IS×DMC~赤と青の双子の物語~ 作:storyblade
火影と海之は一夏と千冬の家にお世話になっていた。この一学期の間に起こった出来事を振り返る中、二人が考えるのはやはりあの事だった。
自分達と同じく本来ならこの世界に存在しない筈のものたち。だが二人は自分達の大切なものを守るため、戦い抜く事を改めて決意する。
IS学園の夏季休暇は始まりから一週間が経ち、翌月に入っていた。今日は火影と海之の故郷であるスメリアに行く日。そして今火影達は彼等のプライベートジェットでスメリアに向けて飛行中であった。
海之
「予定ではあと3時間程で到着予定だ」
一夏
「人に気を使わずに飛行機乗れるって最高だな!あと思った以上に快適だし!」
鈴
「席も最高級ソファーだもんね♪シャルのとこも飛行機持ってるんじゃないの?」
シャル
「あるにはあるけどこんなに大きくないよ。流石はESCだな~」
火影
「今思えば父さん、なんでこんな大きい物持ったんだろうな。まぁお陰で助かったけど」
箒
「そうだな。大人数だったから心配だったがあと10人位は余裕で乗れそうだ」
セシリア
「母の御仕事の付き添いで何度か乗った事はありますが…、ここまでのものは中々ございませんわ」
ラウラ
「しかも専属のキャビンアテンダントまで付いているからな」
本音
「あ、私オレンジジュースお願いしま~す」
みんなそれぞれ空の旅を満喫している様であった。
…………
それから約3時間後。火影達を乗せた飛行機は無事に予定通りスメリアに到着した。
本音
「わ~い着いたー!」
箒
「これがスメリア…。聞いてはいたが自然が多い国だな」
火影
「ああ。無理やり建物を造ったりしねぇからな。環境を大事にしてるんだ」
スメリア
人口約100000人
日本と同じく島国であるこの国は世界で最も小さい国の一つであり、永世中立国である。ほんの20年ほど前まではそれ程の国ではなかったが、二人の父親、アルティス・エヴァンスが画期的なプログラムを開発したことにより、飛躍的な進歩を遂げた。更にこの国は難民の受け入れにも積極的であり、毎年約30000人の難民を受け入れている。つまり人口の30%は難民という事だ。ただし徒に建造物を建てたり無理に開発を推し進めたりすることはせず、科学と自然が上手く共存した国造りを実現している。因みに日本とは友好国である。
海之
「電気は全て自然発電と再生可能エネルギー。汚水処理システムは完璧だから幾ら下水を海に流しても汚れん」
一夏
「…すげぇな」
シャル
「あと難民を積極的に受け入れてるだけあってやっぱり色々な人がいるんだね」
セシリア
「確かに。ヨーロッパ系アフリカ系アジア系。白人黒人。色んな方がいますわ」
ラウラ
「しかし総人口の30%もの難民を毎年受け入れて何故この国はパンクしないんだ?」
火影
「ああそれはそういう人達が大きくなったら自然と他の国へ行ったり自分達の国へ戻って行くからだよ」
箒
「えっ?」
海之
「スメリアで育ち、学んだ人達は引き続きスメリアで暮らす人。更に知識を深めたいと他の国に行く人。自分の学んだ知識を母国で役立てたいと帰国する人に分かれる。ほとんどは後者二つだ」
鈴
「なんでそのままスメリアに暮らす難民は少ないの?」
火影
「それは僕もよくわからないが…。もしかしたら自分達と同じ様な難民をもっと迎えてほしいっていう願いじゃねぇかな?だがそのまま自分達が残ってしまったらさっきラウラが言った様な人口の増えすぎの問題があるかもしれない。だからその人達の席を空けるために外に旅立って行くのかもな。単に想像だけどな」
シャル
「でももしそうだとしたら…ちょっと寂しいけど良い話だよね。次の子達にバトンを渡す、みたいな」
セシリア
「そうですわね。国から逃げのびた人達がスメリアで学び、今度は自分達の祖国を救うために戻っていく。確かに立派ですわ」
海之
「……さぁそろそろ迎えの車が来る。移動しよう」
