IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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二限目の授業が行われる中、一夏は先の試合で火影・海之と自分の間に圧倒的な差がある事を感じとりながらもその力に感銘を受け、自分はもっと強くなる事を決意。
やがて昼休憩となり、皆で昼食を取る事に(本当は違うのだが)
互いに交流を深めて行く中で火影と海之は自分達が拾われた子である事を告白。そんな二人を一夏や箒達、転校生のシャルルも受け入れ、今後も仲良くやっていく事を約束した。


Mission37 それぞれの依頼

火影と海之が自分達の過去を一夏達に話した昼食会から数刻後。

午後の授業と一夏達の訓練も終わって、今火影は寮に帰る途中である。クラス対抗戦以降は鈴も訓練に加わる様になったので、それに並行して訓練の終了もやや遅くなった。空は黒に近いオレンジである。因みに今日から火影のルームメイトはシャルルで、転校の疲れもあってと先に部屋に戻っていた。

 

火影

「一夏の奴随分張り切ってたな。まぁこっちとしてもあいつが強くなんのは…、ん?」

 

寮に向かっていた火影は立ち止った。

見ると校舎から少し離れた所にあるベンチに一人の女性が座っているのが見える。幸いすぐ横に外灯があったので姿恰好は伺い知れる事ができた。

 

(生徒じゃないな。…だが教職員という感じでもない)

 

見た所制服でもスーツでもないその女性は座ったまま俯いていた。そんな女性に火影は気にせず行こうとしたのだがあるものが彼の目を惹いた。

 

(……金髪)

 

女性は美しい金髪だった。それが同じ金髪である前世の彼の母親を思い出させたのだ。気付いたら火影は女性に近づき、声をかけていた。

 

「あの…」

 

女性はゆっくりと顔を上げて火影を見た。長い金髪を後ろで纏め、茶色い瞳をしているその女性はゆっくり話だした。

 

女性

「…何か?」

火影

「あっ、すいません。何か元気が無い様に見えたんで」

女性

「ああ、そうだったの。心配かけたみたいでごめんなさいね」

火影

「いえ。大丈夫ですか?先生呼んできましょうか?」

女性

「ええ大丈夫よ。気分が悪いわけじゃないの。ちょっとね…」

火影

「?」

女性

「ねぇ。あなたここの生徒さん?」

火影

「ええ。まあ」

女性

「そう…。ねぇ、良かったら少しお話し聞いて頂けないかしら。本当に少しで良いんだけど」

火影

「ええ。良いですよ」

女性

「ありがとう」

 

火影は女性の隣に座った。

 

火影

「それで話ってのは?」

女性

「…ええ。実は…ある女の子を探しているのだけれど…、その子、今とても辛い思いをしているの。本当の自分を出せないで…苦しんでいるの」

火影

「本当の自分?」

女性

「ええ。でも…それを決して誰にも打ち明ける事はできない。打ち明けてはいけないと思っているの」

火影

「何故?」

女性

「それが…自分の運命だと思っているから。そうしてしまうと…自分の居場所が無くなると…思いこんでしまっているから」

火影

「運命…」

女性

「……ねぇ、ひとつお願いがあるのだけれど、聞いてくれない?」

火影

「え?は、はい」

 

火影は思わず言ってしまった。

 

女性

「ありがとう。…もし、あなたがその子に会ったら…伝えてほしいの。もう苦しむ必要はない。これからはあなたの幸せのために生きなさい。本当はみんなそれを願っているからって。そして…ずっと見守ってるからって…」

火影

「…? どうして僕に?」

女性

「…あなたなら。そう思ったからかしら」

火影

「…」

 

火影は女性の言葉の内容に変な違和感があったものの、引き受ける事にした。更に女性は、

 

女性

「これをあなたに。話を聞いてくれたお礼の代わりにでもしておいてね。…あの子の事、宜しくお願いします」

 

女性はそう言うと自分の薬指にはめている指輪を外し、それを火影の手を取って手渡した。紫色の宝石が嵌った指輪だ。

 

火影

「…いやでも、大切な物なんでしょう?。あとその子ってどんな…………?」

 

指輪から視線を戻すと、その女性はいなくなっていた。

 

「……?」

 

