IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
無力さを悔しがる者達。…そんな中、翌日に千冬がある光明を作った。情報が開示される6時間前までに全てを終わらせれば彼女らの行動は不問になる。しかし失敗すれば代表候補や代表の座、そして専用機は取り上げられてしまうとの事だった。火影と海之は明日の早朝には改めて出発する。限られた時間の中、果たして鈴達の出す結論は…?
キーンコーンカーンコーン
昼休憩の火影達の会議から幾分時間がたち、この日の最後の授業もいつも通り終わった。
千冬
「では本日の授業はこれまで!」
生徒達
「「「ありがとうございました!」」」
そしてこれも同じ様に終わりの挨拶があった後、千冬が更に声をかけた。
千冬
「最後に、全員が既に知っていると思うが最近妙な映像の話があちこちから聞こえているが、変に惑わされたりしない様にな!あと伝わっているだろうが出来る限りあの妙な画面が流れると思われる時間はテレビを映すな。これ以上もし変な噂がたったらたまらんからな」
生徒達
「「「は、はい!」」」
千冬
「ああそれからもうひとつ。明日だが私、そして実行委員である火影と海之はある用事のため、丸一日外に出ている。連絡にも出れんだろうから我々に用事があるなら今日中に済ませておくように。良いな?」
本音
「……ひかりんどこか行くの?」
火影
「ああちょっとな。何、心配すんな本音。さっさと終わらせてくるさ」
千冬
「では解散!」
…………
学園 食堂
その後、火影と海之、一夏、箒、クロエの五人は食堂の隅の席にいた。
一夏
「セシリアや鈴達は……やっぱいないか」
箒
「色々やる事や考える事があるのだろう…。ましてや皆にはあと数時間しか考える猶予がないんだからな。行くか留まるか…」
海之
「……」
火影
「そういや箒、アレについてお前の家族には知らせたのか?」
箒
「ああ、叔母さん家族や…離れて暮らす両親にも伝えておいた」
火影
「そうか。…クロエ、お前のロケットでオーガスの島までどれ位で行ける?」
クロエ
「はい。約半日程あれば」
一夏
「明日の夜明けに行くとして最後のあれが流れるまで…同じく半日位か。……時間だけなら何とかなるか」
箒
「…いや、もしセシリアや鈴達が行くならその6時間前迄に終わらせる必要がある」
一夏
「て事は…あと5,6時間ってとこか。……ギリギリだな」
火影
「なに、そんなに時間をかける必要なんてねぇ。一時間で終わらせてやる」
深刻な表情の一夏に対し、火影はいつもと変わらない表情で言う。
一夏
「ハハ、こんな事態でもお前らは変わらないんだな。全く羨ましいよ」
火影
「んな事はねぇさ。俺だって焦ったりムカついたりする。特に今はギリギリだぜ。静かな怒りってやつだな」
クロエ
「…それはあのオーガスの事ですか?」
箒
「まぁお前達の両親の名前を利用したんだからな」
火影
「……まぁそれもなんだが……」
海之
「……」
するとふたりは考え込むような表情をして黙る。
箒
「…どうした?」
火影
「……いや何でもねぇ。……それよりお前ら、本当に」
すると何か言いたそうな火影に一夏が手を前に出して止める。
一夏
「もういい加減無しだぜそれは。どんなに反対されようが俺も行く。前にも言ったけどネロや俺を立ち直らせてくれたあの人達との約束なんだ。それに……マドカとの蹴りをつけるためにも」
海之
「一夏…」
箒
「私も一夏と同じだ。姉さんの居場所がわかったんだ。ふたりがどれだけ反対しても一緒に行かせてもらう」
クロエ
「私もです兄さん。皆さんと一緒なら…何も怖いものなんてありません」
火影
「ふたり共…」
一夏と箒、クロエの真っすぐな目に、ふたりは諦めた。
火影
「……はぁ、全く恐れ知らずな奴らだぜ。…どうなっても知らねぇからな」
一夏
箒
「お前達にだけは言われたくないぞ?」
クロエ
「同感です」
一夏
「違えねぇ~」
海之
「むぅ…」
~~~~
三人は小さく笑った。
箒
「それよりふたり共、鈴や簪達の所に行ってやったらどうだ?今のあいつらにはふたりが必要だろう」
クロエ
「そうですよ。行ってあげてください」
火影
「……そうだな」
