IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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鈴達や刀奈の未来が決まるまで残り数時間。そんな中火影と海之、そして一緒に戦うと即断した一夏や箒、クロエ達は必ず勝ち、全てを終わらせる事を誓う。

そしてそれは彼女達も同じだった。

ラウラ、シャル、刀奈…

彼女らもまた火影や海之や一夏達と行く選択をし、決意を固めた。そして他の者達も…。


Mission192 其々の決意と選択②

シャルと別れた火影はあの後、鈴を探していたのだが近くにはいなかった。彼女と箒の部屋にも行ったのだが帰っていないらしい。そして火影は、

 

火影

(………となるとあそこか…?)

 

思いついた場所があったのか、とある場所に向かって歩いていた。

……そして、

 

 

…ガチャッ

 

 

その場所の扉を開けると、

 

「……あ、火影」

 

思った通り鈴はいた。その場所は…学園の屋上だった。

 

 

…………

 

学園 屋上

 

 

「アンタがここにいるって事は…もしかして探してくれてたの?」

火影

「ああまぁな」

「そうなんだ…。隣座ったら?」

 

言われて火影は鈴の隣に座る。時間も過ぎて空はすっかり濃いオレンジ一色に染まっている。

 

「良く分かったわね?私がここにいるって」

火影

「最初はお前の部屋にも行ったがいなかった。ならここかなって思ったのさ。ここはまぁ思い出っつぅか…色々あったからな」

 

告白したのも火影がいなくなった時に泣いたのも火影の過去を知った時もいたのはここだったのを鈴は思い出していた。

 

「そうね~。思えばまだ一年にもなってないのにホントに色々あったわ。去年の今頃はまさかこんな事になるなんて思いもしなかった。一夏から告白の返事を聞いて、高校生らしい青春を謳歌しようって思ってた位なのに。それがアンタや海之に出会って、凄く戦ったり泣いたり、悪魔ってのを知ったり、最終的に世界の命運をかける様な戦いに行く事になるなんて誰が想像できるってのよ。ゲームやアニメじゃないのよ全く」

火影

「はは、俺が言うのもなんだが…同感だ」

 

ふてくされた様に言う鈴。だが火影は彼女を責めることはしない。気持ちはよくわかっているし、同時に申し訳なくも思っていた。自分達が鈴達を巻き込んでしまったのかもしれない。自分達が学園に来なければ平和だったのかもしれない…。

 

パンッ!

 

「そんな顔しない!アンタ今、自分のせいでこうなったとか思ったんじゃない?自分達がここに来なければ平和だったのかもしれないとかさ?」

火影

「……」

 

鈴はほんの少し怒った表情で火影の頬を両手で挟む様に軽く平手打ちする。どうやら表情に出ていたらしい。

 

「やっぱり。ならはっきり言っとくわ。もう止めなさいそんな風に思うのは!誰もこんな事になるなんて思いやしないんだから自分達の責任とか感じたりすんじゃないわよ!誰のせいでもない!てかアンタ達がいなきゃ今頃どうなってたかわからないのよ?アンタ達がいてくれたから皆無事なの!いいわね!」

 

怒りの鈴に火影はただ謝るしかなかった。

 

火影

「……ああ悪い。てかお前は俺の母親かよ」

「前に言ったでしょ?保護者兼彼女候補って。それに海之からアンタが無茶した時のストッパーも頼まれてるからね」

(※ExtraMission6参照)

火影

「はは…。それはさておき鈴、お前さっきの「行く事になるなんて」ってのは…」

 

火影はその意味が分かっていながらも聞いてみた。

 

「決まってるでしょ。私も一緒に行くわ。きっとシャルも同じ選択したんじゃない?」

 

やはり鈴も一緒に行くと言った。

 

火影

「……覚悟はできての事なんだろうな?」

「無論よ」

 

即答する鈴はもう心に決めている様だ。こうなったら火影がどんなに言っても聞かないだろう。

 

「それにね火影。私、前の時の、あの黒い奴らと戦う時みたいな不安は無いのよ?」

火影

「…?」

「だって今度はアンタが傍にいてくれるじゃない。あの時は半分アンタが死んだと諦めてた、イフリートを砕かれた時に。でも今度は……ちゃんといてくれる。それだけでちっとも怖くないわ」

