IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
IS学園 整備室
束の研究所から戻って来た海之達。その夜、海之と簪、ラウラは海之の新たな刀の最終調整を終えようとしていた…。
「…………できた」
「お疲れ様だ、簪」
「ううん私のほうこそ。ラウラの手伝いが無ければもっとかかってたよ。ありがとう」
束から呼び出しがあったので一日遅れたがなんとか完成した。見た目瑠璃月と造りは同じだが刀身には閻魔刀とリベリオンの破片が埋め込まれており、そして伊邪薙の鞘に納められている。
「手間をかけさせてすまなかったなふたり共。いずれ何か償いをさせてもらう」
「気にしないで海之くん」
「ああ。これ位なんともないぞ」
簪は刀を海之に差し出す。鞘からほんの少し刀を抜き、銀の刀身が海之の青い目を映し出す。
「銘を変えたのだな。瑠璃月改め…「
「うん。伝説の大蛇を倒した神様の持っていた刀から名前を考えたの」
「八岐大蛇と須佐之男命の伝説だな…」
そう言いながら納刀し、やや広いスペースに移動すると、
「……はっ!」
以前瑠璃月を受け取った時の様に素早く抜刀し、刀を振るう。流れる様に、自然に。とっかかりや不自然等が無いか確認する。その光景を簪とラウラが黙って見つめる。海之の刀を振るう優雅さもあるが…その目にはどこかしっかりと見ておきたいという意識が垣間見えた。やがてひとしきり振るった後で再び納刀する海之。
「………悪く無い」
「本当?どこも問題ない?」
「ああ想定以上の出来だ。これなら例え魔界で戦闘になっても耐えられるだろう」
「良かったな簪」
「うん。でも、やっぱり戦いがあるのかな…?」
「前にも言ったが魔界は悪魔共の世界だ。こちらの魔界は俺達の世界のそれとどれ程違うかはわからんがそれは確実だろう」
こちらの世界の魔界がどの様な場所かは行ってみないとわからない。どんな魔物がいるのかも。だがあの時感じた魔力は嘗ての魔界とよく似ていて刀も反応していた…。という事は魔力そのものに違いはないのかもしれない。
「そうか…。私達も一緒に行けたら良かったんだが…」
「気にするなラウラ。山田先生も仰っていただろう?お前達にもし万一何かあれば国の問題に発展しかねん。これでいいのだ。それに…お前達をあの様な場所に連れて行きたくはない」
「ありがとう海之くん。…でもやっぱり一緒に行けないのは残念だな」
「ああ。鈴達なんて帰ってきて早々部屋に閉じこもってしまったしな…」
ラウラの言う通り、鈴とシャルロットは行けないショックからか、火影と本音の部屋に閉じこもっていた。
「今はあいつらだけにしてやれ。明日出発の時は出てくる」
「うん…」
「…さて、海之の刀もできたし、明日も早いからもう休むか」
「そうだね。…あ、そうだラウラ。さっき海之くんに話があるとか言ってたよね?」
「…え?い、いや私はそんな」
「海之くん。ちょっとラウラに付き合ってあげて。私は先に部屋に戻ってるね」
「…?ああ」
そして簪は先に部屋に戻っていった…。
「取り合えず移動するか」
…………
海之とラウラはよく皆で集まるフロアに来ていた。ふたりは並んで座る。時間が既に大分遅い事もあってか他の生徒はいない。周回の教師も暫く来る気配はない。
「紅茶だ。砂糖はひとつだったな」
「あ、ああ。ありがとう」
「…それで、俺に話とは?」
暫し黙った後で、
「………帰って来るよな?」
そう尋ねるラウラ。更に念を押すように、
「……」
「ちゃんと…無事に、帰って来るよな?私達のところに」
そう聞く彼女の目は真剣だ。その姿に簡単な返事は出来ないと思った海之は濁さず答えようとする。が、
「……もし」ガシッ!「…ラウラ?」