海之
「……」
言われてふたりは立ち上がり、彼女らの元に向かう事にした。そしてクロエも
クロエ
「……では私も行きましょうか。おふたりはごゆっくり」
箒
「え…お、おいクロエ!?」
そう言って行ってしまった。急に言われて意識する箒。
箒
「……」
一夏
「気ぃ使わせてしまったかな?…どうした箒?」
箒
「へ!?な、何でもない!」
一夏
「……それにしても火影の奴。鈴を大事にしてやらなきゃ許さねぇぞ」
箒
「!! 一夏…お前気付いていたのか?」
一夏
「この前の鈴との会話でわかったんだ。幾ら俺でもあんな事聞かされたらわかる。それにあいつとはお前と同じ位の付き合いだからな。誰の事か位わかるさ」
箒
「……後悔してるのか?」
一夏の口からそんな言葉が出て少し心配になる箒。
一夏
「…いんや。火影なら、あいつなら安心だしな」
箒
「……そうか」
一夏
「ああ。そして…俺にもお前やセシリア、蘭や刀奈さんみたいに…俺なんかを好きでいてくれる人達が沢山いる。ほんとありがたいよ」
箒
「……なんか今のお前を見てると…数日前のお前とは別人の様に思えてくるよ。本当に今までどれだけアプローチしても気付かなかったのに…」
一夏
「……俺ってそんなに鈍かったのか?」
箒
「今更か!?」
一夏
「おい!」
~~~~~
一夏と箒は再び笑いあう。不安を少しでも和らげようという表れなのかもしれないが、こういうのも悪くない。
一夏
「……必ず勝とうぜ箒」
箒
「勿論だ。全部終わったらディナーデート、行かなきゃならんしな♪」
一夏
「そういや四人も行かなきゃいけねぇんだったな。…はぁ」
箒
「良いではないか♪どうせチケットでタダだし、それに白式の企業からたっぷり謝礼金も受け取っているのだろう?安いものだ♪」
緊張を和らげる様な平和なやり取りが続いていた。
…………
IS学園某アリーナ
誰もいない学園内の某アリーナ。今日はこのアリーナを使う者はいないらしい。きっと別のアリーナでは部活や訓練が行われているだろう。
ラウラ
「……」
そんなアリーナの観客席にラウラがひとりでいた。つい先ほどまで誰かと電話していたのか手には携帯がある。
ラウラ
「ハァ…」
?
「……ここにいたか」
ラウラ
「!」
……すると突然ラウラの後ろから声がした。しかしその声にラウラは振り返らずに冷静に返事をする。まるで誰かわかっているかの様に。
ラウラ
「……海之か」
海之
「よくわかったな」
ラウラ
「当たり前だろう、嫁である私がわからずにどうする」
声をかけたのは海之だった。
ラウラ
「隣座れ。…それにしても先程の言葉、まるで私がここにいると分かっていた様だな?」
海之
「……ここはお前と戦った場所だからな。何故かいるかもしれんと脚が向いていた」
ラウラ
「夫婦間の以心伝心というやつか」
そう、去年このアリーナで力に囚われたラウラは海之と戦い、そして救われた。
(※Mission45参照)
ラウラ
「……あの時は本当にすまなかった」
海之
「気にするな。過ぎた事だ」
ラウラ
「そうもいかんさ。私はあの時、お前を殺しかけたんだ…。あの時の、お前を貫いた時の感覚は忘れられん…。だがお前はそんな中でも私を助けてくれた…。感謝している」
海之
「礼もいい」
ラウラ
「ふふ、強情な奴だな。私の夫は」
口数が少ない海之だがラウラはそんな彼の気持ちはわかっている。そして暫し沈黙の時間が流れた後、海之は問い出した。
海之
「……結論は出たのか?」
するとラウラは前を真っすぐ見て答えた。
ラウラ
「ああ。先程上層部と部下に話した。……私は海之、お前や皆と共に行く」
迷い無き答えだった。
海之
「……死ぬかもしれんぞ。その上時間も著しく限られている」
ラウラ
「危険な賭けである事もわかっている。国に戻った方が代表候補として、そして一部隊を率いる者としても正しいのかもしれん。……だが」
するとラウラは今度は横にいる海之の目を真っすぐ見て話す。
ラウラ
「私自身としては、今帰る事が正しいとはどうしても思えない」
海之
「……」
ラウラ
「海之、お前は先日私達に言ったな?自分の信じるものは自分で決めろ、と。……だから私も考えた。私が信じる事に従おうと。それは…お前や火影、クロエさんや教官、皆と共に戦う事だ。それだけは絶対に信じられる」
