IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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火影(ダンテ)と海之(バージル)の嘗ての父、スパーダを纏うオーガス(アルゴサクス)。オーガスはそれをふたりと戦うために自らと束によって生み出したISであり、名を「アルダ・スパーダ」、そして携えるその剣を魔剣「エヴァ」と名付けた。

とその時、嘗てアインヘリアル計画と織斑計画に携わった者達が撃ったと思われるミサイルがオーガスに迫るがオーガスはそれを一蹴し、逆に報復としてファントムやグリフォンを繰り出して基地を壊滅させてしまう。

嘗て人界を救ったスパーダが今度は混沌渦巻く世界へと誘う存在に。父スパーダ、そして母エヴァの名を汚された事に対する火影と海之の怒りは頂点に達し、打倒オーガスを誓う。


第十五章 What they believe
Mission190 光明とタイムリミット


IS学園 指令室

 

 

オーガスからの挑戦ともいえる通信が終わった後、火影達は学園をできるだけ動揺させないために授業に出ながらその日の夜、再び指令室に集まっていた。

 

千冬

「真耶、更識。現時点でわかっている事の報告を頼む」

真耶

「は、はい!」

 

千冬はあの後、真耶とIS学園長等、一部関係者にだけは先ほどの通信の件を話していたのだった。

 

真耶

「皆さんも既にご存じかもしれませんが…、現在あの、アインヘリアル計画の情報が全世界に一斉に流れた事により、世界中のいたる所で規模は様々ながら混乱が起こっています。そしてあの件については一応表沙汰には原因不明の事故として処理されている様です。国によってはそれを信じてまだそれほどの混乱は起こっていない様ですが…」

シャル

「流れたのってほんの一、二分位でしたもんね…。見てない人も大勢いるだろうし」

「学園でも何かしらのイベントの告知かなって言ってた位だからね…」

刀奈

「織斑先生、学園長には?」

千冬

「話せる最大限までは御話しした。勿論内密にな。学園内の動揺を少しでも広めない様できる事は全てするとお約束頂いた。清潔な方だ。信用して良い。…だが」

セシリア

「効果はあまり期待できませんね…。テレビや端末は使わなければ良いとして、携帯までジャックされてる以上、必ず明日も見る生徒がいる筈です。携帯を取り上げる訳にはいかないし…」

 

セシリアの言うとおりあの情報は携帯にも流された。ひとりひとつはほぼ確実に持っているであろうから必ず見る者がいる。それまでコントロールするのは難しい。今は変な情報に惑わされない様に言うしかないかもしれない。……だが問題はそれだけではない。

 

千冬

「各地の被害はどうなっている?」

真耶

「先ほどクロエさんにも調べていただいたんですが…現時点ではまだ至って限定的ですね。ミサイルが発射された拠点だけが一方的に壊滅させられた状況です。死者0で…」

「死人が出ていないのは良いですが…でも」

ラウラ

「ああそれが逆にマズイ事態となっているかもしれん…」

 

箒がこう言うのは理由がある。今朝がたの通信が終わった後、オーガスが差し向けたファントムやグリフォンに基地を壊滅させられた何国かが報復として再度ラ・ディヴィナ・コメディアに向けてミサイルを発射したのである。しかしそれらはやはり全て破壊され、逆にファントムやグリフォンによって再度反撃を受け、壊滅させられた。当然これも情報統制が敷かれ、世間にはあまり伝わっていない。基地の爆発は「不慮の事故」「撤去のために爆破した」とか、ファントム達をその目で見た者達には「気のせい」とした。最も基地の爆発はともかくとしてファントムやグリフォンの姿を見てそれら全員に気のせいと言うのは無理があるが先に仕掛けたのは自分達だからあまり強くは言えないのだろう。

 

真耶

「そしてこれは駄目な方法なんですが…クロエさんが今回ミサイルを撃った国にハッキングした所、例の島へ軍を派遣して直接攻撃しようという動きもあるとか…」

 

