IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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これはスメリアからドイツに帰国したラウラのお話です。

※12月18日よりDMC5SEとカプコンカフェがコラボ決定!


Extramission13 ラウラとベルベット

ドイツ 某空港

 

 

ラウラ

「ふぅ…日本からよりもまだ近いとはいえ、やはり長時間の飛行機は何度経験しても中々疲れるものだ」

 

ここは国際便があるドイツの空港。スメリアからひとり、漸くラウラが帰国した。飛行機を降り、ゲートから出てくると、

 

「隊長!」

 

そこにはラウラの帰国を待っていた人物がいた。軍服を着て短い黒い髪、ラウラと同じく眼帯をしている女性。

 

ラウラ

「おおクラリッサ!」

クラリッサと呼ばれた女性

「隊長!お迎えに上がりました!」

ラウラ

「うむ!ご苦労!」

 

敬礼をして挨拶するふたり。その後クラリッサという女性が運転する車に乗り込み、ラウラは自らの部隊の者がいる基地に向かう。

 

ラウラ

「留守の間ご苦労だったなクラリッサ。家族のためとはいえお前には多くの無理難題や負担をかけてしまった」

クラリッサ

「とんでもありません。それより急なお話で驚きました。今回は戻ってこられないと思っておりましたから」

ラウラ

「ああ。本来なら戻ってくるつもりは無くレーゲンも修理が完了次第送ってもらうつもりだったが、家族から母国の者達との時間も大切にしろと言われればな」

クラリッサ

「そうでしたか。部下も喜びます」

 

クラリッサ・ハルフォーフ。彼女こそラウラが隊長を務める黒兎隊「シュヴァルツェア・ハーゼ」の副長である。

 

クラリッサ

「それにしても隊長、殿方や弟君がご無事で良かったですね!」

ラウラ

「…ああ。本当に良かった。心からそう思う…」

 

ふたりの無事をもう一度深く喜ぶラウラ。するとクラリッサが、

 

クラリッサ

「それで………つきましては隊長。殿方とは………その夜は?」

ラウラ

「? ああ一緒に寝た。生徒会長の指示でな」

クラリッサ

「!! な、なんと!そうですか!良かったです!いやー良かった!」

ラウラ

「お、おい!運転に集中せんか!」

クラリッサ

「はっ!も、申し訳ありません!…ああしかしまだ式も挙げられていないというのにもし先にそのような事にでもなれば私はどうしたら…!いやいやそんな事を言っている暇はないぞクラリッサ!一刻も早く必要なベビー用品や高名な産婦人科の情報を」

ラウラ

「おい何を言っている!産婦人科って一体なんの話だクラリッサ!」

 

何やら酷く興奮したクラリッサにもっと酷く困惑するラウラ。そしてそれは基地で迎えてくれた部下達も例外でなく…、

 

黒兎隊

「隊長!」

「ご無事の帰還なによりでした!」

「お久しぶりです!」

ラウラ

「お前達も元気そうでなによりだ!」

 

全員が笑って挨拶を交える。嘗て力こそが全て、という考えだった頃のラウラは部下達との交流を殆ど行わず、部下達も互いに必要以上干渉しておらず、それ故隊はチームらしい機能を殆ど発揮していなかった。しかし今のラウラは部下達とのやりとりを積極的に行っており、その雰囲気は以前とは全く違うものになっていた。

 

隊員

「隊長!殿方との仲はいかがですか!?」

「喧嘩等されておられませんか!?」

「もしなりそうでしたら失礼ながら殿方から謝られた方が夫婦長続きの秘訣!と先日御姉様かがテレビで見たと申しておりました!」

「夫婦喧嘩はシェパードも食わぬ、だそうです!」

ラウラ

「あ、ああ心配するな。私達の夫婦仲は至って良好だ。この婚約指輪がその証」

 

するとラウラは海之から贈られた左手薬指の指輪(婚約指輪は彼女の意見)を見せた。そしてその瞬間部屋の外にまで「おーーー!!」という声が響いた…。

 

 

…………

 

隊の者達と挨拶を済ませたラウラはそれから軍への報告を済ませ、基地内の自室で休んでいたのだが…、

 

