IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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これはスメリアから日本に帰国した後日の箒のお話です。


※お気に入りが500に到達しました!ありがとうございます。


Extramission14 箒の大変な五日間

IS学園 アリーナ

 

 

「…ハァ~、どうしてこうなったのか…」

 

学園内にあるアリーナのひとつ。ここであるふたりの訓練が始まろうとしていた。ひとりは箒、ため息を吐いて何やら元気無さげである。そして箒に相対するのは、

 

 

銀髪の少女

「さぁ!始めようじゃないか箒!私達の激しい情熱の舞を!」

 

 

……まるで好きな人とダンスをする様に喜ぶ銀髪の少女だった。一体何がどうなってこうなったのか…?

 

 

…………

 

五反田食堂

 

 

詳しくは数時間前まで遡る。

冬期休暇も残り一週間となった月曜の昼頃、箒と一夏はここに食事に来ていた…。

 

「…うん、やはり美味しい。お前達のお父上は相変わらずいい仕事をしておられるな蘭、弾」

「ありがとう箒さん」

「そう言って貰えたら親父も嬉しいだろうぜ」

 

名物である業火野菜炒めを堪能する箒。その横で、

 

一夏

「……」

 

一夏は真っ白になって伸びていたのであった。

 

「あ、あの…一夏さんどうされたんですか?」

「千冬さんからの反省文100枚を徹夜込みの2日で書き終えてな。まぁ簡単に言えば燃料切れだ。ほら一夏、早く食べないと冷めるぞ。炒め物は冷めたら旨さが半減する」

一夏

「我が生涯に一片の悔い…………いや滅茶苦茶あるな」

「あんのかよ。そういや今日火影らは一緒じゃねぇのか?」

「ああ、誘ってみたんだが今日は無理とのことだ。他の皆は土曜日に帰ってくるとな」

 

そんな感じで和やかに過ごしていると、

 

ガララッ

 

薫子

「やっぱりここにいたー!見つけたわよ箒ちゃん♪」

 

店の扉が開いた途端箒を見つけて喜ぶ人物が。それは以前彼女らに写真モデルを頼んだ黛薫子であった。

 

「…黛先輩。お疲れ様です。どうしてここに?」

薫子

「ふふん♪私の情報網を甘くみてもらっては困るわね。貴女達が学園以外によく出没しているのがここと馴染みの喫茶店だってことは知ってたのよね~♪」

「出没って…珍動物じゃないんですから…」

一夏

「…てか繰り返しっすけど黛先輩、どうしてここに?」

「失礼ながら……なにか嫌な予感がするんですが?」

 

以前の写真撮影が思い出される箒。するとそんな箒に薫子はこう言った。

 

薫子

「そんなに心配しなくて大丈夫よ~。ただ単に箒ちゃんに舞台のヒロインをお願いしたくて来ただけだから~」

 

「…えぇ!」

一夏

「箒が…?」

「舞台のヒロインに?」

「……どこが大丈夫なんですかー!!」

 

お昼時の店内が箒の声にぎょっとした雰囲気になった……。

 

 

…………

 

その後、他の客がいなくなったので事情を聞く事にした一夏や箒。

 

一夏

「……つまり簡単に訳すると、黛先輩のお姉さんの友達が主宰する劇団がいて、その劇団の重要な役の人が公演数日前に誤って怪我しちゃって出れなくなった…」

「んで困っていた所たまたま前に一夏達が載った週刊誌を見て……」

「主役の人が箒さんを見て一目惚れした…?」

薫子

「ビンゴ!私も聞いただけなんだけどお姉ちゃんの友達が女性だけの劇団をやってるんらしいんだけどね?今回肝心の大役の人が急に怪我して出れなくなっちゃったのよ~。それで代役をどうしようかって困り果ててた時に主役の子が箒ちゃんの写真を見てね、ビビっと来たらしいのよ~。箒ちゃんどうかな~?」

「そそそ、そんな事言われても私にそんな事できる訳ないでしょう!この前の様な写真撮るだけとは訳が違いすぎますよ!」

薫子

「うーん私も最初はそう思ったんだけど…主役の子が全然引いてくれないのよ~」

 

すると次の質問で更に驚く事に。

 

「あの…因みになんすけど公演って何時すか?」

薫子

「あはは…それがね、……今週の土曜日」

「! こ、今週の土曜って事は今日は月曜日だから…」

「もう一週間無いじゃないですか!尚更無理ですよ!」

薫子

「うーんそれを言われるときついんだよね~。学校は幸い来週の月曜開始だけど…流石に今回は難しいかな~…」

 

言われて薫子も段々自信が無くなってきたのか弱気になり始める。するとそこに、

 

ガラッ!