火影

「鈴…」

 

鈴は笑っていた。とはいえきっと怖さは完全には消えていない筈だ。何度も危険な戦いをしてきたのだから。でもあの時と違い、火影が傍にいるという事実が彼女に勇気を与えていた。

 

「寧ろ怖いとしたら私達の知らないとこで大切な人を失う事よ。もうあんな事は…絶対に嫌」

火影

「……」

 

以前浜辺に打ち上げられた持ち主がいないエボニー&アイボリーを見た時、鈴はショックのあまり泣き叫んでいたのだった。

(※Mission152参照)

「あとね火影。こんな事言ったら火影怒るだろうけど、……代表候補の座なんて、私もうどうでも良いのよ…」

火影

「…なんでだ?」

「シャルと本音には話したんだけどね。……」

 

鈴は代表候補になったのもIS学園にやって来たのも全ては一夏に会いたいという一心だったから、という事実を伝えた。

 

「……という訳」

火影

「…まぁ、お前らの年頃ならそういうのもありなんじゃねぇのか?それにお前の故郷の家族はどうする?」

「お母さんや叔母さんは私が代表候補になるのはどっちかと言ったら反対してたの。色々心配かけるでしょ?おまけに軍とも関係ができてしまうからいざという時、今回みたいな時に戦うかもしれないし…。だからもし辞める事になっても…きっと悲し過ぎたりはしないと思う」

火影

「そうか…」

「それにね火影。私、ちょっと考えてる事あるの」

火影

「…考えてる事?」

「それについては全部終わった後で話すわ。今は……」

 

すると鈴は火影の腕に自分の腕を組ませた。

 

「後悔はしてない。ここに来たから……私は火影、貴方に会えた。その事は一夏に感謝しなきゃね」

 

そんな彼女を見て火影も同行を認めざるを得なかった。

 

火影

「……守ってやるさ。前に言った様にな」

「……うん。私もアンタや皆を守るわ」

 

鈴のやる気は満ちていた。

 

「よ~しそうと決まったらさっさと終わらせましょ!そして早く普通の学生に戻って、今度こそ青春を謳歌するのよ♪…あ~!そう言えば前にふたりで京都回るって約束、果たしてないじゃないの!今度絶対果たしてもらうわよ!」

火影

「へいへい」

 

 

…………

 

セシリアの部屋

 

 

その頃、セシリアは自分の部屋で誰かと電話していた。

 

セシリア

「……ええ。ではその様に…。はい。お願いしますね」

 

そう言うと電話を切るセシリア。するとそこに、

 

…コンコン

 

一夏

「セシ…、えっと、オルコットさんいますか?」

 

ドアをノックしたのは一夏だった。

 

セシリア

「え…い、一夏さん!?は、はい!今開けますわ!」

 

驚いたセシリアは急いでドアを開ける。

 

セシリア

「ど、どうされたんですか…?」

一夏

「あ~…、セシリアとちょっと話がしたいなって思ってさ。今大丈夫か?」

セシリア

「も、勿論ですわ!…よ、良ければ中に入りませんか?同室の方は暫く戻ってきませんから大丈夫ですわ」

 

そう言われて一夏は部屋に入った。

 

一夏

「悪いな、もう夜も近いのに。なんでルームメイトの子がいないんだ?」

 

あれから時間も進み、空はやや暗くなりかけていた。

 

セシリア

「…ええ。実は…故郷の家に電話していたのです。これからの事を連絡したくて。そのために出ていてもらってるんですの」

一夏

「……これからの事って…それ」

 

一夏がそう言うとセシリアは頷き、答えた。

 

セシリア

「ええそうです。先程家の者に伝えました。私は…国に戻らず、こちらの皆さんと一緒に戦ってきます、と。政府にはそう伝えてほしいと」

 

セシリアもまた、皆と一緒に戦いに行く事を決断したのだった。

 

一夏

「…はは、やっぱりセシリアもそう来たか。でもいいのか?失敗すればセシリアの代表の座は…」

セシリア

「ええわかっていますわ。でも…それでも私は一夏さん達と一緒に行きたいのです。私だけじゃない。きっと鈴さんやラウラさん達も同じ選択をされる筈ですわ」

一夏

「…まぁ…そうかもしれないけどさ…」

 