そして彼等は迎えに来ていた車に乗り、空港から火影と海之の家へと向かった。そして約10分後、彼らを乗せた車はやがて大きな門をくぐり抜け、広い緑地を横断する道に入っていった。
本音
「ねぇひかりん~。ここは公園かなにか~?」
火影
「いや。これは一応庭だよ。5分もすれば直ぐ家さ」
一夏
「……うっそだろおぉぉぉ!」
周辺に一夏の声が響いた…。
…………
暫く車は進み、彼等を乗せた車は一軒の大きな屋敷の前に到着した。目の前にあるその屋敷は一見洋風だが良く見ると所々に和のデザインを用いている。おそらく二人の母の故郷である日本を、そして遠く日本から嫁いできた母を想った父の考えに違いない。
一夏
「やっぱ大きい家だなー!」
本音
「ほんとだねー!」
火影
「今日驚いてばっかだぞお前ら」
シャル
「…驚くなという方が無理だと思う」
セシリア
「…ですがESCの創始者様の御自宅としては…少しすっきりとした感じですわね。まだ私のお家の方が少し大きい様に感じますわ」
鈴
「そうなの?」
海之
「無駄に大きすぎても使いきれないからな。あえてそうした作りにしてあるらしい。…では入ろうか」
ガチャンッ。
玄関らしい大きな扉を開けるとそこには数人のメイドと執事、そして彼等の前に白髭を生やした英国紳士らしい男性が立っている。
「「「お帰りなさいませ!」」」
白髭の男性
「お帰りなさいませ。火影様、海之様」
火影
「ああただいまギャリソン。みんな」
海之
「ただいま。大人数で帰って来て申し訳ない」
ギャリソン
「何を仰います。御二人が日本で作られた御友人の方々をお連れになってご帰宅された事、このギャリソン甚く感動しております」
火影
「相変わらず大袈裟だなぁ」
一夏
「火影、この人は?」
火影
「ああそうだったな。彼はギャリソン。この家の執事長だ」
ギャリソン
「挨拶が遅れ、大変失礼致しました。火影様と海之様の御友人の方々でいらっしゃいますね。ギャリソンと申します。恥ずかしながらこの屋敷の執事長を務めさせて頂いております。以後お見知りおきを」
一夏達
「「「よ、宜しくお願いします…」」」
一夏達はギャリソンの振る舞いや雰囲気を見て只者では無い事を感じ取ったのか、やや緊張して挨拶と自己紹介を済ませた。
火影
「ギャリソンは父さんの頃からずっとこの家に仕えてくれてんだ。父さんと母さんが亡くなってからは僕達の親代わりの様なもんだな」
シャル
「そうなんだ…。凄い人なんだね」
海之
「ああ。今のこの家があるのも彼のおかげと言っていい」
ギャリソン
「私の様な者に…、もったいなきお言葉でございます…。うぅ…」
ラウラ
「ど、どうしたんですか!?」
ラウラですら敬語で話していた。千冬が聞いたらさぞ驚くだろう。
火影
「大丈夫だ。涙もろいだけだから」
海之
「…さぁ、お前達の滞在する部屋は既に用意させてある。係に案内させよう」
一夏
「んじゃまた後でな二人共」
箒
「ありがとうございます」
セシリア
「それでは後ほど」
本音
「わ~い、荷物置いたら探検しよ~」
鈴
「子供かあんたは」
シャル
「火影。また後でね」
ラウラ
「後でな海之」
一夏達はそれぞれの部屋に案内されて行った…。
海之
「やれやれ…。ギャリソン、そしてみんな。留守の間申し訳なかったな」
ギャリソン
「めっそうもございません。御二人の元気なお姿を拝見できて…私も皆も」
火影
「だから泣くなって…。ところでギャリソン、レオナ叔母さんは元気か?」
ギャリソン
「ええお元気でいらっしゃいます。久しぶりに御二人にお会いできる事をとても喜んでおられますよ」
火影
「う~ん…、あの人の場合あんまり元気すぎんのもなぁ…」
海之
「…うむ」
二人は何か想う事があるようだ。
ギャリソン
「さぁさぁ御二人も長旅でさぞお疲れでしょう。お荷物はお部屋にお運びしますからどうぞお休みください」
火影・海之