「もしとか言うな…。絶対に帰って来ると言え。嘘でもいいから…頼むから言ってくれ。簪の話を聞いてから…不安で押しつぶされそうなんだ…」
海之の服を掴んで力無き声でそう言うラウラ。表情は伺えない。話とは先日のもし万が一火影に何かあれば、海之が封印のため魔界に残るかもしれないという事だ。簪がいる時は弱気な姿を見せないが、その実彼女も不安で仕方ないのだろう。簪もきっとラウラのそんな気持ちを知っていたからふたりで話をさせたに違いない、と海之は思った。海之はラウラの肩に手を置き、
「心配するな。必ず戻って来る。お前達の所に」
「………本当だな?本当に帰ってくるな?前にも言ったがこの歳で未亡人は嫌だぞ?まだ式も挙げてないんだからな」
「俺を信じろ」
表情は崩さないながらも不安にさせない様優しさを含む声でそう言った。その言葉にラウラは安心したのか、次第に服を掴む力を緩めた。
「…すまない。私としたことが情けない姿を見せた。戦士の嫁として、堂々と送り出さなければならんというのに」
「気にするな」
「私はもう大丈夫だ海之。後で簪にも言ってやってくれ。あいつも何も言わないが私よりもきっと不安な筈だ。……火影を頼んだぞ」
「わかった」
…………
一夏の部屋
その頃、一夏の部屋ではというと…、
「…で、なんでまたここに泊まってるんすか?」
「気にしない気にしない♪」
「そうだ!これ位気にするな!」
「どこのお部屋でも複数で寝られているではないですか」
「いやどこの部屋もふたりだけなんですけど…」
箒、セシリア、刀奈が一夏の部屋で過ごしていた。以前一夏を見舞った時の様に彼の部屋で眠る事になったのだ。但し今回は一夏はひとつの、他3人はもうひとつのベッドで眠る事になった。というのも一夏が火影達からの罰?(Mission186参照)で彼女らの気持ちを知って以来無性に恥ずかしさを覚えてしまい、同じベッドで眠るのを拒んだからだ。
(流石に落ち着かないしな…)
「…一夏」
「ん?」
「すまない…私達も一緒に行けなくて…」
「なんだそんな事か」
「そんな事ではありません!私達もご一緒したかったのに…本当に残念に思っているのです」
「私だって本当は行きたいんだからね…」
箒やセシリアは悔しそうな表情を見せる。刀奈も止めはしたがやはり本当は一緒に行きたかった様だ。
「その気持ちだけで十分だよ。山田先生も言ってただろ絶対に許さないって。代表でも候補でもない俺だってさっき滅茶苦茶説得してやっとOKもらったんだぜ?それに海之やスコール達、マドカや束さんだって一緒なんだ。大丈夫だって」
「それはそうかもしれませんが…」
「それにしてもまさか篠ノ之博士が一緒に行くとは思わなかったわね…」
「ええ…。一夏、すまんが姉さんを頼むぞ」
「わかってるさ箒。てか束さんの方が心配ないかもしれねぇぞ?」
「かもな」
「「「~~~~」」」」
四人は笑った。是位リラックスした方が良い。
「さて、もうそろそろ休みましょう。明日は早いのだから」
「そうですわね」
「…やっぱりここで寝るのか?」
「「「当然だ(ね)(ですわ)!」」」
「…はぁ」
と、その時一夏の手を箒が握りしめる。その上にセシリア、刀奈も続く。
「ちょ」
「一夏…絶対に戻って来いよ」
「どうか…どうかご無事で」
「私達と蘭ちゃん、皆で食事と告白聞く約束…守ってくれないと承知しないんだからね」
「……ああわかってるさ」
…………
海之と簪の部屋
ガチャ
「…あ、海之くん。お帰り」
「まだ起きていたのか?」
「うん…ちょっと眠れなくて」
寝間着姿であるが簪はベッドにおらず自分のベッドに座っていた。
「ラウラとは話できた?」
「ああ」
「そう、良かった…」
「あいつからの伝言だ。お前のおかげで色々楽になったと」
「私は何もしていないよ」
「…眠れないならホットミルクでも入れてやるが?」
