IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
そんなふたりを強い想いで支える者達。
スコールの謎の行動や言動。
そしてオーガスの企み。
それぞれが動き始める中、火影と海之はスコールから渡された情報から驚愕の真実を知る。
「アインヘリアル計画」と「織斑計画」。そして「織斑」という姓を持つ者達…。
そして…事態は再び動くのである。
この日はIS学園全校上げてのスキー合宿の日。毎年恒例ではなく、昨年京都への修学旅行が無くなった代わりとして計画された云わば代謝行事である。今はそこに向かう一組のバスの中。
本音
「雪だ~♪」
シャル
「…本音、その感想前に火影の実家に行った時と同じだよ?」
セシリア
「そう言えば日本は積雪量では世界的に有名だと聞きましたわ」
一夏
「そうなのか?カナダやヨーロッパとかの方が多い気がするけど?」
箒
「確かにそうだが日本も負けていないそうだぞ?雪の質も良いらしいからな」
本音
「でも一泊二日なのが残念だね~」
ラウラ
「わがまま言うんじゃない。急な予定だったし、生徒全員が泊まれる場所があっただけ良しとしようじゃないか」
皆それぞれが旅行を楽しみに会話する中、
火影・海之
「「……」」
本音
「…ひかりん?」
ラウラ
「どうした海之?」
火影
「…ん?ああ悪いなんだって?」
シャル
「珍しいね。ふたりが話を聞いていないなんて」
海之
「…すまない」
一夏
「もしかしてスキーが楽しみで眠れなかったとか?」
ラウラ
「本音はともかくふたりがそんな事する訳なかろう」
するとセシリアが周りに聞こえない様小声で、
セシリア
(もしかして……今回もファントム・タスクが?)
海之
(…いやそれは低いと思う。もうそんな事をする意味は無いと奴も言っていたからな)
シャル
(なにか気になる事があるなら言ってね)
火影
(ちょっと考え事してただけさ。悪かったな)
…………
そして一向は宿泊先に到着した。
学年毎に違う階に部屋が別れており、火影・海之・一夏の部屋は臨海学校の時と同じく千冬と真耶の隣の部屋とされた。そして其々が荷物を置くと後はもう自由時間である。修学旅行が駄目になり、宿泊も一泊という事から訓練等もない。夜の外出は禁止だが。そんな訳で学年毎に集まってスキーを楽しむ者は外へ出ていたのだが、
一夏
「…でもなんで刀奈さんまでこっちにいるんすか?」
刀奈
「気にしない気にしない♪虚には知らせてあるから問題ナッシング!それより一緒に滑りましょ♪」
箒
「刀奈さんばかりずるいですよ!」
セシリア
「そうですわ!私達も一緒に滑りたいですのに!」
刀奈
「え~だって私スキーは初めてなんだもん~」
一夏
「…その割には初心者よりうまい気がするんすけど」
とそこに、
ロラン
「箒!私と一緒に滑ろう!」
箒
「ろ、ロラン!い、いや私は…ちょ、ちょっと待って!」
そう言ってロランは箒を引っ張って行ってしまった。
……一方、
火影
「だから八の字に広げりゃいいんだよ八の字に」
シャル
「そそそ、そんな事言ったって!」
本音
「あわわわ!」
火影と鈴はシャルと本音に教えていた。
鈴
「シャルは機会が無かったって言ってたからわかるけど本音もなのね。……にしても本音、そのペンギン着てスキー板履いてプルプル震えてるのってなんかシュールね~」
シャル
「あははって笑わせないでよ鈴~!」
本音
「ひひ、ひかりんはどうやって覚えたの~?」
火影
「自然に覚えられるだろ?その気になりゃ氷山を滑り降りる事も難しくねぇぜ?」
シャル・本音
「「できないって!ってわぁ!」」ドサドサッ!