国によってはオーガス達の拠点である魔塔へ直接攻撃をしかけようとしているらしい。それを聞いて心当たりがある者達が声を上げる。

 

「こんだけやってもまだそんな事すんのね…。まぁどうせ中国も考えてるでしょうけど…」

シャル

「…フランスも…そう考えているのかな…」

千冬

「…ボーデヴィッヒ、更識。お前達の国ではどうなっている?」

ラウラ

「…はい。先ほど私の副官が申して来たのですが私にも帰還命令が出ております。理由は…軍による某テロ組織への殲滅作戦だと…」

クロエ

「自分達の失敗や罪はそっちのけで対テロ作戦という名分ですか…。相変わらずな体質ですね」

刀奈

「実は私にも話が来ているのよね…」

「え…お、お姉ちゃんにも!?」

刀奈

「私って一応ロシア代表だから。一応返事はまだにしてあるんだけど」

セシリア

「イギリスの私の家の会社にも資金提供依頼の話があったらしいですわ。…でも」

一夏

「ああどう考えても無謀だぜ…。以前のハワイ沖でのアメリカとイスラエルの失敗を見てわからねぇのか。当時最新のゴスペルを持ってきても初期型のアンジェロに一方的に蹂躙されてたじゃねぇか…」

「ましてや今度はそれだけじゃない。ファントムやグリフォンに白いアンジェロシリーズ、しかも敵の拠点ともなれば比じゃない可能性が…」

 

一夏達の言う通り、以前ハワイ沖での戦闘でアメリカ・イスラエル軍は初期型の黒いアンジェロ達相手に半壊滅状態にされ、更に新型のシルバリオ・ゴスペルを奪われるという失態を犯していた。今度は敵の拠点、きっとその時とは比べ物にならない筈。現状いかなる兵器がISに敵わない以上、どれだけ兵器を集めても突破は難しいかもしれない。

 

千冬

「先程私の知人が教えてくれたのだがアメリカでも準備が極秘裏に進められているらしい。この分だと日本やそれ以外の国も進めている可能性が高いな…」

真耶

「で、でもいくら何でも動きが速すぎませんか?あの情報が流れて…、ほんの数十分後にミサイルが撃たれて…、どの国も揃って軍まで動き出しているなんて…」

クロエ

「それだけ連中にとってあの塔が邪魔な存在という事でしょう。一刻も早く消したい位に。あの名簿には世界の権力者の名前もありましたから、その鶴の一声で動かすのも早いかと」

刀奈

「…そうね。その証拠に基地などの破壊も目による直視だけでなく衛星等で簡単に見れる筈。しかし今だにその発表もない、きっと互いに口を閉ざしているのよ。追及したら今度は自分かもしれないと思ってね。皮肉にもあの塔やファイルの流出が世界をひとつにしてるって訳。かりそめの…ね」

「ほんと馬鹿みたい…。そんな簡単に動けたり協力できるならもっと有意義な事に動きなさいっての」

シャル

「ほんとだよね…」

ラウラ

「同感だが今はそれを言ってもしかたがないだろう」

一夏

「どっちにしろオーガスのせいで世界中がおかしくなってる…。全てがあの野郎の思い通りになっているわけだ…。くそ!」

 

世界がオーガスの望み通り混沌している事態に一夏達は顔を顰める。

 

…ウィ――ンッ

 

その時外に出ていた火影と海之が入ってきた。スメリアのレオナに連絡を取っていたのである。

 

「海之くん、火影くん」

千冬

「海之、火影。スメリアではどうなっている?」

海之

「レオナさんに確認しましたがやはりスメリアでも流れたそうです。テレビ、パソコン、携帯…」

「やはりそうか…」

火影

「ただ、ESCのコンピュータと端末にだけは映る事は無かったらしい」

 

その言葉に皆が驚く。

 

