IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
剣が主武装の一夏と箒は自然に海之との勝負になるが、海之の圧倒的な実力に打つ手がない。
一方セシリアと鈴、そしてややチームワークに不安があるラウラは火影に挑むが火影の剣と銃。そして新たな武装にこちらもなす術がなかった。
結果試合は千冬の睨んだ通り、火影と海之の圧倒的な勝利で終わったのであった。
授業は二限目に入っていた。
ただ一夏、箒、セシリア、鈴の4人は一限目の試合の疲労が思った以上に大きかった様で、千冬はやむなく4人を見学させる事にした。最初ラウラも休ませようとしたが、ラウラが固辞したので二限目も参加させる事にした。そしてそれが火影達への対抗意識からの物だとも気づいていた。
千冬
「さて、少々遅れたが二限目を開始する。お前達にはグループ毎に別れて実際に訓練機の操縦を行ってもらう。尚、専用機持ちである海之、火影、デュノア、ボーデヴィッヒはグループリーダーとなって操縦方法を指導しろ。予定より指導する人数が少なくなった分テキパキ動けよ」
「火影くん、私に操縦教えて!」
「海之くんならきっとわかりやすく教えてくれるよね!」
「デュノアくんの操縦ってどんななの!?」
「一目見てファンになりました!ボーデヴィッヒお姉さま!」
一部やや変な傾向にある者もいる様だが何とか偏り少なく分かれる事ができた。
本音
「ひかりん~よろしく~」
火影
「へいへい」
海之
「乗りこむ時はもっと機体にもたれ込む感じで良い」
シャルル
「腕を振って歩く時は…」
ラウラ
「……」
そんな感じで授業が進んでいる一方…
鈴
「むぅ~!」
一夏
「…」
箒
「どうした一夏?」
一夏
「ああ…。あいつらってほんと凄いなと思ってな。火影と海之」
セシリア
「そうですわね…。全く疲れてらっしゃらない様に見えますわ」
箒
「確かに…。ボーデヴィッヒもだが、あの二人は特別の様にさえ感じる」
一夏
「…あいつらって本当に数ヶ月しかIS動かしてないのかな?」
鈴
「どういう事?」
一夏
「いや、ただ単に思っただけだ。気にすんな。でも…なんでだろうな…あそこまで圧倒的な差を見せつけられたのに…なんか嬉しいんだ」
セシリア
「嬉しい?」
一夏
「ああ、目標ができたみたいで。いつかあの二人に並ぶ位になりたい。凄くそう思うんだ」
箒・セシリア
「「一夏(さん)…」」
鈴
「へ~、あんたもそう思う事あんのね。でもちょっとわかるかも」
箒
(一夏、小声で話せ。…良かったら…昼食、屋上で一緒にどうだ?)
一夏
(? ああ別にいいけど)
箒
(ほ、本当か?約束だぞ!)
箒は一夏と人知れず一緒に食事をする約束をした。
そうこうしている内に二限目の授業は終わり、数刻後約束の時間になった。一夏と一緒に食事を取れる事に箒は喜んでいた。…筈だったが。
昼休憩 屋上
箒
「……なんでこうなった?」
一夏
「えっ?一緒に昼食をとるんだろ?だったら皆も一緒にと思って」
そう。一夏はあの後火影達にも一緒に食事しようと呼びかけたのである。箒からすればそうならない様人知れず約束したのだが一夏はどうやら想像以上に手強かった様だ。今は二人以外にも火影、海之、セシリア、鈴、そしてシャルルもいる。因みにラウラは見つからなかった。そんな状況で一夏以外の者が箒にこっそり話しかける。
火影
(箒。なんで僕達に先に相談しなかった?あらかじめ知ってりゃ断ってたのによ)
鈴
(そうよ。あいつの幼馴染なら知ってるでしょう?あの次元外れの鈍感さを)
箒
(…一生の不覚)
シャルル
(ねぇ火影、もしかして篠ノ之さんて一夏の事)
火影
(そうだ)(シャルルに小声で事情説明)
シャルル
(うわ~…)
セシリア
(箒さん。抜け駆けは無しと代表決定パーティーの時仰いましたよね♪)
箒
(うっ…)
海之
(ハァ…)
一夏
「みんな何してんだ?早く食おうぜ」
全員で昼食会が始まった。
シャルル
「でもさ、みんなには悪いんだけど僕昼食持ってきてないんだ」
火影
「ああそれなら心配すんな。ちゃんと用意してある」
そう言うと火影は一つのランチボックスを差し出す。
シャルル
「えっ!あ、ありがとう。どうしたのこれ?」
火影
「今日からルームメイトだからな。挨拶代わりだ」
海之
「数日前に織斑先生から転校生が来る事と火影がそいつとルームメイトになる事を聞いてな。火影に伝えて用意させた。昼食を用意していない可能性があったからな」