「ううん大丈夫だよ、ありがとう。……ねぇ海之くん、ちょっといい?」
海之が頷くと簪は自分の隣に座る様に促す。海之は黙って従う。
「「……」」
互いに無言のままが続く…。すると暫くしてから声を発したのは海之からだった。
「……先にも言ったが」
「…え?」
「お前達を魔界に連れて行かない事に後悔は無い。だが、それはお前達の気持ちを無理やり抑えつけているという事。云わば俺の自分勝手だ。…お前達にはすまないと思っている」
「み、海之くんが謝ることなんてないよ!責めようなんて思ってない!篠ノ之博士の事も!ふたりが私達の事心配してくれているのはよく分かってる。だから…そんな風に考えないで。……必ず、帰ってきてね?」
「約束する。誰も死なせはしないさ」
「うん。……ねぇ海之くん。ひとつだけ、ひとつだけお願い聞いてもらっていい?」
「なんだ?」バッ!「!…簪」
海之の返事と共に、彼の胸に勢いよく飛び込む簪。
「………少しだけでいい。このままでいさせて。代表候補戦の時みたいに…」
「……」
「海之くんを信じてるから…。行かないでなんて言わないから…。だから、私がもう不安にならない様に…弱音を吐かない様に…。お願い…少しだけ」
簪は海之の胸の中で震えている。これまでの戦いを経て彼女も強く成長した。しかし、簪もまだ幼いひとりの少女。弱気になる事もどうしても拭えない押しつぶされそうな不安を感じる事もある。それが自身の好きな者の生死がかかっているなら猶更だろう。海之は何も言わず、簪の身体を彼女の震えが収まるまでずっと優しく抱きしめていた。
…………
束の研究所
その頃、束の研究所ではスコールとオータム、束、そして暁桜との調整の為に残っていたマドカが集まっていた。つい先ほど白式・駆黎弩へのドレッドコート装着と暁桜の調整が終わった。
「お疲れ様、束」
「この束さんなら朝飯どころか顔を洗う前に終わるさ♪」
「マドカも大丈夫?」
「いらん心配だと言った筈だ」
「ケッ、相変わらずなまいき言いやがる。…しかしコイツラの初陣が宇宙どころか魔界っつう地の底とはな」
「魔界か…。どんな場所か想像もつかないわね」
「きっと悪魔とかゴロゴロいるよ〜楽しみだな〜」
「…やはりお前は狂人だな」
「ニャハハそれ程でも〜♪」
「…でも束。本当に貴女も行く気?どうせ止めないだろうけど」
「当り前田のク◯◯カーだよスーちゃん。…逆に束さんの方が申し訳無いよ。君達まで巻き込んじゃって」
「「……」」
「…?どったのふたり共?」
「貴女から「申し訳ない」なんて言葉が出るなんて驚いちゃって」
「今更だっつ〜の。この半年の間にどんだけ無茶な実験に付き合わされたと思ってんだ」
「新たな可能性を開くのに無茶は恐れちゃいけないのだよ♪」
「…何をやられたんだ一体?」
「それに……さっきも言ったがオーガスんところにいた時より気分はまぁマシだからよ」
「ふふ、まあそれは言えてるわね。……さて、私達も休みましょうか」
「そうだな」
~~~♪
その時束のコントロールパネルに通知音が鳴る。彼女のコンピュータは世界中のISの動きを把握できるようになっているのだが…。
「なんだ?」
「……おや~?何かがあの島に近づいてるね。しかもふたつ」
「ふたつ?」
「これは………皆、ちょっと早いけど出るよ」
…………
そして翌日の早朝、遂に魔界へ行く時がやって来た。海之と一夏だけでなく、島までは箒達も一緒だ。誰にも気付かれない様早朝の内に出る予定だが…そこには鈴とシャルロット、そして本音の姿が未だに無かった。
「遅いな鈴達…」
「シャルロットさんも本音さんもですわ。…おかしいですわね」
「…迎えに行こうか?」
「いや、時間が惜しい。あいつらには悪いが…もう出た方が良い」
「…仕方が無いか」
