IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
そして始まった臨海学校一日目。この日は翌日からの訓練に向けてまる一日自由時間である。火影や海之達は束の間の休みを。そして久しぶりの海を楽しむのであった。
臨海学校初日の盛り上がった自由時間はあっという間に過ぎ、夕食になった。一夏の隣には箒とセシリア。火影の隣にはシャルロットと本音、向かいに鈴。海之の隣にはラウラと簪がいた。
一夏
「やっぱり海の宿だけあって魚が旨いな~!」
箒
「うむ。新鮮で良い味だ」
一夏
「そういえば箒、さっきの電話なんだったんだ?」
箒
「ああ、明日わかる。楽しみな半面…ちょっと困った事もあるがな…」
一夏
「?」
セシリア
「…つつっ」
一夏
「おいセシリア、大丈夫か?正座が辛いなら脚崩して良いぞ」
セシリア
「そ、そうさせて頂きますわ…」
(正座って思ったよりきついですのね。でも一夏さんの隣にいれるのならこれ位!)
一方シャルロットも何やら悶絶していた。
シャル
「!!~~~」
火影
「お、おいどうしたシャル?」
鈴
「…あんた、まさかワサビ丸ごと食べたの!?」
シャル
「だ、だいひょうふはよ。ふうひははっへおいひいはは~」
本音
「全然大丈夫じゃないよ~!」
火影
「…シャル。ほら、このマヨネーズ食べてみろ」
火影は自分の箸でサラダのマヨネーズを多めに取ってシャルの口に差し出す。
シャル
「へっ?ふ、ふん…はれ?辛いのが楽になった?」
火影
「マヨネーズにはワサビの辛味成分を抑える働きがあるんだ」
シャル
「そうなんだ。ありがとう火影」
(…あれ?もしかして今のって間接キス?…間接キスだよね!?)
本音
「ひかりん物知り~」
鈴
(…良いなぁ~)
海之
「…一夏の言う通り、確かに良い魚だな」
簪
「そういえば海之くんは和食が好きだったんだよね?」
ラウラ
「ふむ。嫁の好みは和食か」
簪
「海之くんって自分でも料理するの?」
海之
「ああ。今度一緒にやるか?」
簪
「えっ本当?ありがとう!」
ラウラ
「海之!もし良ければ私にも今度料理を教えてくれないか?恥ずかしながら…私はそれ程経験が無くてな」
海之
「時間が合えばいつでも構わん」
ラウラ
「そうか!約束だぞ!」
そんな感じで食事は過ぎて行った…。
…………
食後の自由時間。
火影と海之は自分達の部屋に備え付けの露天風呂につかり、夜風に当たるために散歩に繰り出そうとしていた。
火影
「…そうか。お前の夢にはあいつらが出てきたんだな」
海之
「ああ。予想外だったがな」
火影
「お前はまだ良いよ。しっかり縁がある奴らだからな。俺の方が予想外だぜ」
ガラッ
隣の千冬と真耶の部屋から一夏が出てきた。
火影
「よう一夏。先生方のマッサージは終わったのか?」
一夏
「ああ終わった。ただ今度はゆっくり散歩にでも行って来いと言われてな」
海之
「何かあったのか?」
一夏
「マッサージしてたら部屋の前に何時の間にか箒達が集まってたんだよ。それを見た千冬姉が部屋にみんなを招き入れてな。そしたら今度は「一時間位ゆっくり散歩でもして来い」だとさ」
海之
「…なるほど」
火影
「散歩なら僕達も付き合うぜ。なんならこっから歩いてすぐのゲームセンター行こうぜ」
一夏
「お、いいね!」
そう言うと三人は散歩に繰り出した。
…………
場所は変わってここは千冬と真耶の部屋。
部屋には二人以外にも箒、セシリア、鈴、シャルロット、ラウラ、簪、本音がいた。千冬は冷蔵庫から缶ビールを取り出し、豪快に飲みだしてあっという間に一本空けてしまった。
千冬
「くぅ~、やっぱり風呂の後のこれは格別だな」
鈴
「…あの千冬さん。臨海学校とはいえまだ勤務中じゃ…」
千冬
「固い事いうな。もうこの後は何もないしもっと気楽にしろ気楽に。あそうだ。お前らの分も用意してある。好きなの取れ」
そう言うと千冬は二本目と同時に冷蔵庫からオレンジジュース、アップルジュース、グレープジュース、カルピス、ラムネ、サイダー、コーラ、麦茶等を取りだし、全員それぞれ手に取った。
全員・真耶
「「「い、頂きます…」」」
千冬は全員が口にした事を確認すると、
千冬
「…飲んだな?」
全員・真耶
「「「えっ?…あっ」」」
千冬
「というわけでココで起こった事は他言無用だ。いいな?」
全員・真耶
「「「……はい」」」
どうやら口止め料だった様だ。そして間髪入れず千冬は尋ねた。
