IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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お読み下さっている皆様こんにちは。storybladeです。
明けましておめでとうございます。本年も本作を宜しくお願い致します。
コロナにお気を付けください。



Mission173 真実への電脳ダイブ④ 兄弟の始まり

火影と海之の衝撃の事実を知り、試練をクリアした一夏や箒達。

そんな彼らに、遂にあのふたりの、ダンテとバージルの真実が明かされようとしていた。

 

トリッシュ

「では約束通り貴方達にダンテとバージルの秘密を見せるわ。…知ったらもう後戻りはできないわよ」

レディ

「あいつらとの付き合い方も間違いなく変わっちゃうわよ」

 

最終勧告といえる言葉。しかし一夏達の答えは決まっていた。

 

一夏

「大丈夫だよ。俺達の絆を信じてくれ」

千冬

「…頼む」

 

他の皆も同じく頷いた。

 

ネロ

「大したタマだよあんたら全員」

V

「知るからには目を背けん事だ…」

トリッシュ

「始めましょう。…じゃあ皆、目を閉じてくれる?」

 

そう言われて一夏達は目を閉じた。

 

トリッシュ

「嫌なものも沢山見るだろうけど…どうか受け入れてあげてね。今の彼等は…れっきとした人間、そして…」

 

 

…パチン!!

 

 

トリッシュは再び指を鳴らした。

……だが特に何も変化が無い様な気がした一夏達はゆっくり目を開ける事にした。

 

一夏達

「「「!!!」」」

 

目を大きく見開いた。そこは…今まで自分達がいたような場所とは全く別の場所であった。

 

草一本生えていない不毛の地。異質な岩石や見たことが無い様な朽ちた木。血の様な赤い湖。空はまるで夜の様に暗い。だが普通の夜とは違って星の瞬きも無くどんよりとした…、見る者の心を蝕みそうな嫌な闇。そしてよく見ると空からも何か生えている様にも見える

 

一夏

「な、なんだここは!?」

箒

「トリッシュさん、ここは一体…!?」

 

近くにトリッシュ達はいなかった、いるのは自分達だけである。

 

刀奈

「あの人達皆いない…。どうやら私達だけみたいね」

鈴

「なんなのよ一体…。教えてくれるんじゃなかったの?てか…ほんとどこよここ?」

簪

「わからない…こんな色の木とか岩とか、水とか見た事ないよ」

一夏

「暗闇なのは夜だから説明できるとし…なんで空からも岩生えてんだ…洞窟かなんかか?それに水なのかコレ?…なんかどろってしてる様に見える」

千冬

「落ち着けお前達。私達をここに運んだのはトリッシュだ。何か考えがあっての事だろう」

クロエ

「それにあの方は「見せる」と言っていました。もしかしたら…これは実際の場所では無く映像みたいなものではないでしょうか?」

本音

「…!ほんとだ~。この木とか触れないよほら~」

 

本音が木の一本に手を触れようとした。するとまるで何も無いようにすり抜けた。

 

セシリア

「!…すり抜けた。クロエさんの仰る通りかもしれませんわね」

ラウラ

「立体映像の類という事か」

シャル

「で、でもだとしてもここはどこなんだろう?テレビとか写真とかでもこんな場所見たことないよ」

千冬

「……もしやここは…」

 

異質な場所に困惑している一夏達。……すると、

 

?

「大丈夫よ」

一夏達

「「「!!」」」

 

突然今まで何もいなかった後ろ側から聞こえてきた女性らしい声に驚く一夏達は揃って振り向く。

 

赤い髪の女性

「驚かせてしまったならごめんなさい」

老婆

「これはまた随分大人数で来たもんだねぇ」

 

そこにはふたりの女性がいた。腹部が見えている黒いタイトな服装でポンチョを羽織り、赤い長い髪を束ねているどこか謎めいた雰囲気を醸し出した若い女性。もうひとりは黒いローブを羽織り、被り物をした杖を持った老婆。

 

一夏

「な、なんだアンタは!?」

ラウラ

「全く気配を感じなかった…!ただ者じゃないぞ…」

赤い髪の女性

「安心して。信じてくれるかわからないけど私達は敵じゃないわ」

 

安心する様にと話す赤い髪の女性。

 