「皆さんが行かれたら私が声をかけておきます。……海之くん、一夏くん。本当に、本当に気をつけて。絶対無事に帰って来てください」
「はい」
「当たり前です山田先生!行ってきます!」
そしてクロエのロケットで海之達は出発していった…。
…………
火影と本音の部屋
(確か火影くんと本音さんの部屋にいるんでしたっけ…)コンコン
まだ朝が早いので静かにドアをノックする麻耶。……すると、
ガチャ
「あ…山田先生。お、おはようございます」
暫しして扉が開いた。対応したのは本音。
「おはようございます布仏さん。…鳳さんとデュノアさんは?まだ眠られてますか?」
「あ、あはは。え、え〜と〜…」
すると本音は一旦奥に下がり…あるものを持って戻ってきた。手には一枚の手紙が。それを麻耶に渡す。
「……!!……あの娘達…」
…………
クロエのロケット内
出発から数時間後…、
「……もうすぐあの島ね」
「まさかあの島にもう一度行く事になるなんて思いませんでしたね…」
「それは確かにな。束さん達は先にもう行っているんだよな?」
「ええその筈です」
「…海之くん大丈夫?」
「心配するな。何も問題はない」
~~~♪
「島が近づきました。もうすぐ視認の距離になります」
「…あの島ではないか?」
ラウラの言葉に皆がその方向に注目する。……が、
「……?何か人数が多くないか?」
「…本当ね。多い様な…」
「……!」
「え!?」
「お、おい!あれ…!!」
…………
ラ・ディヴィナ・コメディア島
「みんなおは~♪」
「来たわね」
それから間もなくして海之達は嘗ての因縁ある場所に到着した。空はこれから魔界に行くのには似つかわしくない程、雲一つない晴天である。そこには束やスコール、オータム、マドカがいたのだが…それ以外に、
鈴
「や~っと来たわね」
シャル
「皆、おはよう」
そこにはなんと既に、鈴とシャルロットが来ていたのだ。当然その光景に一夏達は驚く。
「時間が無いんだからもっと早く来なさいよね」
「いやいやいやいやいやいやいやいや!」
「鈴!シャル!何故お前達が既に来ている!?」
「あ、あはは…やっぱり気になる?」
「こっそり夜明け前に飛んで来たのよ。昨日帰ってから仮眠して」
「よ、夜明け前?しかも直接飛んできたのですか!?」
「なんて無茶を…!」
「思ったより大丈夫だったわよ。途中で博士達のロケットに拾ってもらったから」
「束様のロケットにって…では束様やスコール様達は御存じだったのですか!?」
「束さん達も夜までは知らなかったよ~」
「……束さん、どういう事です?」
海之は束に尋ねる。すると束はいつもの口調のまま答えた。
「いや昨日の夜にね~?寝ようと思ってたらこの島に近づく反応があって、調べたら鈴ちゃんとシャルちんのISのコア反応だったんだよ~。それでな~んか気になって急遽束さん特製旅行用ロケットで飛んできたんだよ。そしたら案の定飛んでるふたりでさ~。どうせなら一緒に行こうって保護しちゃったわけよ。勿論聞いたよ?なんでこんな時間にって。そしたら」
「博士。そこから先は僕達が話します」
そう言って鈴とシャルロットは前に出、驚く事を言い出した。
「海之、アンタ言ったよね?あの塔があった場所から魔力が漏れ出ているって」
「そして博士が言ってたでしょ?魔界に行くには、ドレッドコートを使える様になるには、魔力に慣れる必要があるって」
「ああ。………まさか」
「…まさかふたり共!?」
海之と刀奈は何かを感じ取った様だ。
「それってつまり…そこに暫くいれば、魔力に慣れるのと同じ状態になる、って考えられないかしら?」
「漏れている魔力にずっと触れていれば…魔力を纏うっていうDNSやDTと同じになるよね?」
そう言う鈴とシャルロットの表情は真剣だ。
「…鈴さん!シャルロットさん!」