海之
「ラウラ…」
力強いラウラの目に、
海之
「……なら、もう何も言わん。これまで通りだ」
ラウラ
「…ふふ、ああこれまで通りだな」
海之も何も言わなかった。するとラウラが再び口を開く。
ラウラ
「……海之。こんな時になんだが少し先の話をしていいか?」
海之
「…ああ」
ラウラ
「……この戦いが無事に終わり、二年後学園を無事に卒業したら…私は一旦国に戻り、軍を立て直す手助けをするつもりだ。どれ程の事ができるかわからんが…、少なくとも軍の腐敗を少しでも取り除く」
海之
「……そうか」
ラウラ
「ああ。そしてそれをある程度成し遂げたら…………私は軍を辞める」
海之
「……」
ラウラの告白に表情は変わらずも海之は驚いていた。
ラウラ
「シュヴァルツェア・ハーゼの隊長も、そして代表候補の座も降りる」
そして感じていた。ラウラは本気である事を。決して冗談で言っている訳ではないと。
ラウラ
「そして………いや、これ以上は全てが終わった後にしよう。クラリッサが言っていたフラグとやらにはしたくない」
海之
「…フラグ?」
ラウラ
「ああ気にするな。あと皆には今話した事は知らせないでくれ。気を使わせたくない」
海之
「……わかった」
海之はラウラの頼みを聞いた。
海之
「……だがいいのか?」
ラウラ
「…え?」
海之
「お前が今まで必死に努力して築き上げてきたもの。全てを失うぞ…?」
ラウラ
「……」
するとラウラは海之にそっと身体を寄せた。以前クロエとの会話の後の様に。
ラウラ
「……構わんさ。一番失いたくないものの傍にいられるのだから。……私の運命は…お前と共にある」
海之
「………そうか」
相変わらず言葉が少ない海之。しかしラウラには動かずにいてくれる海之の優しさが伝わっていた。
ラウラ
「そう言えば海之。これもクラリッサから聞いたのだが……日本には「嫁」の他に「妻」というものもあるらしいな?」
海之
「…?それが?」
ラウラ
「………ふふ、いや、何でもない…」
…………
学園内
一夏達と別れた火影は鈴やシャル達を探して歩いていた。時刻はまだ夕方より少し前だが冬という事もあって日が暮れるのも早い。既に空はオレンジになっている。
火影
(あいつらどこにいんのか………あれ?)
すると火影は脚を止めた。見ると校舎から少し離れた所にあるベンチに…ひとりの女性が座っているのが見える。背を向けているが制服を着ているから生徒であるのはわかる。そしてその女性のあるものが火影の目を惹いた。
火影
(……金髪)
オレンジの空でもはっきりわかる美しい金髪。…するとその女性が振り向いた。
シャル
「…あ。火影」
火影
「……」
それはシャルだった。そんな彼女の姿を見た火影は何か思い出したのか一瞬黙ってしまう。
シャル
「……?どうしたの火影?」
火影
「ん…ああ、まぁ」
シャル
「…?変なの。こんな所でどうしたの?」
火影
「お前や鈴を探してたのさ」
シャル
「そうなんだ。…隣、座ってよ」
言われて火影は隣に座る事に。
火影
「……それで、どうするか決めたのか?」
シャル
「……うん。さっきね。…お父さんにまた電話したんだ。そしてこう言った。………「行ってきます」って」
それはラウラと同じく、シャルも国に戻らずに火影や皆と共に戦うという答えだった。
火影
「……危険だぞ?」
シャル
「うん、それは十分わかってる。でも…僕も一緒に行きたい。皆と、そして誰よりも火影と一緒に」
火影
「……そうかい」
シャルの気持ちが固いのを察した火影は何も言わなかった。
シャル
「お父さんも何となくわかってたみたいでさ。反対もしなかった。僕の自由にしなさいって。国には自分から伝えておくって。……ああそれからお父さんが言ってたんだけど、お母さんの拘留期間がほんの少し短くなったんだって」
火影
「そいつは良かったな」
シャル
「うん…ほんとに良かった。あとこうも言ってくれたんだ。……例え代表候補でなくなっても、シャルロットは自分とお母さんの大事な娘だって」
シャルはうっすら嬉し涙を浮かべている様だ。ここに来るまではギクシャクしている様に見えていたシャルと義母、そして父親。しかし互いに正直になった今は確かな親子の絆で結ばれている。