刀奈

「トリッシュさんが運んだこの場所に現れて、私達に話しかけてきたって事は…」

千冬

「貴女達もトリッシュ殿達の知り合いか?」

老婆

「飲み込みが早い子がいて助かるわい。いちいち最初から説明するのは面倒だからねぇ。ダンテの奴から聞いたのかい?」

刀奈

「正確にはその生まれ変わりの人ですけどね」

老婆

「生まれ変わりでもダンテはダンテさ。あいつは元気かい?それとその兄の方も」

クロエ

「え、ええ」

一夏

「あ、あの…アンタ達は?」

老婆

「名前を聞きたけりゃ先ず自分から名乗りな坊や」

一夏

「あ、ああ俺は…」

 

老婆の独特な雰囲気に皆がややタジタジになる。そう言って順番に自己紹介をしていき、全員が終わるとふたりも名乗った。

 

老婆

「やれやれやっと終わったかい。歳のせいか覚えが悪くなってねぇ。忘れてたら許しとくれ」

女性

「何を言っているのよ。150を超えても私以上に記憶力良かったくせに」

本音

「ひゃひゃ、ひゅくごじゅう~!?」

箒

「し、失礼ながらお歳は?」

老婆

「さぁね…100を越えた位から数えてないよ。おっと名前だったね。…マティエ、そう呼びな」

本音

「わかった~マティエお婆ちゃん」

マティエ

「始めてあったもんにお婆ちゃんと呼ばれるとはねぇ。まぁ好きにしな」

ルシア

「…私の名前はルシア。私もマティエも貴方達が言う様に彼女達の知り合いで…デュマ―リの護り手よ」

セシリア

「…デュマ―リ?…失礼ですが聞いたことが…」

ルシア

「それについては気にしなくていいわ。そして今は…ダンテとバージルの記憶の護り手でもある」

簪

「ダンテさんとバージルさんの記憶…!つまり火影くんと海之くんの…前世の記憶ですか?」

箒

「貴女もあの方々と同じくダンテやバージルの世界の?」

マティエ

「ああ、私らもあいつらと同じ世界のもんだったさ。アンタらの事はお嬢ちゃん達から聞いているよ」

ルシア

「そしてここに来たという事は…彼らが認めたという事ね。貴方達に…ダンテとバージルの真実を教えてもいいと」

一夏

「あ、ああそうだ。俺達はそのために来たんだ。火影と海之も言ってる。俺達に真実を教えると。だから教えてくれ!」

鈴

「ふたりの正体がなんでも私達は受け入れるわ。だからお願い!」

ルシア

「…火影っていうのは…ダンテの名前?」

クロエ

「え?は、はいそうです」

ルシア

「……火影。……火、赤色…か。ダンテらしい名前ね…」

 

ルシアはどこか思うような表情をしている。そんな彼女を見てマティエがため息をつく。

 

マティエ

「……やれやれ」

本音

「…どうしたの?」

ルシア

「…なんでもないわ。…いいわ、貴方達に全てを教えましょう。それが役目だから」

クロエ

「…ありがとうございます」

箒

「だがその前にひとつ教えてほしい。一体ここはどこなのだ?大地といい水といい空といい、ハッキリ言って異質極まりないぞ」

ラウラ

「ああ。ふたりの記憶を見せるのになんでこんな場所である必要がある?」

 

彼女達の問いにルシアは答えた。

 

ルシア

「それは……この場所があのふたりにとってのルーツ、全ての始まりともいえる場所だからよ」

セシリア

「こ、この様な場所が…おふたりの始まり!?」

シャル

「それって一体…!」

 

すると千冬、刀奈、クロエはルシアの言葉で検討が付いた様だった。

 

千冬

「やはりここは…」

一夏

「千冬姉。何か知ってんのか?」

刀奈

「……成程ね。そういう事か」

クロエ

「このような禍々しい場所なら…納得できますね」

簪

「…お姉ちゃん?クロエさん?」

 

一夏達が千冬の様子の変化に疑問を抱いている中、マティエは一夏達に問うた。

 

マティエ

「…アンタ達「今自分達が住んでいる世界とは全く別の世界」があるとしたら…信じられるかい?」

簪

「私達の世界と…全く別の世界?」

ルシア

「そう。国が違うとか星が違うとかそんなものじゃない。云わば「異世界」の事」

シャル

「い、異世界ってそんなもの……あ」

 

皆は先ほどのトリッシュ達がしていた話を思い出した。火影と海之は自分達が住んでいる世界とは別の世界で生きていたダンテとバージルという存在が生まれ変わった転生者であるという話を。ならば異世界というのは確かに存在しているということになる。