「「ありがとう」」
二人もそう言われて自分達の部屋に戻った。
…………
火影
「あ~やっぱ学園の寮の部屋と自分の部屋は違うな。帰って来たって感じするぜ~」
火影は自分の部屋のベッドに大の字になって休んでいた。とそこへ、
コンコンッ
ドアがノックされて外から声が聞こえた。
鈴
「火影~、いる~?」
火影
「…鈴か?入っていいぜ」
ガチャッ
来たのは鈴、シャルロット、本音だった。
本音
「おじゃましま~す♪…うわ~大きな部屋~。あと大きい箱~!」
鈴
「ジュークボックスよ。前に部屋に置いてるって言ってたけどほんとだったんだ」
火影
「そいつは1950年製だ。今じゃ結構レア物だぜ。音声調整ができる様改造してもらった」
シャル
「ねぇ火影!これってビリヤード!?」
火影
「ああ趣味だ。ところで部屋はどうだ?気になった事があったら遠慮なく俺達や手伝いに言えよ」
鈴
「気になるどころか逆にこっちが恐縮になる位の立派な部屋よ!あと部屋は箒とセシリア、私と本音、シャルとラウラがそれぞれ相部屋よ。一夏は一人で部屋使ってるわ」
本音
「おりむ~部屋一人で使えて嬉しそうだったね~」
シャル
「学園では箒と相部屋だしね。色々気を使う事があるのかも」
火影
「そいつぁ良かったな。…あそうだ。あいつの様子を見に行くか。お前らも来るか?」
鈴
「あいつって?」
火影
「ついてくれば分かる」
そう言うと彼等は外に出た。
…………
同時刻、海之の部屋。
海之
「父さん母さん。…今帰りました」
自分の荷物を整理した後、海之は机の上に置いている両親の写真に挨拶をした。これは昔から海之の習慣になっている。因みに火影の部屋にも同じ写真がある。
コンコンッ
こちらでも誰か海之を訪ねてきた。
一夏
「海之~。いるか~?」
海之
「…鍵は開いている」
ガチャッ
入って来たのは一夏、箒、セシリア、そしてラウラだった。
一夏
「おじゃましま~す!」
ラウラ
「…嫁の部屋に入るのも緊張するものだな」
セシリア
「さすが海之さん。部屋の使い方に無駄がありませんわね」
箒
「…しかし凄い本の数だな。これ全部読んだのか?」
海之
「まぁな。部屋の方はどうだ?問題ないか?」
一夏
「全然ないぜ!あんな良い部屋一人で使えて気分良いぜ♪」
箒
「私達も問題ない。…海之、このトロフィー達はなんだ?」
海之
「ああそれは昔の居合の試合で取ったものだ」
セシリア
「こちらも凄い数ですわね…。確か海之さんの剣の先生はお母様でしたっけ」
海之
「ああ。母が亡くなってからはギャリソンが師を務めてくれた」
ラウラ
「雰囲気から感じたがやはり只者では無かったのだな。…これがお前の両親か?」
ラウラが机の上にある写真を見て尋ねた。
海之
「ああ。俺達が5歳の頃だ」
箒
「そうか、この二年後に。さぞ辛かったであろうな」
一夏
「……親か」
セシリア
「どうしました一夏さん?」
一夏
「ん?ああ何でもない」
海之
「……」
一夏の親の件は海之も知っているので黙っている事にした。
海之
「…さて、あと3時間もすれば夕食になる。それまでは俺が屋敷を案内するとしよう」
箒
「助かる」
ラウラ
「うむ。いずれ私の家にもなるからな。しっかり覚えておかねば」
一夏
「いやラウラ。それは話飛び過ぎだから…」
そう言って彼等は海之の案内で外に出た。
…………
場所は変わり、ここは屋敷の外にあるガレージらしき場所。そこに火影達が来ていた。その中で黒人らしい少年がなにやら作業している。
火影
「ようニコ。久々だな!」
ニコと呼ばれた少年
「…火影!もう帰って来てたのか!ずっと作業に集中していて気付かなかったよ」
火影
「相変わらず仕事熱心な奴だな。どうだ調子は?」
ニコ
「愚問だね。俺を誰だと思ってるの?24時間365日いつでも120%だぜ!」
鈴
「…ねぇ火影。この子は?」
火影
「ああこいつはニコ。ここの整備士だ」
シャル
