IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
「奴に…火影に何かあった様だ」
海之によって呼び寄せられた一夏達に海之はただ一言そう伝えた。しかしその一言は彼らに衝撃を与えるには十分なものであった。
「な…なんだって!?」
「そ、それはどういう事だ海之!」
「火影くんに何かあったって…!」
「火影に何かってどういう事!?なんで、なんでそんな事わかんのよ!」
「そうだよ!どういう事なの海之!?」
「教えてよみうみう!」
中でも鈴、シャルロット、本音の慌てぶりは相当のもので三人は海之に詰め寄る。
「お、お三方!」
「三人共落ち着きなさい!そんなんじゃ会話もできないわ」
言われて鈴達は引くがその目は動揺が消えていない。一夏達も。そんな中ラウラが動揺しつつも冷静に切り出す。
「では改めてだ。…どういう事だ海之。火影に何があったとはどういう事だ?」
「…具体的に何があったのかはわからん。そして正確には火影にではなく、奴が持っている「伊邪薙」に、と言ったほうが正しい」
「伊邪薙…海之兄さんの刀ですね」
クロエの問いに海之が頷く。魔剣「伊邪薙」。閻魔刀とリベリオン。そして海之自身の本来の力が融合して生まれた新たな閻魔刀。あの戦いの後、火影が持っていった筈のそれに何かあったとはどういう事か…?
「仮にそうだとしてどうしてわかったのだ?あれは今お前の手元には…」
「…昨晩、俺の夢の中にあいつ等が出てきた。ネロと、もうひとりの俺だ」
「!ネロとVが?」
「ああ。そして…奴らは俺に言った」
…………
(……伊邪薙の気配が?)
(…ああ。なんでか知らねぇけど…滅茶苦茶に弱くなっちまった。俺等にも殆どわかんねぇ位な)
(全く、ダンテの奴…何をしくじったのか)
(何故お前達にそんな事がわかる?あれも火影の奴も、この世界の魔界にある筈だぞ?)
海之の疑問は最もであった。この半年間自分も何も感じなかったというのに。
(あー…なんつったらいいのか。あれはアンタの刀とダンテの剣。そして悪魔化したウェルギエルの力によって生まれたもんってのは知ってるよな?。わかりやすく言うと、つまりあれはアンタ、そして俺達の一部でもある。だからわかんだよ)
(難しい話ではない。魔剣スパーダ…リベリオン…そして閻魔刀。どれも嘗て俺達の父スパーダが生み出したもの。奴はそれら全てを把握していた。同じ血を持つ俺達でも気配位掴めていただろう?)
(……成程。ましてや伊邪薙は俺から生まれたもの。閻魔刀より魔力を探知するのは容易い、か。しかしまさか世界を跨いでまでとはな)
(まぁアンタのもダンテのも昔のよりも強力だからな。それもあんだろ。アンタがわかんなかったのはもう人間だからだろうな)
(……で、その気配が弱くなったとはどういう事だ?)
(理由はわからん。見た訳ではないからな…。だが何かしらの異変が起こった事は間違いないだろう。伊邪薙、そして、ダンテ自身にもな…)
…………
「そんな事が…ん?てことはネロやVは火影の無事も知ってたんじゃないのか?だったらもっと早く言ってくれても良かったのに…」
「まぁ便りの無いのは良い便りとも言うがな。しかし今回は違った…という事か」
「で、でもだからって火影にも何かあると決まった訳じゃ…」
シャルロットは否定するが刀奈がそれを否定する。
「…いいえ。あの刀は確か、私達が住んでるこの世界と魔界を繋げ、そして閉じられる唯一の鍵なんでしょう?その重要性は火影くんも何より重視してる筈よ。簡単に手放す訳無い」
「確かに…手放す状況になったか或いは…。何れにしても持ち主の火影さんにも何かあった、と考えるのが自然でしょう…」
「そ、そんな…!」
本音は今にも泣きそうな表情をしている。
ガンッ!!