 

「君ならできる箒!!」

「!?」

 

店内に箒の名を呼びながら入って来た者がいた。銀髪でオレンジ色の瞳をした自分達と同い年位の少女。その少女は入ってくるやいなや箒の手をガシッとつかみ、

 

少女

「私の目に狂いは無い!私は確信している!君なら必ず輝ける花になることを!」

 

ものすごい眼力で箒の目を真っ直ぐ見ながら力を込めて話す少女。

 

「……え、え?」

一夏

「な、なんか凄ぇ人来たな」

「俺も初めて見るタイプだぜ」

「…あの、ステージって事はもしかしてこの人」

 

すると薫子は言った。

 

薫子

「ええ彼女がさっき話した舞台の主役を勤める人なの。もうロランさん外で待っててくださいって言ったじゃないですか~」

ロランと呼ばれた少女

「すまない、速く箒に会いたいという私の衝動が抑えられなかった。許してくれたまえ」

「貴女が主役…って、とりあえず手を離してもらえると助かるんですが?」

ロラン

「ああ私とした事が。…非常に名残惜しいが仕方ない」

 

そう言って箒から手を離す少女。

 

「あ、あの…、貴女が黛先輩が言ってた劇団の?」

ロラン

「ああそうさ美しい蕾よ。自己紹介が遅れてすまなかった。ロランツィーネ・ローランディフィルネイ。皆からはロランと呼ばれている。覚えておいてくれたまえ」

「…ローラン…ディフィルネイ……!」

一夏

「なんか凄い名字だな?」

ロラン

「おお、君があの織斑一夏か。噂は聞いているし週刊誌でも拝見したぞ。フム、悪くはないが優雅さでは箒にまだまだ敵わんな」

「そ、そんな事ないです!一夏さんも優雅でした!私も混ざりたいくらいに!」

「いやお前が返してどうすんだよ蘭…」

ロラン

「ハッハッハ!…さて、話は戻そう。今回私達がやろうとしている舞台はかなり大胆な挑戦を兼ねたものでね。ISを取り入れた劇なのだよ」

一夏

「…ISを使って劇、すか?」

ロラン

「そうさ!オープニングとエンディングでISを使って空中ダンスをするのさ。私が所属している劇団にはISを操縦できる者がいてね。今回世界で初めてやってみるのさ!」

「ISでダンスを…」

「あぁそういや駅前の電光掲示板にそんなん書いてたような気がするな」

一夏

「俺らスメリア行ってたのと反省文で知らなかったぜ」

ロラン

「しかし、ああしかし!不幸な事にその肝心の花役、ISを使う者のひとりが公演直前で怪我をしてしまったのだ…。ああなんという悲劇…!代役にたてられそうな者も他にいない。正に八方塞がりだったのだ。……だが!そんな私の前に美しい蕾が舞い降りた!」

「舞い降りたというか雑誌見ただけじゃ…?」

ロラン

「ちっちゃい事は気にするな♪直ぐに記事の編集会社に問い合わせた!この美しい蕾はどこにいるのか、なんとか連絡取れないかと!」

一夏

「そんで紹介されたのが黛先輩だったと?」

薫子

「そう言う事なんだよね~」

「で、ですが私にそんな事出来るわけないですよ!しかも本番までたった5日しか無いのに…」

ロラン

「それについては大丈夫さ。箒がやるのはあくまでもダンスパートだ。台詞はない。つまりダンスの形さえ覚えてくれれば良い。当然私や私達のティーチャーが付きっきりで教える。今IS学園は冬期休暇中だからな。時間もたっぷりある」

「な、なんでそれを?い、いやそれは関係ないか。た、確かにそうですが…で、でも私ダンスなんてやった事無いですし…」

一夏

「でも神楽舞とかしてるじゃんか?」

 