真耶

「えぇ!!」

千冬

「本当か?」

火影

「ESCの本社だからかもしれねぇ。あそこは父さんが生み、レオナさんや社の皆が発展させたセキュリティが縦横無尽に張り巡らされてるからな」

刀奈

「流石ESC創始者ね。確か篠ノ之博士にも簡単には出来ないんでしょ?この件が終わったら更識の家のセキュリティにも取り入れようかしら」

「じゃ、じゃあESCのプログラムを他の所にも取り入れたら!」

一夏

「オーガスの手を防げるかもしれないって事か!?」

 

これに箒は首を横に振る。

 

「……いや時間が足りなさすぎる。あれはあと三日で全て公になってしまうんだ」

一夏

「そ、そうか。そうだよな…」

「……しかしそう考えると他の国でもそういった事が起こっているのかもしれんな。政府や軍の最重要拠点とかはもしかしたら…」

セシリア

「ですが例えそうだとしてもそれも公にはしませんでしょうね…」

刀奈

「そうね。それを隠しても攻撃は行いたいというのが本音の筈よ。レオナさんが良い人なだけ。……でもいいのふたり共?そんな事話して」

 

それに対して火影と海之は言う。

 

火影

「当然話しませんよ。皆以外には」

海之

「信用している」

 

それを聞いて皆は嬉しく思った。

 

千冬

「…そうか、ならいい」

火影

「あとレオナさんには「変なもんがテレビに流れても心配無用だから余計な混乱は起こさない様にだけしてくれ」とスメリア政府に直接提言してくれとも言っといた。幸いあの計画はスメリアは知らなかったからな」

「せ、政府にって…レオナさんそんなパイプもあるんだ」

火影

「有名人だからな。因みに現大統領はギャリソンの同級生で茶飲み友達でもあるぜ」

一夏

「…ほんと言葉を失うよ」

 

他の皆も同意見だった。それはさておき、ここで先程火影が言った言葉にクロエが気付く。

 

クロエ

「それより…火影兄さん。今兄さんが言った「心配はいらない」というのは…?」

 

すると火影はさも当然の様に話した。

 

 

火影

「ああさっきこいつと話したんだがな。俺と海之は明日早朝、夜明け前にでも発つ。あのラディなんとかってとこにな」

海之

「……」(コク)

 

 

海之も頷いた。

 

一夏

「えっ!!」

「な、何だと!明日の早朝!?」

「本当海之くん!?」

海之

「奴に一刻の猶予も与えてやるつもりはない」

火影

「そういう事だ。さっさと行って、さっさと片を付けてやる」

真耶

「無茶です!あまりにも危険すぎます!」

火影

「…織斑先生、良いですね?」

 

真耶や皆の心配する声を無視して火影は千冬に問いかける。

 

千冬

「……言っても聞かんだろう?」

真耶

「先輩!?」

 

そして千冬も止めなかった。

 

千冬

「お前にもわかっているだろう真耶。今のこいつらは止められない。誰にもな…」

真耶

「……」

 

そう言われて真耶は黙ってしまう。彼女も心ではそう思ってたのだろう。そして、

 

一夏

「なら俺も行くぜふたり共!皆もだよな?」

「ああ当然だ!」

セシリア

「おふたりが行くなら私達も!」

 

ふたりが行くと聞いて一夏達も当然一緒に行こうとする。しかし、

 

火影

「…駄目だ」

海之

「お前達はここに残れ」

 

そう言う一夏達をふたりは至って冷静な声で止めた。

 

一夏

「な、何馬鹿な事言ってんだよ!?」

火影

「今度の戦いは今までの比じゃねぇ。オーガスは俺らに向けて全力をぶつけてきやがる筈だ。よそに回す手はねぇ。つまり手出ししねぇ限りここが襲われる心配はない。ここに残っていれば安全だ」

海之

「俺達に任せておけ」

 

当然彼女らはそれに反発する。

 

「…今さら、今さらそんな事言うの!?ふざけないでよ!アンタ達だけ行かせるなんてもう嫌よ!」

シャル

「そうだよふたり共!僕達も絶対一緒に行くから!」

ラウラ

「ああ私達も一緒だ!拒否はさせない!」

 