叫んだ勢いで正面の火影に向かって倒れ込むふたり。
火影
「おいおい大丈夫か?」
シャル
「う、うん。ゴメンね」
本音
「え、えへへ~」
鈴
「…わざとじゃないわよねアンタ達?…まぁそれはともかく火影、そんな事出来るのはアンタ位よ」
火影
「…そうでもねぇらしいぞ?」
鈴
「へ?」
ラウラ
「きょ、教官!もう少しゆっくり滑ってください!」
クロエ
「そうです!私達初めてなんですから!」
千冬
「なんだだらしのない。これ位滑れんようでは氷山を滑り降りる等できんぞ。それにボーデヴィッヒ、体幹の重要性を以前教えた筈だが?」
簪
「ひょ、氷山なんて滑り降りれるものなのかな…?」
ラウラ
「も、申し訳ありません。それにしてもベルベット、お前は随分上手いな?」
ベルベット
「私は以前知り合いに教えてもらったことがあるから」
簪
「そう言えば海之くんは?」
真耶
「海之くんならホテルにある暖炉の前で読書に勤しんでますよ」
簪
「はは、海之くんらしいですね。ああそう言えばギャラクシーさんも読書してたっけ」
火影
「…な?」
鈴
「…千冬さんも案外前世があったりして…」
そんな一幕がありながらスキーは楽しく進んだ。
…………
だが楽しい時間というのはあっという間に終わるもの。生徒全員が久々とも言えるゆったりとした時間を過ごし、夕食も風呂も終えた頃。一夏達はホテルのロビーで休んでいた。
一夏
「つ、疲れた…」
一夏はあの後、セシリアや刀奈と一緒に滑っていたのだがそこにロランの手から逃げてきた箒も加わった。すると箒を追いかけてきたロランも更に加わり、一夏が「それなら全員で滑ろう」と言ってしまった事で更に更に多くの他の女子生徒が押し寄せてきたためにちょっとした騒ぎになったのだった。
本音
「おりむー大変だったね~」
セシリア
「結局一夏さんとふたりきりで滑る事はできませんでしたわ…」
箒
「私もだ…。一夏、お前が皆一緒になんて言うからだぞ?」
一夏
「え~俺のせい~?てかなんで俺のとこばかり…、火影や海之はどしたんだよ~?」
鈴
「火影と私達ならあんたのあの一声聞いて嫌な予感したから直ぐに離れたのよ」
簪
「海之くんはそもそもスキーしてなかったから関係無かったしね」
一夏
「う、裏切り者~」
セシリア
「…そう言えば火影さん達はどちらでしょう?先ほどから姿が…」
するとそこに刀奈が来て、
刀奈
「火影くんと海之くんなら先ほど出掛けたわよ。周囲の見回りに行きたいって。織斑先生も一緒にね」
箒
「見回りって…こんな夜に!?」
鈴
「可能性は低いけど用心に越した事はないからって」
簪
「私達も行こうと思ったんだけど…これは実行委員の役割だって」
シャル
「おまけに織斑先生に止められたら行けないよね」
ラウラ
「残念だ…」
真耶
「ま、まぁまぁ先輩もいますから大丈夫ですよ」
クロエ
「……」
…………
その頃、火影はひとりスキー場のはずれにある林の中にいた。海之と千冬に通信を繋ぐ。
火影
「…海之、そっちは?」
海之
(問題無い)
火影
「織斑先生」
千冬
(…特に変わったところは見当たらんな。レーダーにも反応無い)
火影
「そうですか。クロエにもしもの時を考えて作ってもらったが…必要無かったかな」
海之
(ホテルの中もさり気なく警戒していたが何も無かった)
千冬
(やはりお前が残っていたのはそのためだったか。話しておけば私も残っていたのに全く)
海之
(申し訳ありません…)
千冬
(い、いや謝らなくても良い。ただ次からは予め話せ、良いな?)
火影
「…そろそろ戻るか。もう流石に……………」
千冬
(どうした火影?)
火影
「……あと一ヶ所だけ見ておく。ふたりは先に帰っててくれ」
千冬
(ひとりで大丈夫か?)