千冬
「…で、さっそくだがお前ら。あいつらのどこに惚れた?」
女子全員
「「「!!」」」
いきなりの質問に何人かむせた者もいた。
簪
「ななな、織斑先生!?」
千冬
「大丈夫だ。ここで喋った内容は一切漏れん。はっきり言って構わん。…そうだな、ではまず篠ノ之、オルコット。お前達が一夏に惚れているのは知っている。どこにだ?」
箒・セシリア
「「!」」
二人は急に振られた事で酷く動揺していた。他のみんなもこの後は自分達と分かっているためか笑えなかった。
箒(サイダー)
「…わ、私は幼い頃に助けられてから…、ずっとと言いますか…、あいつの優しさに一目惚れというか…」
セシリア(アップルジュース)
「わ、私は…クラスの代表として…もっとしっかりしてほしいですし、一夏さんの可能性を見たいと言いますか…」
千冬
「よし。ではあいつにそう伝えておこう」
箒・セシリア
「「言わなくていいです!!」」
千冬
「冗談だ。まあお前らの気持ちはよく分かっている。どうだ欲しいか?」
箒・セシリア
「「くれるんですか!?」」
千冬
「…そう簡単にやるか小娘」
箒・セシリア
「「え~…」」
千冬
「まずそれ以前にあいつが気付くかどうかが大前提だ。はっきり言って一番難しい問題だぞ?」
箒・セシリア
「「う~ん…」」
そう言うと二人は何も言えなくなってしまった。まさにその通りなのだから。考えている二人を余所に千冬は次に、
千冬
「…では次にデュノア、布仏、そして鳳。お前達は火影のどこに惚れた?」
シャル・本音・鈴
「「「!!」」」
こちらも一瞬沈黙した。
本音(コーラ)
「わ、私はどこにというより…、気付いたらいつの間にか好きになってましたから…よくわかりません。ただ、ひかりんの優しい所が好きというのは断言できるかな~。あとひかりんのデザートも好きだし~」
箒
「そういえば本音は今また火影と同じ部屋だったな」
本音
「うんそうだよ~。またひかりんのデザート食べれる~!」
シャル
「三日に一回は来てたけどね」
少し前まで火影のルームメイトだったシャルは今ラウラと相部屋になっており、本音は再び火影と相部屋になっていた。
千冬
「ふむ。デュノア、お前は?」
千冬は三本目に入っていた。
シャル(オレンジジュース)
「…僕は…火影に救われたんです。みんなも既に知ってるけど、僕は少し前まで男の子のふりをしていました。会社の命令でそうするしかないと思って。自分の運命だって全部諦めてました」
鈴
「…そうだったわね」
シャル
「…でも火影は言ってくれたんです。「会社とか運命とか関係ない。僕の心はなんて言ってる?」って。そう言われて僕は初めて正直になれたんです。結果それが僕だけじゃなく、僕の大切な人達全てを助けることにもつながって。火影に出会わなかったら…僕は何もわからないままでした。僕を救ってくれたんです。それからです。火影の事が好きになったのは…」
真耶(ラムネ)
「…良かったですねデュノアさん…」
千冬
「わかった。…さて次は鳳。お前は少し前まで一夏の事が好きだったようだが…今は違うようだな」
鈴(麦茶)
「…はい。私は…前は確かに一夏が好きでした。でも…今は火影が好きです」
セシリア
「なにかありましたの?」
鈴
「…特別な事は何も…。だから好きになったというか」
ラウラ
「どう言う事だ?」
鈴
「私ね。昔一夏に一方的な約束をしてたの。ぶちゃけ告白みたいなね。でもみんな知ってると思うけど一夏って鈍感じゃない。案の定覚えてなくって…。正直凄く悲くかったな…」
千冬
「…全くあいつは…」
鈴
「そんな時にあいつは、火影は傍にいてくれたの。私が関係ないと言っても傍にいてくれた。労いの言葉をかけてくれる訳でも慰めてくれる訳でもなくって、ただずっと話を聞いてくれたの。妙に救われたというか…、いつの間にかあいつの事が自分の中でどんどん大きくなって。そして以前私があの黒いISにやられそうになった時、気づいたらあいつの名前を呼んでました。その時はっきりわかったんです。私は火影が好きなんだって」
シャル
「よかったね鈴」
千冬
「ふっ。あいつも隅に置けんな。だが残念な事に火影も一夏と同じ位鈍感だと思われる。難しいぞ?」
シャル
「あはは、そうですね。でも良いんです。負けませんから」
本音
「そ~そ~」
鈴
「私も同じです」
三人は晴れやかな表情だ。
千冬
「そうか。…さて最後に更識、ボーデヴィッヒ。お前らが海之に惚れているのは良く分かってる。どこに惚れた?」
