IS×DMC~赤と青の双子の物語~   作:storyblade

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海之
「………」
黒いIS?
「グアァァァァァァァァァ!!」

ドスッ!!

一夏
「海之ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

「……えっ?……海之…くん…?」
火影
「……」


Mission44 ラウラの過去

時は数刻前まで遡る。

 

シャルルの義母が自らの罪を認め、学園の生徒達に知られない様警察に出頭したこの日の朝のHR。1-1の生徒はほぼ全員集まっていたが、その中でシャルルとラウラの姿が見えなかった。

 

火影

(シャルルの奴、まだ気持ちの整理がつかないのか…)

 

するとそこへ真耶が入って来た。なぜか少し疲れている様にも見える。

 

真耶

「皆さん、おはようございます。…え~…それでは…HRを初めて行きたいんですが…、その前に一つみなさんに大事なお知らせがあります。実はこの度また新しい生徒さんが入る事になりました。…最も新しいと言えるのかわかりませんが…。…では入って来てください」

 

ガラッ!

 

1-1の生徒全員

「「「「!!」」」」

 

生徒達はみな驚いた。そこにいたのは女子の制服を纏う…シャルルだったのだ。

 

シャルル

「みなさん、初めまして…というのは違うのかな?ふふっ、シャルロット・デュノアです。宜しくお願いします!」

真耶

「シャルルくんは…シャルロットさんでした…」

 

少しの沈黙が続き、

 

「えーー!」

「うっそー!!デュノアくんって女の子だったの!?」

「マジで!?」

「う~ん。何か複雑な気分…」

一夏

「おいおいマジかよ…」

「俄かには信じがたいが…」

セシリア

「でもどう見ても女の子ですわね…」

本音

「シャルルンかわいい~!」

 

生徒達はみな驚いている様だ。そんな中海之は、

 

海之

(まさかとは思ったが…やはりそうだったか)

火影

(気づいていたのか海之?)

海之

(確証は無かったがな。ただ顔つきも明らかに女だし、この前みんなで遊びに出た時、はぐれない様手を繋いだだろう?男にしては妙に指が細かったからな。…お前こそ実は知っていたんだろう?みんなと違って慌ててないぞ?)

火影

(…まあな)

 

とそこへ教壇から移動してきたシャルロットが火影の前に立った。

 

シャルロット

「火影」

火影

「シャルル…いやシャルロットか。それがお前の本当の名前なんだな」

シャルロット

「うん、おかあさんが付けてくれた名前なんだ。…もう僕は自分を偽らない。これからは本当の僕で生きる。会社の問題も無くなったから」

火影

「…ふっ。そうか」

シャルロット

「改めて宜しくね。火影♪」

火影

「ああ。…シャルロット」

 

二人は互いに笑みを交えた。

 

生徒1

「先生~、ボーデヴィッヒさんは?」

真耶

「ボーデヴィッヒさんは今日はお休みされるそうです。理由はわからないんですけど…」

海之

「……」

 

 

…………

 

そんなシャルロットの自己紹介があったこの日の授業も終わり、時刻は放課後。

セシリア、鈴は先にアリーナに来ていた。一夏と箒は間もなく、火影、海之、シャルロットは真耶からの頼み事があるので後ほど合流するとの事だった。

 

「…そっか。あの子打ち明けたのね」

セシリア

「鈴さんはご存知だったんですの?」

「ちょっと訳ありでね。私以外に本音と火影は知ってたのよ」

セシリア

「どうりであまり驚かれなかった訳ですわ」

「でもそういう事なら全部解決したって事ね!ようやく来週のトーナメントに向けて訓練に集中できるわ」

セシリア

「そうですわね」

 

その時、

 

ドオォォォォン!