…この時箒の心に一瞬だけだが一夏への殺意が生まれた。

 

ロラン

「なんと!それは誠か!これは益々運命を感じるではないか!」

 

全くロランは引く気が無いようだ。

 

(一夏ぁぁ余計な事をぉぉ…。う~、こんな時に海之や火影がいれば上手くフォローしてくれるのに~…)

 

そんな事を考えている箒。すると、

 

「……私は」

「どうした蘭?」

「私は…見たいです、箒さんの芝居」

「ら、蘭!何を言って」

「だって篠ノ野博士はISを宇宙開発、世界に役立てる為に作ったんでしょう?私もISを幾らか勉強しましたから知ってます。そして今回ロランツィーネさん達はISを使う劇で沢山の人を感動させようとしてる。それを博士の妹の箒さんがやる。とても良いことじゃないですか。だから見てみたいです」

「蘭…」

 

この言葉には箒も一瞬、はっとした。

 

一夏

「うーん……そう言われてみや確かにそんな気もすっけどな。台詞とかも要らねぇんだったら…できねぇ事はねぇんじゃねぇかな箒?」

「俺も見てみたいぞ箒。それに蘭の言うとおり博士の妹の箒だからこそ価値がある気がするしな」

「一夏、弾…」

薫子

「やってみない箒ちゃん?皆こう言ってるし。私は言い出しっぺだけど」

ロラン

「君なら必ず立派な一輪の花を咲かせる!私が保証する!」

 

全員から激励を受けた箒。そして、

 

「う~~……、わ…わかりました…」

 

箒は遂に了承するのだった。

 

ロラン

「そうか!引き受けてくれるか!ありがとう箒!私は必ず受けてくれると信じていた!」

 

再び箒の手を握って喜ぶロラン。

 

「で、でも本当にしっかり教えて下さいよ!やるからには私だって失敗したくないですから!」

ロラン

「もちろんだ!さてそれでは早速行こうか!」

「い、行くってどこに?」

 

ロランは箒の手を取りながら、

 

ロラン

「決まっている!IS学園のアリーナだ!本来の会場はキャノンボール・ファーストが行われた会場だがあそこは既に準備が始まっているからな!」

一夏

「が、学園すか?」

「そんな無理ですよ!あそこは部外者は入れないんですから!」

 

するとそんな箒の言葉に、

 

ロラン

「ん?私は部外者ではないぞ?立派な関係者だ」

全員(薫子以外)

「「「…え?」」」

薫子

「あ、そう言えば言い忘れてた」

 

するとロランは女優の様に立ち振舞いながら答えた。

 

ロラン

「改めて名乗ろう蕾達よ!ISオランダ代表候補、ロランツィーネ・ローランディフィルネイ。三学期からIS学園に転入するのだ。宜しくお願いする!」

 

 

…………

 

…と、いう出来事があり、今こうして箒とロランは相対しているのであった。客席には一夏と蘭、弾。そして話を聞いた千冬と真耶もいた。

 

「それにしてもロランさんがまさかIS操縦者、しかも代表候補だったなんて…。最初に教えて下さいよ…」

ロラン

「いやいやすまなかった。箒の下に馳せ参じたいという気持ちが高まりすぎて忘れていた」

「公演の延長ができないというのは新学期が始まるからだったんですね…。それにしても小手調べと言いましたがいきなり実践ですか?」

 

ロラン

「箒の今の動きや優雅さ、それを知るにはこうするのが一番手っ取り早いだろう?それによって今の君に必要なものを知る。何しろ本番まで時が無いからな!」

「は、はぁ…」

 

ロランの言葉に空返事する箒。

 

ロラン

「さぁそれでは始めよう箒!私達の舞を!」ドンッ!

 

そう言いながら上空に昇るロラン。彼女のIS「オーランディ・ブルーム」は所々に緑色の宝石があるオレンジ色主体のカラーリングで、花を思わせる様なスラスターが優雅だった。

 

「速い…!…でもこれなら!」ドンッ!

 

箒も追いかける。しかし、

 

ギュンッ!