ラウラ

「……はぁ」

 

何故か妙に元気が無かった。そんな様子をクラリッサが心配する。

 

クラリッサ

「どうされました隊長?もしや旅のお疲れが」

ラウラ

「ああ心配かけてすまんな、そんなんじゃない。…先ほど上層部への報告を済ませてきたのだが…逆にこちらへの質問の嵐だ。「男子操縦者と接触は順調か?」「それらのISをなんとかして知れないか?」とかな。しかも「レーゲンをここまでした相手はどんな能力だ?」とか「その科学者とコンタクトは取れないか?」とかそんな質問まで飛んできた。聞いた瞬間少し呆れたよ…。上は敵やテロリストまでスカウトでもする気なのか?とな」

クラリッサ

「……」

 

ラウラが少しどころか心底呆れている事をクラリッサは感じていた。

 

ラウラ

「……クラリッサ。お前には前に話しただろう?4年前の事。そしてVTSの事」

クラリッサ

「……ええ。4年前の織斑一夏の誘拐事件。そして我が祖国がVTSの研究・量産を計画していたという事実。……正直なところVTSについてはそれ程驚きではありませんでした。私は他の者よりも何年も前に生み出されたモデル…。隊の中では一番上の本質を知っているつもりでしたから…」

 

クラリッサがこういうのは訳がある。彼女や他の黒兎隊員達もまた、ラウラと同じ手法で作られた人造人間であり、純粋な人間では無い。中でもクラリッサはラウラやクロエよりも数年先に生み出された経緯があり、軍の事は彼女達よりも詳しい。それ故VTSの事を聞いてもあまり驚かなかった。因みにではあるがこのやり取りはラウラとクラリッサだけの秘密。更にクロエの事だけはラウラは軍には勿論、彼女にも黒兎隊にも話していない。それに悪気は感じてはいたがクロエを守るため、ラウラはこれからも話すつもりは無いと決めている。

 

クラリッサ

「しかしまさか我が祖国が誘拐にまで手を貸していたなんて…。しかも目的は織斑教官のデータ収集…。そんな事のためだけに教官の弟君を…。ですが何も証拠がありません…。疑う訳ではありませんが敵の偽情報という可能性は?」

ラウラ

「……いや、それは不思議と無い様に感じる…。確かに証拠もない事だが……あの時のあのオーガスと言う奴が言っていた事は…真実の様に思う」

クラリッサ

「……」

 

クラリッサの疑問は当然かもしれない。しかしラウラにはオーガスが嘘を言っている様には思えなかった。

 

ラウラ

「クラリッサ。以前までの私はこの国のために全てを捧げてきた。どんなに無能と蔑まれようとも侮辱を受けようとも。誰よりも強くなってこの国と民のために尽くすのが私の役目だと。だからオーガスやファントム・タスクの討伐という任務自体には今も全く疑問は無いし、絶対果たすべきだと思っている」

クラリッサ

「はい…」

ラウラ

「……だが、どうもスッキリせんのだ…。何なのだろうな…この気持ちは…」

クラリッサ

「隊長…」

 

ラウラの悩みにクラリッサは答えが出なかった。とそこへ別の隊員が入ってきた。

 

隊員

「失礼します!隊長、お客人が来られました」

ラウラ

「客人だと?…ああお通ししろ」

 

ラウラは客人を通すように伝えた。

 

「…久しぶりね。ラウラ」

 

すると少ししてそれらしい人物がラウラの名を呼びながら入ってきた。長身で赤い長い髪をなびかせ、眼鏡をかけている、ラウラと同じ位の年頃の少女。

 

ラウラ

「おおベルベット!久しぶりだ」

ベルベット

「…元気だった?」

ラウラ

「ああ、お前も元気そうで何よりだ」

 

少女の名はベルベット・ヘル。彼女はギリシャのIS操縦者のひとりであり、ギリシャにある特別IS訓練学校で学んでいた。国同士がヨーロッパ圏で近いという事もあり、ラウラとは合同訓練や国同士の交流で何度か面識があった。そしてある日の交流試合で戦って以来、互いの考えや人物像が似ている事から友人の様なライバルの様な交流が始まったのである。