 

セシリア・鈴

「「!!」」

 

 

…………

 

同時刻

 

火影、海之、シャルロットの三人は真耶から頼まれた手伝いが終わった所だった。

 

真耶

「三人共ありがとうございます。助かりました。あ、そうそう火影くん、デュノアさん。今部屋割りを考え直している所ですからもう少し待ってくださいね」

火影

「わかりました」

シャルロット

「は、はい…全然…」

(…寧ろ僕は今のままで良いのになぁ…)

火影

「?何か言ったかシャルロット?」

シャルロット

「う、ううん!何でもないよ!じゃ、じゃあ先生失礼します!」

火影・海之

「「失礼します」」

 

三人は真耶に挨拶をしてアリーナに向かった。その途中、

 

「あっ。海之くん」

海之

「簪か」

火影

「確か海之のルームメイトさんだよな?」

シャルロット

「そうなんだ。あっ、初めまして。一組のシャルロット・デュノアです。シャルロットって呼んでください」

「うんわかった。シャルロットさん」

シャルロット

「さんもいらないよ」

「あ、ごめんなさい。シャルロット。じゃあ私の事も簪って呼んでね。丁度良かった。あの…海之くんが用意してくれているって言う武器の事なんだけど…、使いこなせるようになりたいから、火影くんに訓練お願いして良い?」

海之

「ああ構わん」

火影

「話は聞いてるぜ。遠慮なく言ってくれ」

「うん、ありがとう」

 

その時、

 

「ハァハァ…!ひ、火影!海之!」

火影

「どうした箒?」

「き、来てくれ!鈴とセシリアが!一夏が!!」

火影・海之

「!」

 

火影と海之は箒に連れられて走った。

 

シャルロット

「簪さん!僕達も行こう!」

「う、うん!」

 

シャルロットと簪も続く。

 

 

…………

 

火影

「これは…」

「うっ、くっ…」

セシリア

「うぅ…」

一夏

「くっそ…」

 

火影達が見たものは倒れている鈴、セシリア、一夏。

そして…

 

海之

「…ボーデヴィッヒ…」

ラウラ

「…来たか…」

 

その中央に佇んでいるレーゲンを纏ったラウラであった。

 

シャルロット

「こ、これは…」

「…ひどい…」

「一夏!…貴様ぁ!!」

ラウラ

「…安心しろ。デッドゾーンぎりぎりで止めている」

火影

「…やれやれ。とんだじゃじゃ馬だな」

海之

「…ボーデヴィッヒ。この前の賭けでお前は負けた筈だが?」

ラウラ

「織斑一夏には今は用は無い。あるのは…エヴァンス兄弟。お前達だ」

火影

「どういう事だ?」

ラウラ

「…」

 

その時騒ぎを聞いて千冬が走って来た。

 

千冬

「!これは…。…ボーデヴィッヒ、なんのつもりだ?」

ラウラ

「教官…申し訳ありません。…しかし…自分にはやらなければならない事があるんです」

千冬

「何?」

ラウラ

「自分の存在を…証明する事です」

千冬

「……」

ラウラ

「…エヴァンス兄弟。私と戦え!」

火影

「…いいだろう、俺が」

海之

「火影」

 

火影の言葉を海之が遮る。

 

海之

「俺がやる」

火影

「…わかったよ」

「海之くん!」

海之

「大丈夫だ。織斑先生、良いですね?」

千冬

「………頼む」

ラウラ

「……」

海之

「火影、箒、シャルロット。一夏達を頼む」

「あ、ああ」

シャルロット

「わかった」

 

火影達は倒れている一夏達を下がらせた。一夏よりダメージが大きかったセシリアと鈴はシャルロットが医務室へ連れて行った。

 

一夏

「くっ、気をつけろ海之。あいつ前より強い…」

海之

「大丈夫だ」

ラウラ

「貴様か…。あの時の屈辱、今ここで晴らさせてもらおう」

海之

「ひとつ聞く。俺達と戦うためだけにこんな事をしたのか?」

ラウラ

「こうでもしなければ戦わんだろう?」

海之

「…先ほどお前は自分の存在を証明すると言ったな?」

ラウラ

「そうだ。貴様らを倒し、私は自分の力を、存在を証明する!」

海之

「…力が存在の証明か…。それは…お前がそのために造られたものだからか?」

ラウラ

「…!!」

火影

「…は?」

一夏

「つ、造られただって!?」

「何だと…!」

千冬

「…」

 