少し怒り気味の鈴達。しかし海之が冷静にこう返事を返す。

 

海之

「自分達の未来を捨てる事になっても、か?」

「……え?」

セシリア

「わ、私達の未来?」

「ど、どういう事よ!?」

 

わからない表情を浮かべる皆。すると理解したらしい刀奈とクロエが口を開く。

 

クロエ

「……皆さん、火影兄さんも海之兄さんも本心では連れていきたいと思っている筈です。……ですが今回は少し事情が違う気がします。一夏さんと箒さん、そして私以外は」

シャル

「じ、事情が違うって?」

「私と一夏とクロエ以外…?」

 

意味がわかっていない皆に刀奈が教える。

 

刀奈

「…忘れたの?一夏くんと箒ちゃんとクロエちゃんは違うけど、私や貴女達は国の代表や代表候補であり、専用機持ちなのよ?」

セシリア

「………あ」

 

それを聞いてハッとするセシリア。

 

刀奈

「代表候補と専用機は国に所属していると同時に、国に貢献する事を義務付けられてるわ。本来火影くん達の様に個人でISをどうこうできはしないの。ましてやこんな情勢なら尚更。今まではイベントや大会時の襲撃だったからハプニングとして扱われたから大丈夫だったのよ」

 

確かに今までの戦いは試合やキャノンボール・ファーストというイベントで起こった事故。そして学園や街の防衛という緊急事態だったから出撃できた。先のドッペルゲンガーでの戦いは独断だったが「学園に向かっていたらしかったから襲われる可能性があったので迎撃した」「戦闘データを取りたかった」という名目と根回しで何とか不問にできていたのだった。だが今はそれも通用しそうにないし時間もない。

 

一夏

「そ、そういやそうだった…」

刀奈

「貴女達今帰還命令受けてるんでしょ?今受けてなくても近い内にある可能性は非常に高いわ。そして代表候補はそれに従わなければならない。私も答えは出してないけど…拒否はできない。返事のタイミングを探しているだけ…」

鈴・シャル・簪・ラウラ・セシリア

「「「……」」」

 

代表候補の五人は的を射ぬいた刀奈の言葉に黙ってしまう。

 

一夏

「も、もし命令に従わなければどうなるんですか…!?」

 

そう聞いてきた一夏に対し、刀奈は冷酷な言葉を返す。

 

刀奈

「契約違反と国への反抗として…最悪投獄。良くても代表候補の地位は取り消し。専用機は取り上げられるでしょうね…」

「そんな…」

千冬

「……」

真耶

「そうか…火影くんや海之くんは…」

クロエ

「兄さん達が皆さんに残れと言われたのは、皆さんの未来を守るため。そして何かあった時に直ぐに対処できる様にするためだと思います。仮に国から命令があった時とか」

 

すると火影が鈴とシャルの肩に手を置いて言う。

 

火影

「そういう事だ。…お前らが来てくれようと思うのは俺らも嬉しいさ。だが私情や感情で動いて今までの努力やこれからの未来を犠牲にすんな。今までお前らを支えた友人は、故郷の家族はどうする?俺らもそんな事してほしくねぇ。安心しろ、お前らの国が馬鹿する前に終わらせてやるからよ」

「火影…」

シャル

「で、でも…」

海之

「俺達を信じろ」

「海之…くん…」

ラウラ

「……」

 

火影と海之はさっきまでの様な淡々とではなく安心するんだという表情を見せる。…しかし鈴達は不安だった。代表候補の座を失う事よりも…何より一番重要な時にふたりと一緒にいられない不安が心を支配していた。

 

一夏

「そういう事なら皆はここに残ってろ。俺達が行く」

セシリア

「い、一夏さん…」

「ああ。私達が皆の分まで戦ってくる」

クロエ

「そして絶対帰ってきます。私達も束様も」

真耶

「一夏くん…箒さん…クロエさん…」

火影

「……お前ら正気か?敵はオーガスだけじゃねぇ。間違いなくマドカやスコール達もいるぞ?」

海之

「多勢に無勢どころではないぞ」

 

