IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
一方の一夏は夢の中で一人の少女に出会い、一夏も自分の想いを語る。それに安心したように少女は去って行くのであった。
一夏が夢の中で少女と対話していたちょうどその頃。
ここは先ほど一夏と箒がゴスペルと対峙した場所から僅かに離れた地点。
箒
「…見えた!」
はっきりではないが少し先にシルバリオ・ゴスペルの姿が確認できる。動いているわけでも無く、ずっとその場に停止しているようだ。
シャル
「あれがシルバリオ・ゴスペル…」
鈴
「だけどさっき映像で見たものとは形が違うわね」
セシリア
「箒さんの言う通り、やはり二次移行したようですわね」
ラウラ
「厄介だな」
箒
「ああ。特にあの光の翼、あれは距離に関係なく攻撃できるようだ」
箒の話では一夏と先に挑んだ際、互いのスピードと連携でゴスペルの武装でありスラスターの役割もする特殊武装「銀の鐘」を破壊し、ようやく倒せると思った直後に二次移行したらしい。SEが全快しただけでなく、更に破壊した銀の鐘も光の翼に生まれ変わった。スピードは先の状態に劣るようだがその分攻撃方法がより複雑になった。更にこの光の翼は大きさも自由に変える事ができ、自分に接近する者を一切近づけさせない。これが接近戦主体の一夏や箒が苦戦した理由の一つでもある。
セシリア
「あの翼には恐らく遠隔武装も防がれてしまいますわね」
ラウラ
「ああ。私のレール砲でも破るのは難しいだろうな…。海之や火影の攻撃なら可能だろうが…」
鈴
「おそらくね…。考えてみればこういう時、火影や海之がいつも守ってくれてたもんね。シャルはあの蜘蛛と戦ったけど」
シャル
「ううん、僕も守られてばかりだったよ。二人がいなければきっとやられてた」
箒
「…私もそうだ。あのクラス対抗戦で勝手な行動を取ってしまったために一夏やみんなを困らせた。火影に助けてもらわなければ今頃…」
鈴
「…あんたまだ気にしてたのね」
シャル
「…でもこれからはそれだけじゃ駄目、なんだよね?」
ラウラ
「ああ。私も強くなって嫁に並ぶ位にならなければならん」
シャル
「僕も同じだよ。せめて火影を支えられる位になりたいと思ってる」
セシリア
「そうですわね。一夏さんもきっとそう思っている筈ですわ。私も一夏さんと共に戦いたいですもの」
箒
「あの二人は千冬さんと同じ位一夏の目標だからな。…あとお前には負けんぞセシリア」
鈴
「はいはいストップストップ。…でもまだ数ヶ月、特にシャルやラウラなんてまだ一ヶ月と少しなのに、あの二人ってまわりにすごく影響を与えてたのね。まぁ私も同じだけど」
箒
「ああ。だからせめてこの戦いは私達だけで見事に勝とうではないか!」
シャル
「うん!…さて、話を戻すけどあいつは射撃で倒すのは難しいだろうね。危険だけどここは接近戦で仕留めるのが一番かも」
鈴
「…とすると箒。一番速いあんたがやりなさい!私達はあいつの注意をさらしつつ、あんたを援護するから」
ラウラ
「そうだな。機体性能が相手の方が上である以上ここは数で勝負だ」
箒
「…わかった。みんな…頼むぞ!」
セシリア
「はい!」
鈴
「任せなさい!」
シャル
「うん!」
ラウラ
「ああ!」
そして少女達はゴスペルに向かって行った。それぞれの想いを胸に秘めて。
…………
そこから更に少し離れたポイント。ここに火影と海之がいた。二人は箒達から戦いへの参加を止められたため、こうしてここで行方を見守っている事にしたのである。
火影
「あいつら無理しなきゃいいが…」
海之
「……」
火影
「お前もあいつらの事が心配か?」
海之
「…いやそうじゃない。あいつらも強いからな。…先ほどの織斑先生の言葉の件だ」
火影
「…ああ」
海之
「…俺達はイレギュラーな存在だ。以前とは違い只の人間である事は違いないが。俺やお前のISといい、…そして奴らといい、もしかしたら俺達が生まれたためにあのような事が、と思ってな…」
海之のいう奴らとは先ほどの黒いIS、そして以前襲ってきた蜘蛛型のISである。あれは自分達が知っている存在に酷似している。そして先刻の夢といい、自分達がこの世界にいる事で本来この世界であり得ない事が起こっているのではないかと危惧していた。
火影
「…それでも良いさ」
海之
「?」
火影
「あの少女が言ってたろ?俺達に守ってほしいって。もしお前の考え通りだとしても、俺達は今はこの世界で生きている人間だ。ただ普通より記憶を大目に持ってる、な。それにあいつらにも約束しちまったからな」
海之
「……」
火影