 

鈴

「…そっか。火影と海之の世界は…」

セシリア

「…じゃあ…この場所は…おふたりの世界の…?」

ルシア

「……そう。この場所は貴方達が住んでいる世界の何処でもない。ここはダンテやバージル、そして私達がいた世界。…いいえ正確にはそれとも少し違う世界ね」

ラウラ

「…?ダンテやバージルのいた世界だが少し違う世界?」

一夏

「な、なんだかややこしいな。…で、結局なんなんだここは?」

 

するとマティエは答えた。

 

 

マティエ

「…ここは「魔界」…。悪魔や魔獣が住みし場所であり、魔力に満たされた世界。力だけが全てを制し、力を持たぬものは死ぬ。弱肉強食の世界さ…」

 

 

一夏達

「「「………」」」

 

一夏や箒達はポカーンとしている。それに対し、

 

千冬

「…やはりそうか。このあまりにも異質な世界…そうかもしれないとは思ったが」

刀奈

「いかにもって感じの場所ね~。私ならこんな場所一秒たりともいたくないわ」

クロエ

「…ここが…魔界…」

 

千冬達は冷静だった。そして暫くしてから一夏達も再起動する。

 

本音

「ままままま魔界―――!?」

一夏

「ちょちょちょ、ちょっと待ってくれ!!マカイってどういうこったよ!?」

ルシア

「そのままの意味よ」

箒

「きゅ、急にそんな事言われても…ここが魔界とか急に言われて信じられる訳ないだろう!」

セシリア

「そうですわ!いくら何でも冗談にしか聞こえませんわ!」

鈴

「おまけに悪魔とか魔力とか何!?正気!?」

シャル

「あまりにも非現実的すぎるよ!」

ルシア

「異世界というものも十分非現実的だと思うけどちゃんと存在しているじゃない?」

マティエ

「儂らからしたらアンタ達の世界こそ立派な異世界だけどねぇ」

ラウラ

「た、確かにそうですが…それとは少し意味が違うのでは…」

簪

「アニメや漫画とかじゃよく聞くけど…本当にあるなんて信じられない…」

 

激しく反論する一夏達。彼らの反応は当然かもしれない。

 

ルシア

「…確かに俄かには信じられないでしょうね。でもじゃあこの場所をどう説明できる?草一本生えていない不毛な大地、異質な木々や水の色、そしてこのどす黒い闇。こんな場所が通常の世界に存在すると思う?」

一夏

「た、確かにそうかもしれねぇけど…。てか千冬姉や刀奈さんとかはなんでそんなにあっさりしてるんだよ!?」

千冬

「私達は以前ふたりから話だけは聞いていたからな…。実際目にするのは初めてだが」

刀奈

「信用できないのはわかるけどあのふたりは嘘つく様な人じゃないでしょう?」

シャル

「それはそうだけど…」

クロエ

「それにここはアリギエルとウェルギエルのコアの中。兄さん達の記憶にある場所としてなら説明できます」

セシリア

「…ですが…」

 

やはりまだ信じきれない様子の一夏達。、

 

本音

「……?見て皆。あれ…何だろ?」

 

するとその時本音が遠くの方にあるものを見つけ、一夏達を誘導した。よく見ると…遠くの方に何かが蠢いている様に見える。

 

鈴

「…何あれ?動いているから…生き物かしら?」

シャル

「こんな場所に?……!!」

 

それを見て皆は言葉を失った。それは無数の…今まで見たことが無い様な生き物達の群れであった。

異形な鋭い牙や爪、角が生えているものや巨大な翼と尾を持っているもの。

身体が燃えていたり電気を発しているもの。

黒いマントの様なものを羽織り巨大な鋏や鎌をもつもの。

大きい虫のようなもの。

 

一夏

「ななななななななな!!」

箒

「何だアレは!?」

セシリア

「怪物!?」

 

やがてそれらは鈴達がいる方向に向かってくる。

 

ドドドドドドドドドドドドッ!!!