だがそんなふたりの言葉に一夏達は力強い言葉で返す。

 

一夏

「わかってるさ。それでも俺もふたりと戦う。ネロやあの人達との約束なんだ」

「ああ。それに姉さんは私の手で救い出す」

クロエ

「生きるも死ぬも兄さんや皆さん、そして何より束様と一緒です」

刀奈

「貴方達…」

鈴・シャル・簪・ラウラ・セシリア

「「「……」」」

 

一夏や箒やクロエは行くという意志を曲げない。そんな彼らを見て自分達の無力さを悔やむ鈴達。……すると、

 

千冬

「………海之、火影。すまないが一日だけ待ってもらえないか?」

火影

「…え?」

海之

「…?」

一夏

「千冬姉?」

 

千冬がふたりにそんな事を言った。

 

千冬

「時間は確かに少ないがまだあるだろう?一日、いや明日の昼まででいい。もしかするとこいつらも同行させる事ができるかもしれん…」

 

これに反応するのは鈴達。

 

「…え!?」

ラウラ

「ほ、本当ですか教官!?」

シャル

「僕達も火影達と行けるんですか!?」

千冬

「あくまでも可能性だがな…。だが上手くいけば…」

セシリア

「代表候補の座を守りながら…」

「軍に捕まらずに…私達も皆と戦える…!?」

千冬

「まだ決定したわけではない。どうだ?ふたり共」

 

頼むという表情で千冬にそう言われて火影と海之は、

 

火影

「………わかりました」

海之

「……」コク

 

止む無く了承した。

 

千冬

「すまない。では今日の所はこれで解散としよう。明日また召集をかける。言っておくが……くれぐれも勝手な真似をするなよお前達。特にふたりはな?」

 

千冬にくぎを刺された海之と火影。そう言われてとりあえず今日は解散となった。

 

 

…………

 

IS学園 1-1

 

 

……そして時刻は過ぎ、翌日。一夏達が授業の合間で休憩していると、

 

生徒

「ねぇねぇ!見た!?」

「見た見た!あの変なのまた流れたよね~!」

「なんか変な事ばっかり書かれていたよね~。「人体実験」とか「新兵器」とか。妙に生々しいけど映画の宣伝かなんかかな~」

「でも力入れてるわね。全チャンネル流れているなんて…」

「テレビが付かなかったから見れてないのよね~私~」

 

会話が所々から聞こえていた。オーガスの言う通り、再びあの情報は前日と同じ時間に流されたのであった。

 

火影・海之

「「……」」

セシリア

「…やっぱり見ている人おられますわね、アレ」

ラウラ

「携帯にまで映っているから仕方がない」

シャル

「…でも昨日よりずいぶん具体的な言葉が出てるね…。一応お父さんとかに伝えといてよかった」

「このままでは明後日にはあれが全て公になってしまう。その前になんとかしないと…」

一夏

「ああ時間を考えると早くても今日の夜、遅くても明日の朝には出ねぇと…!」

本音

「…明日の朝って?」

一夏

「! い、いやなんでもねぇよのほほんさん!」

刀奈

「なんでもないわ本音。心配しないで?」

クロエ

「織斑先生が今日の昼までに何とかすると仰ってましたが…」

セシリア

「今は待つしかないでしょう。それより……刀奈さんの仰った通り、私の所にも帰還命令が来ましたわ」

「本当か!?」

シャル

「セシリアもなんだ。僕の所にも…お父さんから連絡が来たよ…」

「私も今日の朝来たわ。…なんか初めて今の自分の立場がちょっと恨めしく思っちゃうわね…。でも今は信じて待ちましょう。わかったら教えてくれるって言ってたし…」

「うん……」

本音

「……」

 

一夏達は不安を抱えていた…。

 

 

…………

 

IS学園 秘密会議室

 

 

