IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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一夏とマドカの戦いが始まった。
以前の戦いで自信をつけていたマドカは一気に攻めかかるが、白式・駆黎弩とこれまでの経験や訓練の全てを懸けて戦う一夏は以前とはまるで別人。終始マドカに優勢し、遂に零落白夜での戦いにも勝利した。
オーガスにも見限られ、最後の戦いにも勝てなかったマドカは絶望する。しかしそんなマドカに一夏は手を差し伸べて言った。

「俺がお前を守る!妹であるお前を!」

この言葉に心動かされたマドカは一夏の手を取ろうとする。
……しかしその時、黒騎士に仕込まれていたデビルトリガーが強制発動し、マドカはアビゲイルへと変貌してしまった。マドカを守るという約束を果たすため、一夏と千冬は剣を再び握る。


Mission205 ジュデッカ④ 家族を得た者なれた者

アビゲイル

「グアァァァァァァァァァァ!!!」

 

一夏と千冬の姿を確認したマドカが変身したアビゲイルは咆哮を上げた。

 

一夏

「マドカ…俺と千冬姉でお前を助ける!」

千冬

「スコール・ミューゼル!お前は下がっていろ!」

スコール

「…御免なさい」

アビゲイル

「ゴアァァァァァァァァァ!!」ズギュ――ン!!

 

口から再び熱線を撃ってくる。一夏と千冬は二手に分かれて避け、

 

一夏

「粉雪!」ドドドンッ!

千冬

「はぁぁ!」バシュゥゥ!

 

両方から攻撃を繰り出す一夏と千冬。

 

カッ!!

 

するとアビゲイルの両腕が光始め、

 

 

バシュゥゥゥ!バシュゥゥゥ!

 

 

その腕で粉雪とドライヴを弾き飛ばした。

 

一夏

「何!」

アビゲイル

「オォォォォォォ!!」ヴゥヴゥン!!

 

更にそのまま剛腕を振り回してくる。しかし一夏と千冬はこれも冷静に見極めて避ける。

 

千冬

「まるで駄々っ子だな。パワーはある様だが知能は低い」

一夏

「もう一度だ!!」ズドォォンッ!!

 

一夏は受け止めた攻撃を利用し、吹雪を撃つ。…しかし、

 

…ドゥンッ!!

 

当たる直前でアビゲイルが軽々と飛んで避けた。ファントムやグリフォンよりも大きいのに動きはそれ以上である。

 

一夏

「! 嘘だろ!?あのでかい身体で!」

千冬

「一夏!避けろ!」

アビゲイル

「ガァァァァァァァ!!」

 

ドゴォォォォォォッ!!

 

アビゲイルの凄まじいパンチが地に刺さる。それを間一髪一夏は避ける。

 

一夏

「あ、危ねぇ…」

 

とその時、

 

 

ズドドドドドドドド!!

 

 

突如地面から棘の波が生えて襲い掛かってきた。それは真っすぐ避けたばかりの一夏に向かう。

 

一夏

「!!」

千冬

「たぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

バキィィィン!バキ!バキィィィン!

 

一夏に迫っていた棘を瞬時加速した千冬がすれ違いざまに斬り、一夏を救った。

 

一夏

「千冬姉!」

千冬姉

「油断するな一夏!単純とはいえ相手はあの大悪魔アビゲイルだ!一瞬の気の抜けが命取りになるぞ!」

 

そのアビゲイルは一夏と千冬を睨んでいる。その間に千冬は一夏に伝えた。

 

千冬

「ふたつ分かった事がある。奴は確かに素早いがここは室内だ。外とは違い奴の図体ではある程度は制限される筈。落ち着いて動きを見ろ」

アビゲイル

「グゥルルルルルル……」

千冬

「そしてもうひとつ、まだ全て見た訳でないが奴の攻撃方法は火影達の記録にあったのと大差無い。攻撃の手がわかっていれば勝機はある」

一夏

「お、おう!」

(やっぱ流石だな千冬姉…)

 

そんな千冬を一夏は誇りに思うと同時に、何時か自分も同じ位になりたいと思った。

 

千冬

「奴を速効で黙らせるにはやはり零落白夜しかない。だが私はスコールとの戦いでSEを消耗している。もしもの時は…一夏、やれるか?」

一夏

「! ああ任せてくれ!」

千冬

「よし、では行くぞ!」

 

一夏と千冬は突撃した。

 

アビゲイル

「シィィィネェェェ!!」ズギュ――ン!!