一夏もそれは何となく予想していた。

 

セシリア

「それに…今度の戦いは、きっとこれまで以上に危険なものになる筈。命を懸ける位に。…もし、もしそうだとしたら…最後位は」

 

するとその先を一夏が止めた。

 

一夏

「そんな事言うな!誰ひとり死なねぇ!俺が守ってやる!」

セシリア

「!」

一夏

「あ…いや、その、悪い。急にでかい声出して」

セシリア

「い、いえ全然。その、嬉しかったですし…」

 

するとその場の空気を変えようと一夏は話を変えた。

 

一夏

「そ、そういやさ?俺達こんな関係になるって、最初は想像もしてなかったよな~」

セシリア

「ふふ、そうですわね。あの時の私ははっきり言って愚かでしたわ。両親の真実を知らず、男性を蔑み、一夏さんや火影さん達に酷い事を言ってしまいました」

一夏

「ははは、確かにあの時のセシリアは凄かったな」

セシリア

「……でも、それを皆さんが変えてくれた。一夏さんが男性の可能性を、火影さんと海之さんが両親の真実を教えて下さなければ…きっと私は今も変わらないまま、流されるだけでした。今でもとても感謝しておりますわ」

(※MIssion18参照)

一夏

「そんな大した事したつもりはないんだけどな」

 

そう言うとセシリアは一夏に向き直り、

 

セシリア

「ですから今度は…私が皆さんの力となる番。一夏さんや火影さん達と一緒に、共に戦います。私等どれ程の事ができるかはわかりませんが…私の全ての力を一夏さん達のために、私の大切なものを守るために使いますわ」

一夏

「セシリア…」

 

セシリアの真っすぐな強い目に一夏はやや押された様な気がした。

 

一夏

「……わかった。セシリアがそう決めたんならもう何も言わねぇ。もう一度言うけどセシリアは俺が守る。箒も刀奈さんも、勿論他の皆もだ」

セシリア

「…はい!」

 

ふたりは必ず勝つ事を誓った。

 

セシリア

「……でも一夏さん、ひとつだけ不服を言わせて頂きますと今だけは私だけを呼んで頂きたかったですわ」

一夏

「い、いや流石にそれは…」

セシリア

「ふふ、冗談ですわ。そういう点もこれから射撃と一緒に鍛えてあげないといけませんわね♪」

一夏

(……やっぱいろんな意味で罰ゲームだな。…ハァ)

 

 

…………

 

学園 整備室

 

 

「……」

 

簪は整備室で端末を打ち、何やら作業をしていた。……すると、

 

…ガラッ

 

扉を開けて誰かが入ってきた。

 

海之

「簪…ここにいたか」

「え?…あ、海之くん…」

 

入ってきたのは海之だった。海之だと知って驚く様子の簪。

 

海之

「何やらしていたのなら申し訳なかったな」

「ううん大丈夫だよ。……もしかして私を探してたの?」

海之

「…ああ。刀奈さんに聞いたらここではないかと伺ってな。……弐式の整備か?」

「うん。何時もより念入りに整備しておかないとって思って。…次は凄い戦いになるだろうから…」

海之

「お前…」

 

海之はその言葉の意味を理解した。

 

「……うん、私も海之くん達と行く。反対されても。日本にももう伝えてある。勿論家にも」

海之

「……そうか」

 

簪は力強い口調でそう言った。言葉の通り、彼女は既に国にも更識の家にも伝えていた事を海之は刀奈から聞かされていた。

 

「あ、そうだ。あ、あのね。私、海之くんに渡したいものがあるの」

 

すると簪は自らの拡張領域を開き……その中からあるものを取り出した。それを見た海之にやや驚きの表情が浮かぶ。

 

海之

「…それは刀か?」

 

簪の手には一振りの刀が握られていた。

 

「…海之くん、私達をあの黒い奴から守ってくれた時、刀を無くしちゃったでしょ?だから…その、整備部の皆と一緒に…作ったの」

 

 

瑠璃月(るりづき)

 

閻魔刀が折れた海之のために簪が整備部の皆と一緒に作った刀。海の様な深い青塗りの鞘に金色の細かい細工が施された青い鍔を持つ。閻魔刀には流石に及ばないが従来のIS用の刀に比べてかなり強い切れ味と耐久性を持つ。