そして更に時刻は過ぎ、場所は例の秘密の会議室。そこに千冬から火影達は呼ばれ、集まる事になった。

 

真耶

「すみません皆さん。お昼休憩なのに呼び出して」

「気にしないでください。それよりお話というのはやはり昨日の?」

千冬

「……ああ」

 

千冬の呼んだ理由はやはり、昨日の国家代表候補組が火影達と同行できるか否かを話すためだった。

 

ラウラ

「教官!それでどうなったのですか!?」

シャル

「そうです!僕達も一緒に行けるかもって言ってましたけど…どうなったんですか!?」

 

皆は目の前の千冬に話しかける。

 

千冬

「慌てるな、落ち着け。……実は、昨日あの話があってから…私は国際IS委員会の主要メンバーの方々に召集をかけた」

 

 

国際IS委員会

 

国のISの保有数や動き、取引などを監視するための委員会。ISに関する事は基本的に全てこの委員会の承諾が必要であり、その権力はかなり大きい。個人所有のISとその操縦者においては一部例外を認められているが、基本的に国によってISの所有数は決められているため、そういった者はどの国にも無断に属してはならず、委員会の決定が必要である。因みに今は箒の件で話が進められているらしい。一夏はDNSによる変化。火影と海之は以前のアンネイムドによるIS学園襲撃事件(※Extramission12参照)の時の海之のドスが効いたのか「触れることなかれ」と話が出ていないらしい。

 

 

セシリア

「ええ!」

「国際IS委員会に…!?」

真耶

「実は先輩は委員会の特別枠なんです。過去の功績が認められての」

一夏

「そうだったのか」

千冬

「…まぁ殆ど幽霊部員だがな。向こうも昨日のファイルの件は知っていた。当然全員が怒っていたがな。互いの責任の責め合いだ」

刀奈

「でしょうね。……それで、一体どのような事を話されたんですか?」

 

刀奈の問いに千冬は答えた。驚くべき答えを。

 

千冬

「結論を言う。……彼らから明後日の朝まで、つまり今日を含めて三日間の猶予を貰った。この三日の間で敵を殲滅し、例のファイルの流出を防げるのなら…我々の、正確には代表候補組の行動は黙認する、とな」

 

火影・海之

「「…!」」

 

驚く火影と海之。もちろん彼女達も。

 

「ほ、本当ですか千冬さん!?」

千冬

「国や軍にも既に連絡は行っている。明後日の朝までは例え我々がISをどう動かそうと自由だ」

「じゃあ…私達もふたりや皆と一緒に行けるんですね!?」

 

自分達も一緒に戦えるという事に少なからず喜ぶ簪達。更に千冬から話は続く。

 

千冬

「そして同時に過剰な被害を出さない様全ての軍の派遣をストップしてもらった。つまりこの三日間の間、戦うのは我々だけだ」

シャル

「僕達だけ…」

セシリア

「軍の派遣もストップという事は…応援は期待できないという事ですわね」

「…いやよく考えればその方がいいかもしれん。下手に手を出されても却って反撃を喰らうだけだからな…」

一夏

「まぁ何れにしても良かったじゃないか。どちらにしても時間は少ないんだ。三日間と言えばあれが広まる最終日だろ?それまでに終わらせればいいんだ」

 

一夏達、特に鈴達は千冬のその言葉に喜ぶ。

 

火影・海之・クロエ

「「「……」」」

 

だが火影と海之、そしてクロエは腑に落ちない表情を浮かべていた。

 

「…火影?」

セシリア

「海之さんもクロエさんもどうしました?難しい顔されまして」

シャル

「僕達が行く事反対なの?気持ちは嬉しいけど僕達も一緒に行きたいんだ!本気だよ!」

火影

「……いやそうじゃねぇ。反対しても絶対に付いてくんのはわかってる。それに関しては何も言わねぇ。……ただ」

ラウラ

「ただ?」

 

すると海之とクロエが千冬に言う。

 

