IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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刀奈と簪に襲い掛かるダリル・ケイシーとフォルテ・サファイア。
以前刀奈が戦った時よりも強化された彼女らのIS操る炎と氷の攻撃、更に見えざる銃撃に苦戦する。
しかしそれでも水を操る刀奈と火・氷・雷を操る簪は手こずりながらも何とか優勢に立つことに成功し、大ダメージを与えた。
……しかしそんな状況でもダリルとフォルテは諦めず、自分達のISに搭載したDNSを起動させてしまう。地獄の業火の如き黒き炎に死ぬほどの苦しみを味わいながら彼女らが変化したのは双頭の獣の姿だった。


Mission199 アンティノラ② 大切なもののため そこには敵も味方もない

右の頭部がダリルの、左の頭部がフォルテの意識を持つ狼の様なふたつの頭部、四足歩行、身体の右半分が炎に、左半分が氷に包まれた獣の様な機体。それがDNSによって変化した彼女らの姿だった。サイズもひとまわり大きくなっている。その姿は正に双頭の獣。ヘルハウンドやオルトロスともいえるものだった。

 

ダリル

「さぁいくぜぇぇぇ!!」

フォルテ

「私達の力を見せてやるっス!!」

 

ふたりが融合したらしいその機獣は口からは火の粉と冷気をこぼしながら牙を向ける。

 

「…違う。ふたり共違うよ!そんなものは力じゃない!」

刀奈

「その通りよ!貴女達の間違いを私達が教えてあげるわ!」

ダリル

「ぬかせ!!」

 

 

ドゥンッ!!!…ドガァァァン!!

 

 

簪・刀奈

「「きゃあああ!!」」

 

猛烈なスピードで突進したそれは簪と刀奈に体当りを繰り出した。その勢いに避けられなかったふたりはぶつかってしまう。

 

刀奈

「な、なんてスピードの突進!」

フォルテ

「まだっス!!」ドゥンッ!!

 

ドガァァァンッ!!

 

「きゃああ!」

刀奈

「簪ちゃん!」ドガァンッ!!「ぐあっ!」

 

再び反転して体当りを繰り出す。

突進はスピードもだが何よりも重量がものをいう。それが大きければ大きい程その時の衝撃は凄まじい。普通は重量を上げるとその反面それによってスピードが犠牲となり、停止する時の脚への負担も高くなってしまう。しかし重量とスピード、そのどちらも克服したそれは高い脅威となる。四足歩行の姿も脚への負担を軽くするメリットとなっていた。

 

「スピードだけじゃない!瞬発力と勢いまで!」

ダリル

「感心するのはまだ早ぇぜぇぇ!!」

 

 

ゴォォォォォォォォ!!

キィィィィィィィン!!

 

 

右側の口からは炎の、左側の口からは冷気を纏ったビームが放たれる。

 

刀奈

「!! まずい!水のヴェール!!」

「氷の壁!!」

 

ババババババババババババ!!

 

刀奈と簪はそれぞれの防御装備を最大限にして対抗し、

 

……シュゥゥゥゥゥゥ

 

なんとか辛うじてそれを防ぐが、

 

刀奈

「これがDNS…悪魔の力って事!」

ダリル

「流石っスね!だけど甘いっスよ!」

 

 

カッ!!ドドドドドドドド!!

 

 

すると間髪入れずに炎纏う小さい砲撃が上から飛んでくる。

 

刀奈

「くっ!簪ちゃん避けて!」

ダリル

「もう遅え!」

「え!?…!!」

 

キィィィィィンッ!!

 

ふたりは驚いた。自分達のスラスターやブースターが氷漬けにされていた。

 

刀奈

「何時の間に!?」

ダリル

「くらいやがれぇぇ!!」

 

炎がふたりに迫る。すると、

 

…カッ!!

ドドドドドドドドドド!!

