IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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シャルルの義母率いる部隊を撃退し、火影と千冬は婦人への尋問を行っていた。二人の尋問に悪態を言い続ける婦人。
だが火影は先に調べていた情報からある仮説を唱える。シャルルの父親は表向きはシャルルをスパイとして送り込んだが、本当はIS学園に逃がすためだったのではないかというものだった。そして婦人はそれに知っていながら協力したのではないか、と。
思いもよらない言葉に婦人は黙り込んでしまうがやがて口を開きだした。


Mission43 親子

「シャルルの父親はシャルルを逃がすために学園に送った。そしてあんたもそれをわかってたんじゃないか?」

(※詳しくは前回を見てください)

 

思いもよらない火影の言葉。やがて彼女はゆっくり話し始めた。

 

彼女は生まれつき子供が産めない身体であり、それがずっとコンプレックスだったらしい。そんな中知ったのが愛人とシャルルの存在だった。2人への憎しみの念が湧く一方、自分が妻として至らないからだという自責の念にも駆られた。やがてシャルルの母親が亡くなり、シャルルは会社に引き取られた。彼女は夫が自分の責任だからという裏で実はシャルルを愛していた事を感じ取っていた。最初は彼女もシャルルに何とか打ち解けようと思ったが、感情がそれを許さなかった。シャルルが実の母親を忘れられなかった事もあるが、シャルルを見ると夫の子でも自分の子ではないと考えてしまうから。

そして間もなく夫がシャルルをIS学園に行かせたいと言い出した。表向きは次世代IS開発のためのデータ収集としていたが、妻である彼女はシャルルを思っての事だと感じ取っていた。だが彼女や経営陣からすればそんな事よりもよそに金を渡し、情報を買う方が効率的だとして反対した。

そこに飛び込んできたのが世界初の男性操縦者のニュースであった。どこも喉から手が出るほど欲しい情報を手に入れたい(表向きは)と社長は再びシャルルの学園行きを提案。そんな様子を見た彼女は反対する他の経営陣を押しのけ、夫に賛成する事にしたのである。自分が何よりも大切な夫のために。だが先の通り計画は失敗。証拠を消すために彼女は裏の支配者として全ての責任を負う覚悟で奪還作戦を決行したのであった…。

 

火影・千冬

「……」

義母

「思えば罰が当たったのかもね。仮にも義理の娘にあんな事をさせてしまったんだもの。ある時期から急に経営も上手くいかなくなったし…、どちらにしてもこうな」ガチャッ!「!」

 

その時急に部屋の扉が開いた。立っていたのは、

 

シャルル

「…」

義母

「あ、あなた!?なんでここに、まさか…今の話!」

シャルル

「…うん、隣で聞いてた…」

義母

「!あなた、騙したの!?」

火影

「いや、「ここにはいない」と言ったが隣の部屋とは言ってないぜ?」

義母

「!…ひきょう者!」

シャルル

「……」

 

シャルルは何も言わなかった。ただゆっくり彼女に近づき、そして…、

 

義母

「!?」

シャルル

「……」

 

自らの義母を抱きしめていた。

 

義母

「な!あなた何を!?」

シャルル

「…ごめんなさい。…僕…ずっと思い違いしてた…。お父さんにも…嫌われてるって思ったから…。でもそうじゃなかったんだ…。僕は…お父さんに…大切に思われてたんだ…。でも…それがあなたを傷つけてしまった…。あなたは…お父さんに…愛されたかったんだ…。ごめんなさい…」

義母

「!……」

 

彼女はシャルルに黙って抱きしめられていた。

そこに火影が、

 

火影

「…なああんた。さっきある頃から会社の経営が上手くいかなくなったと言ってたが…その理由を知りたいか?」

義母

「…えっ?」

火影

「実は…デュノア社の経営陣の何人かが、とある匿名の誰かに会社の資金を密かについ最近まで横流ししていたらしい。ただその理由と目的までは不明だ」

義母

「なっ!?」

千冬

「横流しの情報は巧妙に隠されていましたが、こいつの知り合いが暴いてくれたんです。云わばあなた方はその誰かの肥やしを耕すために利用されていたんですよ」

義母

「…そんな…」

火影

「まあその情報は既に知り合いがデュノア社の社長に送ってくれている筈だ。もうそっちについては心配しなくて良い。それより、あんたはシャルルとこれからどうするかを考えれば良い」

義母

「……」

 

彼女は暫く黙っているとシャルルが彼女に話しかける。

 

シャルル

「ねぇ?一つ…お願い聞いてもらって良い?」

義母

「…えっ?」

シャルル

「これからは…あなたの事…お母さんって…呼んでも良い?」

義母

「!!……私は…あなたにスパイまがいの事をさせたのよ?…泥棒猫なんて言った事もあるのよ?…そんな私を…許すというの?」

シャルル

「…うん。だってお母さんは…お父さんの愛する人だもの」

義母

「!!」

 