 

鈴

「や、やばいわこっち来る!逃げないと!!」

 

慌てる一夏達。だがルシアは冷静に言う。

 

ルシア

「落ち着いて。これは単なる映像よ。実際存在している訳じゃないわ」

マティエ

「若いんじゃから堂々としとれ堂々と」

簪

「そ、そんな事言ったって!」

ラウラ

「駄目だ間に合わない!」

 

既に目の前に迫っていた異形の存在達。一夏達はぶつかる事を覚悟した。

………しかし、

 

「「「……?」」」

 

何の変化も起らなかった。見ると自分達をその存在達がすり抜けている。どうやらルシアの言う通りの様であった。

 

本音

「あ、危なかった~~」

クロエ

「え、映像とはいえ流石に吃驚しました…」

シャル

「なんなの…なんなのアレ!?えっと…ルシアさん、マティエさん!」

 

するとマティエは答える。

 

マティエ

「…魔界に住まう者にして生まれし存在。あれこそ悪魔さ…。死神、魔神、暴魔、色んな呼び方があるけどねぇ」

箒

「あ、悪魔だって!?」

簪

「あれが…悪魔。本当に存在するなんて…。特撮とかじゃ…ないよね…?」

鈴

「嘘でしょ…。私は夢でも見てるのかしら…」

 

魔界、そして悪魔を目の前にしてほとんどの者は完全に言葉を失っている。

 

千冬

「…ルシア殿。マティエ殿。私や一部の者は知っているが多くの者はいきなり色々な事言われて混乱している。よかったら教えてもらえないか?」

刀奈

「私達も火影くん達から聞いてはいるけどこの世界を含め目にするのは初めてなの。是非お願いするわ」

一夏

「そ、そうだよ教えてくれ!この世界といいさっきの怪物といい…俺もう何がなんだか…」

ルシア

「……わかったわ。信じられないかもしれないけど…私達がこれから言う事は全て本当の話よ、いいわね?」

 

皆は頷き、それを見て大丈夫と思ったルシアは話し始めた。

 

ルシア

「……ダンテとバージル、そして私達がいた世界はね、ふたつに分かれていたの。ひとつは人間や動植物達が暮らす人界。そしてもうひとつがこの魔界よ」

箒

「ひとつの世界がふたつに…」

ルシア

「そしてふたつの世界の間には一種の境界の様なものがあってね、これによって互いの世界からの干渉や大きな侵入を防いでいたの」

簪

「人界と魔界…。確かにお互い干渉しない方がいいかもね…」

セシリア

「ふたつの世界が境界によって……!ちょ、ちょっと待ってください!それって…大規模な侵入は無理でも小さい侵入は可能だった、という事ですか!?」

ルシア

「……その通りよ。この結界には網の様な性質があってね。力が大きい悪魔は自らの力が逆に網にかかり、結界を通る事ができなかったのだけれど…さっき貴方達が見た様な小物の悪魔達なら結界を通り抜け、人界へと来ることもできた」

一夏

「マジかよ…!」

シャル

「あれで小物って…あれ以上の奴がいるの!?」

マティエ

「あんなもんで驚いてもらっては困るねぇ。あんなもんは所詮雑魚、虫みたいなもんさ。その気になりゃあ命を生み出す奴とか世界を滅ぼしかねない位危険な奴だっていたんだよ」

鈴

「…まるで神様ね…」

ラウラ

「いや寧ろ魔王と言えるかもしれんな…」

千冬

「……」

ルシア

「……そして」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

 

突然地面が激しく揺れ出す。

 

本音

「じ、地震だー!」

刀奈

「落ち着いて本音!そう見えるだけよ。私達は揺れてないわ」

一夏

「こ、今度は一体……!!」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!

 

地震の影響で所々が割れる。すると地面から無数の悪魔が出現した。

 

箒

「あ、悪魔!」

鈴

「なんて数!さっきよりも遥かに多いわ!」

 

そしてその中には見覚えのあるものがいた。

 

シャル

「…!嘘…ファントム!?」

ラウラ

「それだけじゃない!小さいがグリフォンもいるぞ!なんで奴がここに!?」

簪

「…?だけどちょっとだけ違う。機械じゃない。…まるで生き物みたい…」

 

ファントムやグリフォンの姿を見て驚くシャル達。

 

刀奈

「…当然なのよ。私達が知っているファントムやグリフォンはあれがモデルになっているのだから」

箒

「! ファントムやグリフォンのオリジナルが…悪魔!?」

ラウラ

「それは一体!」

千冬

「それについてはまた後で話してやる。…ルシア殿、続けてくれ」

ルシア

「私が生きていた時代から約二千年前…ある事があった。強大な力をもったある悪魔が…無数の悪魔や自らが生み出した悪魔を引き連れ、人界への侵攻を企てたの」

一夏

「なっ、なんだって!!」

セシリア

「じ、人界への侵攻!?」

鈴

「つまり悪魔が攻め込んできたって事!?」

簪

「…!み、皆見て!!」

 