一夏
「…ほんと海之って感が良いな」
箒
「誰かさんも見習ってほしいものだ」
セシリア
「同感ですわ」
一夏
「?」
シャルル
「あ、ありがとう火影。有り難くいただくね」
見ると中にはチーズ、ハム、チキン、野菜等色彩豊かな具材のパニーニ。横にはプチトマトやボイルした海老等が添えられている。シャルルはパニーニのひとつに口を付ける。
シャルル
「…すごく美味しいよ火影!」
火影
「どうも」
鈴
「ねぇ火影、私の春巻きとあんたのパニーニ、一つ交換してよ♪」
火影
「ああ」
鈴
「サンキュ~。その春巻き食べてみて!自信作なんだけど」
火影
「へぇ、パリッ…」
鈴
「ど、どう?」
火影
「…旨いな…うん、凄く旨い」
この時火影は不覚にも少し感動していた。母との思い出が少ない事もあるのか、何とも言えない感情が起こった様であった。
鈴
「!…あ、ありがとう。また作ってあげるわよ。あっ海之。あんたにも一つあげるから卵焼きちょうだい♪」
海之
「ああ。……ほう、確かに旨いな」
鈴
「良かった。じゃああんたのも……!って何この卵焼き!凄く美味しいんだけど!」
海之
「大したことは無い」
海之は謙遜するがその料理の腕は火影と同じ位高い。彼の弁当も玉子焼き、鮭の西京焼き、筑前煮等色合い豊かだ。
一夏
「へぇ、そんなに旨いのか?海之、俺にも」
箒
「一夏!私のから揚げひとつやろう!」サッ!
一夏
「あ、ああサンキュ!…」
箒
「ど、どうだ?」
一夏
「…うん。旨いな!」
箒
「そ、そうか!ではまた」
セシリア
「一夏さん。私のサンドイッチも召し上がってくださいな♪」
一夏・箒
「「!!」」
火影
(…?なんか一夏と箒の顔がえらく引きつってるが…?)
…………
やがて昼食が終わりに差し掛かるとシャルルが火影に訪ねてきた。
シャルル
「ねぇ火影。ちょっと聞きたいんだけどさ。火影と海之の母国ってスメリアって言ったよね?」
火影
「ああそうだ。父親がスメリア人で母親が日本人だ。最も僕らは養子だがな」
鈴
「え?」
一夏
「そうなのか?」
海之
「ああ。俺達は赤ん坊の時に拾われたんだ。だから本当の親は分からない」
海之はここでも転生者である真実は隠しておいた。
火影
「知ってるだろうがスメリアは難民の受け入れに積極的な国だ。大方僕らもその生まれじゃねぇかな?」
シャルル
「ご、ごめん…」
火影
「気にすんな」
セシリア
「あの…、御二人は確かエヴァンスと仰いましたが、もしかして」
海之
「ああ。俺達を拾ってくれたのはアルティス・エヴァンス。ESC創始者だ」
シャルル
「!」
鈴
「な、何ですって!?」
一夏
「ESCって大企業じゃねぇか!」
箒
「ああ私も知っている。スメリアどころか世界的にも有名だ」
海之
「できればあまり言いふらさないでくれ。騒ぎになっては困る。知っているのは織斑先生位だ」
一夏
「千冬姉も知ってるのか…。そう言えばシャルルもデュノアって言ったが、あのデュノア社の事か?」
シャルル
「う、うん。父がデュノア社の社長なんだ」
一夏
「へ~すごいな。しかし考えてみれば俺らのクラスって結構凄いメンツが揃ってるんだな」
箒
「確かにな。男性操縦者が3人。ESC、更にデュノア社の関係者とは」
シャルル
「…という事はさ、火影と海之ってスメリア代表か、もしくは候補なの?僕や鳳さんやオルコットさんみたいに」
火影
「いやそうじゃない。つーかスメリアに代表はいない」
鈴
「えっ?でもあんた達のISってスメリアのでしょ?国が管理する決まりなんだから」
海之
「俺達のは特例で国から個人の物と認められている。父の会社の功績だそうだ」
セシリア
「そんなことが…」
鈴
「ほんと凄いわねあんた達」
海之
「俺達は何もしていない」
シャルル
「……」
火影
「どうしたシャルル?」
シャルル
「う、ううん!なんでも!」
一夏
「っと!そろそろ昼休憩終わりだぜ」
箒
「そうだな。今日はこれでお開きとしよう」
火影
「だな。ああそれからシャルル。今日から宜しくな」
シャルル
「あ…、う、うん。宜しく!」
そう言って皆で屋上を出た。
因みにこの後、シャルルは箒、鈴、セシリアともお互い名字でなく、名前で呼び会う事を約束したらしい。
※ESCとは火影(ダンテ)と海之(バージル)が転生したこの世界での父親の会社、「エヴァンス・セキュリティー・コーポレーション」の略です。
詳しくはMission06をご覧ください。