IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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部屋に帰る途中だった火影は項垂れていた鈴に出会う。聞くと昔一夏と別れる際、鈴はプロポーズの様な約束をしていたのだが、当の一夏は全く違ったとらえ方をしていたため、そのショックでケンカ別れしたという事だった。
そんな鈴に火影は「伝え続けろ」とアドバイス。鈴はそんな火影の気持ちと優しさに感謝するのであった。


Mission26 伝える事の難しさ

あれから数日が経ち、クラス対抗戦まであと1週間となった。

 

一夏は火影と海之から貰ったアラストルを使い、スピードと剣に慣れる訓練を続けている。そのためかまだ低いレベルではあるが白式の上がったスピードに慣れ始めてきた。さらにその間一夏はイグニッション・ブースト(瞬時加速)という技を千冬から教わり、相手の隙を突く訓練も同時に行う様になっていた。因みに剣術は箒が、遠距離戦闘術はセシリアが引き続き担当している。

 

火影

「ようやくスピードにも慣れてきたようだな」

一夏

「おかげさんでな。しかしスゲーなアラストルって。よくこんなもの作れるよな海之」

海之

「まあな。他の作業と合わせて一年近くかかったが」

一夏

「マジか?大事に使わねーと」

セシリア

「それに私の射撃にも段々対応できるようになってきましたわね。まあ教えて差し上げているのが私ですから当然ですが」

「ふん。そもそも射撃兵装が無い白式にはあまり意味がない。最初に言っただろう。私だけで十分だと」

セシリア

「あら。先日私との模擬戦で私の攻撃に当たって負けたのは何方でしたでしょうか?」

「!…ほう、言うではないか。なんならもう一度勝負するか?もう同じ手は通用せんと思え!」

セシリア

「望むところですわ!」

 

だんだん訓練がおかしな方向に進みつつあった。

 

一夏

「あの二人ってあんなに仲良かったっけ?」

火影

「……お前な」

海之

「ハア…」

 

とその時、

 

「一夏!」

 

見るとアリーナ入口から鈴が近づいてきた。因みにISは展開しておらず制服である。

 

「鳳…、なぜここにいる?」

セシリア

「まさか…一夏さんを狙って!」

海之

「落ち着け二人共。ならば制服で来たりしないだろう」

 

海之にそう言われて二人はとりあえず落ち着いた。

 

一夏

「何の用だよ鈴?」

「この前の話についてだけど、…ごめんなさい」

一夏

「この前って…、ああ、あの屋上での話か」

「そっ。突然怒り出して悪かったわ。あとビンタしたのもね。それについては謝るわ」

「ビ、ビンタだと?鳳、お前何を!?」

セシリア

「せ、説明しなさい!」

 

そんな二人を無視して一夏は答える。

 

一夏

「それについてはもう良いよ。お前がそんな奴だって事は知ってるから。昔から怒りっぽかったからな、お前は」

「うっ…、だ、誰のせいだと思ってんよ!怒った私も悪いけど、元はと言えば約束をちゃんと理解していなかったアンタも悪いんだからね!」

一夏

「約束ってちゃんと覚えてただろ?」

「意味が違うのよ意味が!」

一夏

「意味って…どう違うんだよ?」

「そ、それは…!少しは察しなさいよ!」

一夏

「…お前謝りに来たんじゃないのかよ。お前あれから変だぞ?急に怒ったり謝ったり」

「う、うっさいわね!」

一夏

「…んだよ貧乳……あっ」

 

……………プッツン!