簪は遠くの空を指差す。その先には真っ黒な闇の中に浮かぶ……みっつの赤い光があった。その周辺には無数の稲光が発し、大気も揺らいでいる。

 

シャル

「…な、何…アレ…?」

千冬

「映像だとわかっているのに…なんだこの嫌な悪寒は…」

一夏

「……ああ、俺にも何となくわかるぜ」

箒

「…ルシアさんマティエさん。あれは…なんなんです…?」

 

やや怯えながら箒は尋ねた。

 

マティエ

「……嘗てその圧倒的な力と魔力で魔界を支配していた存在にして…二千年前、人界への侵攻を企てた張本人。…魔帝さ」

 

クロエ

「…魔帝…?」

簪

「それって…魔界の王、つまり…悪魔達の王?」

ラウラ

「もし本当にあれがそうなら…何と強大な存在なのだ…」

 

するとここで鈴が、

 

鈴

「で、でもさ!そんな奴なら結界だっけ?それを通り抜けるなんて無理じゃないの!?さっき言ってたじゃない、力が大きい者は無理だって!」

刀奈

「……いいえ、方法はあるわ。「扉」よ」

シャル

「…扉?」

千冬

「…以前火影達から聞いた事がある。ふたつの世界の境界には数える程度だが薄い場所が存在しているらしい。そこに扉、抜け穴とでもいえるものを開けば…力の強弱に関係なく行き来できるとな」

クロエ

「…はい。そして悪魔の中には自らの力で扉を開くことができる存在がいるそうです。ですからもし…あれが悪魔の王だとするなら…十分に可能かと思います…」

本音

「そんな…」

シャル

「…因みに…その、魔帝?って奴の名前は?」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!

 

一夏

「お、おいそんな事言ってる場合じゃねぇぞ!どんどん増えてやがる!」

 

一夏の言う通り、悪魔は更に増えていく。

 

ルシア

「魔帝、そして悪魔達の侵攻はあっという間だった。人界の平和は悪魔達の侵攻によって瞬く間に砕かれ、人類の滅亡は時間の問題だった。………でも」

 

 

ドガァァァァァァァァァンッ!!

 

 

その時だった。突然悪魔達が進んでいた先で凄まじい爆発が起こった。

 

一夏

「な、何だ!?」

箒

「悪魔達が…爆発に吹き飛ばされた!」

シャル

「……!!見て!!」

 

その時、一夏達は確かに見た。獄炎ともいえる炎の中、悪魔達が次々薙ぎ倒され、蹴散らされているのを。中央にいたのは……巨大な剣を縦横無尽に振るうひとりの悪魔だった…。

 

刀奈

「…凄い…」

本音

「強―い!!」

クロエ

「たったひとりであの無数の悪魔達を…!」

箒

「し、しかし何故悪魔同士が…。仲間割れか…?」

 

驚く皆にマティエは言った。

 

マティエ

「…でもある時、他の悪魔とは違う動きを見せたひとりの物好きな悪魔がいたのさ…」

 

その間もその悪魔は敵を倒し続ける。

 

ルシア

「彼の名は…スパーダ。同じ悪魔でありながら正義の心に目覚め、たったひとりで闇の軍勢に立ち向かい、人間と人界を守るために戦った…伝説の剣士」

 