 

クラリッサ

「ヘル代表候補。今日はどうしてこちらに?」

ベルベット

「たまたまドイツに用事が出来て折角だからと思って…。会えて嬉しいわ」

ラウラ

「私も同じ思いだ」

ベルベット

「今IS学園に行っているそうね…。頑張ってる?私と戦った時より実力は落ちてないかしら?」

ラウラ

「それを言わないでくれ。だが心配するな。私も強くなっているつもりだ。そういうお前こそギリシャのIS学校でトップクラスの成績らしいじゃないか」

ベルベット

「…ええまぁ」

クラリッサ

「ああそういえば忘れておりました隊長。彼女は先月、ギリシャの代表候補になられたんです」

ラウラ

「! そうなのか!お前ほどの実力なら必ず成しえると思っていた!」

ベルベット

「……ありがとう」

 

ラウラはその報告を聞いて喜ぶ。だが当のベルベットはあまり嬉しそうではなかった。

 

ラウラ

「…?どうした?あまり嬉しくなさそうだが」

ベルベット

「……」

ラウラ

「……何かあったのか?」

 

するとベルベットは答えた。

 

ベルベット

「…ラウラ、私の前のギリシャ代表候補が誰か知ってる?」

ラウラ

「ベルベットの前……!!」

クラリッサ

「…そうです隊長。彼女の前のギリシャ代表候補、フォルテ・サファイアは先々月、テロ組織のファントム・タスクに下った事で彼女は代表候補を除籍されました」

ベルベット

「その後釜に来たのが私という訳」

ラウラ

「…それは…すまなかった」

 

ラウラは謝罪した。ベルベットが代表候補になったのは彼女の実力ではなく空席を埋めるためのものだったのかと思ったからだ。しかし、

 

ベルベット

「…あらラウラ、もしかして気にしてるの?私は大丈夫よ、何も悲しくない。寧ろ逆よ」

ラウラ

「…逆?」

ベルベット

「ええ。…そう言えばラウラ、貴女には言っていなかったわね。…私ね、実は前代表候補のフォルテ・サファイアとは知り合いだったの。彼女とは互いに競い合い、共に祖国を守ろうって約束したわ。だからフォルテが代表候補になった時は私も嬉しかった…」

ラウラ

「……」

 

するとベルベットの口調が怒りを含み始める。

 

ベルベット

「でも…フォルテは、そんな祖国を、私達を裏切った!よりにもよってテロリスト等に手を貸した。あの一件で祖国がどれほどのダメージを受けたかわかる?」

クラリッサ

「…今は少し落ち着いていますが…確かに当時のギリシャへの誹謗中傷は結構なものでした…。テロリストを代表候補にしていた国とか…」

ベルベット

「…ええ。フォルテの件があってから祖国は汚名を晴らすためにIS関連の研究や操縦者への訓練にこれまで以上に力を入れ始めたわ。当然私がいた訓練校にもね…。中にはその凄まじさに脱落した者もいた…」

ラウラ

「……」

ベルベット

「…でもねラウラ、私は逆だった。私や祖国、仲間を裏切り、誇りを傷つけたフォルテに対しての怒りが私にこれまで以上に力を与えた。必死に頑張って…そしてたった一ヶ月で代表候補にまで上り詰めた。そう、私の代表候補入りは決して空席を埋めるためじゃない。努力の末なのよ」

ラウラ

「ベルベット…」

ベルベット

「……でも駄目、こんなものじゃ足りない。もっと…もっと強く、国家代表、いえそれ以上に強くなる。フォルテもファントム・タスクもこの手で倒すために!」

ラウラ

「…!」

 

ラウラは感じていた。ベルベットの本気を。そして彼女の中の凄まじい憎しみと怒りを。そんな彼女にラウラは言った。

 

ラウラ

「……違う」

ベルベット

「…え?」

クラリッサ

「隊長…?」

ラウラ

「お前の怒りはよくわかるつもりだ…。ギリシャや仲間を裏切ったフォルテ・サファイアへの怒りは…よく」

ベルベット

「ありがとうラウラ…。でも安心してちょうだい、貴女に協力を願うつもりはない。これはギリシャの」

ラウラ

「違う!」

ベルベット・クラリッサ

「「!!」」

 

