IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
これで一安心…とみんなが思ったその時、一夏と箒による作戦が失敗したという報告が入ってくるのであった。
出撃から数時間後。時間はすっかり夜になり、外は暗闇に染まっていた。火影と海之は無事に作戦を成功したが一夏と箒はIS討伐に失敗し、逆に一夏が負傷する結果になってしまった。その一夏は自室で眠っており、今はセシリアが看病している。
花月荘 仮指令室
火影
「先生。一夏の様子は?」
千冬
「…幸い命に別状はないが、まだ意識が戻っていない。負傷した際、頭を強く打ったようでな…」
火影
「…そうですか」
鈴
「一夏…」
作戦から戻って来た火影と海之は千冬から一夏達の作戦の経過を聞いていた。最初の零落白夜を失敗してしまった一夏と箒だったが、紅椿、そしてアラストルの効果でスピードが上昇した白式はゴスペル相手に最初は優勢だったらしく、自分達のペースで進んでいた。しかしその途中突然ゴスペルが二次移行(セカンドシフト)を起こし、機体性能が大幅に上昇した。それでもなんとか隙を付く事ができ、零落白夜を発動しようとした所、周辺の海域に密漁船を発見。箒は犯罪者は放っておけと言ったが一夏はそれを拒否。密漁船を守るために零落白夜のためのSEを消費してしまう。
一夏
「なんでお前そんな事言うんだよ!密漁者でも命だろうが!」
一夏のその言葉を聞いて箒は自分が発した言葉に激しく動揺してしまい、その隙をゴスペルに付け込まれて砲撃を受ける。撃墜を覚悟した箒だったが、瞬時加速で戻った一夏が箒の盾となり、負傷してしまう。自分の前で起きた事に茫然となってしまった箒は千冬の指示を受け、気を失った一夏を連れて戻って来たという事だった…。
シャル
「…先生。そういえば箒は?さっきから見当たらないんですが…」
千冬
「…私にも分からない。だが今はそっとしておいてやれ。それから今後については現在検討中だ。お前達も次の命令があるまで待機を命じる。いいな?」
ラウラ
「…了解」
指令室からみんなが去り、部屋には千冬と火影が残った。
火影
「…」
千冬
「…すまんな火影。お前や海之も疲れているというのに。…もしかしたらまたお前達に頼らねばならんかもしれんが…」
火影
「気にする必要はありません。…それに僕も海之も一夏がこのまま終わるとは思っていません。あいつは強い」
千冬
「…ふっ。お前や海之にそう言われると心強いな。…海之はどうした?」
火影
「…ちょっとね」
…………
花月荘近くの浜辺。そこに一人の人影があった。
箒
「……」
それは箒だった。
箒
「…私のせいだ…。私の勝手な行動が…一夏を傷つけた…。私が…図々しく前に出なければ…。私が…自分でやるなんて言わなければ。みんなの言う通り…火影達やセシリアに任せていれば。いや、そもそも…専用機なんて持たなければ」
任務から戻ってきた彼女はずっと自身を責め続けていた。
箒
「私は…どこで間違ってしまったんだろう。私は…一夏と一緒に戦いたかった。一夏と一緒に戦っているみんなが…羨ましかった。一夏が目標としている火影や海之が…羨ましかった。…それだけの筈なのに…」
自分の軽はずみな行動が一夏を傷つけたという事実に箒の心は押しつぶされそうであった。
とそこへ、
?