 

止まっていた場所から更に引き離すロラン。

 

「! くっ!スピードが上がった!?だがまだ!」

 

箒も必死に付いていく。やがて数秒ほど遅れて追い付く。するとまたロランが離れ、箒が再び付いていく。そんなジグザグ飛行をある程度続けた後、

 

ロラン

「ふむ、直線移動は問題ないな。次はアクロバットをしよう。私の動き方と同じ動きをしながら付いてきたまえ!」

「は、はい!」

 

そう言いながらロランはループ、スクリュー、スライド等、まるでジェットコースターの様な様々な動きをタイミングをバラバラにしてみせる。箒は苦労しながらもこれまでの経験や訓練を生かし、必死に付いていく。そんなふたりの動きを見ていた一夏達は、

 

「やっぱスゲーなISって。こんな間近で見たのは初めてだぜ」

「ロランさん流石代表候補なだけありますね。それに箒さんも負けてないです」

千冬

「……ロランツィーネ、か」

真耶

「流石ですね…」

一夏

「…?」

 

一夏が疑問符を浮かべている時、上空ではロランに箒が追い付いていた。

 

ロラン

「ふむ、流石だな箒!普通はこれ程の動きを連続ですると加速酔いをするものだ」

「は、はは…。ありがとうございます。訓練の賜物です」

ロラン

「では今度は実際に撃ち合っての動きを見てみようではないか。但しひとつ条件として攻撃は回避のみだ。剣で切り払ったりは良いが盾等で防御はしない。良いな?」

「は、はい!」

ロラン

「ああそれから…私には今後丁寧に話す必要は無いぞ?同学年だしな。どうか友人として、いつもの箒で付き合ってくれ!」

「あ、ああわかった。ロラン」

 

~~~

すると箒にプライベート通信で千冬から連絡があった。

 

千冬

(篠ノ之、聞こえるか?)

「千冬さん?」

千冬

(いいか良く聞け。…決して気を抜くな。全力でいけ。下手をすると怪我ではすまんぞ)

「…!は、はい!」

(…千冬さんの言葉…、真剣だった…)

 

箒は緊張を取り戻した。

 

ロラン

「では行くぞ!ロランツィーネ・ローランディフィルネイ!…参る!」ドンッ!

 

ロランは真っ直ぐ箒に向かう。

 

「正面からむか…!!」

 

キィィィン!!

 

気が付くと…ロランの持つ細身の剣による突きが箒に既に繰り出されていた。動体視力でなんとか雨月で防ぐ箒。

 

ロラン

「やるな箒!私の一の突きを止めるとは!」

(み、見えなかった…。気付いた時には剣が突き付けられていた…)

ロラン

「では…これならどうだ!」

「!!」

 

ズババババババババッ!!

 

ロランの凄まじい突きの連打が繰り出される。箒は雨月と空烈でなんとか応戦するが、

 

ガキキキキキンッ!

 

「ど、どこから剣が繰り出されるかわからない!」

ロラン

「コレが我が師直伝の剣!」

 

その様子は一夏達も見ていた。

 

一夏

「な、なんて速さだあの人の剣…!」

「凄い!」

「代表候補だからじゃねぇのか…?」

 

一夏達もロランの剣さばきに驚いている。すると千冬が、

 

千冬

「…あの剣さばき、そして剣速…。流石はレミリアの妹だな…」

一夏

「…千冬姉、あのロランて人の事知ってんのか?それにレミリアって?」

 

一夏は千冬に尋ねた。

 

千冬

「…ハァ。真耶、教えてやれ」

真耶

「…レミリア・ローランディフィルネイ。オランダの名家、ローランディフィルネイ家当主にして、前オランダ代表。第一、二回モンドグロッソで先輩と剣の部の決勝を戦った方。そして…ロランツィーネさんのお姉さんです」

一夏

「な、何だって!」

「前オランダ代表!?」

千冬

「レミリアは第二回大会の後、家を継ぐ為に代表を退いただけで実質実力は今もそれほど衰えていないだろう。妹のロランツィーネは剣でなく舞台の方を選んだが…あの剣筋は彼女を彷彿とさせる。きっと教えを受けているのだろうな」

「どおりで強い訳だ…」

千冬

「五反田兄妹はともかく一夏、お前はそれ位知らんのか全く…。明日から補習してやろうか?」

一夏