一夏

「後ろにいろ千冬姉!…イージス!」

 

バシュゥゥゥゥゥゥゥ!!

 

一夏はイージスで真正面から受け止める。避ける暇も惜しい。

 

千冬

「お前に助けられるとはな!…八重桜!」

 

カッ!ドドドドドン!!

 

アビゲイル

「!」ドゥンッ!

 

桜の花弁型のビット兵器「八重桜」がアビゲイルに向かう。アビゲイルは避けようとジャンプする。

 

千冬

「無駄だ!」ドドドドドン!!

アビゲイル

「!!」

 

気付いた時…アビゲイルの周囲を八重桜の花弁が覆い、動きを封じられた感じになっていた。

 

千冬

「今だ一夏!両方から一気に決めるぞ!」カッ!!

一夏

「おお!」カッ!!

 

千冬のレッド・クイーンと一夏の雪片・参型が光り始める。

 

一夏

「マドカは返してもらうぜ!」

千冬

「喰らえ!」

 

そしてそのまま挟み込む様に共に零落白夜を仕掛けた。一発でも直撃すればボルヴェルクの様に解除できる筈だった。

 

アビゲイル

「…グルゥアアアアアアアアア!!」カッ!!

 

しかしその時、アビゲイルの両腕が再び光り始め、

 

 

ガキィィンッ!ガキィィンッ!

 

 

一夏・千冬

「「!!」」

 

その腕で一夏と千冬の零落白夜を受け止めた。更に、

 

…キュゥゥゥゥゥン…

 

千冬

「! 何!」

一夏

「零落白夜が…消えた!?」

 

アビゲイルの腕とぶつかった途端、ふたりの剣から零落白夜の光が消え、解除されてしまった。

 

アビゲイル

「ガァァァァァァ!!」ドゴォォォ!!ドゴォォォ!!

一夏

「うわぁぁぁ!!」

千冬

「ぐあ!」

 

純粋な力ならばアビゲイルの方が圧倒的。ふたりはそのまま殴り飛ばされ、壁に激突した。

 

バガァァンッ!

 

千冬

「がは!ぐっ…!」

 

ズドドドドドッ!!

 

その千冬にアビゲイルの棘の波が襲い掛かる。

 

一夏

「千冬姉!!」

 

バババババババババ!!

 

すると千冬の前方に突如炎が巻き起こり、攻撃を止めた。

 

スコール

「くっ…!」

千冬

「! スコール・ミューゼル!」

 

それはスコールのIS、ゴールデン・ドゥーンが展開した炎の壁だった。

 

一夏

「うおぉぉぉぉぉ!ヴゥンッ!!

 

氷雪をアビゲイルに向けて放つ一夏。アビゲイルは避けたが千冬から離すのには成功した。

 

一夏

「千冬姉!大丈夫か!」

千冬

「ああこいつのおかげでな。礼を言うぞス…いやアレクシア」

スコール

「…勘違いしないでちょうだい。ほんの気の迷いよ。それにもう打ち止め」

一夏

「…しかしさっきの零落白夜、なんで急に消えたんだ…!」

 

すると千冬はもうわかったのか答えを出した。

 

千冬

「…先程お前の槍や私のビットを払ったのを見て気になっていたのだが…間違いない。奴の腕にもあるのだ。…零落白夜がな」

一夏

「な、何だって!?」

スコール

「…ありえなくもないわ。Mの黒騎士にも零落白夜と同じ機能が備わっていた。あれがMの黒騎士ならば、その力があの化け物に作用していてもおかしくない…。あのバリアを破壊できたのも頷ける」

千冬

「くそ…なんてこった。となるとそれ以外の部分、確実に狙うなら胴体に当てるしかないか…」

 

するとその時、

 

アビゲイル

「ゴアァァァァァァァァァ!!」

 

 

ドシュッ!ドシュッ!