 

 

そう言って簪は刀を海之に差し出す。

 

海之

「…俺にか?」

「うん。…受け取ってくれる?」

海之

「……」ジャキッ

 

海之はそれを黙って手に取る。そして鞘から刀を抜き、刀身と波紋をじっくりと眺め、鞘に戻した後、空いている作業スペースに移り、

 

海之

「……は!」ブンッ!…

 

鞘から滑らかに抜いた後、その場である程度振り回す。ちゃんと周りに被害を出さない様計算しながら。…そしてある程度振り回した後、目を閉じながらゆっくり刀を鞘に戻す海之。

 

……チンッ!

 

海之の流れるような素振りを見た簪はその姿に一瞬呆然としてしまったがやがて、

 

「………あ、ご、御免なさい!やっぱり海之くんには刀が一番似合ってるね!…それで、どうかな?海之くんの刀みたいな業物にはとても敵わないけど…」

海之

「気にするな。閻魔刀が異常なだけだ。………中々いい。礼を言うぞ簪」

「ほ、本当?…良かった」

海之

「いずれ何か礼をせねばならんな」

「そ、そんなの気にしないで!私の方が今まで沢山海之くんに貰ったんだからこれ位!」

海之

「気にするな。俺がそうしたいからするだけだ」

 

そう言いつつ席のひとつに腰掛ける海之。

 

海之

「……」

「…どうしたの?海之くん」

 

すると暫しして口を開く海之。

 

海之

「お前は強いな簪。……あの時の俺等よりも、ずっと」

「…え?」

 

その言葉に一瞬戸惑う簪。

 

海之

「完成目前で開発が打ち切られた弐式をやり方はどうであれ、必ず自らの手で完成させると決意した結果、お前はそれを成し遂げた。そして原因とまではいかないが、あれほど思う事があった一夏と組み、自らの殻を乗り越えようとした。更に今も、自分より強い存在に今も勇敢に立ち向かおうとしている…。お前の勇気と諦めない心は…確かな強さを持っている。バージルだった頃の俺よりも」

「そ、そんな事…」

 

海之は首を横に振り、話を続ける。

 

海之

「お前には以前話したな。……俺は諦めてしまった。自らの無力さに我慢できなくて、力に溺れ逃げてしまった。それからは醜く誇りも無い、力に取り付かれるだけの存在となってしまった。火影や、魔帝に敗れてもそれは変わらなかった。やがてそれが間違いだったと気づいた時は…もう手遅れだった」

(※Mission27参照)

「……」

 

簪は黙って聞いている。

 

海之

「簪、お前は決して俺の様になるな。まぁなりたくも無いだろうが」

 

海之は自虐的に小さく笑った。……すると、

 

……スッ

 

海之

「!…簪?」

「……」

 

簪は以前、海之の真実を知る前のあの時と同じ様に、後ろから肩に手を回して抱きついた。疑問符が浮かぶ海之。

 

「ごめん、海之くん。その言葉は…聞けない。だって…海之くんは私の目標だから」

海之

「…俺が目標だと?」

「誰よりも強くて、誰よりも優しくて、誰よりも大切な人を失う辛さを知っている人…。そしてもう二度と、あんな悲しみを生み出さないって、強い信念を持ってる人。そんな海之くんは……私にとってヒーローで目標…」

海之

「……」

 

そう言って簪は正面に移る。泣き顔の様な、怒っている様な顔をしている。

 

「お願い海之くん…もう過去に縛られるのは止めて。今を、これからを生きて…?私と、私達と一緒に…」

海之

「……」

 

海之は黙っていた。簪の真っ直ぐな目からは反らしてはいけないと思った。

 

海之

「…………やはりお前は強い」

「海之くんのおかげだよ。それにまだまだ海之くん程じゃない」

 

すると海之は小さく笑い、簪の目を真っ直ぐ見つめながら言った。

 

海之

「……簪。俺にはお前やラウラや皆…、お前達が必要だ。だから…あと少し…助けてくれるか?」

「……うん!」

 

簪の力強い返事だった。

 

(……私は…貴方の力になりたい…。これからもずっと…)

 

 

…………

 

火影と本音の部屋

 

 

シャルと鈴の決意を聞いた火影はその後、自らの部屋に戻ってきた。

 