 

ダリル・フォルテ

「「!!」」

ケルベロス

「オォォォォォォォォォォォ!!」

 

簪が召喚したケルベロスが氷纏うその身体で炎の盾となった。

 

「ありがとうケルベロス!……下がってて」

 

やがてそれらを全てかき消すと簪の指示に従い、ケルベロスの姿は再び消える。

 

ダリル

「ちっ!あれがあの日本代表候補が使うやつか!」

刀奈

「ありがとう簪ちゃん!…でもどうしてまたケルベロスを戻すの?」

 

状況からすればケルベロスの支援があった方が確実であると刀奈は思う。しかし簪はそうせずにこう言った。

 

「…あの子はファントムやグリフォンみたいな無人機と戦うために使うって決めてるから。あの中にはケイシーさんとサファイアさんがいる…。だから使えない…」

刀奈

「簪ちゃん…」

 

それは簪の優しさだった。

 

ダリル

「……けっ!敵に向かって甘い事言ってんじゃねぇ!そんなんだから政府に見限られんだよ!」

「…み、見限られる?」

フォルテ

「知ってるっスよ。アンタのそのIS、織斑一夏のISのために放っておかれ、最後は中止に追い込まれたって事。そして酷く落ち込んで、結局自分で組み立てたって事。そんなんでここに来たって事が私らからしたら信じられないっスね」

「…!」

ダリル

「けど私達は違う!例え相手がなんだろうと戦う!例え世界が相手でも!全ては私を救ってくれた叔母さんのために!」

 

 

「グォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

 

すると二頭の獣が凄まじい咆哮を吐いた。それから繰り出される衝撃波に怯む簪と刀奈。

 

刀奈

「くっ!」

「うっ!」

 

ドガァァァァァンッ!!

 

刀奈・簪

「「きゃあああ!!」」

 

その怯んだ隙に再び突進を喰らわす。その攻撃を真面に受けるふたり。

 

ダリル

「まずはお前からだ!」

 

そしてすかさず簪に追撃を喰らわそうと向きを変えた獣は、

 

刀奈

「簪ちゃん!」

「……」

 

ドゥンッ!!!

 

動かない簪に再び突進した。……しかし、

 

 

カッ!ビキキキキキキキ!!

 

 

ダリル・フォルテ

「「ぐあああ!!」」

刀奈

「!!」

 

獣の足元から突然氷柱が立った。それがマキビシの様な形となって襲い掛かる。その氷柱を生み出したのは、

 

「……無理に避けなくてもそっちから向かってくるのなら、待ち構えていればいい!」

 

簪の氷のケルベロスの力だった。

 

「貴女達の言うとおり、この打鉄弐式はちゃんとした所で完成させたわけでもない!それに私は貴女達ほど専用機を持ってまだ間がない。お姉ちゃんみたいな技術もない!」

 

ズドドドドドドドドッ!!

ガキキキキキキキキッ!!

 

簪は再び山嵐を撃つ。それらは相手の表面を覆っている氷と炎によって防がれてしまうが、

 

 

シュゥゥゥゥゥゥゥゥ…

ビキキキキキキキキキ…

 

 

ダリル

「!」

フォルテ

「な、何!?」

 

身体の表面を覆っていた炎の勢いが弱まり、そして氷の鎧にはヒビが入り始めていた。簪の撃ったミサイルは半分が炎、そして半分は氷のミサイルだった。キングケルベロスの三属性効果とベルベットのISが持つ炎と氷を操る能力から生み出した簪や本音、整備課の自信作だった。

 

「だけど!この弐式は私や本音、整備部の皆で力を合わせて造り上げた機体!これに込められたものは貴女のそれよりもずっと大きい自身がある!甘く見ないでほしい!」

ダリル

「くっ…てめぇぇぇ!」ドゥンッ!!!

 

怒りのあまりやや冷静さを失っている様子のダリルの意志宿る獣はすかさず更に追撃する。しかし、

 

ガキンッ!!!

 

ダリル・フォルテ

「「!?」」

 

その体当りは食い止められた。今の一瞬の隙をついて近づいてきていた、手にバスターアームを纏わせた刀奈に正面から受け止められた。

 

刀奈

「くっ…残念、封印の時間切れよ♪……おおおおぉぉぉぉぉりゃぁぁぁぁぁ!!」

 

ドオォォォォォォン!!

 

バスターによって放り投げられたダリル・フォルテのDISが壁に打ち付けられた。

 

ダリル

「ぐっ!」

フォルテ

「ま、まさかこの身体を放り投げるなんて…相変わらず馬鹿力っス!」

刀奈

「勝機到来!一気に決めるわよ簪ちゃん!」

「うんお姉ちゃん!」

ダリル

「…なめんなぁぁぁ!!」

 

 

ズキュ――ン!!ズキュ――ン!!

ドガァァンッ!!ドガァァンッ!!