海之

「……千冬先生。何を取引にしたのです?」

一夏

「…え?」

「と、取引…?」

千冬

「……」

クロエ

「私も、多分火影兄さんも同じ意見です。失礼ながら幾ら千冬さんとはいえ、委員会の人間全てを納得させる様な事がそう簡単に出来るとは思えません。これは想像なのですが…何かあるのではありませんか?鈴さん達を自由にする条件が」

千冬

「……」

真耶

「先輩…」

「ほ、本当ですか先生!?」

「もしあるなら答えてください!」

 

先程まで喜んでいた皆はクロエのその言葉で一気に慌てる。すると千冬も観念したのか話し出す。

 

千冬

「………はぁ。……確かに、今回のこれにはある条件がある。お前達、いや正確にはオルコット、鳳、デュノア、ボーデヴィッヒ、そして更識姉妹の六人だがな。もし独自に動く場合、今日より三日間の内に事態を解決できず、例のファイルの流出を許せば……任務失敗としてお前達は代表候補、そして代表の地位を失い、専用機も国に没収される」

鈴・シャル・簪・ラウラ・セシリア

「「「!!!」」」

刀奈

「……」

 

それを聞いた鈴達の表情に驚愕の色が浮かび、刀奈は沈黙する。

 

一夏

「な、なんだって!?」

「ど、どうして!どうしてそんな事に!」

火影

「…ちっ…」

海之・クロエ

「「……」」

刀奈

「……それは絶対ですか?」

千冬

「……いや、今日の日付が変わる迄にそれぞれの国へ帰還する返答を出し、勝手な行動をしなければ例え期限が切れても変わる事は無い。お前達全員帰還命令が来ている筈だ。だがもし返答が無ければ…独自で動いたと判断され…」

火影

「成功すればそのまま。失敗すれば鈴達の未来の代表の座は閉ざされる、って事か…」

千冬

「更に…もうひとつ悪い知らせがある。正確には三日では無く、あの情報が流れるであろう時間より6時間前、それまでに終わらせなければならない…」

「そ…そんな…!」

 

さっきまでの喜びの顔が一転する。

 

一夏

「今日の日が変わる迄に返事出せって事は…もう半日も無ぇじゃねぇか!なんでそんな無茶な要求を飲んだんだよ千冬姉!!」

千冬

「……」

真耶

「一夏くん、先輩も当然最初は反対したんです。でも…昨日言った通り本来専用機と代表は皆さんが思っている以上に重い責務があるんです。そして本来ならもっと早く攻撃が始まる筈でした。それを何とか二日後まで伸ばす事が出来たんです…」

一夏

「で、でもそれにしたって…!」

刀奈

「それだけの事態って事よ。失敗しても投獄されないだけ不幸中の幸いと思わなきゃいけない位ね…」

真耶

「その通りです。先輩がなんとかそれは無しにしてくれました…」

クロエ

「例え失敗しても戦った皆さんに対するせめてもの配慮、というわけですね…」

鈴・シャル・刀奈・ラウラ・セシリア

「「「……」」」

一夏

「……そんなの、…そんなのおかしいだろう!!」

 

一夏は言葉を荒げる。

 

海之

「……千冬先生。そもそも何故委員会に提案を?そのままにしておけば…」

 

確かに海之の言う通り、そのまま何も話さなければ鈴達の地位は何事もなく守れたかもしれない。しかし。

 

千冬

「最初は私もそう思った。だが……あのままにしておけば、こいつらが私情のあまり、何もかもふっ切って勝手に暴走するかもしれないと思った。そうなれば本当にこいつらの立場は無くなるだろう…。だからせめて…ひとつでも可能性を作ってやりたかったのだ…」

「千冬さん…」

一夏

「にしたってこれはあまりにも…」

 

まだ何か言いたそうな一夏。しかしそんな一夏を止めたのは鈴達だった。

 