ラウラの声にふたりは驚いた。

 

ラウラ

「これは、これはそんな単純な問題では無いのだベルベット!ギリシャだけの問題ではない!皆で力を合わせなければファントム・タスクは決して倒せん!奴らは強い!私も何度か戦った事があるからわかる!」

ベルベット

「……」

ラウラ

「それに…お前はフォルテ・サファイアを怒りと憎しみで倒そうとしている。だが…それは違うと思う。うまくは言えんが…彼女はお前の友で同士だったのだろう。そんな簡単に切り捨てていいのか?怒りのままただ倒して良いのか?もっと…大事なことがあるのではないのか?」

クラリッサ

「隊長…」

 

ベルベットは黙ってラウラの言葉を聞いていたがやがて口を開く。

 

ベルベット

「…変わったわね…貴女。そして……弱くなった」

ラウラ

「…何だと?」

 

ラウラは自分が弱くなったというベルベットの言葉に反応する。

 

ベルベット

「以前の、日本に行く前の貴女は誰よりも力を望み、強くなる事を目指していた。ただひたすらに。そのあまり近寄りがたい一匹狼という感じで誰も近寄らせない、人格的には色々問題があったかもしれないけど…でも私はそんな貴女を少し尊敬していた…」

ラウラ

「…お前が…私を?」

 

予想だにしない言葉にラウラは驚く。

 

ベルベット

「…でも今の貴女は違う。あの時感じた様な魅力がない。力を合わせる?裏切り者を憎むな?…以前の貴女からしたら考えられない言葉だわ。大した心変わりね。そんな心で国を守れるとは思えないわ。IS学園というのは人を腑抜けにする場所なのかしら?」

ラウラ

「!」

クラリッサ

「ヘル代表候補!我らが隊長に些か無礼ですぞ!それに隊長は現ドイツ代表候補でもあるのだ!」

 

クラリッサは憤慨するがベルベットは止めない。

 

ベルベット

「代表候補ならば尚更国の事を第一に考えたらどうなの?…私はギリシャの誇りを傷つけ裏切ったフォルテを決して許さない!どんな手を使っても必ず見つけ出して倒す!助けなどいらない!また裏切られるかもしれない目にあうのはゴメンだわ!」

 

ベルベットの決意は変わらない。するとラウラが再び訪ねる。

 

ラウラ

「……ベルベット。もしフォルテ・サファイアを見つけて倒したとしてその後はどうする?」

ベルベット

「……決まっているわ。国家への反逆として…抹殺もあり得る。国も認めている」

ラウラ

「お前はそれで良いのか!?」

ベルベット

「フォルテもそれを覚悟している筈よ!……貴女は口を出さないで。これに関しては私達ギリシャの問題よ」

 

ベルベットは無理やり話を止めさせようとする。するとラウラは、

 

ラウラ

「……クラリッサ、訓練場使用許可の申請を頼む」

クラリッサ

「…え?」

ラウラ

「今のお前を放っておけば…いつか必ず取り返しがつかない過ちを犯す。そう感じるのだ」

ベルベット

「…じゃあどうするの?」

ラウラ

「…ベルベット。お前先程私が日本に行ったせいで弱くなったと言ったな?…ならばそれが正しいかどうか、試してみようではないか。もしお前が勝てば…私はお前の邪魔はせん。どうしようがお前の好きにするがいい。但し私が勝てば…先程の言葉の訂正と共に、私の話を聞いてもらう。どうだ?」

クラリッサ

「…隊長…」

 

ラウラは真剣な眼差しでベルベットに試合を申し出た。

 

ベルベット

「……良いわ」

 

ベルベットはラウラの挑戦を受けた。

 

ベルベット

「でも言ったらなんだけど貴女に勝てるかしら?日本に行く前から貴女は私に負け越していた。しかも私はこの数ヶ月自らに凄まじい特訓を与えた。自分で言うのもなんだけど以前の比ではないわよ?」

ラウラ

「それは私も同じつもりだ。それにもし私ごときに敗れる様ではファントム・タスクを倒すなどできんからな」

ベルベット

「…結構」

 

 

…………

 

それから約一時間後、基地内の訓練場にてラウラとベルベットの非公開試合が行われていた。

 

ラウラ

「おおおお!」ドゴオォォン!

