IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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アリーナで訓練に励む一夏達。
そんな一夏に火影と海之は代表決定の祝として、アラストルという一振りの剣を与える。
持ち主のISのスピードを向上させ、さらにプラズマエネルギーによって相手を切り裂くというそれに一夏は大喜び。訓練に更なるやる気を見せながらその日の訓練を終了するのであった。


Mission25 鈴の涙

一夏にアラストルを贈った日の翌日。

 

この日の授業も特に問題なく終了した。…まあ多少なりの騒ぎはあったが。

というのは今日も千冬指導によるIS実習が行われたのだが、その中で一夏はさっそく火影達が贈ったアラストルを使った。今まで誰も見たことが無い上にまさか新しい武器があるとは思わなかった生徒達、そして千冬も真耶も驚いていた。一夏はアラストルの機能で白式のスピードを上げた所(因みにレベルは海之の言った通り1.2倍)、見事にスピードに振り回される形となり、止めるのに時間が掛かってしまった。結果その日の授業はアラストルの説明と一夏の操縦指導で潰してしまったのである。

 

結果、間接的とはいえ授業を潰す原因となったアラストルを造った火影と海之は反省文2枚を書く事になり、今火影は職員室に提出して部屋に帰る途中である。空はすっかりオレンジに染まっていた。

 

 

寮内の共通スペース

 

火影

「やれやれ…。ん?」

「……」

 

鈴は共通スペースのソファーの上で脚を抱えて蹲っていた…。

 

火影

(鈴?…そう言えば今日は一夏と放課後に会うと言ってたが、もう終わったのか。…にしては様子が変だな?)

 

気になってしまった火影は鈴に話しかけた。

 

火影

「おい」

「っ!………火影…」

 

顔を上げた鈴は酷く落ち込んだ様な表情だ。おまけについ先ほどまで泣いていたのか涙の跡が痛々しい感じがする。

 

火影

(…一夏となんかあったか?)

「…どうした?」

「……あんたには関係ない…」

 

そう言って鈴はまた顔を伏せてしまった。

……火影は鈴の隣に腰を降ろした。

 

火影

「……」

「……」

火影

「……」

「……」

 

沈黙が続いているとやがて鈴が伏せながら話しかけてきた。

 

「……なんで何も言わないの?…」

火影

「…関係ないと言われたからな…。だが放っておくのもなんだしな…」

「……変わってるわねあんた…」

火影

「……かもな」

 

 

…………

 

火影と本音の部屋

 

 

本音

「ひかりんおかえり~。ってあれ~、えっと~確か1-2の…鳳さんだっけ?どうしたの~?なんか元気ないよ~?」

「う、うん…」

火影

「ちょっとな。ほら、適当に座れ」

 

鈴は招き入れられ、火影のベッドに腰掛ける。

 

本音

「ね~ひかりん~、今日のデザートは~?」

火影

「ああ、今日はオレンジのシャーベットだ。昨日作って凍らせておいた。今出してやるから待ってろ」

本音

「わ~い。ねぇ鳳さんもどう~?ひかりんのデザートは美味しいよ~」

「えっ…う、うん…」

火影

「わかった」

 

少しすると火影が2人分のオレンジのシャーベットを持って戻ってきた。

 

本音

「ん~やっぱり美味しい~♪鳳さんは~?」

「う、うん。…美味しい」

火影

「どうも」

 

2人は気にいってくれたようで直ぐに食べ終えてしまった。

 

鈴・本音

「ごちそうさま(~)」

火影

「ああ。…さて鈴、言いたくなければ別に言わなくて良いが、…何かあったか?…おそらくだが、多分一夏が関係してんだろ?」

「えっ…えっと…」

火影

「大丈夫だよ。本音は一見のんびりしてるがこう見えて口は固い奴だからな。誰にも言ったりしない」

本音

「うん、安心して良いよ~」

「……うん」

 

そう言うと鈴は今日あった事を話しだした。

授業の後、鈴と一夏は屋上で2人だけで会い、別れた後お互いどうしていたか話しあっていたらしい。やがて話は2人が別れた際に一夏と鈴が交わしたというある約束の話になった。その約束とは、

 

「大きくなったらあんたのために私が毎日酢豚作ってあげるわ!」

 

…一見するとプロポーズの様にも聞こえる内容である。(というかそうにしか聞こえないが)

鈴は別れた後もずっと一途に一夏を想い続け、いつかその約束を果たそうと思って頑張ってきた。そしてこの度一夏が自分と同じくIS学園に入る事を知り、大喜びで転校してきたのだ。そして一夏と再会した鈴はあの時の約束の返事を聞こうと呼びだしたのである。ここまでは特に問題は無かった。だが…

 

一夏

「覚えてるぜ!大人になったら一人暮らしでも毎日酢豚を御馳走してくれるんだろ?」

 

…………ここで全てが狂った。

一夏は鈴のプロポーズじみた約束を文字通りそのままの意味で受け取ってしまい、プロポーズとは露ほども思っていなかったのだ。この答えに鈴は激しく怒った。同時に全く疑問を持っていない一夏も怒りだし、そして鈴は一夏にビンタをしてケンカ別れしてしまったのである。そのまま寮の共通スペースで泣いていた所、火影が帰って来たというわけだ。

 

火影

「…あ~、何っつうか…、なぁ?」

本音

「おりむ~…それはないよ~…」

「ほんっとムカつく!」

火影

「まぁ、確かにショックだろな…。だが、知り合って間が無い僕からしてもあいつの鈍感ぶりはわかる。ましてや幼馴染のお前は尚更だろ?僕の想像だが一夏には少しわかりにくかったんじゃねぇか?」

「うっ…」

本音

「でもね~、ストレートに言うのも恥ずかしいよね~」

「そ、そうよね!そうなのよ!なのにアイツ~!」

火影

「…でも好きなんだろ?」

「……」

火影

「僕は恋愛事とか正直わかんねぇし、今日の話でこれからお前がどうしたいかは自由だ。だがもし好きならその気持ちを持ち続けろ。そして伝え続けろ。結果的にそれが一番の近道だ。ましてや一夏みたいなバカ正直な奴にはな」

「……うん、ありがと。…火影って優しいのね…。この前も助けてくれたし」

火影

「変わり者なだけだ」

「お礼に今度あんたにも酢豚作ってあげるわ」

火影

「そいつぁどうも」

本音

「ね~そういえばさ~、夕飯どうする~、皆で食堂行く~?」

 

見ると空はすっかり暗くなっていた。すると火影が…

 

火影

「…いや、今日は俺が作ろう。鈴、お前も食っていけ」

「…えっ?」

火影

「一夏に会っちまう可能性もあるからな。気まずいだろ?それに涙跡まだ消えてねぇぞ。見られるのも嫌だろうしな。まず顔洗って、食ってから帰れ」

「えっ…あっ…」

本音

「わ~い!ひかりんの料理だ~」

火影

「さてっと……、ジェノベーゼで良いか?」

本音

「いいよ~」

「…ありがと火影。…あとあんた本音だっけ?私の事は鈴で良いわよ」

本音

「わかった鈴~」

 

火影達は3人で食事を取った。




のほほんさんは誰とでも仲良くなれる気がします。
火影(ダンテ)は女性が苦手でも結果的に世話焼いてしまう気がします。


※ジェノベーゼとはバジルのパスタです。

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