 

 

アビゲイルが凄まじい方向を上げると共に、腰部から生えている翼がもがれ取れた。

 

スコール

「な、何!?」

一夏

「翼を…折りやがった!」

 

そして、

 

 

ドゥンッ!ドゥンッ!!

 

 

それは猛烈なスピードで三人の所に向かってきた。

 

千冬

「! 散開しろ!!」

 

千冬の合図で三方向に避ける一夏達。しかし、

 

…ギュンッ!ギュン!

 

それは方向を変え、一夏と千冬を追尾してくる。

 

一夏

「追いかけてきた!?」

千冬

「追尾機能まであるのか!ちっ!厄介な!」

 

ガキィィィン!

 

一夏と千冬は斬り払うが、巨大な刃となった翼は更に襲い掛かってくる。

 

千冬

「ぐっ!邪魔をするなぁぁ!!」ドゥルルン!ゴオォォォォォォ!!

一夏

「俺達はマドカを助けなけりゃいけねぇんだ!!」カッ!!

 

一夏は締雪、千冬はレッドクイーンのイクシードをそれぞれ全開にし、

 

ザンッ!!…ドガァァァァン!!

 

襲い掛かるそれに一気に斬り掛かり、破壊した。

 

千冬

「ハァ…ハァ」

アビゲイル

「グダゲロォォォ!!」

千冬

「!!」

 

ドゴォォォ!!

 

千冬

「ぐああ!!」

 

ボルヴェルクとの戦いで消耗が激しい千冬の一瞬の隙を突き、アビゲイルは攻撃を仕掛けた。そのまま地面に叩きつけられる。

 

ドガァァン!!

 

千冬

「がはっ!!」

一夏

「千冬姉!」

アビゲイル

「ヅギバオマエダァァァァ!」ドゥンッ!!

一夏

「テメェェェェ!!」ドゥンッ!!

 

一夏は怒りのままアビゲイルに向かって行く。

 

千冬

「い、一夏!くそ、どうすれば…………あれは!」

 

 

ガキィィィィンッ!ガキッ!ガキキンッ!

 

 

一夏は零落白夜を腹に当てるために果敢に攻撃を仕掛けるがアリギエルの剛腕に弾かれ、胴体に行きつかない。

 

一夏

「くっ!なんて馬鹿力だ!」

 

ドゴォォォォォォ!!

 

その時、一夏の一瞬の隙をついてアビゲイルが蹴りを喰らわせた。

 

一夏

「うわぁぁぁぁ!!」

 

その勢いで一夏は吹っ飛び、地に伏せる。

 

一夏

「ぐっ…く、くっそぉ…!」

 

一夏もダメージが大きいのか顔を顰める。そんな一夏にアビゲイルが言う。

 

アビゲイル

「ギザマラ…ヨワイ。ダンデヲ、バージルヲダゼェェェェ!!」

一夏

「!!………へっ、そいつは無理だな」

 

そう言いながら立ち上がり、

 

一夏

「火影と海之には…大事な仕事があるんだ。テメェなんかに構ってる暇はねぇんだ!」

 

腕を上げ、

 

一夏

「そして、俺にも大事な仕事が…やる事がある!テメェを倒して…マドカを救ってみせる!!」

 

再び雪片を向き直す。

 

アビゲイル

「…ゴォォォノォォガギィィィ!!」ドゥンッ!!

 

激昂したアビゲイルは一夏に向かって突進し、

 

アビゲイル

「ジィィネェェェ!!」ヴゥンッ!