ベルベット

「はあああ!」ガキィィィン!

 

ラウラのパンチラインとベルベットが持つ槍が激しくぶつかる。

 

ベルベット

「接近戦は上手くなったわね!噂に聞いたその武器!凄いパワーだわ!」

ラウラ

「そういうお前も!以前より随分槍の腕が上がっているぞ!」

ベルベット

「言った筈よ。腕を上げたって。そして…まだ私の方が上ね!」

 

ガキィィィン!

 

ラウラ

「くっ!」

ベルベット

「この攻撃…避けきれるかしら!」

 

ズドドドドドドドドドドドン!!

 

ベルベットのISの脚部から無数のミサイルが発射された。

 

ラウラ

「! まずい!」

 

ラウラは圧されていた。ラウラの戦闘技術はアンジェロ達やDIS達との戦いの経験で間違いなく上昇していた。しかし先のやりとりにあった通り、ベルベットもまた怒りや執念を成長の糧とし、成長しているのであった。

そして何よりも大きいのはISの相性の悪さであった。ラウラのISはレール砲やカノン、パンチラインと威力はあるが直線的、一対一の戦いを得意とする機体。対してベルベットのIS「ヘル・アンド・ヘブン」は炎と氷を操り、巨大な槍と無数のミサイルを装備した機体。高い火力と相手を包囲しながら攻撃でき、対複数が得意な機体。勿論一対一もできる。ラウラには不利な相手であった。

 

ラウラ

「…そこだ!」ズドン!!

 

ミサイルの隙間からカノンを撃つラウラ。

 

ベルベット

「遅い!」

 

ビキキキキ……ガガガガン!!

 

ベルベットは自分の前方にグレネードを発射し、爆発させた。すると瞬時に氷の盾が形成され、ラウラの攻撃は防がれた。

 

ラウラ

「! グレネードの爆発と同時に氷の壁!?冷凍兵器か!」

ベルベット

「これはフォルテのISの機能と同じ氷を操る力の一部。同じ力で倒されるなら彼女も満足でしょう?」

ラウラ

「くっ!流石はベルベット!」

ベルベット

「そう言えば貴女、ヴォーダン・オージェはどうしたの?一時的といえあれを使えばもっと強くなれるんじゃないの?」

ラウラ

「!…あれはもう使わない。あれは昔の私の象徴。私はもう、あの時の私には戻らない!!」

ベルベット

「そう…ならばこのまま倒れなさい!」ゴォォォォ!…ズドン!!

 

ベルベットは自らの槍に炎を纏わせ、投擲してきた。透かさずラウラは避けるが、

 

ギュンッ!

 

ラウラ

「! 炎の槍が追尾を!」ズガァァァン!「うわあああ!!」

ベルベット

「そこ!」ズドドドドドッ!

 

炎の槍を喰らい態勢を崩すラウラにベルベットの氷のミサイルが迫った。

 

ビキキキキキキキキキッ!

 

ラウラ

「!!」

 

ラウラは驚いた。自らのカノンが氷付けされていたのだ。

 

ラウラ

「ちっ!ミサイルまで凍らせるとは!」

ベルベット

「これでお得意の射撃は使えないわね。……どうやら本当に弱くなってしまった様ね。私が覚えている限り…、前の貴女の方が強かったわよ。日本で随分ぬるま湯に浸かっていた様ね」

 

ラウラに凄まじく責めるベルベット。しかし、

 

ラウラ

「……ふ」

ベルベット

「…?」

ラウラ

「私がぬるま湯に浸かった?…それは大きな間違いだぞベルベット。私はIS学園で人として一番大事な事を学んだ。そして何よりも強い力を得ることができた。想いや信頼、仲間、そして家族という力を!」

ベルベット

「! そう…なら教えてあげるわ。そんなものだけでは何も成し遂げられない。何も守れはしない。何を為すにも、例え裏切られても、それを打ち破る強大な、何にも負けない力が必要という事を!」

 

ズドドドドドドドドドンッ!!