「…箒」
箒
「!…海之…」
それは海之だった。海之は何も言わず、箒の隣に立った。
海之
「……」
箒
「……」
海之
「…みんなお前を待っているぞ」
箒
「……」
海之
「箒。俺はお前に前に言ったな。一夏の力になりたいと思うのは良い。だがそれに先走って己を失えば、何れ取り返しがつかない事になると」
箒
「っ…」
海之
「一夏が負傷した件は間違いなくお前のミスだ。焦りと浮かれていたお前のな。それについては慰めたり等しないさ。…ただ、お前はそれでもう何もしないのか?」
箒
「……」
箒はずっと黙っていたが、やがて言った。
箒
「わ、私は…、もうISには…乗らない」
すると海之が間髪いれずに言った。
海之
「ならそのISを捨てろ」
箒
「…!」
海之
「欲望抱けど行動せぬものは災いなり。己の目的のために力を求めて、束さんにISを造らせておいて、いざその時が来れば失敗する事への恐怖心から行動する事を恐れる。そんな臆病者が持っていても意味は無い。戦う意味を無くし、恐れる者に持たれた所で、そのISからすれば不本意だろうしな」
箒
「!」
海之の容赦ない言葉に今まで黙っていた箒も声を出す
箒
「…言わせておけば…!お前に、お前に何がわかる!?元から強いお前に私の気持ち等わかるか!」
海之
「…少しはわかるさ。俺も昔は散々敗れ続けたものだ。あいつにも…、あいつにも…。…そして奴にもな」
海之はかつてバージルだった頃の時を思い出していた。
箒
「…えっ?…お前が?」
海之
「お前は俺を万能の神か悪魔か何かだと思っているのか?…まぁ、以前ならあながち間違ってはいないな」
箒
「…えっ?」
海之
「気にするな。…それよりやっと喋ったな。どうする?お前はこのまま立ち尽くしているか?まぁそれでも別に構わんが、先程も言った通りもし戦わないなら今すぐそのISを捨てろ。そしてもう二度と関わるな。戦おうとするな。それは頑張っている奴らへの冒涜だからな」
箒
「っ……」
箒は口ごもっていたが再び声を出した。
箒
「私は…一夏と共に戦いたいと思った。そのためにこれを求めた。だからこれは…私が私である証なんだ。これを捨てる事は…、私自身を…、私の一夏への想いを捨て去る事と同意義だ。それだけは、それだけは嫌だ!」
海之
「……」
箒
「私は、私はもう一度、一夏のために戦う!もう二度と負けはしない!」
その時、
火影
「…ようやくその気になりやがったか」
箒
「…えっ?」
鈴
「遅いのよあんた」
セシリア
「全く随分待たされましたわ。…まあその分一夏さんの看病ができて少し良かったですけど」
シャル
「元気になったようで良かったよ」
ラウラ
「落ち込んだお前などらしくないからな」
束
「大丈夫だよ箒ちゃん!それでこそ我が妹だ!うん!」
箒
「みんな…、それに姉さん…」
海之
「束さん。奴の居場所はわかりますか?」
束
「モチのロン!奴の居場所だけどさっき戦闘があった場所から移動してないよ。長時間のフライトでお疲れ気味かな?」
火影
「お前達の出撃許可は得ている。ただし今回僕と海之は戦闘に参加しないが」
箒
「…えっ?」
鈴
「あっ、そういえばあんた知らなかったんだっけ。あんたと一夏がゴスペルの討伐に向かっている間、花月荘が襲われそうになったのよ。ほら、あの黒い騎士のISにね。それも100機もよ。それを火影と海之が二人で殲滅したの」
箒
「なっ!二人で100機だと!?」
シャル
「そうだよ。僕達も行こうとしたんだけど…、火影達の邪魔になりそうだったから」
セシリア
「でも御二人の戦いを拝見して思ったのですわ。私達ももっと強くならなければならないと。そのためにはより多くの経験を積むことが大事だと」
ラウラ
「ああ。それに二次移行したとはいえ相手は一機だ。それに対してこちらは五人。これ位どうにかできなければ海之や火影に並ぶことなど夢物語だからな」
鈴
「だから今回は二人には見てもらうだけにしてもらったの。私達だけで戦うためにね」
箒
「そうだったのか…」
火影
