IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
先の一夏とセシリアの試合をはるかに超える激闘に会場の者達も驚きを隠せない。
切りつけられた身体、出血、そして傷の一瞬の再生。
あまりにも異常な2人の戦いに様々な思いが巻き起こる中、試合は時間切れという結末で占めくられるが、観客は2人に最大の歓声を送るのであった。
アリーナ東側ピット
ケンカを終えた僕と海之はピットに戻ってきた。時間切れという結果で僕と海之からすりゃ不完全燃焼な気がするが、一夏達はえらく興奮していた。
一夏
「お疲れー!すげーな二人共!俺驚きの連続だったぜ!!」
箒
「ああ全くだ。まさか二人がここまでやるとは思わなかったぞ」
セシリア
「本当ですわ!あんな戦い初めて見ましたわ!」
火影
「はは、そうか?そんな大したもんじゃねぇけど。おまけに時間切れで終わっちまったし」
海之
「ああその通りだ。あとあれ位いつもの事だ」
一夏
「いつもの事って、お前らいったいどんな訓練してんだよ…」
箒
「それもあるが…、お前達のIS、あれは一体何なのだ?剣が刺さったり血が出たり」
一夏
「そう、そうだよ!どうなってんだアレ?そういえばお前ら何ともないのか!?」
火影
「あぁ大丈夫だ。えっとだな…」
千冬
「…エヴァンス兄弟」
みんなで話合っていると千冬がやってきた。
千冬
「話がある。二人共付いてこい」
火影
「あ…はい、わかりました。みんな悪い、後でな」
一夏
「おう、先に帰ってるぜ」
僕と海之は一夏たちと別れると織斑先生に連れられて行った。
……
火影
ボソボソ「…なあ海之、織斑先生の話って間違いなくあれだろうな…」
海之
「…だろうな」
……やがてある部屋にたどり着き、中に入るとそこには山田先生もいた。織斑先生が何かのスイッチを押すと部屋の窓にシャッターが閉められ、扉から電子音が鳴る。これは隔離システムだろうか。
千冬
「見ての通りこの部屋には隔離システムがある。ここで話した内容は決して外に漏れる事は無い。話というのは他でもない。お前達のISの事だ」
火影・海之
「「……」」
千冬は本気で問いただそうという目をしている。
真耶
「あ、あの先輩。顔が怖くなっていますよ」
千冬
「大丈夫です。…単刀直入に聞く。あのISをどうやって手に入れた?」
火影
「…どうやってと言っても…、気付いたら持っていたとしか…」
千冬
「…では質問を変えよう。あれの事をいつ知った?お前達は前に言っていたな?あれは「物心ついた時から持っていて何時からかは両親も知らなかった」と。だがおかしいんだ」
真耶
「…どういう事ですか?」
千冬
「知っていると思うが…、ISの始まりというのは今から10年前、束と白騎士というISが起こした「白騎士事件」が発端だ。あれがきっかけでISは爆発的に広がった。世界中で凄まじい開発競争が繰り広げられたよ…。とはいっても当時まだまだISについては不明な点も多くてな。開発者である束の援助があってやっとここまで発展したんだ」
真耶
「そうですね…」
千冬
「そこでお前達の話に戻る。あれに束が関わっていないのはわかっている。そしてお前たちは「物心ついた時から」と言った。個人差はあるが物心つくと言うのは一般的に約3、4歳から6、7歳とされている。白騎士事件が起こったのは今から10年前、お前達が6歳の時だ。そして「何時からかは両親も知らなかった」とも言った。調べてわかったがお前たちの両親、エヴァンス氏と奥方は9年前の自爆テロで亡くなっている。つまりお前達は御両親が亡くなる迄にあれを手に入れていなければその会話が成り立たないと思うのだ。考え過ぎでなければだが。そうなると考えられる事は2つだ。白騎士事件が起こった10年前から御両親が亡くなる9年前までの1年間の間にあれを手に入れたか。若しくは…白騎士事件が起こる前に既に手に入れていたか。どうだ?間違っているか?」
火影・海之
「「…」」
真耶
「二人共…」
僕も海之も何も言えなかった。
…やがて海之が織斑先生の質問に答える。
海之
「…すみませんでした、織斑先生。実はあのIS、正確には待機状態のアミュレットですが…、赤ん坊だった俺達が両親に拾われた時、俺達の直ぐ傍に落ちていたのを両親が拾ったらしいんです」
海之は真実と虚構を織り交ぜながら説明した。赤ん坊だった頃は本当だが、実際は落ちていたのではなく僕たちの首に掛かっていたのだが。