火影の掌の指輪が今の出来事が現実である事を物語っていた。

 

「……帰るか」

 

火影はその指輪をポケットにしまい、自分の部屋に戻る事にした。

 

…………

 

シャルル

「あっ、おかえり火影。遅かったね。どうしたの?」

火影

「ああ。ちょっとな」

シャルル

「? あっ、御免だけどシャワー先に貰ったよ」

火影

「ああ。んじゃ飯でも行くか」

シャルル

「うん」

 

火影とシャルルは部屋を出て食堂に向かった。

 

…………

 

翌日 校舎内廊下

 

教室に向かう海之がいた。

 

海之

「そういえば簪のISの進捗具合はどうなっているだろうか。後で久々に見に行って……?」

 

海之が歩いているとある部屋の前でじっとしている一夏がいた。

 

海之

「一夏、どうした?」

一夏

「あ、海之…」

 

すると室内から声が漏れてきた。

 

「これだけ申し上げても駄目なんですか!?教官!!」

海之

(この声…ボーデヴィッヒか。それに教官という事は、織斑先生も一緒の様だな)

ラウラ

「なぜ教官程の御方がこの様な生ぬるい所で教鞭等振るっておられるのです!」

千冬

「……」

ラウラ

「まともに戦える様な者もいない。おまけにISをファッションかおもちゃの様にしか考えていない様な者達相手では教官の折角の素晴らしい才能が腐って行くだけです!どうか今一度、我がドイツで教えを!!」

千冬

「……」

ラウラ

「あいつですか?織斑一夏の存在ですか!?教官の輝かしい功績に泥を塗った」

千冬

「黙れ!!」

ラウラ

「!?」

 

ラウラは思わず後ずさる。

 

千冬

「言わせておけば好き勝手言うではないか小娘。たかがIS一機に選ばれた位で随分偉くなったものだな」

ラウラ

「わ、私はそんなつもりは…」

千冬

「勘違いするなよ。私がここにいるのと弟の件は全く関係ない。それにお前、先程ここにはまともに戦える様な者もいないと言ったな?では…あの二人、海之と火影はどうだ?」

ラウラ

「!」

千冬

「私が覚えている限り、お前はあの二人になす術もなく無様に完敗していた気がするが?」

ラウラ

「あ、あれは私の周りの奴らが邪魔したからです!次は必ず!」

千冬

「愚かだな。相手と自分の力の差がわからぬとは。一端の操縦者であれば、あの最初の蹴りを受けた時点で力の差を見抜けるだろうに。はっきり言っておこう。今のお前では天と地がひっくり返る様な事があってもあの二人には勝てんよ」

ラウラ

「!!」

千冬

「話は終わりだ。もう出ていけ」

ラウラ

「…くっ!」

 

そう言うとラウラは部屋を出て行った。海之達には気づかなかった様だ。

 

千冬

「そこの二人」

一夏

「ゲッ!」

海之

「…はい」

千冬

「盗み聞きとは感心しないぞ」

海之

「申し訳ありません」

一夏

「す、すいません。…なぁち、織斑先生。あいつって」

千冬

「…関係ない。私が勝手にやった事だ。何も言うな」

一夏

「…」

海之

(この二人とボーデヴィッヒ。過去になにかあった様だな)

千冬

「話は終わりだ。もう行け」

一夏・海之

「「はい」」

 

そう言って一夏は離れて行った。そして海之も行こうとしたが突然千冬に呼び止められた。

 

千冬

「ちょっと待ってくれ。海之」

海之

「?」

千冬

「その…、すまなかったな。お前と火影を巻き込んでしまった。ボーデヴィッヒだが…、もしかしたら何か問題を起こすかも知れん」

海之

「気になさらないでください」

千冬

「…ふっ。一夏も良く言っているがお前は随分大人だな。16の子供とは思えん」

海之

「買い被りですよ」

千冬

「…海之。一夏を、ボーデヴィッヒを頼む」

海之

「? 何故ボーデヴィッヒを俺に?」

千冬

「…お前なら。そう思ったからかな」

海之

「俺で役立つ事があれば」

千冬

「…ありがとう」

 

火影と海之。二人はそれぞれの願いを聞き入れた。




オリジナル設定を考えてみました。

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