その一言にラウラ以外の者も驚いている。驚いていないのは千冬だけだ。

 

海之

「お前の事を色々調べた。ラウラ・ボーデヴィッヒ。ドイツ陸軍IS配備特殊部隊「シュヴァルツェア・ハーゼ」隊長。そして遺伝子強化による強力な兵士を量産する事を目的として生み出された人造生命体。…つまり純粋な人間ではない」

一夏

「なっ、人造生命体!?」

「つまり…造られた人間!?」

ラウラ

「…そうだ。私は生まれながらにして兵士として生きる事を義務付けられた。生まれて間も無い頃から毎日毎日、ただひたすらに優秀な兵士になる事だけのために生きてきた。親の顔も知らず、友と呼べる者も無く」

千冬

「…」

海之

「…だが兵士としての能力は高い一方IS操縦士としての適正値は何故か低かった。それを見たドイツ軍の幹部はお前をただそれだけの理由で処分しようとした。…失敗作としてな」

「!そんな…」

ラウラ

「っ!…ああそうだ。当時ISが次世代の兵器として注目されかけていたばかりの時だ。私は純粋な兵士としては一番の成績を収めていた。兵器の扱い方も身体能力も。しかしある時ISとの同調訓練の際に不適合とされ、私は一気に価値なしと判断された。…自分を呪ったよ」

「…」

ラウラ

「貴様らにはわかるまい!この世に生まれ落ちた時から戦うだけの存在と運命づけられ、ただそれだけのために生きてきたのに、ある日突然「できそこない」「失敗作」と言われた私の絶望が!自分の無力さを痛感する日々を送るみじめさが!」

海之

「……」

一夏

「あいつにそんな過去が…」

「悲しすぎる…」

 

そこにいた全員がラウラの思わぬ過去に言葉を失っていた。

 

ラウラ

「…だが…ある日そんな私を認めてくださった方が現れた」

火影

「それが織斑先生ってわけか」

海之

「ドイツ軍にISの教育のため、教官として赴任されたんだな」

ラウラ

「…ああ。私は教官の指導の元、本当に死に物狂いで、それこそ何度も地獄を見る様な特訓を繰り返した。そして遂にドイツ軍IS部隊の隊長の座にまで登り詰めた。教官も褒めてくださったし、私を「できそこない」「失敗作」と見なしていた者たちがまるで掌を返す様に態度が変わったよ。そしてその時思った。この世で生きていくためには、そしてあの様な馬鹿共を排除するためには何よりも強い「力」が必要だとな。私は教官に救われた。そして生き方も教えてくださったのだ」

千冬

「…」

海之

「…本当にそうか?」

ラウラ

「だが貴様らはそんな私をあっさりと倒しただけでなく、教官からも既に強い信頼を得ていた。例え天地が引っくり返っても私は貴様らに勝てんと。貴様らに勝てば自分にも勝てると…。教官より強い者がこの世にいるなど私は認めん!だから私は貴様らを倒す!教官にお教え頂いた者として!私の力を証明する!」

海之

「……」

千冬

「海之。改めて頼む。…あいつを、ボーデヴィッヒを解放してやってくれ」

火影

「海之、あいつは…」

海之

「…わかっている。みんな、手出しは無用だ」カッ!

 

そういうと海之はウェルギエルを纏った。

 

「海之くん…」

火影

「簪。あいつは大丈夫だ」

ラウラ

「…さあ、行くぞ!!」




※次回から海之(バージル)とラウラの戦いです。かつてラウラと同じ様に力に囚われたバージルとラウラを戦わせる事は最初から考えてました。もう二話位を予定しています。

また、今後更新が捗ったりまちまちになったりゆっくりになったりすると思いますが、頑張って書いてきますので、今後ともよろしくお願い致します。

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