大きな音がしたので目をやると…鈴が壁に手を打ち付けていた。
「り、鈴…」
「……だから、だからあの時反対したのよ。なのにひとりで行っちゃって!置いて行かれた…私達の気持ちも知らないで!」
「鈴…」
「何が任せろよ!何が伝説のデビルハンターよ!何が元気でよ!アンタが一番迷惑かけてたら世話ないでしょうがぁ!!」
「鈴、気持ちはわかるが火影を責めてやるな!あいつは私達のために」
「わかってるわよそんな事!!」
激しい怒りを含んだ鈴の声。しかしそれは長く続かなかった。
「でも…でもね…火影が前私達を助けるために腕を切った時、私、約束したのに…何があっても傍にいるって…約束したのに…。なんで…なんで私は…あいつが苦しんでるかもしれない時、いつも無力なの…?何もしてやれないのよ…」
「鈴さん…」
「鈴…僕も、僕だって同じ気持ちだよ…。火影の力になりたいのに…それなのに…また…何も…」
「ひかりん……~~~」
鈴にシャルと本音が寄り添う。三人共同じ気持ちなのだ。そんな彼女らにかけてやれる言葉が無い一夏達。
「…まだ確定した訳じゃない。刀だけの問題の可能性もある。だが、何か異常が起こっている事は間違いない…」
「でもどうすんだ。直ぐに助けに行こうにも…俺達は」
「はい。魔界への道は…火影兄さんによって閉ざされてしまいました」
「そもそも魔界では人は生きられないって火影も言ってたし…」
「くそ…何か、何か方法は無いのか…!」
誰もが気持ちは同じだった。火影を助けたい。しかし方法が無い。…そんな中、簪とラウラが海之に話しかける。
「…海之くん。今日休んでたのって、もしかして今回の事に関係する事なんじゃない?」
「…そう言えばお前、今日どこかに行っていたそうだな?大方、火影に関わる事ではないのか?」
簪とラウラのその内容に一夏達がふっと海之に顔を向ける。鈴達も。何かあるなら全て話してほしいという視線を一身に受けた海之は暫しの沈黙の後に口を開いた。
「……今日、俺はある場所に行ってきた。この世界で最も闇深き場所に」
「闇深き場所…?」
「ああ。今はもう瓦礫の山となった世界の闇の歴史…ラ・ディヴィナ・コメディアの島」
「「「!!」」」
その名を聞いて皆、中でも一夏が動揺する。ラ・ディウィナ・コメディア。半年前自分達が戦った場所にして、嘗て多くの命が失われた場所。「アインヘリアル計画」不死の兵士を造るという妄想のために世界中から浮浪人や傭兵、更には正規の兵士さえも集められ多くの血が流された場所。だが実際は…海之達の敵が己の目的のために全てを利用していただけにすぎなかったのだが。ともかく海之はそこに行ってきてつい先程帰ってきたとの事であった。
「あの場所に…?」
「待って。そういえば確か彼処は…この世界と魔界の境界が最も薄い場所と以前あの男が、オーガスが言ってなかったかしら?」
「!確かにそうですわ。だからあの塔が建てられたと」
「そうだ。ともかく俺は今日そこに行ってきた。…これを持ってな」
そう言うと海之はポケットからあるものを取り出す。それは銀色に光るものと黒い光沢を持つ何か。凄く小さいがどちらも金属に見える。
「…何かの破片?海之、これは?」
「これは…嘗ての俺、そして火影が使っていた、閻魔刀とリベリオンの破片だ」
「…!!」
「や、閻魔刀とリベリオンの破片!?これが!?」
「ああ…。彼奴等から渡された」
…………
(……しかし、それを聞いた所で俺にはどうする事もできん)
(諦めるのか?…フン、やはりぬるま湯に浸かってふやけてしまった様だな)
(俺はダンテの様に無鉄砲でもなんの計画性も無い事はせん。何かしらの手段があるというのならばさっさとそうしてる所だ。しかし完全なただの人間で悪魔にもなれず、伊邪薙も手元にない。「扉」があるであろう場所だけなら心当たりが無い事はないが、そんな状況でどうしろと?他に手段があるのか?)