一夏

「くっ!」

 

腕を振りかざす。

……するとその時、

 

 

ドシュゥゥッ!!!

 

 

アビゲイル

「グオォォォォォォ!!」

一夏

「!!」

千冬

「ハァ…ハァ…」

 

一夏に向かっていた腕に何かが飛んできて突き刺さり、そのまま地に串刺して動きを止めた。刺さっていたのは千冬の投げた…ボルヴェルクの残した槍だった。

 

千冬

(助かったぞボル…いや太古の神よ…)

「一夏!今だ!もう一度、今度こそ決めるぞ!」

一夏

「! おお!!」ドンッ!!

 

一夏と千冬は決死の全速でアビゲイルに迫る。

 

アビゲイル

「ガァァァァァァ!!」ヴゥンッ!!

 

しかしアビゲイルの方ももう片方の零落白夜纏う腕を振りかざして襲い掛かってきた。

 

 

ガキィィンッ!!

 

 

その腕を千冬の零落白夜が受け止める。

 

アビゲイル

「ガッ!!」

一夏

「千冬姉!」

千冬

「止まるな一夏!今の内だ!お前が決めるんだ!」

一夏

「! ああ!」ドゥンッ!!

 

更にスピードを上げた一夏はアビゲイルに迫る。両腕が防がれているアビゲイルに零落白夜を避ける術は無い…。

 

アビゲイル

「…グァァァァァァァ!!」カッ!!

 

しかしその時、アビゲイルの口が大きく開かれ、そこから凄まじい光が漏れる。

 

千冬

「! しまった!一夏避けろ!」

一夏

「駄目だ!今が最大のチャンスなんだ!撃たれる前に一気に決めてやる!」

 

千冬の言葉を無視し、一夏はそのまま剣を向けて突撃する。対してアビゲイルの口からの光が一層強くなる。

 

千冬

「一夏!!」

一夏

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

時間的には僅かにその光の放出が速そうだった……その時、

 

 

シュバァァァァァァァ!!ガシッ!!

 

 

アビゲイル

「グアアアアアアアアア!」ドギュ――ン!!ボガァァァァァン!!

一夏・千冬

「「!!」」

 

アビゲイルの首に炎が巻き付いた。それによってアビゲイルのレーザーが別方向に飛んでしまい、一夏には届かなかった。

 

スコール

「くっ!今よ織斑一夏!!」

 

止めていたのはスコールの炎の鞭だった。

 

千冬

「…一夏!マドカを!」

一夏

「うおぉぉぉぉぉ!!」

 

 

カッ!!ギュオォォォォォォ…!

 

 

一夏の想いに応える様に雪片・参型が纏う零落白夜の光が一層強くなる。そして、

 

アビゲイル

「!!!」

 

一夏

「マドカを…返しやがれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

その場が凄まじい光に包まれた……。

 

 

…………

 

???

 

マドカ

(……)

 

何処でもない何処か。そこにマドカはいた。意識はあった。しかし身体中に力が入らない。目も口も開けない。今の自分の状況は例えるなら水の中を漂っている。そんな感じだった。すると、

 

「……マドカ」

マドカ

(……誰?)

 

すぐ傍から声が聞こえる。しかも複数。怖い感じはしない。そして聞き覚えがある様な声…。

 

「貴女は…私達の希望…」

「悲しみと絶望の中で生まれてきた…私達の…」

「そう…。この世に生まれ出る事も叶わなかった…私達の…」

マドカ

(……!)

 

意識の中でマドカは誰か分かったらしかった。しかし声が出せない。目も開けない。

 

「成長が早い貴女が何時まで生きるかはわからない…。でも…そんなの関係無い」

「私達は貴女と共にいる…。貴女の中に…」

 

声はどんどん小さくなっていく。気配も遠ざかっていく…。

 

マドカ

(待って…!)