ガチャッ

 

本音

「あ、ひかりん~お帰り~♪」

 

先に本音が戻ってきていた。

 

火影

「ん?ああ」

本音

「な~に真剣な顔してるの~?何か困り事~?ならそういう時こそ笑わなきゃ!笑う門には何とかっていうでしょ~?」

 

本音は妙に明るく、屈託のない笑顔をしている。

 

火影

「俺そんな顔してたのか?…まぁいいか、今日は俺が作ってやっから。なんでも好きなもん言え」

本音

「わ~い♪」

 

そんな感じでとりあえず食事にすることにした…。

 

 

…………

 

本音

「う~んやっぱりひかりんのストロベリーサンデーは美味しいや~♪」

火影

「はは、そいつは結構」

 

あの後、本音は自分の好きなものを火影に注文し、デザートとしてストロベリーサンデーも元気に笑顔で平らげようとしていた。

……しかしその食事の最中、火影は本音にある違和感を感じていた。

 

火影

「……本音、……何かあったのか?」

本音

「なにが~?私は大丈夫だよ~。あ、そうだ、ひかりん明日どこか行くんでしょ?気を付けてね。帰ってきたらまたデザート作ってね♪」

 

そう言う本音の表情は明るかった。彼女を知るものからすれば何時もよりもやや元気がいい様にしか見えないだろう。しかし火影は、

 

火影

「どんだけお前とルームメイト…ってまだ一年も経ってねぇのか。まぁそれは置いとき、お前の様子がおかしいってのは何となくだがわかるさ。多分そこらの知り合いとかはわからねぇだろうがな…」

本音

「……そんなにおかしいかな?」

 

本音は初めて笑顔を緩めた。

 

火影

「お前は普段のほほんとしてるが芯は意外としっかりしてるし、鋭さもあるからな。大方あのファイルの事や、明日の俺らの外出を心配してんだろ?」

本音

「……」

 

本音は黙っている。どうやら図星の様だ。

 

火影

「やっぱりな…。そんな心配すんな。明日は」

 

とその時、

 

 

……バッ!

 

 

火影

「…!…本音?」

 

本音は俯きながら駆け寄り、火影の胸に飛び込んだ。

 

本音

「……ごめん火影。暫く…こうさせて」

火影

「本音…?」

 

つい先程とは全く違う様子の本音にやや戸惑う火影はじっとする事にした。……するとそのまま本音が話し出す。

 

本音

「何も言わないで聞いてね火影…。明日…火影凄く危険な事しようとしてるでしょ?昨日あのファイルが流れてから皆、特に火影と海之がおかしいもの。海之は普段あまり表に表情を出さないから余計にわかるよ、何かあったんだって…。火影が私の事気付いた様に…私も火影の事なんとなくわかるんだよ?この一年ずっと一緒に過ごしてきたんだから…」

火影

「……」

本音

「やっぱり…。火影、わかりやすいんだもん…」

 

本当なら嘘を貫き通す事もできたかもしれない。…しかし今の火影にはできなかった。

 

本音

「今日の朝もまたあのファイルが流れて…そして放課後の織斑先生の言葉…。火影は「気にするな」って言ったけど…、かんちゃんやかっちゃんにも聞いてみたけど…「大丈夫」「心配ない」って言うだけだった…」

火影

「…ああそうだ。お前は何も」

 

すると本音は顔を上げた。凄く怒った顔をしている。

 

本音

「心配しない訳ないじゃない!」

火影

「!」

本音

「火影、きっとまた戦いに行くんでしょ!?きっと海之や織斑先生や皆も!あのファイルを何とかするために!私達のために!でもその事を隠して行こうとしてる!そんなの心配しない訳ないじゃないの!」

火影

「本音…」

 

本音の初めて見る怒りの表情に火影はやや押されていた。

 

本音

「嫌な予感がするの…。火影達が負けるなんて思ってない。…でも、もう二度と会えなくなる様な…凄く嫌な予感が!……でも火影は絶対に止まったりしない…。本当なら、私も一緒に行きたい…。でも私なんか一緒に行ける訳無いし、火影は絶対に許してくれないし…。そんな私ができる事は…、皆を信じる事しか…、火影に笑ってあげる事しか…」