「まぁ心配すんな。どうしようもなくなれば助けてやっから。一夏はクロエや簪が見てくれてっから心配ない」
海之
「あとはお前次第だ。改めて聞こう。お前はどうする?」
箒
「……私は、……戦う!」
束
「箒ちゃん!」
セシリア
「頑張りましょう箒さん!」
鈴
「たまにはいいとこ見せないとね♪」
シャル
「絶対勝とう!みんなで」
ラウラ
「うむ!」
箒
「よし、みんな少し待っていてくれ。一夏に一言伝えてくる」
セシリア
「わ、私も行きますわ!二人だけにしたら何するか分かりませんもの!」
箒
「な、何を考えているんだお前は!?…ええい、勝手にしろ!」
そう言うと箒とセシリアは行ってしまった。
鈴
「相変わらずねぇあの二人」
シャル
「ふふ、でもあんな箒久しぶりに見たね。なんというか…雰囲気が違う気がするよ」
ラウラ
「…なるほど。あれがオーラというものか」
シャル
「う~んちょっと違うなぁ」
…するとそこに千冬が来た。
千冬
「篠ノ之は行ったか…」
束
「あっ、ちーちゃん」
鈴
「どうして千冬さんがここに?」
火影
「僕が連れてきたんだ」
どうやら自分がいると箒が遠慮してしまうかもしれないと思い、今まで隠れていたらしい。
千冬
「…ありがとうみんな。それに海之。お前がはっきり言ってくれたお陰かもしれん」
海之
「聞いていたのですか?」
千冬
「まあな。…私は篠ノ之の事は良く知っている。一夏に心底惚れているくせに全くと言っていいほど素直になれない。その上一夏の事となると人が変わった様になる事もある。まぁその結果が今回の事を招いたというのは間違いない。そんなあいつには誰かから一度アレ位はっきり言ってもらった方が良かったのかもしれん。私や束とは違う誰かにな。…まあしかし、これであいつも多分大丈夫だろう。肝心の一夏はまだ目覚めんがな…」
束
「大丈夫だよちーちゃん!いっくんはちーちゃんの弟だもん♪」
千冬
「…そうだな。…さぁ、お前達も出撃準備に入れ。そして勝ってこい!」
鈴・シャル・ラウラ
「「「はい!」」」
そう言って三人も戻って行った。
千冬
「二人共待ってくれ」
火影・海之
「「?」」
千冬は同じく戻ろうとする二人を呼びとめた。
束
「どしたのちーちゃん?」
火影
「先生?」
海之
「……?」
千冬
「…いや、今から話す事は独り言だから気にしないで良い。…お前達の過去に何があったのかは私は知らない。だがいつか話してほしい。例えどのようなものでも私は受け入れる。信じているぞ」
火影・海之
「「!……」」
束
「ちーちゃん…」
千冬
「…時間をとって悪かったな。もう行け。…あいつらを頼むぞ。二人共」
火影・海之
「「…はい」」
そう言うと二人も戻って行った。
千冬
「……」
束
「…ちーちゃんも気付いてたんだ」
千冬
「も、という事はお前もか。非現実的だがな。ただあの二人は私達とは違う。上手くは言えん。違うとしか…」
束
「そうだね。あの子達といい二人のISといい…。でもあの二人は絶対良い子だよ!」
千冬
「ふっ、そうだな」
束
「…なんかちーちゃん最近よく笑う様になったね♪」
千冬
「さぁな。お前こそ随分柔らかくなった様だが?」
束
「まぁね。ひーくんみーくんのおかげかな♪でもちーちゃんの場合別の理由があるかもね~」
千冬
「別の理由?なんだ?」
束
「さぁね~。言ってみれば………恋?」
千冬
「……なっ!?」
…………
火影
「…海之」
海之
「分かっている。先生は気付き始めているようだな。俺達の異常性に」
火影
「だよな…。もしかしたら束さんもそうかもしれないぜ?そんな気がする」
海之
「だが先生は待っている、信じていると言った。いつ話すかは俺達が決めて良いのだろう。…その時は近いかもしれんがな」
火影
「まぁ仕方ねぇさ。元々俺達はこの世界の存在じゃねぇんだから。隠し事はいつかばれるもんさ。みんながどう思うかは分からんがな…。今は俺達がやる事をやろうぜ」
海之
「…そうだな」
そして二人はみんなと合流し、決戦の場所へと向かうのであった。
…………
???