(※Mission43参照)
火影
「そうか。…でもまぁ心配すんな。お前の代表候補の座はしっかり守ってやるよ」
シャル
「……ありがとう火影」
そう言うとシャルは横にいる火影の方に向き直り、
シャル
「でも約束して、決して無茶しないでね。代表候補の座なんかより火影の命の方が…僕は…」
火影
「わかってるよ。前に言ったろ?お前や鈴や本音をもう悲しませねぇって」
シャル
「…うん」
すると火影はある事を思い出し、上を見上げながら言った。
火影
「………そういやここってなシャル。俺がお前のお袋さんと会った場所なんだぜ?」
シャル
「…え!?」
火影は約一年前、ここでシャルの実母と会った事を話した。
(※Mission37参照)
火影
「そしてお袋さんの指輪を受け取ってな。…お前の後ろ姿を見て思い出したんだ。そして今はお前がここに座ってる。これも奇縁ってやつかねぇ…」
シャル
「……そっか。…おかあさん、ここにいたんだ…」
火影
「……よく似てたぜお袋さんと」
シャル
「そ、そう?嬉しいな…」
火影
「ああ。……そして俺の前の母さんにも似ていた。ほんと一瞬だが間違ったよ」
シャル
「前のお母さんって…、エヴァさん?僕って顔似てるの?」
すると火影は顔を横に振り、
火影
「いんや、顔とかどうこうじゃなく雰囲気がな」
シャル
「雰囲気…?」
雰囲気と言われてシャルは尋ねる。
火影
「母さんみたいな…強くて優しくて清らかな女性。そんな感じがした」
シャル
「僕が…エヴァさんに…」
火影
「ああでもひとつだけ違うとこがある。シャルの様にヤキモチ焼きじゃなかったな♪」
シャル
「ぼ、僕は別にヤキモチ焼きじゃないもん!火影が他の女の子にまで優しすぎるのがいけないんだよ!」
火影
「そうか?」
シャル
「そう!」
そう言うシャルだが自らも火影のそういう優しさに救われた身、決して嫌いになれない彼の良い所である事も十分知っている。
シャル
(もう………アレ?強く清らかで優しい女性って…それ……!!い、いや何考えてるの僕!こんな時に!!)
シャルは自分しか知らないある事を思い出し、急激に赤くなりつつある顔を必死に治めようとする。そんなシャルを知ってか知らずか、火影は再び口を開く。
火影
「……だが」
シャル
「…え?」
火影
「だが…母さんは、最後は俺を守って死んだ…」
思い出しているのか一瞬辛そうな表情を見せた火影。
シャル
「火影…」
火影
「……ほんとの事言やぁ、お前や鈴を巻き込みたくなかったんだけどな」
シャル
「……」
するとシャルは自らの手を火影の手に重ね、
シャル
「僕らは、僕はいなくなったりしないから…安心して?」
母が子を安心させる様な笑顔で言った。
火影
「……ありがとよ」
シャル
「…必ず勝とうね火影」
火影
「はは、当然だろ?」
いつもの表情に戻った火影。するとシャルは自分の頭を火影の肩に寄せた。
火影
「シャル?」
シャル
「……ねぇ火影。全部終わったら…僕、火影に言いたい事があるんだ。…聞いてくれる?」
火影
「……んじゃ、そんためにもさっさと終わらせねぇとな」
シャル
「…うん。…そうだね」
…………
生徒会室
……その頃、刀奈は虚と何やら業務を行っていた。
刀奈
「じゃあ虚ちゃん、明日は私ちょっと留守にするからお願いね」
虚
「…畏まりました」
刀奈
「……今日はこれまでにしましょうか。お茶を入れてくれる?」
刀奈にそう言われた虚は茶を入れ、それを刀奈はゆっくりと味わう。
刀奈
「…あ~美味し~。やっぱり虚ちゃんの入れてくれたお茶は最高ね~♪」
虚
「ありがとうございます。ところでお嬢様、ロシアへの返事は如何されるのです?」
刀奈
「あ~……明日の朝でもいいわ。今日はもう疲れたし」
そう言ってめんどくさそうに返す刀奈。すると、
虚
「………お嬢様、火影さんや海之さんと行かれるおつもりなのですね?恐らく明日にでも」
刀奈
「……」
虚の突然の言葉に一瞬黙る刀奈。しかし虚の正確性や勘の鋭さは誰よりも良く知っているつもりである。ごまかしはできない。なので素直に認める事にした。
虚