火影

「本音…」

 

すると本音は再び笑顔になる。しかしその目にはうっすらと光るものがあった。

 

本音

「ほんとは、ほんとは行ってほしくないけど…、私なんかじゃ火影を止められないから…。一緒に行けないから…。私には…笑って送ってあげる事しかできないから…。火影が好きって言ってくれた笑顔で…」

 

笑顔を崩さない本音だが心配の心が痛い程伝わってくる。

 

 

……スッ

 

 

すると火影は黙ってそっと本音を抱きしめた。

 

火影

「……ありがとよ本音。…そしてわりぃな、お前にそんな顔と心配をさせちまって」

本音

「火影…」

火影

「だが安心しろ。お前を置いて俺は死んだりしねぇし、もう勝手にいなくなったりもしねぇ。俺を信じろ。そして帰ってきたら…何時ものお前の笑顔で迎えてくれ。前に言った様に」

(※Mission63参照)

 

火影は本音を安心させる様な、普段あまり見せた事がない優しい表情をしていた。

 

本音

「………絶対だよ?」

火影

「ああ」

本音

「絶対に…帰ってきてよ?」

火影

「ああ」

本音

「………待ってるから」

 

本音も火影の言葉と表情に落ち着いた様だ。

 

本音

「……ねぇ火影」

火影

「お前はひかりんで良いって」

本音

「じゃあひかりん。ひとつだけ…お願い聞いてもらっていい?私の、私の夢の話……聞いてもらえる?」

火影

「どーぞ」

本音

「うん、私の夢はね……………ううん、やっぱり今はいい。帰ってきた後で言わせて。全部終わったら伝えたい」

火影

「そうか。…終わったら大変だな、シャルも鈴も何か話してぇ事があるみてぇだし」

本音

「ふふ、じゃあ一緒に言おうかな。きっとふたりと同じ事だろうし♪」

火影

「……何なんだ一体?」

 

 

…………

 

千冬の部屋

 

 

時刻は更に進み、既に時間は遅くなって外に出ている者もあまりいない時間帯。

 

千冬

「……」

 

千冬はひとり自室にいた。精神統一なのかただ黙って座っている。……すると、

 

コンコン

 

千冬

「…誰だ?」

 

誰かがドアをノックした。

 

海之

「…海之です」

 

それは海之だった。

 

千冬

「! み、海之?…どうしたこんな時間に?」

海之

「…お休みの所申し訳ありません。千冬先生にひとつお話がありまして」

千冬

「………入れ」

 

本来なら遅い時間帯だから帰れと言うべきだが、千冬は海之を招き入れた。

 

千冬

「全く…お前でなければ直ぐに帰らせている所だがな」

海之

「申し訳ありません…」

千冬

「更識は寝たのか?」

海之

「ええ先程」

 

その一言で千冬は思った。

 

千冬

「……やはり行くか。更識も、ボーデヴィッヒも」

海之

「…ええ。恐らく鈴達もでしょう」

 

すると海之が話し出す前に千冬の方から話し出した。

 

千冬

「それで話とは?…………私の罰の件か?」

 

すると海之はやや目を細めた。

 

海之

「……よくわかりましたね」

千冬

「お前らに驚かされっぱなしなのも癪だからな。ふふ」

 

海之を驚かせられた事にほんの少し喜ぶ千冬。そして海之は話し出す。

 

海之

「……今朝の話を聞いて考えが過ったのです。それが一番の方法とはいえ、千冬さんはIS委員会に無理難題を押し通した。簪やラウラ達の未来と気持ちをお考えになって…可能性を開いてくれました。……しかし俺の中でひとつ疑問が残りました。もし万一俺達が失敗した場合、あいつらだけに処罰が下されるという事に。……千冬さん程のお方が、それを許すだろうか、と。俺や火影、一夏達は無いかもしれませんが」

千冬

「……」

海之

「……何かあるのではないですか?千冬さんにも、…いえもしかすると千冬さんがご自身でお決めになった自らに課せた罰が」

 

海之は今朝、それを聞こうとしたが他の皆や真耶がいる場では聞きにくいと判断した。

 

千冬

「……わざわざそんな事を聞きに来たのか?もしあったとしてどうする?お前には関係ない話だ」

 

千冬ははぐらかそうとするが、

 