 

ベルベットは再び無数のミサイルをラウラに向けて発射した。

 

ベルベット

「貴女の武器ではこれら全ては防げない!例えAICを使おうともその瞬間私の槍で……!?」

 

ベルベットは驚いた。ラウラの左手が…光を放ち始めた。

 

ラウラ

「私も多くの戦いを経験した!力で応えろと言うなら私も力で応えよう。仲間から託された新しい力で!!」

 

 

ズドドドドドドドドド!!

ボガガガガガガガガガン!!

 

 

ラウラの左腕から放たれた光の雨が全てのミサイルを撃ち落とした。それはアルテミスのレインであった。

 

ベルベット

「あ、あれだけのミサイルを一度に!?」

ラウラ

「はああああ!」ドン!

 

ラウラはアルテミスにエネルギーをチャージしながらベルベットに向かう。

 

ベルベット

「! 正面から!?撃ち落とされたいの!」ドドドドン!

 

ベルベットは再びミサイルを撃つ。その全てがラウラに向かう。

 

ラウラ

「今だ!」

 

ジャキッ!…ズドオォォォォン!!

 

ベルベット

「! 腕の武器を後ろに撃って推進力に!」

 

アルテミスのスフィア発射の勢いのままアルテミスからパンチラインに切り替え、ブレイクエイジのブースト機能で一気に接近するラウラはそのままミサイルを掻い潜り、

 

ラウラ

「おおおおお!!」

ベルベット

「! くっ!」

 

ブレイクエイジを撃ち込む。避けきれないと感じたベルベットは槍で受け止めようとする。

 

 

ドゴオォォォォ!!……バキィィィン!!

 

 

だがよりパワーが加わった事で更に威力が増したパンチラインが槍の持ち手を折った。

 

ベルベット

「なっ!?」

 

狼狽えるベルベット。そんな彼女にラウラは言った。

 

ラウラ

「同じだ。お前は…お前はあの時の私なんだ!」

ベルベット

「何ですって!?」

ラウラ

「お前の言うとおりだ。あの時の…IS学園に入ったばかりの頃の私は力への欲望、そして憎しみで埋め尽くされていた。掌を返して私を蔑んだ者達。教官を奪い、名誉を汚したと思いこんだ一夏。そして私を簡単に倒した海之や火影に!」

 

ラウラは続けざまビーム手刀で斬りかかる。ベルベットは短くなった槍を剣の様に持ってそれに対抗する。

 

ガキキキキキキン!

 

ベルベット

「くっ!さっきより速い!?」

ラウラ

「だが…私はあいつらに、ふたりに教えられた!出会わなければ恐らく今も気付かなかった!ただただ恨み、何時までも力を追い求める醜い姿になっていた事に!今のお前がそれだベルベット!」

ベルベット

「! 黙りなさい!貴女に、貴女に何がわかるっていうの!信じていた友に裏切られた私の気持ちを!」

 

ズドドドドド!!…ボカァァァァン!!

 

超至近距離でミサイルを撃つベルベット。その勢いで離れるふたり。

 

ラウラ

「ぐっ!なんとなくわかるさ。私も裏切られたからな、一番信じていた「力」そのものに。だがその先で私は光を見つけた!仲間という光を!お前にも見える筈なんだベルベット!そして嘗ての友を信じられないというなら…私を信じろ!」

ベルベット

「!!」

 

ベルベットに必死に伝えようとするラウラ。

 

ベルベット

「……………ならば」

ラウラ

「……」

ベルベット

「ならば私にそれを見せて。貴女が正しいのなら、私も撃ち破れる筈よ。互いの次の一撃で……決めましょう」

ラウラ

「!……ああ!」

ベルベット

「もう一度言っておくけど負けてあげる気なんて塵ほどもないわ。私の信念にかけて!」

 

ベルベットは手に持つ槍に炎を纏わせた。本当に次で最後にするらしく、強力なエネルギーを感じるラウラ。しかし、

 

ラウラ

「……ならば私は私の信念を持ってそれを折る!」

 

ラウラはパンチラインにエネルギーをチャージする。……そして、

 

 

ドン!!ドン!!