「止めなさい一夏」

一夏

「鈴…?」

シャル

「そうだよ一夏、千冬さんを責めないで」

セシリア

「そうですわ一夏さん…。私達は大丈夫ですから」

「セシリア…、シャル…」

一夏

「大丈夫って…そんな訳無いだろう!あと数時間で決まるんだぞ!?もし一緒に行ったとしても失敗したら皆が!」

 

だがラウラや簪達が止める。

 

ラウラ

「失敗すると思っているのか一夏?」

一夏

「…え?」

「一夏は…次の戦いが失敗すると思っているの?篠ノ之博士も助けられず、あのオーガスって人も倒せず、あの人の思い通りになるって思っているの?」

一夏

「そ、そんな事させねぇよ!俺達も火影や海之も千冬姉もいんだ!でももし」

刀奈

「もし…は無いわよ一夏くん」

「刀奈さん…?」

 

刀奈は冷静に説いた。

 

刀奈

「今度の戦いに失敗は許されない。もし私達が負けたら…はっきり言ってもう奴を、オーガスを倒す手はないわ。私達が、中でも火影くんや海之くんや千冬さんが負けたら…正直もう誰も敵わないと思う。勿論私もね。自分で言ってて悔しいけど…」

一夏

「それは……」

 

一夏もそれはわかっていた。現状ISが如何なる兵器をも凌駕する以上、恐らく軍がどれだけのそれ以外の戦力を持ってきてもあのオーガスやオーガスが生み出した兵器達の全滅は難しい。加えてスコールやオータム、ダリル・ケイシーやフォルテ・サファイア、そしてマドカと凄腕のIS操縦者達もいる。

 

刀奈

「正直なんの支援も無いのは辛いところだけど…でもはっきり言って今ここにいるメンバーは現時点で一番なんとかできる可能性があるわ。千冬さんは私達を自由にする時間を作ってくれたことでその可能性を高めてくれた。そう思った方が良くない?」

「そうよ一夏。それにアンタさっき言ったじゃない。時間切れまでに全部終わらせたらいいって」

一夏

「そりゃ…そりゃそうかもしれねぇけど…」

 

鈴のその言葉に一夏は何も言えなくなってしまう。

 

火影

「……ま、何れにしても俺らは明日の夜明け頃には発つがな」

「だがどうやって行くのだ?流石にISのままあそこまで行くのはきついぞ?」

クロエ

「それなら大丈夫です。私は束様のロケットを持っています。操縦も可能です」

一夏

「…?でもあれは束さんが使ってたんじゃねぇの?」

クロエ

「いえ、実は束様と私はスペアのロケットを粒子状態にしていつも用意されているのです。あの様な無茶な着陸をすれば消耗も激しいですから」

真耶

「あ~…」

千冬

「確かにな…」

一夏

「もんのすごく納得~」

 

~~~~~~

皆で笑った。こんな状況でも久々に笑った気がした。

 

火影

「ハハ……ま、焦って今すぐ決めなくてもまだ考える時間位はある。日が変わるまでに結論を出せ。お前らがどんな決断しても誰も責めやしねぇよ」

海之

「後悔しない様最善の結論を下せ」

鈴・シャル・簪・ラウラ・セシリア

「「「……」」」

「皆…」

千冬

「そういう事だ。時間は少ないがよく考えてくれ。では解散だ。…繰り返すが特に海之と火影は」

火影

「「決して早まるな」でしょう?わかってますよ」

 

こうして取りあえず今は解散する事になった。

……すると最後に千冬と真耶、そして腕を組んで何か考えている様な海之が残る。

 

海之

「……」

千冬

「…海之?」

真耶

「どうしました海之くん?」

海之

「…千冬先生は何も………、いえ、何でもありません」

 

海之は何も言わないまま部屋を出て行った

 

千冬

「……勘のいい奴だな」

真耶

「先輩…」

 

そう呟く千冬と、心配そうに彼女を見つめる真耶が残った。

 

 

計画の全貌が世に出るまで……残り一日と17時間……。




※次回は来月5日(土)の予定です。

お読みくださっている皆様、お待たせしてすいませんでした。今章はあと二、三程度の予定です。
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