IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
するとそこに大勢の女子達が駆け込んできた。どうやら今度開かれるタッグトーナメントの相手を探しているらしい。
海之と千冬が言い聞かせたことによって女子達は退散。火影達もパートナーをどうするか考えているとシャルロットは火影と、簪は海之と、箒は一夏と組みたいとそれぞれ提案。男性陣もそれを了承し、改めてトーナメントに向けて訓練を始める事になった。
海之とラウラの戦いから1日が経った。
ラウラの怪我は幸い大したことは無く、翌日には部屋に戻れたものの、千冬の言った通り騒ぎを起こした罰として自室に謹慎する事になった。生徒達には怪我の療養という事で誤魔化されている。また彼女の機体についても千冬始め教師陣が調べているが特に怪しい点はこれといって見られず、明日にはラウラに返却されるらしい。
そんな日の放課後、タッグトーナメントのパートナーが決まった者達はそれぞれの機体の特徴や戦術を掴むために訓練若しくは話し合いを行っていた。
火影とシャルロットの部屋
ペアとなった火影とシャルロットは3日後に迫ったトーナメントに向けて作戦会議を行っていた。
火影
「シャルロットの機体って訓練機のラファール・リヴァイヴの改造型なんだよな?」
シャルロット
「うん。ラファール・リヴァイヴは僕のお父さんの会社が造った機体なんだ。それを僕用にカスタムしたの」
火影
「なるほどな。自分とこの物なら一番理解しているからな。改造もしやすいし都合が良いってわけか。量産機の改造だから扱いもしやすいしな。ただ専用機だけあってお前のは随分変わっているようだな。高速切替(ラピッド・スイッチ)によって瞬時に武装交換できるし。あのバンカーもなかなかイカすな。分厚い装甲も貫けそうだ」
シャルロット
「グレースケールは僕も気に入ってるんだ。でも変わっているって言ったら火影のISの方がずっと変わってるよ。この前の授業で見たけど全ての機能が圧倒的なものだったし。あんな機体どうやって手に入れたの?」
火影
「ああ。…誰かさんからプレゼントされたんだ。ただあのデザインはちょっと変わり過ぎだよな」
シャルロット
「そんなこと無いよ。確かに変わったデザインだけどカッコいいと思う。でも誰かさんて?」
火影
「気にすんな。因みに僕の武装は剣と籠手。そしてハンドガンとショットガンだ。だから近・中距離戦向きだな。シャルロットは?」
シャルロット
「僕の機体は一応全距離対応型だけど、得意なのは火影と似た様な装備かな。ブレードとかショットガンとか。あと防御も強いから多少の攻撃にも耐えられるよ。…ねえ火影?」
火影
「なんだ?」
シャルロット
「その…、大した事じゃないんだけど…、もし良かったら…、僕の事、何か別の呼び方で…、呼んでくれないかな…?ああいや、決して変な意味じゃなくて!シャルロットってなんか長いじゃない?パートナーになるんだからもっと…あの…その」
火影
(なんでそんなたどたどしいんだ?)
「そうだな…、シャルなんてどうだ?縮めただけみたいで悪いが」
シャルロット
「シャル…。うん、良い!すごく自然だよ!これからはそう呼んで火影!」
火影
(今度は急に元気になった)
「あ、ああ。じゃあ宜しくな。シャル」
シャルロット
「うん!…シャル…ふふっ♪」
火影
「どうした?」
シャルロット
「何でも!」
二人はその後も話し合いを重ねた。
…………
こちらは海之と簪。
二人は簪が使う機体についての確認を行っていた。機体は訓練機の打鉄だが武装を簪仕様にしている。
海之
「それが簪の専用機に搭載予定の武装か」
簪
「うん。山嵐っていうミサイルポッドなの。今は単一の目標しか狙えないんだけど、将来的にはマルチロックオン出来る様にするつもりなんだ。あとは長刀。本当はもう一つあるんだけどね」
海之
「どんな武装だ?」
簪
「「春雷」って言う荷電粒子砲なんだけど、そっちはまだ実験段階だから何時完成するかはわからない」
海之
「そうか。完成すると良いな」
簪
「うん」
海之
「さて…簪の機体は長刀とミサイルか。…どちらも扱いが難しいが、刀よりも長刀の方が範囲は広いし凡用性も高い。ひとつの対象しか狙えないとはいえ、ミサイルを集中させれば破壊力も大きい。例え全弾当たらなくても相手の隙を作ったり行動を制限できる。後は操縦者の腕次第だがそれは日本の代表候補生であるお前だ。心配はしていない」
簪
「ありがとう…。海之くんの機体は刀と籠手と具足。あとあのビームの剣だね。あの剣って凄いね。自分から離れた所にもいきなり展開できるんだもの」
海之
「ああ幻影剣という。俺は銃を持たないからな。あれで離れた相手に攻撃する。後は次元斬か」
簪