火影
「直ぐに戻りますから」
海之
(……)
それだけ言うと火影は通信を切る。すると、
火影
「……………いつまでそんな所に隠れてんだ?」
火影は誰もいない筈の林の中で声を出す。
(…………)
火影
「どこの誰か知らねぇがそんなに殺気むき出しじゃ幾ら上手く隠れてても意味ねぇぜ?さっさと出てこい」
すると、
火影
「!」
ズドンッ!
カッ!…キィィンッ!!
突然飛んできた銃弾。それを火影は透かさずバルログを左手に展開し、弾を熱で蒸発させる。
火影
「次はそっちが一発撃つ前に俺はテメェの頭に二発風穴空けるぜ?」
火影は凄みを含む声で相手に呼びかける。既に右手のエボニーが飛んできた方向に向けられていた。…………すると、
………ザッザッザッザ
それは雪を踏みしめ、暗闇から姿を現した。
火影
「……てめぇか」
M
「……」
バイザーを被り、黒い服を身に着けた女。それはMだった。
火影
「随分なご挨拶だな。だが生憎一夏はここには来てねぇぞ」
するとMは意外な言葉を出す。
M
「……織斑一夏に用はない。奴などいつでも倒せる。用があるのは…貴様ら兄弟の方だ」
火影
「…妙だな?お前は今まで一夏一筋だったのに今度は俺か?せっかくだが相手には困ってないぜ」
火影は相手にしない様にする。
M
「貴様らは、貴様らは私が倒せねば…私は、私は…!」
火影
「……」
そう言うとMは自らのISである黒騎士の媒体と思われる黒いクリスタルを出す。
M
「確か火影と言ったな!今ここで私と戦え!!」
だがそんなMに対し火影はふざけた調子を崩さずに返す。
火影
「…嫌だね。俺の敵はあのオーガスっていうジジイだ。てめぇじゃねぇ」
M
「ならば嫌でも戦う様にするまでだ!………!?」
Mは困惑した。黒騎士が展開されない。
M
「何故ISが展開されない!?」
焦るM。すると、
火影
「前にてめぇのお友達が使った手を使わせてもらったぜ」
火影は手に小型のデバイスの様なものを持っている。
火影
「こいつはてめぇのお友達が使った……リムーバーだっけか?それと同じ波を発生させる事ができんのさ。範囲も狭いし使った俺も使えねぇんだけど。ちょいと縁があって作ってみたぜ」
M
「くっ!」
火影
「…しかし妙だな。オーガスのずる賢さならこんな対策とっくにしてると思ったんだが。何も持たされないまま来たのか?てかこんな馬鹿な手が奴の指示か?」
するとMは意外な答えを言った。
M
「…主は知らない」
火影
「…あ?」
M
「主からは貴様らに手を出すなと言われている…。私では…貴様らには決して勝てぬと」
火影
「要するにてめぇの独断って事か…。なら猶更戦う道理はねぇな。奴にバレない内にさっさと帰んな」
するとMは手にナイフを持ち、
M
「黙れ!貴様もISを使えないのなら条件は同じだ!ISが使えなくても私がこの手で殺してやる!」
それでも戦おうとするMに対し、火影は手に持っている機械をポンポン投げながらこう答えた。
火影
「ぶっそうな事言うねぇ。…言っとくが、俺がこいつを使ったのはISを使えない様にするためじゃねぇ」
M
「…どういう意味だ!」
すると火影は両手を広げ、余裕に満ちた表情でこう答えた。
火影
「決まってんだろ?スキーで疲れてホテルで寝てるあいつらを馬鹿騒ぎで起こしたくねぇだけだ」
この言葉が完全にMを怒らせた。
M
「…ならば貴様はここで永遠に眠らせてやるわ!!」
するとMは手に持ったナイフで斬りかかる。
シュン!
しかし火影はそれを難なく避ける。
シュン!シュン!シュン!