「生きて……私達の分まで…。貴女の……家族と一緒に…」

マドカ

(……かぞ……く……)

 

 

…………

 

マドカ

「………う」

一夏

「おい!おいマドカ!しっかりしろ!」

 

マドカがゆっくり目を開くと…そこには自分を心配そうに見つめる一夏と千冬。そして少しだけ離れた場所にスコールがいた。

 

マドカ

「……織斑……一夏」

千冬

「大丈夫か?」

マドカ

「織斑…千…冬…。……私、どうなって…」

千冬

「黒騎士に仕込まれていたデビルトリガーだ。その力でお前は…一時悪魔となっていた…」

マドカ

「…!…私が…悪魔、に…!?」

 

その言葉にマドカは目を見開く。

 

スコール

「知らなかったのね…。恐らくオーガスが密かに仕込んでいたんでしょう」

マドカ

「主、が…」

 

ショックを受けているらしいマドカ。そんなマドカに一夏は、

 

一夏

「マドカ…俺達と一緒に来い。そしてもうオーガスなんかに関わるな!」

千冬

「一夏の言う通りだ。あの男はお前をただの道具としか見ていない。もうお前が…辛い思いをする必要はない」

マドカ

「……しかし私は」

一夏

「お前は戦うための道具なんかじゃない!普通に生きていいんだ!人なんだからな!」

 

一夏はマドカに必死に思いの丈を伝えた。

 

マドカ

「………私は、……生きて、いいのか?」

一夏

「ああ!」

マドカ

「姉妹を殺して……多くの罪を犯してきた私が、……生きていいのか?」

スコール

「M…いいえマドカ。貴女は生きなければいけない。貴女の姉妹達のためにも…」

千冬

「あいつの言う通りだ。いきなりの事だらけで思う事はあるだろうがそれは時間が解決してくれる筈だ。これからは…「家族」として生きていこうじゃないか」

マドカ

「!!……家族?……私、が?」

一夏

「ああ。お前は俺の妹だろ?だから家族だよ」

千冬

「ああ…その通りだ。私にとっても…お前は妹だ。いや…もしかしたら娘ともいうべきか」

マドカ

「……私が、……家族…」

 

その言葉にマドカの目からは自然と涙がこぼれた。

 

スコール

(……家族、か……)

 

 

…………

 

それから暫くしてマドカは漸く落ち着いた。

 

千冬

「…落ち着いたか?」

マドカ

「…ああ。もう、問題ない。織斑千冬……ね…姉…さん…」

千冬

「!!……ふふ」

一夏

「ははは!」

 

千冬は微笑み、一夏は声を出して笑った。

 

マドカ

「わ、笑うな!今のは忘れろ!……あと織斑一夏、お前にはひとつ言いたい事がある」

一夏

「ん?なんだ?」

マドカ

「私は織斑千冬の血をもつ。だからお前の妹というより姉だ。姉として接しろ」

一夏

「え~だって生まれたの俺より後だろ~?なら妹じゃんか~」

マドカ

「あ、あり得ん!確かに生まれはお前より後だが、その、お、お前の妹というのはなんというか…何故か受け入れがたいというか…」

 

マドカは少し赤くなりながら反論する。そんなマドカを横目に一夏は今度はスコールに目を向ける。

 

一夏

「スコール、それともアレクシアか?アンタにも助けられた。ありがとうよ」

 

スコールは暫し黙っていたが…やがて口を開き、

 

スコール

「……礼を言われる資格なんてないわ。特に…貴方には」

一夏

「…?どういう意味だ?」

 

スコールは一夏に向き合う。その顔には何か決意の様なものが見て取れた。そしてこんな事を言い出した。

 

スコール

「……あの男の子供とは思えないわね」

一夏

「……え!?」

千冬

「スコール・ミューゼル!」

スコール

「いいのよブリュンヒルデ…」

 

何かを感じたのか千冬は止めるがスコールは構わず話し出そうとする。

 

一夏

「知ってんのか!?…父さんの事!」

 