「次元斬?」
海之
「ああ簪は知らなかったか。簡単に言えば刀で離れた相手を切る技だ。何れ見る事もあるだろう」
簪
「そうなんだ。ところでなんで銃を持たないの?」
海之
「……美学、というやつだ」
簪
「へっ?…ふふっ、海之くんもそんな事言うんだ。ちょっと意外かも」
海之
「…俺も人間だからな」
そんなやりとりを行いながら二人は互いの武装を確認し、戦術を確認していった。
…………
その頃、一夏と箒も自分達の部屋で話し合いを行っていた。
一夏
「さて、どうするか…。正直俺も箒も近接戦闘向きだからな。お互い後方支援とかは難しいだろうな」
箒
「ああ。おまけに私の機体は専用機でも簪の様な仕様機体でもない」
一夏
「戦術とすれば俺もお前も剣の腕を上げて一対一でも戦えるようになる事位か。でもやっぱり最大の壁は…あいつらだなぁ」
箒
「火影と海之…」
一夏
「…ああ。最初の頃に比べてアラストルの使い方にも慣れてきたとはいえ、それでもまだあいつらには正直敵う気がしないんだよなぁ。…悔しいけど」
箒
「…確かにな」
一夏
「……」
箒
「…どうした?」
一夏
「いや…箒がそんな事言うの珍しいと思って」
箒
「えっ?」
一夏
「少し前のお前なら「戦う前から諦める気か!」とか言ってた様な気がするけど?」
箒
「えっ?…あっああ、すまん。ただ…あの二人の強さを見るとな…」
火影と海之の強さを十分に理解していた箒はやや自信を失っている様だった。
そんな箒に、
一夏
「…箒。俺もお前と同じくあの二人に勝てる気がほとんどしねぇのは正直本当だ。でもさ、俺は少しワクワクしてるんだ」
箒
「…えっ?」
一夏
「だって試合とはいえあんな強い奴らと全力で戦えるんだぜ!強い相手と戦えるのは武人の誉れってやつだろ?」
箒
「!…武人…」
一夏
「例え勝てないとしても最初から諦めたくはない。それは武道をやる者の恥だからな」
箒
「…一夏」
箒はそう言う一夏の表情にやや魅入っていた。
箒
「…すまん一夏。…そうだな、お前の言う通りだ。例え勝てないとしても、せめてあいつらに一太刀位浴びせてやろうではないか!」
一夏
「おう!」
そう言うと二人は早速道場に向かった。
それぞれの想いが交錯する中、ついにタッグトーナメント当日が訪れた…。
…………
タッグトーナメント当日
先に着替えた火影、海之、一夏は出場選手の控室にいた。今はそこに設置されていたモニターで会場の様子を見ている。
一夏
「しっかし凄い人だな」
火影
「そうだろな。このトーナメントには海外からも観客が来ている。まあその大半は応援よりもスカウト若しくは視察が目的だろうな」
一夏
「スカウト?視察?」
火影
「代表を持たない国。テストパイロットを持たない企業。そんなのが自分とこで使う操縦者探し。もしくはライバル国のISやその代表の偵察だ」
海之
「ISは今や世界的に非常に大きな地位を占めている。より優れたIS。そして操縦者を持つ事が世界をあらゆる面でリードする事に繋がる。政治・宗教・軍事開発等な。…馬鹿げた話だ。」
一夏
「でもISはスポーツって…」
火影
「表向きはな。勿論そう思っている奴もいるだろうさ。だが、そう思っていない奴も同じ位いるという事だ」
一夏
「…」
火影
「…まぁ、あいつらがどう思おうとどうでも良い。僕はいつも通りやるだけだ」
海之
「そうだな。良い試合をしよう。お互い手加減は無しだ」
一夏
「ああ勿論だ!二人にそんな真似しねぇ。だから二人も本気で来い!」
火影
「ふっ、後悔するなよ」
そしてそこに箒、シャルロット、簪も来た。
箒
「すまん!待たせた」
シャルロット
「遅れてごめん。ちょっとお父さんに挨拶してた」
火影
「そうか。元気だったか?」
シャルロット
「うん、元気そうだった。それに…お母さんの事、待ってるって」
火影
「…そうか。良かったな」
シャルロット
「…うん!」
簪
「宜しくお願いします。皆さん」
一夏
「ああ」
箒
「手加減は無用だぞ」
簪
「はい!」
互いに挨拶をしているとトーナメント試合の抽選が行われ、全員モニターにくぎ付けになる。
そして…、
火影
「…ほう」
海之
「…」
一夏
「えっ!」
箒
「なっ!」
シャルロット
「えっ!」
簪
「…!」
結果を見てほぼ全員が驚いた。海之・簪は別のペアが相手だったが…、
火影・シャルロットと一夏・箒が第一試合でぶつかる事になったからだ。
一夏
「…いきなり火影とか…」
箒
「…」
いきなり初戦から火影・シャルロットとぶつかる事に驚きを隠せない様子の二人。
そんな二人に火影は、
スッ
何も言わず握手を求めた。
火影
「…いい闘いをしようぜ。二人共」
一夏
「!…ああ!」
箒
「うむ!」
シャルロット
「宜しくね二人共!」
お互いは健闘を約束した。