 

 

刀奈

「うわぁぁぁ!!」

「きゃあああ!!」

 

獣のその目から凄まじいビームが飛んできた。直撃ではないが幾分被弾する簪と刀奈。

 

刀奈

「…くっ!まだそんな攻撃が!」

「!! しまった!」

 

今の砲撃によるものか、簪の手にあったケルベロスが遠くに弾き飛ばされる。そしてそれをフォルテが見逃さなかった。

 

フォルテ

「ダリル!」

ダリル

「ああ!」ドゥンッ!!

 

防御の手段を失った簪に獣が迫る。

 

 

ジャキ―――ンッ!!

 

 

しかしその時刀奈の蛇腹剣、ラスティーネイルが獣の脚を捕らえる。

 

刀奈

「簪ちゃん!そこから離れて!」

「お姉ちゃん!」

ダリル

「邪魔すんじゃねぇぇ!」

 

ヴゥンッ!!

 

刀奈

「きゃあああ!」

 

刀奈を自身のパワーで振り払う。そして今のでダメージを負ったらしい彼女に狙いを変える。

 

ダリル

「まずはアンタからだ!」

 

ゴォォォォォォ!!

キィィィィィン!!

 

獣のふたつの口からブレスが放たれる。咄嗟の攻撃に応戦できない刀奈。

 

「お姉ちゃん!」

 

 

カッ!キュイィィィィ!

 

 

ダリル・フォルテ

「「!!」」

ケルベロス

「オォォォォォォォォ!!」

 

ズドオォォォォン!!

バババババババババババ!!

 

簪の手から離れていたケルベロスが光った途端、刀奈を守る形で再びケルベロスが召喚された。それが撃ったビームでエネルギーを相殺する。

 

(手に持ってないのに召喚できた…!)

「ありがとうケルベロス!そのままお姉ちゃんを守って!」

刀奈

「簪ちゃん!?」

ダリル

「ちっ!ならやっぱアンタからだな!」

フォルテ

「アンタを倒せばあれも消える筈っス!」

 

そう言って再び簪に迫る。

 

刀奈

「簪ちゃん!」

ダリル

「くたばれぇぇぇ!」

 

大口を開けて簪に向かう。それはまるで獲物を丸のみしようとしている獣の様だった。しかし簪は動かない。

 

「ケルベロスだけじゃない…。私には…」

 

迫る獣の口…。そして、

 

 

…ガシィィィィィィンッ!!

 

 

それが簪の姿を捕らえ、咥え込んだ。

…………様に見られたが、

 

ダリル・フォルテ

「「!!」」

 

しかしそう見えただけだった。簪は自らの腕を襲いかからんとする口に突っ込ませ、動きを止めていた。

 

「外の装甲が厚くても内側からなら話は別…!この距離ならシールドもないよね!」

 

 

キュイィィィィィィ!!

 

 

すると簪の手の中にある何かが光を放ち、

 

「私には…あの人から託されたものがある!」

 

 

カッ!!!

 

 

その言葉と共に、簪の手から凄まじいエネルギーが放出された。

 

 

…………

 

先日の出発直前の事、

 

海之

(……簪、刀の礼という訳はないがお前にこれを渡しておく)

 

そう言って海之はブルーローズを渡す。

 

(! で、でもそれはネロさんの、海之くんの大事なものじゃ)

海之

(この戦いが終わる迄だ。それに俺がお前に預けたいからそうする)

 

簪はそう言われてブルーローズを受け取る。

 

海之

(簪、お前はもう守られてばかりのお前ではない。もしもの時はお前が刀奈さんや皆を守れ。あいつ(ネロ)の様に)

(わ、私がお姉ちゃんを助けるなんてそんな…寧ろ私の方が)

海之

(何度も言わせるな。お前はもうあの時のお前ではない。強い女で…立派な戦士だ)

(海之くん…)

 

海之の言葉を簪は手に持つ拳銃にしては重いブルーローズを手に受け止めた。

 

海之

(守るという事は決して簡単な事ではない。しかし、今のお前にはそれができるだけの力がある。俺はそう信じている)

(………ありがとう)

 

 

…………

 

ダメージが限界を超えた獣は消え去り、ダリルとフォルテは元に戻った。ダリルはその場に大の字で寝転がり、フォルテは力なく座り込んでいた。

 

ダリル

「ゼィ…ゼィ…やっぱ…勝てなかった…か…」

フォルテ

「ハァ…ハァ…悔しい…っ スね…」

 