そして一夏もスコールに迫る。アインヘリアル計画に参加していたスコールが同じくこの計画に参加していた父親の事を知っていても不思議はないかもしれない。しかし今の言葉にはただ知っているだけではない、何か特別なものがあるんじゃないかと一夏は感じていた。

 

スコール

「……ええ。知ってるわ。会った事もある。……最後に、ね」

一夏

「…!」

千冬・マドカ

「「……」」

 

千冬は何も言わなかった。マドカも事情を知っているのか口を挟まない。そしてスコールはある事を告げた。

 

スコール

「貴方達の父親である織斑秋斗。彼が狙われた……10年前のあの旅客機爆破事件。あれを起こしたのは………私」

一夏

「!!」

 

思いもよらぬ事実に一夏は驚愕し、

 

一夏

「そ…それって……それってまさか!!」

 

ある結論に達したらしい一夏はスコールに問いただす。

 

スコール

「…そう。貴方の父親、そして一緒に乗っていたあの兄弟の両親を殺したのは…………私なの」

 

一夏

「!!」

千冬・マドカ

「「……」」

スコール

「…10年前、ここを脱出してファントム・タスクとして動いていた私達にある情報が舞い込んできた。あの飛行機に…あの計画の重要関係者が乗ると。それを知った私達は…暗殺計画を実行した。拡張領域に隠していた爆発物を使って。あの時はISや拡張領域なんて知られて間が無い頃、空港もそんな方法があるなんて思いもしなかったでしょうね…」

 

すると、

 

…ジャキッ!!

 

一夏が雪片をスコールに向ける。

 

千冬

「一夏!」

一夏

「………アンタが、…あの事故を起こした…?……父さんや、火影達の両親を殺しただって!?」

スコール

「……ええ」

 

そう言う一夏の雪片は震えている。同時に息も落ち着かない。剣を無抵抗な人に向けるのが怖いのだろう。怖さと怒り、その両方を含んでいる様だ。

 

千冬

「一夏よせ!気持ちはわかるが今はそんな事している場合ではない!」

一夏

「……」

 

一夏もそれは理解しているつもりだ。しかし怒りがそれを忘れさせようとする。どんなに非道な人間でも父は父。それを殺したと言った人間が目の前にいる。仇である人間が。……そんな中、一夏は剣を向けながら訪ねた。

 

一夏

「………ひとつ、いやふたつ答えろ!」

スコール

「……何?」

一夏

「…アンタが父さんを恨んでんのはわかる。許せねぇって気持ちも理解できるさ。……でも!なんであんなテロを起こした!あの飛行機には、全く無関係な人達ばかり乗ってたんだぞ!!」

 

一夏の質問にスコールは、

 

スコール

「……私も最初はそう思った。でも…仲間達の声に反対できなかった。仲間の気持ちも理解できたから…。だから私があれの実行犯となる事にした。本当ならあれで私も死ぬ筈だったんだけど…生き残ってしまった。この身体は…大半が再生手術によるものよ」

一夏

「……」

 

スコールは一夏の目を真っすぐ見て答えた。それは彼女の本心だった。元々国を守っていた軍人であり、最後は身内のために身を犠牲にした彼女。本来ならばこの様な形で復讐を果たしたくなかった。しかしオータムや生き残った仲間達の気持ちを優先してしまった。

 

マドカ

「……」

一夏

「…もうひとつ!…火影と海之は…あいつらはこの事は!?」

千冬

「一夏…」

 

この問いにもスコールは真っすぐ答えた。

 

スコール

「…知っているわ。あのふたりに渡したメモリ、あれにメッセージを残したの。貴方達の両親が死んだあの事件を起こしたのは…この私だと」

一夏

「…!」

千冬

「それだけではない…。お前は海之と火影に、そして巻き込んでしまったあのふたりの両親、そして他の客に対して謝罪のメッセージを残していた。お前があのふたりに先に読んでほしいと言ったのは…誰よりも先に伝えたかったから、少しでも早く謝罪したかったからだろう?」

スコール

「……」

 

スコールは何も返さない。その通りの様だ。

 

スコール

「どんなに謝っても私がやった事は変わらないわ。殺したいなら殺してもいい。貴方にはその資格がある」

一夏

「!…そう言うからには覚悟はできてるって事だな!」グッ!!

