちの馬鹿なお偉いさんが奴らに命じて勝手にやった事。アメリカ政府は認可していなかった事なのさ」
イーリスはそう言うが千冬は言い返す。
千冬
「…と、いうカバーストーリーなのだろう?こんな大それた計画、幾ら隠密行動が得意な部隊とはいえ何のバックアップもないまま実行できる筈はない。ましてや簡易式の電脳ダイブ装置等な。恐らく背後にはアメリカ政府が付いている。しかし大方責任は全て捨て駒に押し付けて黒幕はのうのうと休暇、という訳か」
イーリス・ナターシャ
「「……」」
真耶
「そんな…そんな事許されるんですか!?生徒ひとり傷つけてISのデータまで奪おうとしておいて!」
真耶は激しく追及する。普段温厚な彼女がここまで怒るのはハッキングされた事よりも生徒が危険にさらされた事が大きい様だ。
千冬
「…今回の任務の目的は何だ?」
するとイーリスがそれに答えた。
イーリス
「ダリル・ケイシーを覚えているかい?彼女はつい先日までアメリカ代表候補だった。しかし彼女はあのファントム・タスクの工作員だった。その事実だけでもアメリカは既にかなりのダメージを受けてる。テロリストを国家代表候補にしていた国ってな。アメリカ政府は即彼女に関わる情報を全て削除する事を決定した」
千冬
「だから秘密裏に削除しようとしたのか?そんな事しなくても既に彼女は除籍されているのは知っている筈だが?」
ナターシャ
「ええそれだけの理由ならばこんな馬鹿な事はしませんわ。でも…上層部はそれだけでは納得しなかった。ただ単に消しただけでは国の傷は、恥は消せない。もっと決定的なものが必要だと」
真耶
「…決定的なもの…?」
すると千冬が気付いた。
千冬
「…海之達か」
イーリス
「流石だな千冬。……そうさ、目的は男子IS操縦者達のISの情報。それを手に入れる事だ。現在世界のどこも手に入れていない情報。まぁ織斑一夏の情報は既に手に入れてるがあのエヴァンス兄弟。それについては全くの未知だ。それをどの国よりも先に手に入れれば一気に堕ちた分を取りもどせると上は思ったんだ。その後は裏工作や金でどうとでもなると」
真耶
「なっ!!」
ナターシャ
「ですが見ての通り作戦は失敗…。もし万一失敗した場合、政府は一切自分達は関わっていないという事。全ては一部の暴走によるものだとすることを決定していたのです…」
千冬
「それで学園への説得役がお前達という訳か…」
真耶
「…そんな…」
衝撃の事実に真耶は言葉が無い。
ナターシャ
「…お怒りは重々承知しております。しかし今回任務を遂行したアンネイムドは本来存在しない部隊。彼らの活動もまた公にできない事ばかり。表に出す事はできないの。もし知られたら最悪あらぬ噂まで流されてしまいます。あれもこれも全てアメリカの仕業かもしれないと…」
イーリス
「それに仮にも米軍きっての特殊部隊が千冬もいたとはいえ、たった数人の少年少女にものの見事に全滅されたなんて事が世に知られれば米軍の面子は丸つぶれ。アメリカの権威は地に堕ちる。それだけは絶対に防がなければならねぇんだよ…」
真耶
「じゃあ…じゃあ今回の事は全て水に流せっていう事ですか!?最初から無かった事にしろと!」
千冬
「落ち着け真耶…気持ちはよくわかる。私もお前と同じ気持ちだ。…だがこれは国と国との問題。我々には…手の出しようがない」
真耶
「……」
ナターシャ
「お約束します。公にはできませんがこの作戦で損傷させてしまった当方への賠償も全て誠心誠意行います。日本政府にもタイ政府にも既に裏で謝罪も行っています。ですから…どうか」
イーリス
「当然作戦中に得たデータも全て抹消する。決して悪用はしねぇ…させねぇ。…頼む。こんな事言える資格なんてねぇが…アメリカを助けてくれ…」
ふたりは千冬と真耶に深く頭を下げた。その態度は本物であった。
千冬
「真耶、ふたりは信じれる。私に免じてここは…」
真耶
「…………わかりました。ただし…絶対に誠心誠意謝罪してください。特に海之くんやギャラクシーさんには」
イーリス
「…すまねぇな」
ナターシャ
「誓います。…ありがとう千冬、それに真耶さん」
イーリス
「…では俺達はこれで失礼するぜ。あいつらの護送任務を受け持ってるからな」
そしてふたりはよく職員室から出て行こうとすると、千冬が再び声をかける。
千冬
「ああそうだ。…ある者からふたりに伝言がある」
イーリス
「…ある者?」
千冬