そんなふたりに話しかける簪。

 

「ふたり共…大丈夫?」

ダリル

「…はは、ほんっとに甘い奴らだなアンタら…。私らは敵だぜ?」

「敵だなんて言わないで…」

フォルテ

「アンタらがそう思ってなくても他の連中はきっとそう思ってるっスよ…。私達は国を裏切ったテロリストだって…」

刀奈

「……」

ダリル

「ハァ…ハァ…。さ、もういいだろ?勝ったんだから私らの事は放ってさっさと行きな」

 

すると簪が尋ねる。

 

「ねぇふたり共…教えて。なんでこんな事に協力したの?」

 

するとダリルは座り直して、

 

ダリル

「ふっ…。何度も言ったろ?叔母さん達のためだ」

フォルテ

「私は…ダリルを支えるためっス」

「ケイシーさんの…確か叔母さんだよね?」

ダリル

「私にとってこの世で最も大切な人だ。そんな人に協力するのになんか理由があんのか?てかおめぇらも同じだろ?」

フォルテ

「…知ってるっスよ。アンタら国の帰還命令蹴ったんっスよね?理由はあの兄弟と一緒に戦うため、そんな感じじゃないっスか?」

「……」

刀奈

「その通りよ。でもそれが全てじゃない。彼らと共に戦う事が…世界のために確実だと思ったからよ」

 

それを聞いてダリルが、

 

ダリル

「……やっぱオーガスの旦那が言ってたのは単なるでまかせじゃなかったんだな。……あの人が言ってたぜ。世界を…新しく作り変える、てな」

「!! 世界を…作り変える…!?」

刀奈

「……」

(あの男が言ってた魔界の様な世界って事かしら…?)

フォルテ

「あの人の考えが何なのか、私達にはわからないッスけど、……なんとなくとんでもない事考えてるってのはわかったっス…」

ダリル

「ああ…。けど私にはそんなの関係ねぇ。オーガスに叔母さんが協力してんなら…私も協力するまでさ…」

「…どうしてそこまで…?」

 

すると簪の問いかけに横の刀奈が答えた。

 

刀奈

「……アレクシア・ミューゼル。彼女が貴女の人生の恩人だから、かしら?」

「! じ、人生の…恩人?」

ダリル

「……」

フォルテ

「ダリルの事調べたんスか?」

刀奈

「全部じゃないけどね。…良かったら話してくれない?勝ったんだからご褒美としてそれ位してくれてもいいと思うわよ?」

ダリル

「……」

 

僅かな沈黙の後、ダリルは観念したかのように話し始めた。

 

……………

 

ダリル・ケイシーは叔母であるアレクシア・ミューゼルの妹夫婦の間に生まれた。しかしそれから間もなく、彼女の母親はダリルを置いて失踪してしまう。原因は父親である男の暴力や浮気、ギャンブルと様々である。母親の失踪後、父親は隙間なく浮気相手である女性と再婚した。しかし父親も、そして再婚した女性もダリルを愛さず、殆ど放置状態であった。しかも父親はギャンブルや酒が絡むと暴力的になり、まだ生まれて間もない赤ん坊のダリルに折檻を下した。殺してしまうと面倒事になってしまうため、殺さないギリギリの傷を与えて。そんな彼女を心配したのが当時アメリカ空軍に所属していた叔母のアレクシア・ミューゼル、今のスコール・ミューゼルであった。妹が失踪する前に少なからず父親の事を聞かされていた彼女はある日父親と連絡をつけ、ある条件を出した。

 

「自分がダリルの養育費を出す。そちらの生活も支援する、その代わりもう決してダリルに危害を加えないでほしい」

 

父親はそれを了承し、アレクシアはそれから金を送り続けた。これでダリルは助かると安心していた。

……しかしアレクシアのそんな願いは裏切られた。軍の任務で多忙を極めていた彼女はそれ以降連絡を取っていなかった事がふと気になり、密かにダリルの周辺を探ってみたのだ。すると驚きの情報が入ってきた。一歳になりたてだったダリルの環境は全く変わっておらず、再婚した女も同じ様に間もなく失踪してしまい、父親である男は送られてきた養育費を全て酒と博打につぎ込んでいたのだった。

 

「このままでは本当にダリルの命が危ない」

 