千冬
「お前達が赤ん坊と言う事は約16年前か…。とするとその時にあのISは存在していたというのか…?」
海之
「いえ、それは違います。拾った当時、あれは普通のアミュレットだったと亡くなる前に聞いています。あれがISという事がわかったのは白騎士事件が起こった後です。あの事件が起こってからあのアミュレットが突然ISとして起動したんです」
千冬
「……なに?」
真耶
「そ、そんな。ただのアミュレットが突然ISとして起動したというんですか?そんな前例聞いた事が…」
ここでも海之は少し真実を捻じ曲げて伝えた。あのアミュレットは最初からISの待機状態だった。しかし実際に動かせるようになったのは本当は9年前からだ。おそらく僕達がある程度成長するまで封印された状態だったのだろう。
海之
「ただあれが何故俺達の傍に落ちていたのかはわかりません。そして誰が造ったのかも。ただ俺達が初めてあれを動かしたのは9年前です。記録では数ヵ月となっていますが…余計な混乱を防ぐために嘘の記述をしました。それに関しては申し訳ありませんでした。どうか俺達を罰して下さい」
俺は頭を下げながら謝罪した。火影も同じ様にした。
千冬
「……」
(本当にそれで全てか…?だがこいつらがISをそんな昔から動かしていたというのは納得できる。でなければあれ程の動き、できる筈無いからな…。この件については今はこれ位にしておくか…)
完全に納得したわけではないが千冬は話を切り上げた。
千冬
「わかった。この件については今はこれで良い。日数を誤魔化したのは今回は特別に不問にしてやる」
真耶
「良かった…」
千冬と真耶は二人に頭を上げさせた。
千冬
「では次の質問だ。先ほどの試合でお前達、剣が身体に突き刺さったり出血したりしていたが、あれは何故だ?バリア若しくは絶対防御の故障か?」
海之と火影が答える。
海之
「あれは故障ではありません。そもそもあれにはバリアも絶対防御もありません」
千冬
「…なに!?」
真耶
「えっ!?」
火影
「あ、正確にはあるんです。ただ心臓や頭部等急所のみに限ってですけどね。そこ以外にはありません」
千冬
「それはつまり…攻撃を受ければ遮る物が何もない、ダメージをほぼそのまま受けるという事か?」
真耶
「そ、そんな!そんな危険なISがあるなんて!?」
千冬と真耶は信じられない表情をしていた。本来、宇宙活動が目的として生み出されたISは何より防御に重点を置いているのが基本だからだ。
火影
「そうです。そして防御を無視している分、回避に重点を置いています。あと僕達の機体は通常のISより遥かに高性能な再生機能があります。先ほどの試合でも見たでしょう?」
真耶
「で、でも傷を負った時の瞬間的な痛みはあるんでしょう!?」
火影
「ええ、まあ」
真耶
「っ!そんな危険なISを持たせるわけにはいきません!今すぐに」
真耶は2人のためにISを渡してほしいとお願いしようと思っていた。しかし、
千冬
「山田先生」
真耶
「…先輩?」
千冬
「…構わん。そのままにしてやれ」
真耶
「!で、でも…」
千冬
「気持ちは良くわかる。だがこいつらは何年も前からあれを動かしていた。あれがどんなに危険かをわかっていながらな。私の予想だが…お前達にはその危険性以上に、あれを持っていなければならない理由があるんだろう?」
火影・海之
「「はい」」
火影と海之は迷いなく答えた。
千冬はその理由を聞きたかったが今は止めておく事にした。
千冬
「…わかった。お前達の好きにすれば良い。責任は私が持つ。…すっかり話が長くなってしまった。試合直後で疲れている所申し訳無かったな。今日はこれまでにしておこう。もう戻って休め」
火影
「はい」
海之
「…」
千冬
「…どうした?エヴァ…えっと今はすまん、海之」
海之
「いえ。先ほどの不問といい今といい、織斑先生って結構優しいのですね」
千冬
「なっ!!!…ば、馬鹿なことを言っている暇があったら早く休め!」
火影
「はい」
海之
「失礼します」
そう言って火影と海之は出ていった。
千冬
「……」
真耶
「…先輩…」
千冬
「大丈夫ですよ、山田先生。あの二人は大丈夫です」
真耶
「…はい。…それはさておき先輩のあんな慌てた顔、久々に見ましたね~」
千冬
「な!!わ、忘れてください!」
次回は少し変わった話の予定です。
※なんかものすごく無理やりにしてしまった感じです。すいません。