「すいませんマジ勘弁してください。……それにしても箒の奴圧されてるな…」

 

一夏の言うとおり、箒はロランの早撃ちになんとか対処しながらも防戦一方であった。

 

ズババババババババッ!

ガキキキキキンッ!

 

「くっ!火影や海之程では無いがなんて素早く滑らかな動きの剣だ!」

ロラン

「ありがとう箒!しかしどうした、君の力はそんなものかい?君とて剣を学ぶ者の筈だ!本気の君を私に見せてくれたまえ!」

 

そう言いながら続けざまに激しい剣の嵐を繰り出すロラン。離れても、

 

ズドドドドドドドッ!

 

彼女の剣は銃剣の役割も果たしているらしく、素早い早撃ちによるレーザーが繰り出される。

 

「射撃も速い…!このままじゃ…」

 

するとそこに、

 

一夏

(箒!)

「…一夏!?」

 

今度は一夏が箒にプライベート通信をしてきた。

 

一夏

(頑張れ箒!入学したばかりん時の俺を鍛えてくれた様な根性を見せてやれ!)

「一夏…」

一夏

(お前は束さんを助けたいんだろ!こんな事位で負け腰になってどうする!お前の力を見せてやれ!)

「!」

 

(恐怖を受け入れた時、呼吸と心は乱れない)

 

(自分にできる最善を尽くす事だ)

 

「!!」

 

……パァァァァァ…

 

ロラン

「…む!」

「…そうだったな…」

 

 

…………

 

……先日のスメリアでの朝練の時の事。朝練が終わった後、箒はふたりに話しかけた。

 

「……なぁ火影、海之。お前達は怖いと思った事はあるか?」

火影

「ん?」

海之

「なんだ急に?」

「…正直に言おう。…私はあの白いアンジェロやあの巨大な存在を前にして敵わないかもと思った時…恐れを抱いた。殺されるかもしれない、誰も守れないのか、と…。…悔しかった、私はなんて勇気がないのだと…お前達の様に…どんな相手にも臆する事なく向かっていけ、諦めない勇気が無いと…。だがら…お前達が羨ましいと思ってな…」

 

箒は自分より強い存在を前にするとつい弱気になる事が多いと告白した。そんな彼女にふたりは、

 

火影

「……箒、それは違うぜ。」

「…え?」

火影

「勇気ってのはどんな奴にも恐れず向かっていく様なそんな単純なものじゃねぇ。そんなもんは虫と同じだ」

海之

「本当の勇気とは怖さを知ること、恐怖を我が物とする事だと思う」

「怖さを…恐怖を我が物に…?」

火影

「自分より強い奴を怖がんのは当たり前さ。しかしその恐怖を受け入れた時、まず呼吸が乱れない。そして心が乱れない。そして自分を見失わない」

海之

「だからと言ってただ逃げるのではなく、自分の置かれた状況の中で自分にできる最善を尽くせる者。それが本当の勇気ある者だと俺は思う」

火影

「前に一夏がお前らを救った様にな。敵わないとわかっていても最善の行動をした。それこそ本当の勇気ってもんさ」

 

それは火影と海之の持論だった。

 

「……本当にお前達は大人だな」

海之

「…経験者は語る、というやつだ」

「…え?」

火影

「気にすんな」

 

 

…………

 

一夏

「あれは…!」

 

箒の紅椿が銀色の輝きに包まれ、大きく姿を変えた。それは正しく衝撃鋼化の光だった。

 

「箒のISが銀ぴかに!」

「…綺麗」

千冬

「衝撃鋼化…」

真耶

「箒さん…!」

ロラン

「なんと美しい…!私の心は今、感動の渦に飲み込まれている!」

 

皆が其々の感想を述べる中、箒は、

 

「我が友が教えてくれ、姉さんが与えてくれ、あの人への想いによって目覚めた私の力…見せてやる!」

ロラン

「それが君の真の、本気の力という訳か箒!ならば是非…その力を私に見せてくれ!」

「良いだろう!今の私は…負ける気がしない!」

 

今の箒には力強い気が溢れていた。

 

 

…………

 

試合後、箒とロランは互いの健闘を称えた。

 

ロラン

「箒、あの銀の光に包まれてからの君の動きや剣閃、実に見事だった!」

