IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
3人が聞いてみるとシャルルは自らの父親と義母から男装してIS学園に入り込み、一夏と白式のデータを盗む事を指示されたという。父親のあるまじき行為に鈴と本音は激怒。火影もシャルルの心の声を聞き、助ける事を約束する。
火影達がシャルルが女性という思わぬ真実を知った頃とほぼ同時刻。
一夏の腹痛という思わぬハプニングから訓練が中止となり、時間ができた海之は整備室に向かっていた。理由は自身の装備の確認もあるがそれ以上に、
海之
「簪の様子でも見に行ってやるか…」
そう。簪が設計中というISの確認である。以前は自分一人で造ると言っていた簪も今では整備課の生徒に手伝ってもらっているらしく、順調に進んでいるらしい。そんな簪の様子を見に行こうと海之は思ったのだ。そしてやがて整備室に到着。
海之
「…」
簪
「あっ…海之くん。…来てくれたんだ」
そこには簪がいた。整備課の生徒も一緒である。海之が来てくれた事に嬉しそうな表情を見せる簪に生徒の何人かが静かに話しかける。
生徒1
(ねぇねぇ簪ちゃん♪。あの人が簪ちゃんの気になってる人?)
簪
(…ふぇっ!?い、いきなり何を!?)
生徒2
(だって~。最近私達にその人の事凄く嬉しそうに話すんだもん。そりゃ気になるよ~♪)
簪
(そ、そんな事!)
生徒2
(あるから言ってるんだよ♪)
簪
(…)
その指摘に簪は何も言えなくなってしまう。
海之
「…何か?」
生徒1
「ううんなんでもないよ。そうだ簪ちゃん。私達ちょっと休憩してくるね♪」
生徒2
「どうぞごゆっくり~♪」
簪
「えっ、えっ!?」
そう言うと他の生徒は出て行ってしまった。残ったのは海之と簪だけである。簪はやや赤くなって無言になっている。
簪
「…」
海之
「…邪魔したか?」
簪
「う、ううん!何でもない!何でもないよ!」
海之
「?」
簪の反応にやや疑問が残りつつ、海之は設計中のISに近づく。
海之
「進捗はどうだ?」
簪
「あ、うん。みんなが手伝ってくれているおかげで順調だよ。来月のトーナメントにはやっぱり間に合わないけどね」
海之
「急いては事を仕損じる。焦らなくて良い」
簪
「うん、わかってる。…でも、できれば間に合わせたかったな。そうすれば…」
海之
「なんだ?」
簪
「う、ううん。何でもない」
海之
「そうか。…ところで簪、一つ聞きたいんだが?」
簪
「なに?」
海之
「お前は棒術の心得はあるか?若しくは槍術や薙刀でも良い」
簪
「棒術はないけど薙刀ならあるよ。私のお姉ちゃんが槍を習ってて私も習ってたの。お姉ちゃんには敵わないけどね…。私のISにも薙刀を搭載する予定なの。それがどうかしたの?」
海之
「ああ。実は知り合いに頼んでお前のIS用に武器を造ってもらっている。それが棒なんだ。まあ完成には時間がかかるし、あとそれだけじゃないがな」
簪
「えっ…私のために!?」
海之
「迷惑だったか?」
簪
「う、ううん!そんなこと無い!!凄く…嬉しい…。あれ?それだけじゃないって?」
海之
「その武器は少し変わっていてな。武器としては一つだが3つの形態になるんだ。今言った棒、三節棍、フレイルの3つだ」
簪
「凄いね…。あと三節棍って?」
海之
「2尺位の長さの棒三本を輪と鎖で繋いだ物だ。使いこなすにはかなりの訓練がいるがな。まあ仮に三節棍は無理でも棒とフレイルだけでもかなり使える筈だ。良ければ使ってくれ」
簪
「海之くん…ありがとう」
(せっかく海之くんが私のために用意してくれてるのに…。使いこなせる様になりたいな…)
海之
「まあ訓練したいというのであれば火影に頼んでみると良い」
簪
「火影って…海之くんの双子の弟さんだよね?」
海之
「そうだ。腕は確かだから聞いてみろ。俺からも伝えておく」
簪
「ありがとう」
その後、二人は戻って来た整備課の生徒と一緒に開発作業を再開した。それから数刻が過ぎ、海之と簪は生徒と別れて食堂にお茶を飲みに来ていた。
簪
「今日はありがとう海之くん」
海之
「気にしなくて良い」
簪
「…ねぇ海之くん。もし良ければ、私の話、聞いてもらって良いかな?」
海之
「ああ」
簪
「ありがとう。実はね…、もう知っているかもしれないけど、私は一応、日本の代表候補生なの」
海之
「…知っている」
簪
「うん…。そしてこれも知ってると思うけど、代表候補生には国若しくは企業から専用機が提供されるの。私にもね。それで、実は私の専用機というのが、今私が造っているISなんだ。最初はね、ちゃんと企業が開発して完成までやってくれる筈だったの。でもね…」
海之が答えた。
海之
「…一夏の白式か?」
簪
「!…知ってたんだ。そう、織斑一夏くん。世界初の男性のIS操縦者のニュースが出てから全てがそれ一色になったわ。特にIS関連の会社はね。どこの会社もみんな彼の事ばかりで他の事は後回しになった。設計中だった私のISも同じ。そして私のISを造ってくれてた企業が織斑くんの専用機を造る権利を得たの。そこからは全て白式に時間も人手も回された。私のISは…すっかり片隅に追いやられた」
海之
「…」
簪
「でも白式が完成しても私のISの開発が再開される事はなかった。…悔しかった。だから私は…ISの開発権を企業から引き取る事にしたの。自分で完成させるために…」
海之
「…そうか」
簪
「思えばあの時からかもしれない。人を信じ切れなくなって自分でやるしかないと思ったのも、お姉ちゃんに負けたくないという気持ちが強くなったのも…
海之
「でも今は違うのだろう?」
簪
「…えっ?」
海之
「簪。当時のお前がどれ程悔しくどれ程辛い思いだったかは俺にはわからない。だが俺から見て今のお前は一ヶ月前とは違う。過去の自分の非を認め、自らの夢に向かって正しく歩けている様に思える」
簪
「…夢…」
海之
「頑張れ簪。ISだけじゃない。姉の事もいつかちゃんと決着を付けるんだ。」
簪
「…うん!」
海之の言葉にまた勇気付けられた気がした簪であった。
※次回。オリジナル展開です。