次も、次も、その次も。
M
「くそっ!」ガシッ!「!」
ブンッ!!
火影はMの腕を掴み、彼女の身体を放り投げる。雪の上なので其ほどの痛みは無い筈。
M
ドサッ!「がはっ!」
火影
「筋は中々だが、怒りのあまり意味を成してねぇ。動物みてぇに本能で突っ込んでくるだけか?」
M
「黙れ!」ドドドン!
Mは小銃で火影を狙う。
キキキンッ!
その弾は火影のナイフで防がれる。
火影
「ラウラからもらったのが役に立つとはな」
M
「長剣どころかナイフで防ぐとは…!」
火影
「さっきといい今といい銃の扱いも中々だ。避ける暇が無かったぜ。……流石」
とその時、
「「「火影!」」」
火影とMの所に海之や千冬、更に一夏、箒、鈴、ラウラも来た。
海之
「随分遅い見回りだな?」
鈴
「火影!大丈夫!?」
火影
「海之や先生はともかくおめぇら…よくわかったな?」
ラウラ
「私の聴覚を甘く見るなよ火影。銃声が聞こえたから駆けつけたのだ。他の皆は刀奈さんの指示で万一を考えてホテルに残っている。それより…」
M
「……」
一夏
「M!」
箒
「お前性懲りもなく!」
千冬
「……」
M
「織斑一夏、それに織斑千冬。今は貴様らに用はない!」
一夏
「どういう事だ!?」
火影
「今のこいつの狙いは俺と海之なんだとよ」
鈴
「! 火影と海之を!?」
M
「そうだ…。貴様らは…私の手で倒さねば!」
箒
「どういう事だ…?」
一夏
「ふざけんな!お前の相手は俺だ!」
一夏が前に出ようとすると火影が止める。
火影
「よせ一夏。今コイツの相手は俺だ」
一夏
「だけど!」
火影
「冷静になれ一夏。もうお前は以前のお前じゃねぇんだろ。憎しみに囚われんな」
一夏
「!あ、ああ。でもこいつは!」
火影
「いいから俺に任せろ。海之、それに皆も手を出すな」
海之
「…その必要もないだろう」
千冬
「…お前達下がれ」
千冬にそう言われて皆は下がる。そして火影とMは再び向かい合う。
M
「こざかしい真似を…。纏めて相手してやろうと思ったのに」
火影
「強がるなよ。んじゃ再開といこうぜ?とっとと終わらせて寝ちまいてぇしな」
M
「…貴様ァァァ!!」
どこまでも余裕な火影にMは怒りのまま再び斬りかかった…。
…………
???
だがそんなMの様子をこちらが気付いていない筈は無かった。
スコール
「…M。…あの子どうして…」
オータム
「…けっ!てめぇが奴らの相手になるかよ」
スコール
「止めなさいオータム。あの子だって馬鹿じゃない。これまでの戦いからあんな事が無謀だって事はわかっている筈なのに…」
オータム
「…どうでもいい。奴らを殺すのは私だ」
ウィ――ン
すると部屋の扉が開き、入ってきたのは
スコール
「…オーガス、Mが…!」
オーガス
「……」
オーガスはその様子を黙って睨みつけていた…。
…………
場所は戻り、再び火影とMの戦い。
ガキンッ!キンッ!
ズドンズドンズドンッ!
キキキン!!
M
「でやあぁぁぁぁ!」
Mは先ほどから火影に止む無い攻撃を繰り返す。ナイフ、小銃、そして時には体術も使い、本気で殺しにかかる気合で。しかし、
ドゴォッ!
M
「ぐほっ!」
火影
「読みの速さに頼りすぎなんだよ」
それらは全て火影に弾かれる。ナイフも銃も体術も身長の差も利がある火影に。この程度の殺意を向けられるのは慣れたもの。前世で幾度となく命を狙われた彼にとっては。
M
「お、おのれぇぇ!」
しかしMもまた休まず攻撃を仕掛ける。何度押し返されても。
鈴
「やっぱりISを使わなくても火影強いわね」
箒
「…しかし敵ながらMの奴も凄い体力だ。あれほどやられているというのに」
ラウラ
「ああ…。いくら雪があるとはいえダメージが無い訳では無い筈だ。少し異常に近いぞ」
千冬
「……」
一夏
「千冬姉…?」
海之
「……」
ガキィィィィィン!!