「いやまだまだだ私等…。あの時の気持ちが無かったらただただ翻弄されていただけだったさ。流石は代表候補にしてレミリア殿の妹のロランだ」

一夏

「箒もロランツィーネさんのお姉さんの事知ってんのか?」

「な、何をいう一夏!レミリア殿と言えば剣を学ぶ者の間では千冬さんと同じ位高名な方だぞ!とは言え私も気付いたのは後々だったが」

ロラン

「ははは、まぁ姉上はそんな事気にする人じゃないさ。…さて箒!最初にも言ったが今日はほんの小手調べだ。明日からは早速訓練に入るぞ!時間が惜しいからな!まぁ後半の試合は単に箒と戦いたいという私のワガママだったんだがな!ハッハッハ!」

「…少なからず予感はしてたよ。…ハァ…ま、やるしかないか…」

 

こうして箒の猛特訓の日々が始まった…。

 

 

…………

 

火曜日

 

翌日の火曜日はとにかくダンスに必要な基礎と劇の進行を徹底的に叩き込まれた。

 

「……なぁロラン?」

ロラン

「なんだい箒?」

「一応聞くが劇団の人達はどれ位で此だけの知識を覚えた?」

ロラン

「うーんそうだな…。個人差もあるが実践で問題なく使えるようになったのは3ヶ月位か」

「それをたった四日で…」

ロラン

「大丈夫さ箒♪そのために私やティーチャーがいるのだ。なんの問題もないさ。宝船に乗ったつもりでいたまえ♪」

「…それを言うなら大船なんだが?」

 

 

…………

 

水曜日

 

水曜はダンスの徹底練習+全体の構成把握。時間が無いので超突貫訓練である。

 

「はぁ~~」

火影

「よぉ箒、話は聞いたぜ。頑張ってるか?」

「おお火影。…はっきり言って物凄く大変だ。ロランはともかく先生がかなりスパルタだ…」

火影

「まぁ時間もないし大事な役だからな。ほらよ、お婆ちゃんのお土産の苺で作ったパイだ」

「ああ頂くよ。一夏にもそんな気遣いができれば…」

火影

「明日は海之とクロエが来るからな」

 

 

…………

 

木曜日

 

この日は実践訓練と科学的分析。モニターを見ながら海之とクロエが自主練に付き合っていた。

 

海之

「…箒、場所が少しずれている。もう20センチ左、10センチ後ろだ」

クロエ

「ここのターンはスラスターの出力を6割近くにした方がより自由になりますよ」

「やはりふたりはこういう事が得意だな。…そう言えば一夏はどうした?」

海之

「一夏なら千冬先生から補習を受けている。ローランディフィルネイの件で勉強不足と思われたらしい」

「な、成る程な…」

 

 

…………

 

金曜日

 

公演日前日のこの日はリハーサルづくめ。朝からぶっ通しでやり続け、夕方はいよいよ最終リハーサル。

 

「箒さん、お疲れ様」

「よお箒~、遊びに来たぜ♪」

「蘭はともかく弾、冷やかしは止めてくれ。この後大事な最終リハーサルなのだから…」

「はは、まぁ頑張りな」

「明日は私達も見に行きます!ロランさんが特別席を用意してくれたんです」

「そ、そうなのか…緊張するな…」

「まぁ頑張りな♪一夏も行くぜ明日は♪」

「だから余計に緊張する事言うな!」

 

 

…………

 

そんな練習の日々を終え、遂に本番当日を迎えた。ロランが所属している劇団は中々有名らしく、しかもISを劇に取り入れるという新たな試みという事で話題も大きくチケットは完売、ドーム状の観客席は満員御礼だった。因みに今回使うのはラファールを舞台用にカスタマイズしたものである。そんな客席の様子を影から見ていた箒はというと、

 

「……」

ロラン

「どうした箒、緊張しているのか?」

「…これで緊張しない方がおかしいだろう…。キャノンボール・ファーストやトーナメントとは違う…。正直吐きそうだ…」

ロラン

「その気持ちはよくわかるさ。私も最初はそうだった。そう思って助っ人を呼んでおいたぞ」

「…助っ人?」

一夏

「よ、箒。練習中来れなくて悪かったな」

火影

「いよいよだな」

海之

「無理とは思うがあまり緊張するなよ」

クロエ

「お疲れ様です。箒さん」

 

すると一夏や火影達が出演者の待機場に来ていた。

 