アレクシアは決意した。姪であるダリルを義娘として引き取ろうと。しかし腐った男とは言え彼女の実の父親には違いない。向こうがNOと言えばややこしくなるかもしれないし、まだ一歳のダリルには自己主張する力もない。かといって強引に事を起こせば激高してダリルの命が本当に危ない可能性もある。そんな状況でアレクシアの耳にある情報が軍から飛び込んできた。

 

「とある任務へ参加せよ。この任務には別途報酬があり、それは本人が望むだけ与えられる」

 

という内容だった。やや不思議に思いながらもアレクシアはこれを承諾。彼女が望んだ報酬は、

 

「姪の命を救ってほしい。もう二度と父親と会わせないでやってほしい。自分の財産の全てを姪のために使ってやってほしい」

 

…………

 

刀奈

「……そんな経緯があったのね」

ダリル

「まだ私が覚えてないとクソ親父は思ってた様だがあの時の痛みは身体に残る傷達が覚えてるぜ…。だが叔母さんのおかげで私は解放され、政府の観察下に置かれた」

フォルテ

「ダリル…」

「じゃあ…あのスコールって人がアインへリアル計画に参加したのって…!」

ダリル

「……私を助けるためさ。叔母さんは…私のために自分の未来を捨てたんだ。後にそう聞かされた時は…本当に心底申し訳ないと思ったさ…」

「……」

 

簪は驚きのあまり言葉が無い。

 

ダリル

「でもアイツから解放されても親もいないしやりたい事も無かった私は中学時代まで脱け殻の様に生きてきたよ。……でもある時偶然、叔母さんが今も生きているという事を知ったんだ。……テロリストのファントム・タスクとして」

刀奈

「アインへリアル計画で死んだと思ってたのね」

ダリル

「…許せなかった。叔母さん達をあんな計画に巻き込んだ世界の奴らが。そして決めた。叔母さんに救われたこの命、今度は私が叔母さんのために捧げるって。ISを動かせると知って私はそれから死ぬ物狂いで頑張った。代表候補になったのも専用機を持ったのも…全てはあの人のため…」

「ケイシーさん…」

刀奈

「…フォルテ・サファイア。貴女はどうしてこんな事に協力しているの?」

フォルテ

「……」

 

…………

 

それからフォルテもまた話し始めた。

フォルテ・サファイアは幼い頃、彼女は今の気が強い性格とは全く真逆の虫も殺せない位の大人しい静かな子供だった。その上いつも親や他人の目を気にして自分を前に出せず、子供らしく友達を作ろうにも何かを欲しがってもその性格が災いしてどうあっても成し遂げられなかった。そんな彼女を両親は育児放棄する事こそしなかったがどうすればよいのかわからないまま時は流れていった。

……そしてある時、そんなフォルテに更なる事態が起こる。ギリシャ国民に向けてIS適性検査が行われ、彼女にも「IS適正あり」という診断が出されたのだ。この事態にギリシャは一時騒然となり、彼女と共に少数のごく僅かな適正者から未来の国家代表候補を育てるために必死となった。彼女とベルベット・ヘルが出会ったのもこの頃である。

だがこれはフォルテにとって決していいものではなかった。外の世界を避けていたのにこの件で今まで以上に自分にそれが注がれているという事態に彼女は恐怖を覚えたが、未だ自分の意見を通せなかった彼女は止む無く流され続ける結果となった。

 

「私なんかどうせ大したものにはならない」「何時か潰れる」

 

と当時の彼女は心の中で思っていた。

……しかし運命はフォルテに更に重荷を背負わせた。適当に流している彼女の思いとは裏腹に彼女のIS操縦技術はみるみる成長し、やがてギリシャの代表候補に選ばれてしまっただけでなく、遠く離れた日本のIS学園に転校する事になったのである。見知らぬ土地と人々、更に望んでもいない未来に彼女の心はますます暗くなっていった…。

 

…………

 

フォルテ

「…そしてある時、ひとりで隠れる様にいた私に、ダリルが話しかけてきたっス。最初は怖かったんすけど…その時言われたんス…」

 

 

(お前…昔の私によく似てるよ。風にふかれっぱなしの草みたいなね。…私も少し前まで色々あった。自分がこの世界にいる理由も、なんで生まれてきたのかもわからない様な、そんな人生を過ごしてきた。……でも今は違う。今の私にはやる事がある。何よりも大切なものがある。国も親も親友も、何もかも全てを捨ててもやりたい事がね。…お前もそんな事ねぇのか?もし今の人生そのものがお前の枷となってんなら、いっそ全部捨ててみたらどうだ?もっと自由になってみなよ。そうすりゃ案外見つかるかもしれねぇぜ?お前の…何よりも大切なもんがよ)