M
「うわぁぁぁ!」ドサッ!
そして何度目かの撃ち合いの後、とうとうMの持っているナイフが折れた。
箒
「ここまでだな…」
M
「まだ…まだだあぁ!」ダッ!
鈴
「あいつまだ諦めないの!?」
殴りかかろうとするM。すると、
ガシッ
M
「!」
火影
「こんなん付けてたら前が良く見えねぇだろ?視界不良は事故のもとだぜ!」ブンッ!!
火影はMの付けるバイザーを掴み、そのまま放り投げる。その衝撃でバイザーが取れる。放り投げられたMはうつ伏せで地面に倒れこむ。顔を隠すように。
M
「ぐは!…き、貴様バイザーを!」
火影
「話をする時は人の目を見ろって教わらなかったか?……マドカよ」
M
「!!」
千冬
「火影…お前!?」
海之
「……」
その名前を聞いて顔を隠してうつ伏せのMが一瞬反応し、千冬は驚く。海之は目を細めて沈黙する。
鈴
「マドカ…?それがあいつの名前?」
一夏
「そ、そう言えば確か千冬姉も前にそんな名前を…!」
箒
「だからMか…。しかし何故火影が?」
M
「貴様…何故その名前を!?」
火影
「話をするときは人の目を見てやりな。いい加減顔上げねぇとふやけちまうぜ、マドカ」
M
「…貴様ぁぁぁ!!」
マドカという名前に反応して怒りが頂点に達したのかMは起き上がり、顔を伏せたまま再び折れたナイフで斬りかかる。しかしやはりこれも腕を掴まれ、今度は、
火影
「いい加減にしねぇか!!」ブンッ!
M
「ぐあぁぁぁ!」
怒りの声と共に火影に思い切り放り投げられたM。
M
ドサッ!「がはっ!」
すると仰向けになった顔が月の光で見えた。
一夏達
「「「!?」」」
海之・千冬
「「……」」
そしてそのMの素顔を見て一夏達は激しく困惑した。海之と千冬は沈黙する。何故なら、
千冬にそっくりな顔のM
「ぐっ、うぅ…」
その顔は千冬とそっくり、一見やや幼い千冬とも言える顔だったからだ。
一夏
「なっ、……千冬姉!?」
ラウラ
「ば、馬鹿な!何故奴が…教官と同じ顔をしている!?」
箒
「ど、どういう事だこれは!」
鈴
「良く似てる、とかそんなレベルじゃないわね…」
千冬
「……」
千冬と同じ顔をしたMに一夏達は言葉が無い。その千冬は沈黙したまま。
マドカ
「おの、れ…貴様…!」
火影
「マドカよ、無様だぜ今のアンタ。そんなんじゃ俺らはおろか、一夏や鈴達にも勝てやしねぇ」
マドカ
「その名で私を呼ぶな!その名前で呼んでいいのは!……」
何故かそこで黙る。
箒
「どうした!何故黙る!」
マドカ
「ぐっ……何故だ!何故貴様はそこまで強い!平和な世界でぬくぬくと育った貴様らが!何も失っていない貴様らが!ISを使えるだけでなく、どうしてそれほどまでの力を身に着けたというのだ!?」
手で雪をかきむしるマドカ。悔しさがにじみ出ている。
火影
「……」
千冬
「マドカ…」
鈴
「何も失っていないですって!ふたりの事何も知らない癖に!」
ラウラ
「そうだ!貴様海之と火影がどれだけのものを!」
海之
「よせふたり共。…もう昔の話だ」
そう言って海之も前に出る。