「!! い、一夏!それに火影に海之にクロエまでどうして!?」

ロラン

「私が呼んだのだ♪力になると思ってな。観客席は完売していたが裏方からなら良く見えるだろう?」

「ロラン!」

 

笑うロランに真っ赤になって詰めよる箒。すると、

 

火影

「箒。一夏からお前に渡したいもんがあるってさ」

「へ?な、何だ?」

一夏

「はいこれ」

 

そう言って一夏が渡したのは…リボンだった。しかもそれは、

 

「…!これは」

一夏

「前の戦いで無くしたんだろ?だから新しいの買ったんだ」

ロラン

「着けても良いぞ箒。私が許す」

「あ、ありがとう!……あ、あの一夏、良ければ着けてもらっていいか?」

一夏

「ああ良いぜ」

 

そう言われて一夏は箒の髪にリボンを結んだ。箒はそれで勇気が出た様だった。

 

火影

「ISの新たな可能性を見せてやれ」

海之

「まぁ頑張る事だ」

クロエ

「成功をお祈りします」

「ああ。…一夏、見ていてくれよ?」

一夏

「おう」

ロラン

「では行こうか箒!」

「…ああ!」

(どんな状況でも…最善を尽くす!)

 

そしてロランや箒達の舞台は幕を開け、ふたりは舞台に飛び出していった……。

 

 

…………

 

その夜、五反田食堂。

 

ロラン

「それでは!舞台の大成功と我が100人目の花!箒の健闘を祝って…乾杯!」

一夏・蘭・鈴・シャル・セシリア・ラウラ・簪

「「「カンパーイ!」」」

 

公演が終わった後、五反田食堂で箒の労い会が行われていた。帰国していた面々は箒の舞台を見れなかったが話を聞いて祝うために出席していた。

 

一夏

「いや~お疲れだったな箒!」

「とっても素敵でしたね!」

シャル

「も~、わかってたら絶対チケット取っといて見に行ったのにー♪」

「そうねー。こんなからかいがい……もとい、珍しい事ないもんねー♪」

「やめてくれ…皆に見られたら顔を上げられん」

ロラン

「何を言うんだ箒!我々の夢はまだまだこれから!君の席は開けておくから卒業したら何時でも戻ってくるがいい!」

「い、いやもう十分だロラン!」

ラウラ

「でもいい経験になったのでないか?」

セシリア

「そうですわ。ISの可能性が広がったという意味では決して悪くはありませんわ」

「うん、私もそう思うよ箒」

「ま、まぁそれはな。特訓は疲れたが……楽しくもあったし」

セシリア

「それにしてもロランツィーネさんがかの高名なローランディフィルネイ家の方だったなんて」

ロラン

「ありがとう美しい蕾よ。まぁ凄いのは姉上で私などまだまださ」

「そんな事ないさロラン。是非ともまた手合わせ願いたい」

ロラン

「勿論だ箒」

一夏

「……ところでロラン。さっき箒を100人目の花って言ってたのはなんでだ?」

シャル

「…そう言えば言ってたね」

ロラン

「ふふん、それはな。何を隠そう私には世界に99の愛しき花がいるのさ。そして今回、私は箒を100人目の愛しき花とすると決めたのだ!光栄に思ってくれたまえ!」

「なっ!?」

本音

「ね~、だんだんがしののんのお芝居、全員分ダビングしてくれたよ~♪」

「ななっ!?」

「せっかくの箒の晴れ舞台だ!黒歴史にしちまうのは勿体無いぜ♪」

 

そう言った弾に群がる他少女達。箒はそんな皆を無駄だとはわかりながらも必死で食い止めていた…。

 

 

…………

 

その頃、とある場所にて、

 

 

海之

「…よし、これでいい」

火影

「これで皆にわかりやすく見せられるな」

海之

「…唯一不安なのは…あいつらだがな」

火影

「…まぁだいじょぶだろ…」

 

そんな色々あった冬期休暇は終わり、物語は遂にふたりへの核心へと向かう。




※次回は19日(土)の予定です。

本当にすいません。パソコンの修理がまだな事や年末という事もあり、次回は2週間後になります。次回からは遂に火影と海之の章、そしてある人物達が登場します。
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