一夏

「悪魔が…人間を守るために戦っただって!?」

千冬

「…アレがふたりが以前言っていた…魔剣士スパーダか…」

箒

「…魔剣士?」

刀奈

「悪魔にして魔剣を扱う剣士。故に魔剣士よ」

シャル

「人から忌嫌われる悪魔が…正義の心を持った…」

セシリア

「嘘みたいですわ…」

マティエ

「そうかい?人間の中にもいるじゃないかい。悪魔以上に残酷な事をするバカな人間もさ?だったら逆に人の様な心を持つ悪魔もいる。そう思わないかい?」

クロエ

「…はい。悪魔よりも恐ろしい人間。…そんな人間も確かにいますからね」

ラウラ

「クロエさん…」

簪

「…それにそういうアニメとか私見た事あるよ。モンスターとかが主人公と一緒に戦ったりとか」

鈴

「それはアニメの話でしょうが…」

マティエ

「…話を戻そうかね。…魔剣士スパーダと魔帝との戦いは熾烈を極めたが…最後にはスパーダが奴を倒した。悪魔共の人界への侵攻は阻止されたさ…」

箒

「良かった…」

ラウラ

「あれほどの存在を倒すとは…スパーダとやらも恐るべき力だな」

ルシア

「…でも全てが終わったわけでは無かった。魔帝が倒されたのを機に悪魔達の力関係に狂いが生じ始めた。以前よりも多く、悪魔達によって更なる侵攻が企てられたわ…」

刀奈

「…ひとりが倒されても別の奴が、って訳ね…」

ルシア

「…でもそれらも全て食い止められたわ、スパーダによって。…魔帝を倒した後人界に残ったスパーダは世界を転戦した。そして彼のそんな姿を見て彼に共感した他の悪魔や人間達もいた…」

鈴

「…スパーダ以外にも人間に味方した悪魔がいたのね」

簪

「悪魔と人間が力を合わせて戦ったんだ…」

 

すると千冬がルシアに尋ねた。

 

千冬

「…思うに…貴方方もそうではないのか?或いは関係する者では?ボーデヴィッヒの言った通り貴方達を見た時ただ者ではない、戦士が持つ何かを感じた」

シャル

「ほ、本当ですか!?」

マティエ

「…ああ。私らの一族は嘗てスパーダと共に戦い、自らの住処を守った者達さ」

セシリア

「そうですのね。通りでデュマ―リという名前に聞き覚えが無かった訳ですわ。ではおふたりはその方々の末裔、という訳ですのね」

ルシア

「……」

ラウラ

「…?どうしたんですか?」

ルシア

「……何でもないわ。……とにかく幾度も悪魔の脅威から人界を守ったスパーダは人間達にとって英雄的存在となったわ。長い歴史の中では彼を世界を救った神として祭る教団まで作られた事もあった…」

本音

「そうなんだ~。悪魔といっても皆感謝してたんだねスパーダさんに」

一夏

「……世界を救った神を祭る教団………!!」

箒

「…?どうした一夏?」

一夏

「……いや、何でもない」

 

 

パチンッ!!

 

 

ルシアは指を鳴らした。すると先ほどと同じ様に画面が変わったがそこは魔界の様な毒々しさは無く、緑の大地と青い空があった。

 

シャル

「わっ」

刀奈

「場所が変わったわね。今まで見たような場所と違って今度はちゃんとした場所だわ」

本音

「映像とわかっていても緑や空があるとやっぱり安心するね~」

鈴

「ホントね。ルシアさんここ……あっ、なんか家があるわ」

 

鈴の言った通り、確かに少し先に家があった。そして、

 

簪

「あ、見て。庭に誰かいるよ」

 

庭らしき場所には誰かがいた。見ると男がひとり、子供がふたり、そして少し離れた所に佇む女性がひとり。よく見ると銀髪の男に同じく銀髪の少年ふたりが手に木の枝だろうか、それを持ってかかっている。見た感じどうやら稽古をしているらしい。そんな彼らを金髪の長い髪をした女性がやや困り顔をしながらも暖かく見守っているのが見て取れる。光景からして銀髪の男が父親、金髪の女性が母親、ふたりの少年は彼らの子供だろう。

 

クロエ

「男の人と女の人、…それに子供でしょうか」

箒

「どうやら稽古をしている様だな。おそらく両親と子供なのだろう」

シャル

「キレイな金色の髪だなぁ、お母さんみた……!み、皆あの女の人…!」

セシリア

「えっ?……あっ!」

 

皆は驚いた。男と子供を見守る金髪の女性、その顔は正に…トリッシュにそっくりだったからだ。

 

箒

「嘘…トリッシュさん!?」

簪

「じゃあトリッシュさんが、この子達のお母さんなのかな?」

鈴

「……でも感じは随分さっきと違うわ。服装も全く違うし」

 

するとルシアが答えた。

 

ルシア

「あの人はトリッシュじゃないわ。よく似ているけど別人よ。双子でもない。名前は…エヴァ。貴方達が思った通りあのふたりの子供の母親よ」

一夏

「なんだ別人なのか。にしてはよく似てんなぁ」

ルシア

「彼女よりも…今は子供達を見て」

 