海之

「…ええ。俺は関係ないかもしれません。ただ簪やラウラ達に加え、失敗できない理由が増えるだけです。千冬さんをお守りするのも俺達の使命ですから」

千冬

「……」

海之

「ただ…話されたくないのであれば、無理にこれ以上は聞きません。……失礼します」

 

そう言って海之は退出しようとする。すると、

 

千冬

「……おい」

海之

「…?」

 

千冬

「他の連中には、何より一夏には言うな。言えば………殺す」

 

凄みを含んだ声で言う千冬。すると海之は振り返り、

 

海之

「……貴女にできるかな?」

 

海之も言い返す。

 

海之・千冬

「「………」」

 

互いににらみ合うふたり。……すると暫くして、

 

千冬

「……フ、フハハハハ!」

海之

「……ふ」

 

千冬は笑い出した。海之はそんな彼女を見て肩の力を抜く。

 

千冬

「ふぅ、冗談だ。私にお前が殺せる訳無いだろう。…だが、他の連中や一夏には言わない様にしてくれというのは本当だが」

 

海之は頷いた。すると千冬は話し出した。

 

千冬

「お前の言う通りだ海之。今回の件で私、正確には私自身で決めたペナルティだがな。……海之。この一件が無事に終わってもそうでなくても……私は警察に出頭するつもりだ」

海之

「…!」

 

先程より驚いた海之は目を開く。

 

千冬

「白騎士事件を起こした罪人としてな。止めてくれるなよ?これは私自身の戒めであり、決めた事なんだ」

海之

「…ですが」

千冬

「いいんだ。……私は今まで過去からずっと逃げ続けてきた。お前達と共に守るもののために戦う。それもひとつの責任の取り方だろう。だがそれ位であの時、死ぬ様な恐怖を味わった人々の苦痛が和らぐことは無い…。きっと私が自首した位でもそれは変わらんだろう…。しかしそれでも、無いよりはあった方がいい。そう思ったのだ」

海之

「……」

千冬

「束の事は言うつもりはないぞ。それはあいつが何時か自分自身で言うべき事だからな」

海之

「…一夏はどうするのです?千冬さんは唯一の」

千冬

「…あいつは大丈夫だ。箒やセシリア達もいるし、お前達という多くの友もいる。それにあいつもお前達程ではないがそれなりに成長した。もう…大丈夫だ。あいつのIS学園生徒の座もしっかり守ってやる」

海之

「……」

 

千冬の意志は変わらないと海之は感じていた。だからせめて、

 

海之

「……ならば先ほど言った様に、俺はこれまでと同じく、千冬さんをお守りするだけですね」

千冬

「もう一度言うが一夏や他の連中には絶対に知らせるなよ?火影にもだ。知っているのは真耶とお前だけだ」

海之

「…分かっています」

千冬

「ありがとう海之。……さぁ、もう戻って休め。私も休む。明日は早いからな」

海之

「…ええ。おやすみなさい」

千冬

「あああと……反対してくれて、……少し嬉しかったぞ」

海之

「当然の事です。しかし…俺は千冬さんの御意志を尊重します」

千冬

「ああそうだ、それでいい」

 

そう言って海之は部屋を出て行こうとする。

 

千冬

「ああ最後に海之。……その、お前、先ほどから私を…「千冬さん」と言ったな。何故だ?」

 

海之は答えた。

 

海之

「前に学園祭でお願いされましたから。ふたりしかいない時位は良いでしょう?……では明日」

(※Mission86参照)

 

そう言って海之は部屋を出て行った。一方の千冬は、

 

千冬

(……全く。一応この世界では子供のくせしてとことん私の心を乱す奴だよお前は。……全て終わったら、頼むぞ…海之)

 

千冬はそう願った。そして海之もまた、千冬の未来が明るいものになる事を願っていた…。

 

 

……そしてそれから数時間後の日も昇りきらない時間帯。島内のとある場所からひとつのものがゆっくりと音を立てながら上昇して行った……。

 

 

タイムリミットまで残り二十時間…。

物語は最終局面に向かい動き出す…。




※次回は19日(土)の予定です。
当初予定していた通り次回より新章、そしてこれが多分最終章になる予定です。じっくりやっていきますので最後まで宜しくお願いします。
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