一夏
「ここは…どこだ?」
その時一夏は真っ白な空間にいた。それは火影や海之がかつての縁ある者達を出会った場所に酷似していた。
一夏
「なんとなく覚えている。俺は箒と一緒にゴスペルと戦って、もう少しという所で奴がセカンドシフトして…、箒を庇って…、俺…死んだのか?」
その時、
?
「死んでないよ」
一夏
「うわ!」
いきなり後ろから声がしたので一夏は驚いてしまった。そして振り向いた一夏が見た者は人らしき輪郭。大きさからして大人というより子供に近かった。
一夏
「…君は?」
少女
「初めまして。…ううんそうじゃないか。君とこうして会うのは初めてだけど、いつも会っていたからね」
一夏
「?? まぁいいか。さっき君は言ってたけど、俺はまだ生きているのか?」
少女
「そうだよ。君はまだ死んでない。だから安心して」
一夏
「そっか。じゃあ君はあの後、何があったのか知ってるかい?」
少女
「うん。あの後君は気絶しちゃって一緒に戦っていた子に助けられたんだ。随分落ち込んでたよ。自分のせいで君が傷ついたって」
一夏
「箒…」
少女
「でも君もあの子も良いお友達を持ったね。あの後たくさんのお友達があの子にもう一度戦う勇気を与えてくれたんだってさ」
一夏
「友達…、もしかして火影達の事か…?…ああ、良い友達だよ。って、何で君がそんな事知ってるんだ?」
少女
「だって君の傍で聞いてたもん。…そしてこうも言ってたよ。君のために、みんなと共に戦ってくるってさ」
一夏
「戦うって…、シルバリオ・ゴスペルとか!?こうしちゃいられねぇ!俺も行かないと!…って、どうやったら行けるんだ?」
少女
「それについては心配ないよ。…でもその前にひとつ良い?」
一夏
「ん?」
少女
「君はさっきあのISと戦って負けた。それだけじゃない、強くなる前のあいつ相手にもやっとだった。はっきり言ってさっきのはたまたま運が良かっただけ。打ち所が悪かったら死んでたかもしれない。次は助からないかもしれない。それでも君は行くの?」
一夏
「……ああ。分かってるよ。あのISは強い。俺なんかじゃ勝てないかもしれない。…でもみんなが戦っているのに俺だけ眠っている訳にはいかない。それに…火影や海之に頼るばかりにはいかないしな」
少女
「あの双子の事?」
一夏
「ああ。あいつらは強い。そしてどんな状況でも絶対に諦めない。俺なんか比べものにならない位全てにおいて強い。力も心も。俺もそんな人間になりたいんだ。例え二人ほどでなくても…二人の様に守れる人間になりたい。俺を守ってくれた千冬姉みたいに」
少女
「……」
一夏
「だから俺も諦めない。なに、運でも勝ちかける事はできたんだ。また同じ事を起こせば良いさ。だから…行くよ」
そう言うと少女は笑った様に見えた。
少女
「・・ふふっ、わかってるわ。なにせ私は…ずっと君を見てきたんだもの。君の考えは手に取る様にわかるわ♪」
一夏
「えっ!ど、どこから?いや何時から!?」
少女
「…ハァ…、精々あの子達を怒らせない様に気を付けなさい。じゃあ君を元の世界に帰すわね。あああと君のお友達が少し変わりたがってるから、仲良くしてあげてね」
一夏
「えっ?」
少女
「なんでもない。じゃあ気をつけてね」
そういうと一夏は急に酷い眠気に襲われた。薄れゆく意識の中、うっすら聞こえた様な気がした。
少女
「…ばいばい。ううん、これからも宜しくね。私のマスター…」