ルシアはふたりの銀髪の少年を見る様促す。

 

本音

「あの男の子達~?………あれ?あの子達って…」

一夏

「……え!?」

 

それを見た皆は目を見開く。目の前で父親らしい男性に何度も向かって行っているふたりの少年。その顔は幼くはあるもののあのふたりの面影がはっきりわかる程にあった。

 

シャル

「…火影…なの…?」

簪

「それにあっちの子は…海之くん…?」

刀奈

「……そうね」

クロエ

「…兄さん…」

 

その少年達もまた双子、そして火影と海之に実によく似ていた。髪型も。但し目の色が赤色と青色ではなかった。

 

セシリア

「……いいえ、確かによく似ておられますが…瞳の色が違いますわ」

ラウラ

「ああ、…しかしよく似ている。本当に他人なのか…ルシアさん?」

ルシア

「……あのふたりは火影と海之ではないわ。だけど彼らでもある…」

一夏

「…?火影と海之じゃないけどふたり…って?」

 

すると千冬がそれに答えた。

 

千冬

「言葉の通りだ。火影と海之では無いがふたりでもある。つまり…あの少年達がダンテとバージルなのだろう?」

一夏達

「「「!!」」」

ルシア

「…その通りよ。あの双子の男の子…。兄の名前はバージル、弟はダンテ。つまりあれが貴方達のお友達、火影と海之の前世の姿よ」

一夏

「あのふたりが…」

鈴

「あの子達が…ダンテとバージル」

簪

「ふたりにそっくりだね…」

本音

「ホントだねー」

箒

「前世とはいえここまで似ているとはな…」

 

皆がその事実に驚いている。しかし次の刀奈の言葉で更に驚く。

 

刀奈

「じゃああの男の人が…スパーダって訳ね」

一夏

「…えっ!!」

クロエ

「…はい。きっとそうですね」

シャル

「す、スパーダって…それまさか…さっき話していた悪魔スパーダの事ですか!?」

鈴

「いやそんな訳ないでしょ!スパーダは悪魔よ!きっと別人よ!てか全然違うじゃない!」

 

鈴の言う通り目の前の銀髪の男性は先ほどのスパーダとは似ても似つかない。誰もが別人と思うのも仕方ない。そもそもスパーダは人間では無い筈。

 

マティエ

「…いいや。あの男は紛れもなく嘗て悪魔の侵攻から人間を救った魔剣士スパーダさ。あの姿は人界で生きていく事を決めたスパーダの人としての姿なのさ…」

ラウラ

「スパーダの…人としての姿!?」

セシリア

「で、でもスパーダって大昔の人、いえ悪魔の筈では…」

クロエ

「悪魔の寿命は人よりも遥かに長いらしいです。千年なんて大した意味は無いみたいらしいですよ」

箒

「そ、そうなんですか…」

一夏

「…ちょ、ちょっと待ってくれ!じゃ、じゃあまさかダンテとバージルは!」

 

一夏は察した様だった。そして皆も。

 

マティエ

「…そうさ。ダンテとバージルは悪魔スパーダと人間エヴァの息子。文字通り、悪魔と人の申し子」

千冬

「…そういう事だそうだ」

一夏

「!!」

本音

「え――――!」

箒

「火影と海之の前世のダンテとバージルが…!」

セシリア

「スパーダと…あの、エヴァさんの子供!?」

鈴

「つまり悪魔と人のハーフって事!?」

シャル

「じゃ、じゃあスパーダとエヴァさんは…夫婦!?」

 

今日一番の驚きを見せる一夏達。

 

箒

「エヴァさんはスパーダが悪魔だということは…?」

ルシア

「勿論知っていたわ。だけどエヴァはスパーダを愛していた。そしてスパーダもまたエヴァを愛した」

刀奈

「火影くん達曰くスパーダはそれまでは色んな女の人とのウワサがあったらしいけど彼女への愛情は本物だったらしいわよ」

簪

「…悪魔と人が夫婦になって…子供ができた…」

ラウラ

「…にわかには信じられん…」

 

目の前にいる男の子がダンテとバージルであり、更にその子が人間と悪魔のハーフという想像もしていなかった事実に完全に言葉を失う箒達。

 