千冬は四本目の缶を開けた。
簪(カルピス)
「!…海之くんは私を変えてくれたんです。私はある事情でなんでも自分一人でやろうと、頑張ろうとしてました。弱音を吐けば負けだと思ってましたから。周りから手を差し伸べられても助言されても受け入れず、何時の間にかみんなから距離を取ってしまっていました」
箒
「そうなのか…」
簪
「…そんな時海之くんは言ってくれたんです。一人で全てを成し遂げられる人なんていない。頼るのも強さだって。だから私はみんなに相談してみたんです。そしたらこんな私をみんな受け入れてくれて。…海之くんは私を変えてくれて、そして力になると言ってくれた。自分の問題にも向き合おうと決心できたんです。気が付いたら…、海之くんの事が好きになってました」
本音
「かんちゃん~」
千冬
「ふっ…。最後はボーデヴィッヒだな。私は聞いたが改めて聞こうか」
ラウラ(グレープジュース)
「はい。みんな既に知っていますが…、私は生まれつき兵士として生き、闘い、そして死ぬ事だけを目的に生きてきました。生まれてから正直ほんの数日前、海之と戦うあの日まで。強くなることが私の存在意義。存在を証明する唯一の方法。そう信じていたんです」
千冬
「……」
ラウラ
「しかし敗北を受け入れらず、力を望んだ私は結果あんな無様な姿に…。そんな私を海之は命がけで救い出してくれました。あの黒いものに囚われた私に言ってくれたんです。大事なのは力ではなく、どんな困難にも負けない強い心と魂だと。もし何かあったら頼れと。そんな言葉は初めてでした。嬉しかったです。同時に今までに無い位胸が熱くなりました。そして分かったんです。これが好きという感情だと」
千冬
「…そうか。改めて良かったなボーデヴィッヒ」
ラウラ
「はい!…というわけで簪、お前には負けんぞ。海之は私の嫁だからな」
簪
「えっ。……うん、私だって負けない!」
真耶
「海之くんも隅に置けませんね~」
箒
「私も一夏のどういう所が好きなのか。もっと真剣に考えんとな…。ただセシリア、お前には負けんぞ!」
セシリア
「望むところですわ!」
千冬
「…さてすっかり話が長くなってしまったな。そろそろ…」
ラウラ
「あっ、少し待ってください。教官」
その時ラウラが千冬に話しかけた。
千冬
「?なんだボーデヴィッヒ?」
ラウラ
「あの、その、もし間違っていたら申し訳無いんですが。決して確証がある話ではないのですが…」
千冬
「構わん言ってみろ」
そう言いつつ千冬はビールを口に運ぶ。
ラウラ
「では申し上げます。教官も…海之の事が好きなのですか?」
全員
「「「……えっ!?」」」
千冬
「っ!!」
予想外の質問に千冬は思い切りむせた。
ラウラ
「大丈夫ですか!?」
千冬
「あ、ああ大丈夫だ…。ってそうではない!なんだその質問は!?」
ラウラ
「申し訳ありません。ただ数日前から教官の海之を見る目が他の生徒とは違う様な気がするのです。どう違うのかは分からないのですが…。それに教官は他の者とは違い、いつも海之の名前を先に出すので…」
シャル
「…そう言えば…」
セシリア
「確かに織斑先生だけ海之さんのお名前を火影さんより先にお呼びしますわよね」
真耶
「おまけに今日のビーチバレーも先輩とても楽しそうでしたもんね♪」
千冬
「あ、あれは別にそう言う理由では…。それに海之の名前を先に出すのもあいつが火影の兄だからだ!」
ラウラ
「…なるほど。さすがは教官」
鈴
「それで納得すんのね…」
千冬
「さあもうあいつらも戻ってくる。お前達もそろそろ部屋に戻れ」
全員
「「「ありがとうございましたー!」」
真耶
「すみません、私ちょっとお手洗いに行きますね」
そう言うと千冬以外の者は出て行った。
千冬
「…ハァ…やれやれ…」
しかし千冬の心中では先ほどのラウラの言葉が再び浮きあがった。
「教官は…海之の事が好きなのですか?」
「数日前から教官の海之を見る目が他の生徒と違う様な気がするのです」
千冬
「……数日前……!」
千冬には一つ思い当たる事があった。あのクレープ屋の店主の言葉。
「兄弟ってゆう感じでもないし恋人か?」
千冬
「…まさか…。いや馬鹿な、ありえん。あいつは子供だぞ。若干16だぞ。私がそんな事…」
「教官は…海之の事が好きなのですか?」
「兄弟ってゆう感じでもないし恋人か?」
千冬
「………私が………海之を…?」
またまた大いに悩む千冬だった。