 

一夏は両手で雪片を持つ。

 

千冬

「一夏よせ!!」

 

一夏の行動に本気で心配する千冬。するとスコールの前に思わぬ人物が庇うように立つ。

 

マドカ

「……」

 

それはマドカだった。

 

一夏

「マドカ…?」

マドカ

「…織斑千冬の言う通りだ。今は主、……オーガスを止める事が先だ。それにこいつは…死にそうだった私を助けてくれた…」

スコール

「……」

千冬

「マドカ…」

一夏

「……」

 

暫くそのまま膠着が続き、……そして、

 

……スッ

 

一夏が雪片を下ろした。

 

マドカ

「……」

一夏

「……わかってるよ。……千冬姉やお前の言う通り、今は…こんなことしてる場合じゃねぇからな…」

千冬

「一夏…」

一夏

「それにスキー旅行の時、火影と海之はアンタを逃がした…。もっと悲しかった筈なのにだ。……あいつらがそうしたのに、俺が今ここでやる訳にいかねぇだろ…」

スコール

「……」

 

思いとどまった一夏を千冬はほっとした表情で一夏を見ていた。

 

一夏

「…アンタの件は後だ。今は早く他の皆と合流しねぇと!」

千冬

「ああそうだな。マドカとスコールは」

 

と、その時だった。

 

一夏・千冬・マドカ・スコール

「「「!!!」」」

 

不思議な事が彼らに起こった。

 

 

…キュイィィィィィィィ…

 

 

一夏

「な、何だ!?」

マドカ

「ISが…!こ、これは…!」

 

キュイィィィィィィィ……

 

自分達に起こっている何らかの違和感にして異変。それは彼らのISに起こっていた。今まで経験したことも無いことが。

 

スコール

「馬鹿な…!」

千冬

「SEが…減少していく!?」

 

 

…………

 

アンティノラ

 

 

それは彼女達にも起こっていた。

 

キュイィィィィィィ……

 

刀奈

「こ、これは一体…!」

「弐式のSEが…消えていく!?」

フォルテ

「私のコールドブラッドもっス!」

ダリル

「馬鹿な…!何にも動かしねぇんだぞ!?」

 

ISは愚か武器も一切動かしていないのにも関わらず…勝手にSEが凄まじい勢いでどんどん減少していく…。簪や刀奈だけでなくダリルやフォルテのまでも。

 

 

…………

 

トロメア

 

 

そしてこちらでも、

 

キュィィィィィィ……

 

ラウラ

「どうだ!?」

シャル

「駄目!どうしても止まらない!解除もしてるのに!」

 

ラウラ達にも同じ事が起こっていた。何とかSEの流出を防ごうとしているがどんな操作をしても全く受け付けない様だった。

 

セシリア

「このままじゃあと数秒で完全に無くなってしまいますわ!」

「ねぇ馬鹿女!これもアンタの仕掛けなの!?」

オータム

「馬鹿言え!私も知らねぇよこんなの!アラクネも同じように消えてってるんだ!」

 

 

…………

 

カイーナ

 

 

「ど、どういう事だこれは…!何故急に紅椿のSEが…!?」

クロエ

「ベアトリスもです!SEが勝手に減少しています!」

 

箒達もその事態に驚きを隠せない。どうやらこの塔内部、彼らがいる部屋全てで同じ事が起こっていたらしかった。

 

「何もしていないのに勝手にSEが急激に減少していくなんて………!まさか!」

 

すると束の脳裏に何かが浮かんだ様子。

 

「姉さん!何かわかったのか!?」

クロエ

「束様!?」

(…もし…もし本当にあれを使ったとしたら……ここだけじゃ収まらない!でもなんのために!?)