「ああ。実はどうやらそいつも今回の事もある程度予測していたらしくてな。もし関係者が来たら伝えておいてくれ。との事だ」
そして千冬はこう言った。
千冬
「そのまま伝えるぞ?…頭の固い連中に伝えておけ。俺は襲撃者がどうなろうと興味はない。だがもし今度、学園や俺達の故郷に爪の先程も手を出そうとしたら…俺達の剣先や銃口は貴様らに向ける事になる…とな」
イーリス・ナターシャ
「「……」」
千冬
「私にはわかる。これは決して脅しではない警告だ。あいつらは本気でやるぞ?もしあいつらが怒り狂えば…誰も止められん。私にもな。それもよーく伝えておけ」
千冬は挑戦的な笑みを浮かべてハッキリと伝えた。
イーリス
「……ふ、わかった。しっかり伝えておくぜ」
ナターシャ
「…それでは」
、
ふたりもやや笑いながら部屋を出て行った…。こうして一晩だけの小さな、且つ大事件はひっそりと幕を閉じた…。
…………
暫くした後、海之はとある場所で何やら端末を打っていた。クロエはシステムの復旧作業を夜通し行って先ほど完了し、部屋で休んでいる。
海之
(…仮想空間へ入り込める電脳ダイブ…。これを使えばもっとわかりやすくあいつらに伝える事ができるかもしれんな…。あの時あいつが俺達を見れば自ずと信じる、と言ったのはこれの事だったのか…)
何かを考えている海之。するとそこへ、
ガラッ
海之
「…! ギャラクシー先輩、大丈夫ですか?」
ヴィシュヌ
「ええ大した事ないわ。先生が大袈裟に包帯巻いただけ」
海之
「それは良かったです」
ヴィシュヌは海之の隣の席に座る。海之は作業を続けながら話す。
ヴィシュヌ
「…助けてくれてありがとう」
海之
「礼を言われる事はしていません。当然の事をしたまでです」
ヴィシュヌ
「それでもよ。…貴方、本当に強いのね。ただ強いだけじゃない。なんというか…信念を感じたわ」
海之
「そんな大層なものではありません」
ヴィシュヌ
「…聞いた?私達が戦った部隊の人達、本国に送還されたそうよ。先ほど護送任務を受け持った方が来られたわ。今回の事…本当に申し訳なかったって」
海之
「らしいですね」
ヴィシュヌ
「貴方にも会いたかったらしいんだけど…会おうとしてくれなかったって」
海之
「興味ありませんから」
まるで何でもないように返事する海之。そんな彼にヴィシュヌは尋ねた。
ヴィシュヌ
「…悔しくないの?」
すると海之は作業を続けながら答える。
海之
「シエラや先生方、先輩を守れましたから…これ以上は望みません」
ヴィシュヌ
「!……」
ヴィシュヌの心に海之のその言葉が響いた。
ヴィシュヌ
「……失礼な事言ったら御免なさいね。……私、最初に貴方と会った時、お人形さんみたいな人だなって思ったの。なんというか…必要な事以外全く興味無い様な感じがしたから…。表情も殆ど変わらなかったし」
海之
「気になさらないでください。俺も時々自分をそう思いますから」
ヴィシュヌ
「……でも違ってた。貴方が私に何かあったら母や私が教えている子達が悲しむ、だから守るって言ってくれた時、よくわかったわ。貴方にも…ちゃんと大切に思う人達がいるんだなって」
海之
「…俺も人間ですから」
ヴィシュヌ
「…ええそうね。……ねぇエヴァンスくん。ひとつお願いがあるんだけど良いかしら?」
海之
「何ですか?」
ヴィシュヌは言った。
ヴィシュヌ
「……これからは私の事、名前で呼んでくれる?」
海之
「…?先輩が良いのでしたら。では俺の方も海之と呼んで下さい。生徒会等で集まった時に弟と一緒だと困るでしょうから」
ヴィシュヌ
「ありがとう…。これから宜しくね、海之くん」
ヴィシュヌはそう言いながら立ち上がると微笑みながら手を差し出した。
海之
「……ええ、ヴィシュヌ先輩」
海之も立ち上がり、微笑を浮かべて彼女の手を取って握手した。
※次回は28日(土)の予定です。次回は一作品の予定です。
レギュラー化の様に書いていますがあくまでもゲストなのでヴィシュヌはヒロインとしては書かない予定です。ただこのふたりってよく似ていると思うんですよね。
乱登場回はどうだったでしょうか。原作を読んでいないため鈴の出生についてはオリジナル全開ですが自分としては結構気に入っています。
※もうひとつお知らせがあります。
私事ですが編集に使っていたノートPCが経年劣化か故障してしまった様です…。修理に出さなければいけないかもしれませんのでその間スマホで編集しますが時間がかかるかもしれません。一応来週分は上げれる予定です。