「やはりそうですか」
刀奈
「…よくわかったわね?虚ちゃんには言っていなかったのに」
虚
「ふふふ、どれだけお嬢様のお傍についていると思うのですか?お嬢様のお考え等手に取るようにわかりますよ。ロシアへの返事を渋っていたのは火影さん達が行かれるのを待っておられたからでしょう?同行するために」
刀奈
「…な~んか虚ちゃんが怖くなってきたんだけど」
そんな事を言う刀奈。そして実際のところ虚は怒らせたらかなり怖い。今回の件を虚に教えてなかったのも心配させないのと知られたら怒られるかもしれないという考えがあっての事だった。しかし簡単に見抜かれていたと知り、刀奈は正直に話した。そしてその上で聞いてみた。
刀奈
「……虚は反対?」
「ちゃん」付けせずに真面目なトーンで聞く刀奈。
虚
「正直に言わせて頂きますと…懸命なご判断とは言えませんね。確かに火影さんや海之さんや織斑先生は間違いなく世界でも指折りの実力の方々。……ですがあまりにもリスクが高い選択です。もし失敗してしまったり、時間が間に合わなければ?仮にもお嬢様は一国の代表、そして17代目更識当主。失礼に聞こえたら申し訳ありませんが…皆さんとは御家もお立場もまた少し違います。もし失敗すれば…ロシアだけでなく日本での立場も厳しいものになるのはわかっておられる筈では?」
刀奈
「やっぱりそうよね~…」
誤魔化さずに聞く刀奈。成功すればまだしも、もし失敗すればロシアの代表でなくなり、更に専用機であるレイディも取り上げられる。そうなったらロシアだけでなく、日本での立場も影響無くはない。彼女だけでなく更識という存在も。国の代表として行動した方が良いかもしれないという虚の意見は決して間違いではないかもしれない。
刀奈
「……でもね虚、それでも私は行くわ皆と。更識刀奈としてだけじゃなく、更識楯無としても。確かに虚の言う通り、代表として行動した方が結果はどうあれ、私自身の立場も守れるだろうし家もそうかもしれないわ。……でもね虚、さっき話したけどあのオーガスって奴は想像以上に危険よ。あいつを放っておいたらとんでもない事になる。そんな気がビンビンに感じたわ」
虚
「……」
刀奈
「それにね虚。私にはぶっちゃけ世界がどんだけ手を打ってもあいつを何とかできるとは思えないの。例え世界中の国家代表クラスを集めたとしてもね。もし火影くんや海之くん、千冬さんが敵わないとしたら?そんなの誰が止められる?もしそうなったら…全て終わりよ。更識がどうとか日本やロシアがどうとかそんな位じゃない。世界の、ね…」
虚
「お嬢様…」
刀奈
「世間から見ればそんな数時間に、少数で挑むなんて間違っていると言われるかもしれない。でも私はこれは逆に最大にして唯一のチャンスだと思ってるわ。更識の家も国も、どっちも守る事ができるね。まぁ終わった後も色々あるかもしれないけど…それについてはまたその時に考えたらいいのよ。少なくとも更識の家や簪ちゃん、虚や本音は絶対に守ってやるわ。私の命を懸けてもね」
虚
「……」
刀奈の真剣な表情と言葉に虚は何も言わなかった。
虚
「……お嬢様がそうお決めになったのならば何も申しません。私もお嬢様の侍女として、お嬢様の不在の間、私もできる事をやるだけです」
刀奈
「…ありがとう虚…」
虚
「……何か、少し変わられましたねお嬢様」
刀奈
「まぁこんだけ色々あればね。…でも、一番の原因は…」
虚
「…原因は?」
すると刀奈はいつもの表情に戻り、
刀奈
「未来の旦那様に会えたからかしら~♪」
虚
「……前言撤回します。やはりお嬢様は変わっていませんね…」
そう言いつつも虚は安心した様だ。すると、
ガラッ
一夏
「失礼します」
扉が開き、入ってきたのは一夏だった。
刀奈
「! あ、あら一夏くん!?どうしたのかしら!?」
一夏
「え、ええ。箒から刀奈さんやセシリアとも話をしたらどうかと言われまして」
刀奈
「そ、そうなのね~嬉しいわ~♪」
虚
「ではお茶をまた入れなおしますね」
そう言う刀奈はさっきの言葉を聞かれていなかった事に安心していた。如何に彼女でも夫婦宣言は恥ずかしいのである。その後、刀奈から自らも一緒に行くと聞かされた一夏はやはりそう来ると予測していた様で絶対に勝つと誓い合った。そして最後に、