海之
「…M、いやマドカ。俺の知っている奴も嘗てお前と同じ考えだった。何も背負うものもなく、何も守るものも無い。力のために何もかも捨てた者こそ強いと。だが、そんな男にある奴が言った。無くしたから強いんじゃない、無くしたくないから強いとな」
マドカ
「…無くしたくないから強い…だと?」
火影
「俺達には失いたくないもんがある。だから絶対負けられねぇのさ。……お前にもあったんじゃねぇのか?失いたくないもんが。例えば…兄弟とか姉妹とかよ」
マドカ
「…!!」
その言葉を聞いたマドカの目が大きく開かれる。
火影
「…マドカ。お前が俺らの過去に何があったか知らない様に、俺らもお前の過去にどんな事があったのかはそんなに詳しくは知らねぇしそれを変える事も出来ねぇ。でもよ、未来は変えられるんだぜ?これからのお前次第でな」
すると火影に続いて千冬が話しかける。
千冬
「……マドカ。もうやめろ。お前は」
するとそんな千冬の言葉を遮って、
マドカ
「黙れ!貴様が私に言うのか!?9年前貴様が!いやもっと言えば11年前貴様と篠ノ之束があんな事をしなければ私は、私達は!」
千冬
「……」
箒
「11年前って…まさか白騎士事件か!?」
ラウラ
「そして9年前とは…第一回モンドグロッソのあった年だな…」
マドカ
「そして織斑一夏!貴様は私の、存在の意味を傷つけた!」
一夏
「だからそれがわからねぇって言ってるだろう!俺とお前と一体なんの関係があるんだよ!」
マドカ
「…更に貴様らだ赤と青の兄弟!貴様ら兄弟を倒さなければ…私は!」
火影・海之
「「……」」
マドカ
「戦えぬ私等意味は無い!私が生まれた時からな!」ジャキッ!
そしてマドカは再び立ち上がり、戦おうとする。
ヴゥ――ンッ!
すると火影とマドカの間に転移が現れた。
スコール
「……」
現れたのはスコールだった。
スコール
「M、戻りなさい」
M
「スコール!邪魔をするな!こいつは私が!」
スコール
「オーガスの指示よ!」
M
「!」
スコール
「…戻りなさい」
M
「……」
Mは悔しい表情を崩さず転移して去った。
千冬
「スコール・ミューゼル…!」
背を向けながらスコールは言う。
スコール
「…できればこのまま見逃してくれるとありがたいんだけど」
ラウラ
「何をふざけた事!そんな事できる訳」
するとそんなラウラを海之が抑える。
ラウラ
「海之!?」
海之
「……」
火影
「お前らの気持ちはわかる。俺達も同じだ。でも…今はいい」
一夏
「火影…お前」
スコール
「……」
火影
「教えろ。これがあいつの独断ってのは本当か?」
スコール
「…ええ。私も、オーガスも関わっていない」
火影
「…そうかい」
箒
「スコール・ミューゼル!姉さんは無事なのだろうな!?」
スコール
「ええ…。…じゃあね」
それだけ言うとスコールは頷いて転移し、帰って行った。
…………
火影・海之・一夏の部屋
事後、火影達はホテルの火影達の部屋に集まっていた。
シャル
「火影大丈夫?怪我とかしてない?」
火影
「ああ大丈夫だって」