「俺達の正体を話してあいつらがどんな風に思うかはわからねぇ。拒絶されるかもしれねぇし、先生みたいに受け入れてくれるかもしれねぇ。ただ、俺達はどこに行っても自分を変えねぇ。そうだろ?」
海之
「……そうだな」
二人の前世、ダンテとバージルは例えどんな状況でも自分を変えなかった。それはここでも変わりは無い。
とその時、
~~~~~~~~
火影
「? 何かが接近してくる…。…これは…へぇ~」
海之
「…ほぉ…」
火影と海之は接近して来るものを見て笑った。
…………
場所は戻って箒達。
箒達はシルバリオ・ゴスペルと戦闘を継続していた。一番速い箒が敵の隙を掻い潜って接近戦を仕掛けていたがやはり相手も軍の最新型。さらに二次移行した力は並大抵のものでなく、苦戦を強いられていた。
「……」
鈴
「ハァ、ハァ…。わかっちゃいたけどやっぱり強いわね…」
ラウラ
「くっ、何とかAICを仕掛けられれば動きを止められるんだが…、あの攻撃の前では集中する暇がない…」
セシリア
「しかも偏光射撃まで可能だなんて…。本当に場所は関係ありませんわね…」
シャル
「…みんなSEにも余裕が無くなってきてるね…箒は?」」
箒
「私もだ…。元々私の紅椿は一夏の白式と同じく燃費が悪いからな…。高速で動いていると切れも早い…」
とその時、
「!」
ドドドドドドドドドッ!!
ゴスペルが光の翼から無数の光を繰り出してきた。
ドンッ!ドンッ!
鈴
「キャア!」
ラウラ
「くっ!しまった!」
スピードに若干遅れがある鈴とラウラに光が当たり、二人は姿勢を大きく崩して落ちてしまった。
セシリア
「鈴さん!ラウラさん!」
シャル
「! 危ないセシリア!」
セシリア
「!」
ドォォォォォン!
セシリア
「キャアァァァ!」
シャル
「うわぁぁぁ!」
セシリアに当たりそうだった光をシャルロットがシールドで防御するも抑えきれず、二人共やられてしまう。
箒
「セシリア!シャル!…おのれぇ!!」
そう言うと箒はゴスペルに向かっていく。だが援護無しな上にSEも切れかけていた紅椿だけでは懐に飛び込むどころか回避するのがやっとであった。堪らず距離をとる箒。
箒
「くっ…、ハァ、ハァ…」
そして、
ズドンッ!
一筋の大きな収束された光が箒に向かって放たれた。だが箒には回避する余裕が無かった。
セシリア
「箒さん!」
鈴・シャル・ラウラ
「「「箒!」」」
箒
(…くっ、もう…駄目…なのか。…すまん一夏…約束…守れな…)
力が入らなくなった箒は目を瞑る。そして光が箒を飲み込んだ…。
箒
(………あれ?……私?)
あの光を受けたのに何ともない?不思議に思って箒は目を開いた。するとそこにあったのは、
箒
「!!」
?
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
箒の前に手に持った剣で光を弾いている一体の白い機体がいた。良く見るとそれは、
箒
「あ、あぁぁ…まさか…まさか…」
一夏
「誰もやらせねぇ!みんなは俺が守る!」
そこにいたのは紛れも無く、白ISを纏った一夏であった。やがて収束された光は途切れた。エネルギーを出しつくしたのかゴスペルは少し動きが鈍る。
一夏
「ハァ、ハァ。待たせたな!箒!」
箒
「一夏…一夏あ!!」
他のみんなも通信で呼び掛ける。
セシリア
「一夏さん!よく御無事で!」
鈴
「遅いのよ!あんた!」
シャル
「一夏!良かった!」
ラウラ
「さすがは嫁や弟が見込んだ男だ!」
一夏
「みんなも無事みたいだな」
箒
「一夏!もうなんとも無いのか!?」
一夏
「ああ大丈夫だ。なんでかわかんねぇけど傷も全く無くなってな」
箒
「そ、そうか!…あと一夏、お前のその機体、白式か?」
一夏
「ああ、どうやら二次移行したらしいんだ。「白式・雪羅」つうらしい。俺にも良くわかんねぇんだけどな」
一夏の白式もシルバリオ・ゴスペルと同じく二次移行したらしい。そのきっかけがあの少女との会話だったのかはわからないが。
箒
「そ、そうか。驚きすぎて何が何やら…」
一夏
「ああ。だが今はゆっくり話してる暇はねぇ!まだ奴は動いてるんだ。行けるか箒?」
箒
「あ、ああ!任せろ!」
一夏
「よし!…ああその前にこれだけ。…はい」
そう言うと一夏の手には一つの綺麗なリボンがあった。それを箒に差し出す。
箒
「? 一夏これは?」
一夏
「今日誕生日だろ?おめでとう」
箒
「えっ?…あっ」
「!」
黙っていたゴスペルは再び動き出した。
一夏
「! 行くぜ!」
そう言うと一夏は向かって行った。
箒
「一夏…」
一夏は大きく上昇した白式のスピードでゴスペルの攻撃を避けながらチャンスを伺う。
一夏
「化け物め!これでも食らえ!」
そう言うと一夏は片手を前に翳し、エネルギーを込める。そして、
キュィィィィン…ズドンッ!!
