IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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火影がシャルルの真実を知った同じ頃、海之も簪のISの進捗状況を知るために整備室にいた。順調に進んでいると喜ぶ簪。海之の方も現在簪のISの武器を造っていると伝えると彼女は更に喜ぶ。
その日の作業が終わり、簪は海之に更に打ち明けた。自分がISを造っているのは姉に負けたくないという気持ちの他に、自分のISが忘れられてしまったために誰も信じられなくなったからという事であった。そんな簪の気持ちを聞いた海之は言った。「それは過去の事。今のお前は違う」と。


Mission41 飛んで火にいる者達

シャルルの正体が判明して3日が経った。

時刻はすっかり日が暮れ、空は黒に染まっている。外に出ている生徒はほぼおらず、全員が食堂で遅めの夕食や部屋で休んでいる頃である。

 

「………」

 

そんな夕闇の中を人知れず動いている者達がいた。見た所生徒や教職員ではない。その者達は真っすぐアリーナに入っていった。

 

「………」

 

薄暗い廊下の中、やがてその者達は更衣室の前にたどり着いた。更衣室には誰か入っているのか灯りが付いている。そしてその内の一人がゆっくりと音も立てず更衣室の扉をほんの少し開け、中を伺った。

 

「………!」

 

見ると更衣室の中のベンチに座っている一人の少女らしき姿がある。ISスーツを着ていて黄色に近い金髪。後ろ姿で顔は見えなかった。その少女は扉を開けられた事に気づいていない様子だった。

 

「………」

 

謎の者達はその少女の後ろに足音を消してゆっくりと近づく。そして一人が真後ろに立つ。

 

謎の女

「…ごめんなさいね。…シャルル」

 

後ろに立った女と思える者は突然その少女を後ろから羽交い締めにした!………だが、

 

「!!」

 

少女と思っていたのは…人形だった。

 

謎の女

「なっ!?」

「深夜の美女か」

 

その声に侵入者達は驚き、後ろを振り返った。

 

謎の女

「な、誰!?」

 

そこに立っていたのは赤い目の銀髪の少年、火影であった。

 

火影

「残念だがシャルルはここにはいないぜ。あんたらはまんまと掛かったってわけだ…」

 

 

…………

 

時は3日前、シャルルが火影達に打ち明けた直後まで遡る。

火影はシャルルの願いを聞くと、更に気になる事があるのかシャルルに再び訪ねた。

 

火影

「シャルル、一つ良いか?」

シャルル

「なに火影?」

 

すると火影は何故かメモを取り出し、筆談を始めた。

 

火影

(良いか?関係ない話をしながら筆談で会話しろ)

 

そこにいたシャルル、鈴、本音は頷いた。

 

火影

(シャルル、学園に来る前に何か渡された物は無かったか?父親や義母からなら尚更だ)

 

続いてシャルルがノートに書きだす。

 

シャルル

(特に何も無かったよ。強いて言えばこのリボン位かな?義母さんから貰ったの。こっちに来てから付けなさいって)

火影

(そのリボン見せてもらえるか?)

 

そう言うとシャルルはリボンを火影に手渡す。火影は何かを探す様にそのリボンを見ている。そして何かを見つけたのか目を細めた。

 

(どうしたの火影?)

火影

(多分盗聴器だ)

シャルル・鈴・本音

「!!」

 

みんな驚いた様子だが火影に止められて口には出さなかった。

 

(なんでそんな物が!?)

火影

(大方シャルルの会話から情報を得るためだろう)

シャルル

(そんな)

本音

(ちょっとひかりん~!、という事は!)

火影

(ああ俺たちの今の会話も聞かれたろうな。シャルルが女である事がバレた事も知られているだろう)

(マジで!?とすると?)

火影

(早急に証拠を潰しにかかるだろうな。おそらく今週中だ。だが帰還命令は使えないだろう。転校してきてそんな急にするのは無理がある。あるとすれば人知れず誘拐する事だろうな。帰った理由は適当に考えてな)

シャル

「!」

本音

(ひかりん、もうどうしようもないの?)

火影

(心配するな。手はある。だが俺達だけでは無理だ。いいか?今から教える事を良く覚えとけ)

 

それから火影はある計画を立てた。

まず火影は担任である千冬に正直に事を打ち明けた。シャルルが女である事。デュノア社の命令の事。そしてこれを知っているのが自分と鈴、本音の3人だけである事を。千冬は驚いたが思った程ではなかった。というのも千冬もシャルルに対して少なからず疑問を持っていた様で話を聞いて確信したらしい。千冬は協力を約束してくれた。

次に火影が行ったのは罠を仕掛ける事だ。もしシャルルを誘拐しにくるとなれば人知れず行わなければならない。そして失敗は許されない。しかし授業中は勿論不可能だし、寮にいる時を狙うにも周りの生徒に気づかれる可能性が高い。

そこで火影は夜のアリーナで訓練というフリを考えた。夜に訓練を行ったりアリーナに出入りする生徒が滅多にいないのは知っていたし、アリーナの屋根を閉じてしまえば誰かに見られる事もない。後は更衣室にシャルルの偽者を置き、敵が罠にかかるのを待つだけである。敵が入った瞬間にこっそりアリーナの扉を全てロックすれば逃げる事もできない。誘拐犯は袋小路というわけだ。そして今に至る。

 

 

…………

 

「…最初から全て仕組まれてたって事なのね。…それであの子は?」

火影

「勿論安全な場所にいる。所であんた、あいつをシャルルって呼んでたがもしかして?」

「…ええそうよ。私があの子の義母。そしてデュノア社長の妻。そして…」

火影

「?」

「…元フランスの代表候補であり、デュノア社私設IS部隊の隊長よ!!」バリンッ!