 

 

フォルテ

「…そんな事を言われたのは初めてだったっス。そして興味も持った。今までのもの全部捨ててもやりたい事なんて…。そしてそれがダリルの叔母さんの事だとわかって、私は…ダリルを助けたいと思うようになったっス…」

「……」

刀奈

「そのために国を捨てても?」

フォルテ

「国なんて私の事を宣伝品としか見てないっス。代表候補なんて皆そんなもんスよ…。アンタも覚えがあるんじゃないですか?モデル撮影やったり写真撮ったり」

刀奈

「……」

 

確かに国家代表や代表候補は単に操縦だけじゃなく、プロマイド撮影やモデル撮影を行う事も多い。それらは全て国の宣伝である事はある種間違っていない。

 

ダリル

「でも私にはそんな事どうでもよかった。国家代表候補になったのも専用機を持ったのも…全ては叔母さんの力になるため。それだけだったんだ…」

フォルテ

「私は…そんなダリルの力になりたかったんス。ダリルの言葉で…私は変われた様な気がしたっスから…」

ダリル

「でも…もう、そんな力もねぇ…。残念だけどな…」

 

ダリルとフォルテもやり方はどうあれ、大切な人のために、それが戦う理由だったのだ。

 

「……ふたり共、私達と同じなんだね。ふたりも…自分の大切な人のために」

ダリル・フォルテ

「「……」」

「でも…それでもこんな事は間違ってるよ。ダリルさんの叔母さんは…ダリルさんに生きてほしかったからそうしたんでしょ?だったら…ダリルさんが叔母さんのためにするべき事は…ダリルさんが幸せになる事じゃないの?それまでの人生とは違う…新しい人生を歩んでいくことじゃないの?」

ダリル

「私の幸せは叔母さんのために…!」

 

するとフォルテが、

 

フォルテ

「ダリル…。もしかしてスコールさんはそれであの時…」

ダリル

「……!」

 

その時ふたりは以前スコールに言われた言葉を思い出した。

 

 

(貴女達の身に何か危険が及んだら素直に降伏しなさい。そして新しい人生を始めなさい)

 

 

刀奈

「…どうしたの?」

フォルテ

「実は…」

 

フォルテはあの時の言葉を刀奈と簪に話した。

 

刀奈

「…どうやら簪ちゃんの言った通りの様ね。表向きには貴女達の協力を有難がっても、本音ではこんな事に協力してほしくない。それが多分、アレクシア・ミューゼルの願いの筈よ。だからそう伝えた。罪を償い、ちゃんと生きてほしいっていうね。…ダリル・ケイシー、貴女が誰よりも寵愛している人がそう言ったのよ?だったら…貴女のすべきことはわかるわよね?」

 

 

(…御免なさい。貴女達を巻き込んで…)

(罪を償って…新しい人生を始めなさい…)

 

 

ダリル

(……それが、叔母さんの本当の願いなのか?…私は、叔母さんを助けてるつもりだったのに…叔母さんを逆に苦しめていた…?…私の…自己満足だったのか…)

フォルテ

「ダリル…」

 

すると簪は未だ力が戻ってないふたりの肩に手をかけて、

 

「ふたり共…お願い。ちゃんと罪を償って?そして…良かったら友達になろうよ。私も、私の友達も皆いい人ばかりだよ。ふたりを悪く言ったりなんかしないよ」

ダリル・フォルテ

「「……」」

 

そう訴えた。

 

刀奈

「貴女達にもそれなりの理由がある。それにスコール・ミューゼルが言った事が本当なら貴女達の罪は幾分軽くなる筈。私達がちゃんとそれを伝えてあげるわ。…でも今はそれは後回し。今は何よりあのオーガスって男を止めないと」

「そうだね。ふたりは」

 

とその時だった。

 

 

簪・刀奈・ダリル・フォルテ

「「「!!??」」」




※次回は二週間後の14日(土)の予定です。

ダリルとフォルテの出生は完全にオリジナルです。
最近無茶苦茶暑くなって外に出るたびに軽い熱中症になっている様な気がします。そのせいで頭が回らなかったり動きも悪くなったり。
皆さんもくれぐれもお気を付けくださいね。
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