海之のその言葉にネロがニヤッと笑う。
(へ〜♪何か出来るならさっさと動くって訳だ。なんだかんだ言いながらちゃんとダンテの゙事が心配なんだな)
(勘違いするな。奴のためではない。奴に何かあれば見るに耐えんほど元気を無くす奴らがいる。そうなれば卒業も危ぶまれる。時期生徒代表としてそれは避けたいだけだ)
いつもの彼らしく否定するが、その気持ちはふたりにはバレていた。何故なら彼は彼ら、彼らは彼なのだから。
(へいへい。そういう事にしとくかね。ではそんな友達想いで素敵な次期生徒代表殿に俺達からプレゼントだ)
そう言ってネロはポケットからなにかを取り出し、海之に渡す。海之はそれを見て目を見開いた。
(!…これをどこで?)
(そっちの方は俺がどっかで倒した雑魚の身体の中にあった奴だ。アンタが前に使ってたそれは魔帝野郎との戦いで折れた後、あちこちに散らばったんだろ?大方そのひとつじゃねぇか)
(もうひとつはもうひとりの俺との戦いの際、ダンテのそれを砕いた時に身体のどこかに紛れ込んだものだろう…。それを持って、あの世界の闇の始まりの場所へ行け。面白い事が知れるかもしれないぞ)
(…世界は一粒の砂…天国は一輪の花…汝の掌に無限を捉え…一時の中に永遠を)
…………
「そして俺は奴らの言葉に従い、あの場所に行ってきた」
「そうだったんですか…」
「それで何かあったのか?Vは何か面白い事があるという事だったが…?」
「…面白い事等ではない。寧ろその逆だ」
「逆?」
「……魔力だ。魔力が漏れ出ていた。閉じた筈の扉からな」
「「「!!」」」
海之から発せられた新たな事実に一夏達は再び驚愕の表情を浮かべる。
「魔力が漏れ出てた!?あそこからか!?」
「ど、どうして!?扉は火影が確かに!」
「待ってください!という事は…もしかして悪魔がこちらの世界に!?」
「落ち着け。扉は確かに閉じている。それは確認した。悪魔が出てくる事も無い、安心しろ」
「…それは取り合えず何よりね」
「しかし魔力は確かに漏れ出てはいた。その証拠に破片と、伊邪薙の鞘が反応していたからな」
「伊邪薙の鞘?」
「だが問題はそこではない。何故半年前とここまで魔力の状況が変わっているのか、だ」
「みうみうでもわからないの?」
「情けないがな。…ただ確実に言える事は、ここ最近の間に魔界で何かしらの変化が起こった、という事だ」
「魔界に変化が…」
「それが…火影兄さんの件に関与している可能性もありますね…」
海之は原因について帰ってから直ぐに考えた。こうなった原因を。まず消したのは人間界から魔界への干渉である。こちらの世界は魔界との干渉はほぼ無い。自分達でさえつい最近こちらの世界にも魔界があると知った位なのだ。前世ではアルゴサクス復活の件や魔剣教団の件等、人間から魔界や悪魔の力を利用しようとする動きは少なからずあったが、存在自体知らないこちらではまず無いだろうと思った。歴史に残る悪魔的な儀式や魔術等は別として。となると考えられるのはやはり魔界で何かあったと考えるのが自然。あるとすれば強力な悪魔の出現だが…嘗ての魔帝や魔王を遥かに超える程の力を持っている火影が対処できない程の存在がいるのだろうか…。
「火影…アンタに何があったの…?」
「ちくしょう…どうすればいい!俺達に何か、何かできる事ないのか…!?」
誰もが自分の無力を感じていた…。すると海之は簪に、
「…簪、以前俺に刀を造ってくれたな?もう一度造る事は可能か?」
「え?う、うん。整備部の皆で造った瑠璃月だよね?出来る事は出来るけど…それがどうしたの?」
そう言うと海之はふたつの破片と自身の拡張領域から刀が収められていない伊邪薙の鞘を出した。
「頼みがある。この破片を組みこみ、この鞘にぴたりと合う刀を造ってくれ。急拵えで構わん」
「…え!こ、これを使って?」
その言葉に海之は頷き、続け様にはっきりこう答えるのだった。
「…俺が魔界へ行く」
Mission03
「微かな希望」