「ふたり共何ともないのか!?」
「何ともないわ。スコールやオータムが何も無いようにね」
「で、でもどうしてそんな事を!?」
「決まってるでしょう?魔界に行くためよ」
「!!ま、魔界にって…ドレッドコートはもう無い筈じゃ…!」
「うん。だから…」
次に声を出したのはスコール。
「私とオータムのISをこの子達に貸してあげる事にしたのよ」
「!な、なんだって!?」
「勿論最初は相手にしなかったさ。ガキには酷な仕事だってな。……が、あんだけうるさく必死に頼み込まれちゃな」
「おまけに土下座までしてな。みっともない」
「そんなのなんともないわ。…海之、一夏。私達もアンタ達と魔界に行く。文句は言わせないからね」
「これは僕達の完全な我儘だよ。本音は止めようとしたんだ。でも…僕達は自分達の手で火影を助けに行く」
「鈴…シャル…お前ら」
「ですがおふたりはスコールさんとオータムさんのISには…」
「確かにぶっつけ本番になるけど調整は博士にもうやってもらってるから大丈夫よ」
ふたりは決して折れるつもりは無い様だ。
「…………覚悟はできているな?」
「でなきゃこんな事しないわ。帰って来たらどんな罰も受けるつもりよ」
「僕もだよ。でも本音は何も悪くないからね。巻き込んでしまっただけなの」
「道理で全く姿が見えなかった訳ね。連絡無いところを見ると山田先生も事情を酌んだのかしら…」
そんな話をしているとマドカが、
「そんな事を悠長に話している余裕があるのか?」
「そうだった!…もう仕方ねえ鈴、シャル!付いてくるからには気をつけろよ!」
…………
そして全員であの場所へと移動する。半年前の戦いで崩れた塔は破片ひとつ残らない程完全に崩れ落ちている。おそらくこうなった時の安全装置で証拠となりそうなものは全て自壊する様になっていたのだろう
「…ラ・ディヴィナ・コメディアか」
「あるのは砂だけね…」
ドクンッ!
「!…魔力が七日前よりも更に濃くなっている」
「なんだって?」
「「悪魔還り」は使えないがな」
(一体どういう事だ…?こんな短期間でここまで変わるとは。……そういえば前世で読んだ本に)
「ね〜ところでみーくん。魔界で特に注意するとことかある?」
そう言われて海之は一旦魔力の事を置いて一夏達に向き合う。
「俺達はこれから魔界に向かう事になる。こちらの魔界に俺の知る常識がどれほど通用するかはわからんが、一応覚えておいてくれ」
一夏達は頷く。
「まず第一に、魔界にはいるだけでいくつもの危険が付きまとう。その危険性は、ラ・ディヴィナ・コメディアのそれを遥かに超えるだろう。基本的に、魔界に存在するものには極力接触するな。そこらに落ちている石ころさえもだ。ましてや持ち出したりする事など決してしてはならない」
「わ、わかってるって」
「そして魔界には多くの悪魔や魔獣がいる可能性が極めて高い。その場合戦いになるだろうが決して躊躇するな。殺すつもり、ではなく、殺せ。強い者が生き残り、弱き者が死ぬ。それが魔界の全てだ。躊躇すれば死ぬのは自分だと思っておけ」
「う、うん…!」
「言われなくとも化け物に手を抜いたりはしない」
「目的は火影と伊邪薙の無事を確認する事だ。最初の知らせから既に8日が経過しているが、それ以降無いという事はどちらも幸いまだ無事である可能性は高い。どんな状態にあるかはわからんがな」
「必ず見つけてやるわよ。そして目茶苦茶文句言ってやるんだから」
ここまではある程度予測していたのか反応は大人しいものだった。皆改めて覚悟はできている様だが…次の海之の言葉に再び驚く事になる。
「そして…絶対に守ってもらう事がふたつある」
「ふたつ?」
「まずひとつ。お前達や束さんには…約一時間で魔界から脱出してもらう」
「…え!?」
「い、一時間って…たったそれだけか!?」