刀奈

「ふたりが生まれ変わりっていうのが真実其の①ってとこなら今のが其の②ってとこ。ふたりの前世が悪魔の子供って事がね」

千冬

「…ショックか?あいつらの前世の正体を知って」

箒

「……ショックというかあまりにも驚きの連続で…。千冬さん達はどうでしたか?」

クロエ

「勿論最初は驚きましたが……でも受け入れました。私達も、束様も」

千冬

「前世がどうだろうとそれは前世の話。今のあいつらは海之と火影だ」

 

千冬達はそう答えた。すると鈴達も、

 

鈴

「……はぁ~。全く…あのふたりってほんと脅かしてくれるわ。…ルシアさんひとつ教えて?火影と海之もなの?」

ルシア

「……いいえ、今の彼らは以前の様な半人半魔じゃないわ。完全な人間よ」

セシリア

「先ほどトリッシュさんも言われていましたわね。今のおふたりはれっきとした人間だと」

本音

「今も昔もそんなの関係ないよ!ふたりは私達が大好きなひかりんとみうみうだもん!」

刀奈

「本音ちゃん…」

 

本音の言葉に彼女達も続く。

 

シャル

「……うん、そうだね。凄く驚いたけど火影は火影だもの。僕の気持ちは変わらないよ」

簪

「私も同じだよ。とても驚いたけど私の海之くんへの気持ちは変わらない。受け入れるよ。エヴァさんがスパーダさんを受け入れた様に」

ラウラ

「ああ。この程度の事で私達の夫婦仲は破綻したりしないさ」

鈴

「前に火影が話したのってこれの事だったのね。……馬鹿ね、本音が言った様に例え前世がそうでもアンタはアンタでしょうに。別に犯罪犯したわけじゃないんだからもっと早く言ってくれても良かったわよ…」

 

驚きこそしたが鈴達も受け入れる事にした様だ。そして箒達も、

 

箒

「……ああそうだな。今は今、前世は前世だ。今が人間なら何の問題もない。それにパッと見てダンテとバージルも十分、人だしな」

セシリア

「そうですわ。あのおふたりは誰よりも優しい心を持たれていますもの。きっと前世でもそうだった筈ですわ」

 

箒とセシリアも受け入れた様だ。

 

ルシア

「……強い心ね、貴方達」

マティエ

「全く気の毒だねぇ。あんな鈍感に芯から惚れちまうなんてさ」

本音

「えへへ~それほどでも~♪」

鈴

「たく本音はほんと恥ずかし…一夏?」

 

鈴が一夏を見て気づいた。……何か考え事をしている。

 

千冬

「どうした一夏?まだ信じられんか?」

一夏

「ん?ああ違うって。俺も信じるよ。火影と海之の事、ダンテとバージルの事も。…ただまだわからない事があって」

箒

「わからない事?」

一夏

「火影と海之の前世がそういう凄ぇ生まれだったのはわかったけどさ?まだあいつらの強さの秘密がわからないんだ…。伝説の剣士の息子ってもその息子のダンテとバージルまで強いとはこの頃じゃまだわからねぇだろ?」

セシリア

「…確かにそうですわね」

一夏

「さっきネロも言ってたじゃねぇか。ダンテとバージルはもっと強かったって。てことはまだ何かあのふたりには秘密があると思うんだよな。そんだけ強くなった秘密が」

クロエ

「……」

刀奈

「一夏くんそれは…」

鈴

「アンタにしてはまともな疑問じゃない。でも確かにそうね」

ラウラ

「ああ。あの人達はアリギエルとウェルギエル、そして魔具はふたりが使ってたと言っていた。そんな事態がいつか訪れるという事か…?」

シャル

「ふたりも同じ様に悪魔と戦っていたりとか?スパーダさんと一緒に」

箒

「…確かにその可能性もあるが…今の平和な一時を見る限りにわかには信じられんな」

簪

「…うん」

(…それに海之くんの言ってた「大罪」の意味もまだわからないよね…)

本音

「ルシアさんは何か知ってる~?」

 

本音はルシアに問いかける。そして彼女は目の前の平和な一家の一時を見つめながら呟いた。

 

ルシア

「……そう。これで終わりじゃない、いえ始まりに過ぎないわ。…ふたりの、血塗られた戦いの歴史のね」

マティエ

「今から見せてあげるよ…。ダンテとバージル。嘗て世界で最も憎しみ殺しあった兄弟の秘密を…」




※次回は16(土)投稿予定です。

次回はダンテとバージルを書く予定です。火影と海之でなくダンテとバージルです。
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