本音
「良かった~」
刀奈
「幸い他の皆には知られていないわ。先生方にも山田先生から何も言わない様にしてほしいって伝えられてる」
セシリア
「それにしてもMという方が再びやってきたなんて…。しかも今度は火影さんを狙ってきたのですね?」
鈴
「ええそうみたい。あいつも火影と海之は自分の手で倒さなきゃって言ってたわ」
簪
「どうして…なんでふたりを…。しかもオーガスでもスコールって人の指示でもなく」
ラウラ
「わからんが…Mの奴、妙にいつもと違っていた。かなり追い込まれていて余裕が無い様子だったな」
そしてここで最大の疑問が浮かぶ。
箒
「それもあるが…もっと気になるのは、何故Mが千冬さんと同じ顔をしていたのかという事だ」
一夏
「そ、そうだ!どうしてなんだ千冬姉!一体あいつはなんなんだ!?」
千冬
「……」
一夏は千冬に詰め寄るが千冬は答えない。
一夏
「千冬姉はあいつをマドカって呼んだ!てことはあいつを知ってるんだろ!?あいつとどういう関係なんだ!?」
クロエ
「い、一夏さん落ち着いて下さい」
一夏
「それにあいつは俺に存在を傷つけられたと言ってた。どういう意味なんだ!?千冬姉は何か知ってるんじゃないのか!」
だがそんな一夏に対し、千冬は、
千冬
「……何も話す事はない。一夏、お前はもう奴に関わるな」
一夏
「な、なんでだよ!?」
千冬
「私が終わらせる。あいつの事は…元々私の問題なのだ」
一夏
「こっちは何度も命狙われてんだ!せめて理由位話してくれよ!」
千冬
「答える事は無いと言った筈だ…」
そう言うと千冬は部屋を出ていこうとする。
千冬
(…あいつは、…あいつはお前の…)
千冬はそれ以上続けずに出て行った。
一夏
「千冬姉!」
火影・海之
「「……」」
ラウラ
「教官…一体どうされたのだ?」
箒
「わからない…。しかし何かご存知なのは間違いないな。あの、マドカという奴について」
刀奈
「でも一夏くんにも話せない程の理由って……」
話し合いが続く中、一夏は、
一夏
「…千冬姉。悪いけど今回ばかりは千冬姉の言う事には従えねぇ」
箒
「一夏」
一夏
「大丈夫だよ箒。俺はあいつを憎いんじゃねぇ、ただ許せないだけだ。…あいつが俺をなんであそこまで恨んでんのかわからねぇ。そしてなんで…千冬姉と顔がそっくりなのかも」
火影・海之
「「……」」
一夏
「でもよ。そんなに俺を倒してぇなら俺のところに正面からタイマンで向かって来りゃいいんだ!学園巻き込んだり火影達を巻き込んだりする、その卑怯なやり方が許せねぇんだ!」
セシリア
「一夏さん…」
一夏
「あいつはまた必ず来る。そん時は今度こそ勝ってみせる!俺と白式、そして雪片・参型で!そしてとっ捕まえて全て話してもらう!Mにも、千冬姉にも!」
一夏の心は闘志に満ちている様子だ。
ラウラ
「……そうだな。今は何事も無かった事を幸いに思おう」
シャル
「そうだね。火影も皆も無事だったし、とりあえず今日は休もうよ」
本音
「私も眠~い」
火影・海之
「「……」」
…………
???