 

 

…………

 

ラ・ディヴィナ・コメディア 外部

 

 

そして束の危惧した通りの事が起こっていたのである。外では一夏達を塔に侵入させたアリーシャ達が今も戦っていたのだが…。

 

……キュゥゥゥゥン……

 

ファントム

「……」

レミリア

「!…何!?」

グリフォン・アンジェロ

「「「……」」」

イーリス

「急に…止まった?一斉に…?」

 

戦っていた彼女達は目を疑った。それまで動いていた全てのファントムやグリフォン、アンジェロ達が急に魂が抜けたかの様に目から光が消え、一切の動きを止めたのだ。

 

ヴィシュヌ

「こ、こちらもです…!一体何が…」

ナターシャ

「皆さん避けて!」

 

 

ドガンッ!ドガガガン!!ドガアァァァァン!!!……

 

 

更に支える力も無くなったのか、それらは急速に地面に落下し爆発した。続けてどんどん落ちていく…。

 

ベルベット

「まるでエネルギーが無くなったかの様だ…。一体何が起こっている…!?」

 

その時ひとりのシュバルツェア・ハーゼ隊員が異常を感じた。

 

隊員

「…!く、クラリッサ副長!」

クラリッサ

「どうし……何!?」

 

キュイィィィィィィ……

 

ロラン

「!?オーランディ・ブルームのSEが…どんどん減っていく!」

ナターシャ

「ゴスペルのSEも!?」

アリーシャ

「まずい!皆早く地に降りるのサ!」

レミリア

「急がないとSE枯渇で墜落するわ!」

クラリッサ

「りょ、了解!全員急いで降下しろ!」

 

 

…………

 

IS学園

 

 

そしてここでも…、

 

教員

「…だ、駄目です!打鉄、ラファール、全ての訓練用ISからSEが無くなっていきます!」

「代表候補が持つ専用機にも同じ現象が起こっています!」

「非常用のものも同じ現象が起こっているため、補給できません!」

真耶

「一体…一体何が起こっているのですか…!?」

 

ラ・ディヴィナ・コメディアから遠く離れたIS学園のISやそれに関わるものからもSEが失われていった…。

 

本音

(……火影、……皆…)

 

 

…………

 

ナターシャ

「あ、危なかったですわ…」

クラリッサ

「しかしSEが完全に無くなってしまった。もうISは起動できそうにない…」

ヴィシュヌ

「…!み、皆さん!」

 

ヴィシュヌは塔を指差した。他の皆もそれに視線を移すと…、

 

 

…ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン…

 

 

ラ・ディヴィナ・コメディアが…ぼんやりと、どす黒く赤い不気味な光を放っている。

 

ロラン

「塔が…光っている…!」

ベルベット

「禍々しい…。まるで血の様だ…」

イーリス

「まさか…SEが失われてるのと関係があるのか…?」

アリーシャ

「千冬…。何が起こっているのサ…」

 

 

…………

 

キュゥゥゥゥゥン……

 

千冬

「くっ…とうとうSEが…!」

 

そして千冬達のISのSEも無くなってしまった様だ。こうなってはISを起動する事が出来ない。

 

一夏

「くそ!こんな時になんてこった!」

クロエ

「こんな事をするとしたらオーガスしかいない…。スコール、何か聞いていないか?」

スコール

「…いいえ。それにこんな事、幾ら彼でも起こせるのかわからない。篠ノ之博士なら何か知っているかもしれないけれど……!!」

 

…ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン…

 

一夏や千冬達がいるジュデッカもまた光り始めた。他の部屋も同じ事が起こっているに違いない。

 

一夏

(一体、一体何が起こってるんだ…!火影、海之…!)




※次回は二週間後の来月2日(土)の予定です。
予定より時間ができましたので何とか本日投稿する事ができました。ですが次回は少し時間がかかりそうです。申し訳ありません。
次回から火影達に移ります。
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