 

その時その場にいた全員が、目に見えない糸が切れた様な気がした。全員がゆっくり鈴を見ると顔を俯けながらプルプル震えている。

 

「……言ってはいけない事を言ったわね…」

 

鈴から発せられるその怖さに一夏も思わず後ずさる。

 

一夏

「あ、あの、鈴?」

「もう怒った!あんた許さないから!対抗戦では覚悟してなさい!!」

 

そう言って鈴はアリーナから出て行った。

だがこの中で事情を唯一知っていた火影だけは気づいていた。鈴が見えない涙を流していた事を。

 

一夏

「……」

火影

「…海之、あと頼めるか?」

海之

「?…ああ。行ってやれ」

火影

「すまねぇ。一夏、鈴の事は任せとけ。お前は訓練に集中しろ」

一夏

「…悪い、火影」

火影

「気にすんな。箒とセシリアも頼んだぜ」

「う、うん」

セシリア

「…わかりましたわ」

 

そして火影は鈴を追いかけた。

 

 

…………

 

火影

「…鈴、どこにいんだ…」

 

あれから火影は鈴を探していたが中々見つけられずにいた。部活動は行っている時間帯であるから目立つ場所にいるとは考えにくい。とすると屋内、教室か寮の自室だろうか…?

 

火影

「とりあえず行ってみるか…」

 

 

IS学園 寮内廊下

 

火影は職員室で鈴の部屋番号を聞き、部屋に向かっていた。聞いたついでに教室も覗いてみたがそこにも鈴はいなかった。

 

火影

「鈴の部屋はこの先か…………って、あ」

「……」

 

そこに鈴はいた。部屋の前で足を抱えて踞っている。ただ鈴の部屋ではなく、そこは火影と本音の部屋の前だった。

 

火影

(事情を知ってる僕か本音が帰ってくるまで待ってたのか?)

「……おい」

「!……」

 

鈴はゆっくり顔を上げたが何も言わなかった。ただ昨日の様に涙の跡が痛々しかった。

 

火影

「ハァ…、入れよ」

「……コク」

 

鈴はただ静かに頷いた。本音はまだ帰ってきてないのかいなかった。

 

 

…………

 

火影

「ほらお茶。烏龍茶じゃなくて悪いな」

「……」

 

前と同じく火影のベッドに腰かけた鈴は黙って受けとる。火影は椅子に座ってただ見守る。

 

火影

「……」

「……」

 

沈黙が続いていたがやがて鈴が口を開く。

 

「……頑張ったんだよ、私」

火影

「……」

「昔と違ってちゃんとまず謝ったし、あの時一夏が思い出さなくても、一言謝ってくれたら全部チャラにしようって思ったの。約束とか関係なくね。でも…やっぱりできなかった」

火影

「……」

「難しいね…伝えるって…」

火影

「……」

「……ねぇ、火影?」

火影

「…なんだ?」

「……なんで来てくれたの?今さらだけどあんたには関係無い話じゃん。どうして?一夏に言われた?」

火影

「……関係無い話に付き合っちゃ悪いか?僕がそうしたいからそうした。一夏は関係ない」

「!……はは、カッコいいじゃん。……でも、ありがと」

火影

「気にすんな」

 

鈴は火影の然り気無い言葉が、気遣いが嬉しかった。そしてふと思った。

 

(…あの時、…もし知り合っていたのが、………あんただったら、……変わっていたのかな。……………………あれ?…………私?)

 

鈴は自分の中に今までと違う気持ちがある事に驚く。そしてその先にいたのは…。

 

火影

「何か言ったか?」

「う、ううん。何でもない!……ねぇ火影、お願いがあるんだけど」

火影

「なんだ?」

「今度のクラス対抗戦なんだけど…私の事、応援してくれる?」

火影

「? 僕は元から一夏もお前も応援するつもりだが?」

「………ふふっ♪」

 

ガチャッ!

 

本音

「ただいま~。あれ~?鈴もいるじゃん。どうしたの~?」

火影

「ああそれは…」

「ちょっと火影のデザートがまた食べたくなっただけよ♪」

本音

「あ~ずる~い!ひかりん私も私も~!」

火影

「へいへい」

 

そして火影・鈴・本音はまた三人でデザートも夕食も取ることになった。




火影の台詞の一部、DMC4より一部アレンジ

原作
「大事な物を人にやっちゃ悪いか?お前に預けたいからそうする」

「関係ない話に付き合っちゃ悪いか?僕がそうしたいからそうする」

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