その少し前、戻ってきたMはオーガスと対峙していた。傍にはスコールとオータムもいる。
スコール・オータム
「「……」」
オーガス
「Mよ…。何故あの様な事をした…?」
M
「……」
オーガスは問いかけるがMは答えない。
オーガス
「Mよ、私は以前言った筈だ。奴らに手を出すなと。お前では奴らには勝てぬと。私が直接手を下すと。なのに…何故だ?しかも勝手に」
M
「そ…それは……わ、わた、しは…主のお役に立ちたく」
オーガス
「手を出すなと、言った筈だが?」
M
「…も、申し訳ありません…」
スコール・オータム
「「……」」
オーガスは無表情で、スコールは心配するようにMを見つめる。オータムは気にも留めていないのか別の方向を見ている。
オーガス
「……」
M
「……」
スコール・オータム
「「……」」
暫しの沈黙が流れ、
オーガス
「…もう良い。…M、お前のISを寄越せ」
M
「!? あ、主!」
オーガス
「寄越せ」
M
「……」
Mは黒騎士のクリスタルをオーガスに渡す。
オーガス
「暫しすれば返してやる。もう下がれ」
それだけ言うとオーガスは出て行った。
M
「……」
Mもまた黙って部屋を出て行った。その後ろ姿を見て、
スコール
「M…」
オータム
「けっ…、「出来損ない」が…」
…………
IS学園 千冬の部屋
スキー旅行の二日目は幸い何事もなく終了し、真実を知っている者以外の者は無事イベントの終了を喜んだ。そんな日の翌日放課後、
…コンコン
火影
「失礼します。織斑先生、いらっしゃいますか?」
千冬
「火影か?待っていろ」……ガチャッ「……海之もいたのか。どうしたふたりして?」
訪ねてきたのは火影だけでなく海之もいた。すると、
海之
「…とても大事な話があります。お手数ですが、例の会議室まで来ていただけませんか?」
千冬
「大事な話?」
火影
「…はい」
火影と海之は真面目な表情をしている。
千冬
「……少し待て」
千冬も何かを感じたらしく、ふたりと共に秘密の会議室に向かった。
…………
IS学園 秘密の会議室
千冬
「…よし、周りから遮断したぞ。…それで話とは?」
そして火影は……あのUSBを千冬の前に出す。
火影
「……先週の土曜、スコール・ミューゼルから渡されたものです」
千冬
「! なんだと!接触してきたのか!?」
海之
「黙っていて申し訳ありません。ですがその経緯をお話する前に…どうしても千冬先生にお聞きしたいことがあるのです」
千冬
「……何だ?」
千冬はUSBが気になったがとりあえず質問を聞いてみる。
海之
「……Mが、マドカというあの女が一夏や千冬先生を狙う理由。そして、先生が一夏に話せない理由」
そして火影は言った。
火影
「全ては……「アインヘリアル計画」そして、「織斑計画」のせいではありませんか?」
千冬
「…!!」ガタッ!!
それを聞いた千冬が慌てて立ち上がる。その反応を見て海之達も確信する。
海之
「やはりそうでしたか…」
千冬
「お前達…何故!?…どこでそれを!!」
火影
「…あの女が渡してきたこれに入っていたのです。そのふたつの計画についてのファイルが。そして……」
…………
火影と海之は自分達が見たそれについて話した。その内容に千冬は驚きを隠せない。
千冬
「…あの計画の担当責任者が…オーガス…。あの男、だと…!?」
火影
「…ええ。初めてこのファイルを見た時は俺達も信じられませんでした。でも先日の先生の一夏への反応と言葉。そして先生がMをマドカと呼んだのを聞いて…確信しました。先生も、この計画をご存じである事を…」
千冬
「……」
千冬は力なく再び座る。
千冬
「……何故これを渡された事を直ぐに言わなかった?」
火影
「…頼まれたからです。必ず俺達だけで見ろと。そして…その意味が分かったんです」
千冬
「…意味?」
火影
「実はUSBにはもうひとつ……」
火影はその「意味」というのを千冬に話した。
千冬
「!!」
するとそれを聞いた千冬に再び驚愕の表情が浮かぶ。
千冬
「そんな……では、あいつは…!」
火影・海之
「「……」」
火影と海之は頷く。
千冬
「……なんという事だ…」
千冬は力なく項垂れる。
千冬
「名簿があったなら……あの名前も見たのか?」
火影
「……はい」
千冬
「……」
海之
「…どうしますか?…あいつに、伝えますか?」
千冬
「………お前達はどうすればいいと思う?」
火影
「俺達が決めて良い事じゃありません。……でも俺達は信じてます。今のあいつは大丈夫だと」
海之
「一夏は千冬先生を誰よりも大切に想っています。例え全てを知っても…それは変わらないと思いますよ」
千冬
「………」
長い沈黙が続いた後、やがて千冬は顔を上げ、電話を取った…。
※次回は来月11日(土)の予定です。二週間飛んでしまいましてすいません…。仕事が忙しくなかなか進みませんのが申し訳ないですが少しずつ進めておりますので気楽にお待ち頂ければ幸いです。