刀奈
「ところで一夏く~ん?全部終わったらあのデート行きましょうね♪」
一夏
「あはは…」
…………
クロエと刀奈の部屋
その頃、箒や一夏と別れたクロエは自分の部屋で休んでいた。
クロエ
「……」
全ては束を助けるため、それに向けて精神を集中している様に見える。するとそこに、
…コンコン
海之
「…クロエ、いるか?」
クロエ
「! 海之兄さん?は、はい、今出ます」
訪ねてきたのはクロエだった。そしてクロエが扉を開けると、
クロエ
「…え」
ラウラ
「……」
そこにはラウラもいた。アリーナでの件の後、海之が連れてきたのだった。
海之
「……刀奈さんは戻ってきていない様だな」
クロエ
「は、はい。仕事を終わらせてから戻ってこられると」
海之
「ならば丁度いい。戻ってこられるまで…ふたりで色々話せ」
クロエ
「え?ふ、ふたりで?」
ラウラ
「……」
海之
「ではな。俺には他に行く所がある」
そう言って海之はまた歩いていってしまった。とりあえずクロエはラウラを招き入れる事にした。
…………
クロエ・ラウラ
「「………」」
ふたりは隣に座ったまま何も話さない。戦闘や皆で集まったりした時は話しているがふたりでこうやって話すのは以前のあの時以来だ。特にラウラの方が緊張している様子。するとクロエが話し出す。
(※Mission130参照)
クロエ
「……そう言えば」
ラウラ
「…え?」
クロエ
「そう言えばあの時の…ユリゼンでしたか?あれとよく似たものと戦った時、貴女に助けていただいた時のお礼を言いそびれていましたね。ありがとうございました」
突然の言葉と礼に慌てるラウラ。
ラウラ
「い、いえそんな…!お礼を言われる様な事はしていません」
クロエ
「それでもですよ。ありがとうございます」
ラウラ
「い、いえこちらこそ…ありがとうございます」
クロエ
「? 私はお礼を言われる様な事はしていませんよ?」
ラウラ
「それでもです。ありがとうございます」
クロエ
「いやですから………」
すると、
クロエ
「……ふふ」
ラウラ
「く、クロエさん?」
小さく笑ったクロエに少し戸惑うラウラ。
クロエ
「……やはり似た者同士ですね。私達は」
ラウラ
「…え?」
クロエ
「貴女と私は良く似ているという事ですよ。容姿だけでなく、考えている事も」
ラウラ
「それは…私達は…」
ラウラは「同じだから」と言うつもりだった。しかしクロエに先に言われた。
クロエ
「確かに私達は同じ試験管から生まれた存在です。ですが…私達は完全に同じではありません。生き方もこれまでの過ごし方も微妙に違います。でも似ている者同士だと私は感じました」
ラウラ
「…私とクロエさんが…」
ラウラはその言葉に驚きながらも嬉しくも思っていた。
クロエ
「そして私達には……それ以外で共通しているものがあります」
ラウラ
「…それ以外で?」
クロエ
「はい。私は束様と、そしてあのおふたりのおかげで変われました。そしてそれは…貴女も同じなのではないのですか?」
ラウラ
「…あ…」
ラウラにはその言葉の意味が良くわかっていた。
クロエ
「そして……最近はこう思う様になったんです。貴女とのこれまでの様な関係も、もう終わりにしてもいいのではないか、と」
ラウラ
「……え!?」
その言葉にラウラは酷く驚く。もう自分とは一緒にいたくないのか、そんな考えが頭に浮かぶと、
クロエ
「落ち着いてください。話をよく聞いてください。私が言いたいのは……これまでの様な奇妙な関係では無く、もっと違うものにしてもいいのでは、という意味です」
ラウラ
「ち、違うもの…?」
クロエ
「はい。例えば……以前レオナさんが仰っていた様に…家族が増えてもいいのではないか、という意味です」
ラウラ
「!! そ、それって…!?」
驚くラウラにクロエは言った。
クロエ
「……どうでしょうか。兄さん達の様に、私達も兄弟、いえ……姉妹になりましょうか?…ラウラ」
ラウラ
「…!!」
そう言われたラウラの返事は最初から決まっていた。
※次回は12日(土)、後編の予定です。
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