ドガァァァァン!
「!?」
自らの翼で防御しようとしたゴスペルだが、耐えられず爆発を起こした。それによって片方の翼が破壊され、エネルギーが大きく消耗する。
一夏
「これが…白式の新しい武器…」
これが白式・雪羅の新しい武装、荷電粒子砲である。その威力は従来の遠隔武装の威力を上回るものだが、
一夏
「…なっ?SEが一気に少なくなった!?」
そう、その威力故にSEを大きく消耗するのが欠点である。燃費が悪い白式にとって荷電粒子砲は貴重な遠隔武装である半面、諸刃の剣でもあるのだ。
一夏
「くっ!ここに来るまでにSEを消費しすぎたな!」
やがて態勢を整え直したゴスペルが一夏に攻撃を繰り出そうとする。
「!!」
一夏
「くっ!」
箒
「一夏!」
(私は、私は…一夏と共に戦いたいんだ!守りたいんだ!力を貸してくれ!紅椿!)
すると、
パアァァァァァァァァァ!
その場にいる全員
「「「!!」」」
突然箒の声に呼応したかの様に紅椿から黄金色の光が漏れだした。
一夏
「箒!」
箒
「これは…いったい、……絢爛舞踏?…これは!一夏!私に掴まれ!」
一夏
「えっ!あ、ああ!」
そう言うと一夏は箒の手を握る。すると、
一夏
「!SEが回復していく!」
箒
「これが紅椿の単一仕様能力、絢爛舞踏だ。SEを補給できる!行け、一夏!」
一夏
「…ああ!わかった!」
そういうと一夏は再びゴスペルに向かっていく。
「!!」
ゴスペルは一夏に向かって再び光を飛ばそうとした。その時、
ガキィィィィィィン!!
「!?」
突然ゴスペルの動きが止まる。見ると、
ラウラ
「くっ!!」
見るとラウラのレーゲンが全エネルギーによるAICを発動して動きを止めていた、不足していたSEをコア・バイパスで譲り受け、発動できたようだ。
ラウラ
「行け!一夏!」
セシリア
「一夏さん!」
シャル
「一夏!」
鈴
「決めなさい!」
箒
「一夏!決めろ!」
一夏
「うぉぉぉぉぉぉ!」
一夏は雪片弐型を展開し、零落白夜を起動させる。
一夏
「終われぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「!!!」
周辺が激しい光に包まれた…。
…………
やがて光が鎮まるとシルバリオ・ゴスペルの姿は無くなり、代わりに操縦者と思われる女性が一夏の腕の中にいた。
一夏
「……」
箒
「一夏…」
一夏
「…帰ろうぜ箒。みんなの所へ」
箒
「あ、ああ。……あの一夏。私」
一夏
「もう言いっこなし!改めて宜しくな、箒♪」
箒
「!…ああ!」
二人は笑い合っていた…。
セシリア
「今回は仕方ありませんわね」
シャル
「あはは。でも本当によかったよね」
ラウラ
「うむ。これが終わりよければ全て良しというものか」
鈴
「当たってるじゃん!…でもどうする?私達もうIS動かせる分も無いし…」
その時、
火影
「ほら、掴まれ」
直ぐ後ろに火影と海之がいた。
シャル
「!二人共、何時の間に!?」
セシリア
「吃驚しましたわよ!」
火影
「大袈裟なんだよ。…よくやったなみんな」
鈴
「う、うん。ありがとう。でも二人共なんでここにいるの?」
海之
「戦闘には参加しないと言ったが、送り迎えに参加しないとは言ってないからな。ほら」
ラウラ
「あ、ありがとう…」
火影はシャルロットを後ろで鈴を前で抱っこし、海之はセシリアを後ろでラウラを前で抱っこする形になった。
こうして銀の暴走は生まれ変わった白と、紅の奇跡によって終息を迎えるのであった。
…余談だが火影と海之に掴まった四人は花月荘に帰る迄、真っ赤になって一言も喋らなかったらしく、二人はずっと不思議に思ったらしい。
鈴・シャル・ラウラ・セシリア
「「「「……」」」」
火影・海之
「「??」」