「そうだ。例え火影を見つけていなくともな。お前達はそこまでだ。それからは俺ひとりでやる」
「そ、そんな!」
「皆、今はみーくんの話を聞いてあげなよ」
束に言われて皆は取り敢えず落ち着く。
「ドレッドコートがあるとはいえ、実際魔界に行けば何があるかわからない。束さんを信じていない訳ではない。だがそれ程魔界は人間にとって酷な世界なのだ。最初は有効でも途中で効かなくなる可能性もある」
「まぁ今回はテストのしようも無かったからね〜」
「ましてや魔力の状態から今魔界は不安定な状態にあると言っていい。予想外の何らかの事態が起こっても決して不思議ではない。いや、既に何か起こっているかもな」
「何かって…?」
「それを確かめるのも俺の目的のひとつだ。そしてもうひとつ絶対にせねばならんのは伊邪薙の確保だ」
「お前の刀の事か」
「そうだ。あれは人界と魔界を繋ぎ、閉じる唯一の物だ。あれが完全に消失すれば、二度とそれが不可能になる。それだけはなんとしても阻止しなければならない」
海之はそれさえ何とかなればいざという時は自分が…と思っていたが、しかしそれは言わずにいておいた。一部の者達は既に気づいていた様だが。
「伊邪薙の確保を優先とし、皆は一時間で戻る。このふたつだけは必ず守ってもらう。元々俺ひとりで行くつもりだったのだ。其れ位の要望は聞いてもらう。いいな?」
海之は強い表情と口調でそう言い聞かせた。多くの者が残念がる中、
「要するに一時間で両方見つけたらいいんだろ!火影も海之の刀も!」
「そうだよ~。一時間といったら60分、3600秒もあるんだよ~?皆でやればきっと間に合うって~」
「落ち込む暇があるならばさっさと行くぞ」
一夏や束、マドカの声が皆を振るい立たせる。
「……そうね、マドカの言った通り落ち込んでる暇なんて無いわね。一時間許してもらえたと思いましょ!」
「一時間しかないんじゃない。一時間もある、と思う様にする。絶対に上手くいくよ。いやいかせよう!」
「そういう事だ海之。早く行こうぜ!」
「……わかった」
鈴やシャルロットも再び気持ちを引き締めた様だ。皆の覚悟を感じた海之は何も言わずに、蒼羽々斬に心で語りかけ、
(…閻魔刀の力を継ぐ剣。俺を再び魔界に導け…!)
ブン!ブン!
抜刀し、十文字に刀を振るった。
「………?」
「何も…起こらない?」
「…!いえ、見て皆!」
ピーーーー………ヴゥゥゥゥゥゥゥン!!
斬った部分に光が走り、そこから蕾が開くかのように黒く、禍々しい光が漏れる空間が開いた。
「く、空間が割れた!」
「あれが…魔界へ続く扉!」
「なんて…禍々しい光ですの…」
…カッ!!
刀を納刀した海之は続け様に自らのSin・ウェルギエルを纏う。その姿を見て一夏達も自らのISを展開した。鈴はセルケスティスを、シャルロットはメタトロン・シューピアを展開した。
「鈴がオータムのISでシャルがスコールのISか」
「終わったらすぐ返せよ!壊したら承知しないからな!」
「……行くぞ」
「おう!」
「ええ!」
「うん!」
「ふん」
「りょりょ〜♪」
海之を先頭に、一夏達はその穴に飛び込んだ。飛び込んだ彼らの姿が黒い光に飲まれ消える。
「だ、大丈夫だよな!?」
……そして約一分後、扉は静かに音を立てながら閉じた。
「扉が…閉じた」
「きっと海之くんが向こうから閉じたのね。後は…信じて待つしかないわ…」
(一夏さん…皆さん…ご武運を!)
(海之くん…皆…どうか、どうか無事に帰ってきて…!)
(死ぬんじゃないぞ…海之、皆…!)
(束様…どうかご無事で…)
残された全員が6人と火影の無事を祈っていた。
…………
魔界
「……」
そして海之達が魔界に飛び込んだその少し前、とある場所にて動く何者かの姿があった…
Mission09
「魔界の異変」