彼女もシャルルを抱きしめていた。大粒の涙を流して。

そんな二人を残し、火影と千冬はそっと部屋を出た…。

 

 

…………

 

翌日の早朝。生徒達が起き出す前に婦人は警察に出頭した。最初シャルルも止めたが彼女は「罪を償う」と拒否した。後日「デュノア社社長の妻、IS学園へ不法侵入!目的は義娘の誘拐?」という前代未聞の犯行はそれなりに大きく取り上げられたのだが、「今回の件はデュノア社も社長も一切関わっていない。全て自分個人の犯行である」という婦人本人の必死で断固とした主張が認められた事。更に器物損壊と傷害未遂については千冬と火影が黙っていて無かった事にされた事も重なり、会社の存亡の危機はどうにか免れた。また匿名の者に賄賂を送っていたというデュノア社の幹部達は即日解雇され、こちらも余罪追及で逮捕された。勿論この裏には火影の知り合いの協力があったのは言うまでもない…。

 

 

婦人が警察に出頭した同日の朝。

火影とシャルルは屋上にいた。まだ生徒が起き出すには少し早い。

 

シャルル

「本当にありがとうね火影。僕の事もお母さんの事も、そしてお父さんの事も。…全部火影のおかげだよ」

火影

「気にすんな。僕は知り合いの仕事を手伝っただけだ」

シャルル

「ううん。そんなこと無い。会社はまたいちから建て直しだろうけど…それでも良いんだ。きっと大丈夫」

火影

「ああそれなんだがシャルル、ほらこれ。僕の知り合いからだ」

 

そういうと火影はひとつのデータを渡した。

 

シャルル

「?これは?」

火影

「ESCとデュノア社の業務提携の提案書だ。後で親父さんに渡しとけ」

シャルル

「………えっ?えーーーーーーーーーー!!」

火影

「そんなに驚く事か?」

シャルル

「当然だよ!どうしたのこれ!?」

火影

「言ったろう?知り合いの仕事を手伝っただけだと」

シャルル

「!ま、まさかその知り合いって…い、いや、もういい。これ以上驚いたら大変だし…。…本当に、本当にありがとう火影。あ、あと知り合いの人にも伝えといて」

火影

「わかった」

シャルル

「お父さんもきっと喜んでくれるよ。お母さんも。…それに亡くなったおかあさんも…」

 

シャルルは空を見上げた。そしてシャルルの横顔を見た火影の脳裏に最近出会ったある女性が浮かび上がった

 

火影

「!……なぁシャルル、ひとつ聞きたいんだが…お前のお袋さんってのは、お前と同じ金髪の髪を後ろで纏めてて茶色い瞳か?」

シャルル

「えっ?う、うんそうだよ。でもなんで?」

火影

「…これに見覚えは?」

 

そういうと火影はシャルルの手に一つの指輪を手渡した。

 

シャルル

「これは…おかあさんが持っていたものだ!」

火影

「確かか?」

シャルル

「う、うん、間違いないよ!おかあさんがずっと付けてたもの!お父さんから贈られた大切な物って。でもなんで火影が!?」

火影

「…ある女性が僕に渡してったんだ。話を聞いてくれたお礼にって。その人はこう言ってたよ。本当の自分を出せなくて苦しんでいる少女を助けたいってな」

シャルル

「!!そ、その人は!?」

火影

「…消えたよ。あとこうも伝えてほしいと言ってた。自分の幸せのために生きなさい。みんながそう願っている。そして…ずっと見守っているってな」

シャルル

「!!…そんな…まさか…」

火影

「……じゃあ、僕は先に行ってるぜ」

 

火影はシャルルの肩に手を乗せてそう言うと屋上を出て行った。誰も入ってこない様に入り口に立ち入り禁止の看板をかけて。背にシャルルの泣き声を感じながら。

 

 

学園外

 

火影

「ふぁ~あ。徹夜しちまったな…、ん?」

 

火影の目線の先には先日出会った金髪で茶色の瞳の女性が立っていた。その女性は火影に笑みを見せると…ゆっくりと消えていった。

 

火影

「…ふっ」

 

その時後ろから、鈴と本音が走って来て挨拶した。

 

「火影~!おっはよ~!」

本音

「おはよう~ひかりん~!」

火影

「…ああ」

 

今日も新しい一日が始まる。

しかしこれより数刻後。再び思わぬ出来事が起こる事になる。




※アニメ版デビルメイクライ、エピソード7とシャルを合わせたオリジナルの回でした。
賄賂の送り先等残った謎は何れ明らかにする予定です。

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