 

 

ベルベット

「ラウラーー!!」

ラウラ

「ベルベットーー!!」

 

互いの想いを込めた攻撃がぶつかった…。

 

 

…………

 

試合後、ベルベットは休憩室でひとり休んでいた。

 

ベルベット

「……」

 

と、そこにラウラが入って来た。

 

ラウラ

「ベルベット」

ベルベット

「…ラウラ。……お疲れ様」

ラウラ

「ああお疲れ様」

 

ラウラはベルベットの隣に座る。

 

ベルベット

「…良い試合だったわ。……強くなったわねラウラ」

ラウラ

「…いやまだまだだ。家族がくれた武器が無ければ危なかった。寧ろお前だ。お前が言った通り以前とは比較にならんかった」

ベルベット

「言ったでしょう、己に厳しくしたって。……でもそんな私を貴女は倒した。……家族や仲間。それが今の貴女の強さの理由という訳ね」

ラウラ

「…ベルベット。前の私はひとりで何でもやろうと思った。人を信じきれず、誰にも頼らず、ひたすらに力を追い求めた。そうすれば誰よりも強くなれると信じていた。…でも違ったんだ。本当に大切なものは何か、何が自分にとっての強さなのか。それがわかれば正しく、もっと強くなれる、と」

ベルベット

「……」

 

ベルベットは黙って聞いている。

 

ラウラ

「ベルベット。周りが信じられないなら…私達を頼れ。ひとりで無理でも、皆で力を合わせればできる事もある筈だ」

ベルベット

「ラウラ…」

 

ラウラは真っ直ぐ強い眼差しでベルベットを見つめる。

 

ベルベット

「……やっぱり貴女強くなったわね。謝罪するわ、酷い事を言ってご免なさい」

ラウラ

「家族や仲間のおかげだ」

ベルベット

「貴女の言葉覚えておくわ。………でも、私はやっぱりフォルテを許すことは簡単にはできない。………ただ、もし今度彼女に会う機会があれば…その時は戦うだけじゃなく…話したいと思う」

ラウラ

「…ああそれが良い」

 

ふたりは約束した。…するとベルベットが、

 

ベルベット

「そう言えば言い忘れていたわラウラ。…私ね、代表候補になった事で今月からIS学園に転入するの。多分貴女と同じ学年の筈よ」

ラウラ

「本当か!?それは嬉しいぞ、一緒に学べるんだな!これは益々私も頑張らねば。来たら今度家族や仲間も紹介しよう」

ベルベット

「ありがとう。……ところでラウラ、貴方が自分を変えてくれたという家族ってどんな人?」

ラウラ

「ああ海之と火影か。良い奴らだぞ。そして私等よりも遥かに強い。私の自慢の嫁と弟だ。ああ因みに海之が嫁だ」

ベルベット

「…?なぜ嫁…まぁいいわ。……海之、貴女がそこまで言う人。どんな人か……非常に興味あるわね…。是非会ってみたいわ…ふふ」

 

ベルベットは少々悪戯気に笑みを浮かべて言った。その笑顔にラウラは酷く慌てた。

 

ラウラ

「! だ、駄目だぞベルベット!幾らお前でも海之に手を出す事だけは許さん!」

ベルベット

「あら?さっき頼りたい時は頼れって言ったじゃない」

ラウラ

「それとこれとは別問題だー!!」

 

今日一番大きいラウラの声が響いた…。

因みに今月、ベルベットの言った通り彼女はIS学園に転入してきた。ラウラは喜んだがその一方、彼女が海之と親密にならないか、暫しずっとハラハラしているのだった…。




※次回は来月5日(土)の予定です。

すみません。前回書かせていただいた通りパソコンの問題で編集作業が遅れて今回は一話のみです…。年末という事で修理に時間がかかるらしく、コツコツと進めております。
お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが次回はロランの回。それが終わればいよいよ火影と海之の正体編です。
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