 

そう言うとその女は突如ISを展開し、アリーナに続く扉を破壊してアリーナに逃げ出した。共にいた者達もそれに続く。

 

火影

「…やれやれ」

 

火影は面倒そうに追いかけた。

 

 

アリーナ

 

火影がアリーナに行くとISの部隊が待ち受けていた。因みに屋根は閉じているので出る事はできない。

 

火影

「後で扉弁償しろよ。それよりどうすんだ?どうせ逃げられないぜ」

シャルルの義母

「ええこのままじゃ逃げられないわね。でも後でそれ位なんとでもなるわ。唯一の目撃者であるあなたさえ駆除すればね」

火影

「なるほどな。俺(本気)を倒してから脱出ってわけか」

シャルルの義母

「その通りよ。あとあなたのISも貰っていくわ。織斑一夏の機体のデータが手に入らないのは残念だけど、そちらも興味あるからね」

火影

「できるかな?」

隊員1

「甘く見ない事だな。ここにいるのは全員元フランス代表候補生である隊長から直々に鍛錬を受けた者達だ」

火影

「へぇ」

隊員2

「貴様!」

隊員3

「おい熱くなるな。因みに良い事を教えてやる。お前のISの武装は社長の娘から送られてきた情報で判明している。貴様に勝ち目はないぞ」

火影

「…盗聴器を見た時思ったがやっぱりそうか。んで?それがどうかしたか?武装で勝ち負けを判断するのが隊長様の教えならどちらも大した事ねぇな」

隊員3

「! 良いだろう。その言葉、あの世で後悔するが良い!」

シャルルの義母

「我がデュノア社の栄光のため、あなたには眠ってもらうわ!」

 

そういうと部隊は全員で火影に向かってきた。

 

火影

「やれやれ、ショウタイムって奴か」カッ!

 

火影もアリギエルを纏う。そしてリべリオンを構え、隊員の一人に斬りかかった。

 

ガキィィン!

 

隊員

「ふん!言った筈だ。貴様の戦いは」ドゴォォ!!「ぐああああ!な、なにぃ!?」

 

見ると火影は左手にイフリートを展開し、隊員の腹に打ち込んでいた。

 

火影

「俺の戦いは何だって?」

隊員

「ば、ばかな…同時に2つの武器を展開するなんて」ドゴォォ!!「ぐあああああ!!」

 

隊員が気を取られている内に火影はリべリオンを戻して右手にもイフリートを展開し、更に打ちつける。

 

火影

「おらぁぁ!!」ドゴォォォォンッ!

 

火影は素早く左手でアッパーを食らわす。打ちこまれた隊員はダウンした。

そのいきなりの光景に全員が驚き、たまらず火影から距離を取る。

 

シャルルの義母

「なんてパワーなの!たった3発のパンチで私の部下を…」

隊員1

「隊長はお下がりください!おいっ!挟み撃ちだ!」

隊員2

「ああ!」

 

そして2人の隊員が向かっていく。しかし、

 

ズドンッ!

ドガアァァァン!

 

隊員2

「ぐああああああ!」

隊員1

「!?」

 

突然凄まじい爆発が起こり、気がつくと隊員の一人は落ちていた。共に向かっていた隊員が火影の方を見直すと、こちらにイフリートを構えているのが見える。

 

隊員

「銃は出していない…?まさか、あの籠手が!?」

 

「メテオ」

イフリートが発する凄まじい高熱を火球に変換し、離れた相手に打ちこむというものである。

 

火影

「久々だな、これやんのも」

隊員

「くっ!あんな技があったとは!おい、こうなったら全員で一気に仕掛けるぞ!」

 

そういうと残りの隊員は全員で火影に向かっていった。……だがものの2分もしない間に部隊は隊長機を残し全滅した。隊員達は火影の武装は知っていたつもりだった。しかし例え武装は知っていても力、技、スピード。その全てが相手の方が自分達より遥かに高いものであると悟った時、もはや勝ち目は無かった。

 

シャルルの義母

「……」

火影

「さて、残りはあんただけだぜ。どうする?降参するか?」

シャルルの義母

「…まさかここまでなんて…。どうやら私の負けの様ね…。ねぇ、ひとつお願い聞いてもらっても良いかしら?」

火影

「…内容によるな」

シャルルの義母

「正々堂々剣で勝負したいの。一騎打ちでね」

火影

「…いいぜ。来な」

 

火影はリべリオン、彼女は自らの機体の剣を抜く。

互いに距離を取って向かい合い……そして、

 

二人共

「はあぁぁぁぁぁぁ!」

 

キィィィィィィィンッ!

 

………やがて彼女のISが前のめりに倒れ、解除された。





シャルの義母の設定は完全にオリジナルです。次回に続きます。

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