「へーそうなんだ。…って、えっ!どう見ても僕達より年下だけど!?」
火影
「ああニコはまだ11歳だ。だが機械に滅法強くてな。ここで整備士かつ技師として働いてもらってる。もちろん学校に行きながらな」
本音
「すごいねー!」
ニコ
「君達って火影の日本の友達?へー火影も隅に置けないね♪美人ばっかじゃん」
シャル
「び、美人って…。あぅ…」
美人といわれてシャルは真っ赤になって黙ってしまった。
火影
「ニコは元戦災孤児でな。戦争で両親を失って3年前にこの国に来たんだ。そこを俺達が雇った」
本音
「そうなんだ…。辛かったね」
ニコ
「…まぁね。でも今は昔の事ばかり考えず、未来を見て生きる事に決めたんだ。父ちゃんも母ちゃんもそれを望んでいる筈だしさ」
鈴
「…強いねあんた」
火影
「…ところでニコ。アレは万全か?こっちにいる間使おうと思ってんだが」
ニコ
「おう、抜かりは無いぜ!あれは芸術だからな!」
そしてニコは一台のバイクを指さした。一見すると流線型だが所々に生物の皮膚を思わせる様なデザイン。更に前輪には剣を模した様な飾りがある。
火影
「久々だなキャバリエーレ」
鈴
「あ、そうか。確か火影ってバイクも乗れるんだったわね」
本音
「かっこいいね~!」
シャル
「なんとなく火影のアリギエルに似てるね」
火影
「…そういわれりゃそうだな。あっそういやシャル。例のお前に会いたいっいう人だが明後日に予定組んだからな」
シャル
「あっそうだった!…う~ん、緊張するなぁ~」
鈴
「ねぇほんとに誰なのよ火影?」
火影
「今は秘密だ。当日はどうする?俺と一緒にこいつで行くか?」
シャル
「火影と一緒にって……も、もしかしてこれで火影の後ろに乗って!?」
火影
「ああそうだ。もし心配なら他のみんなと車で」
シャル
「行く!火影と一緒に行く!絶対!」
火影
「そ、そうか」
シャルロットの元気な返事にやや引き気味な火影。すると、
鈴
「ね、ねぇ火影?明日と明々後日って他に予定ある?」
火影
「え?いや無ぇよ。こっちにいる間は大部分みんなに合わせるつもりだからな」
鈴
「じゃあさ!どっかで私と本音に付き合って!できればバイクにも乗せて!」
火影
「あ、ああ」
本音
「やったー。約束だよー!」
鈴
(これで条件は一緒ね!)
シャル
(むぅ~!)
ニコ
「…火影、お前も大変だな」
火影
「えっ?」
ニコは気づいた様だが火影はやはり気づいていない様だ。
…………
その夜、一夏達は家中を挙げて派手に持て成された。夕食は火影の要望でギャリソンが腕を振るう事になり、当のギャリソンは恐縮ながらも久々の調理ということで張り切っている様だった。彼の料理を食べた感想を一夏達に聞いてみると…。
一夏達
「……」
海之
「どうしたんだお前達?」
一夏
「…いや。ギャリソンさんの料理が…あまりに旨くて…」
火影
「だろ?」
箒
「ああ…。激しく同意する…」
セシリア
「驚きましたわ…」
鈴
「前に火影や海之も言ってたけど…その通りだったわ…」
シャル
「あんなの食べたこと無いよ…」
本音
「美味しかった~…」
ラウラ
「…どれだけ練習すればこれ程のものができるだろうか…」
ギャリソン
「もったいなきお言葉でございます」
みんなその味に感動している様だった。とその時、
ドーーーーンッ!
街の方から何やら大きな音が聞こえる。
一夏
「…?なんだ?」
火影
「ああそういや忘れてた。今日はちょうど花火を挙げる日だったな。ベランダから大きく見えるぞ」
本音
「花火!私見たい!」
シャル
「僕も見た事ないから見たいな!」
鈴
「じゃあみんなで行きましょ!ほら火影も!」
ラウラ
「行くぞ海之!」
火影
「へいへい」
海之
「…はぁ」
そう言いながらも二人も付いていく。それを見てギャリソンは心で思った。
ギャリソン
「…アルティス様、奥様。火影様と海之様は日本で良い御友人を持たれましたな…」
こうしてスメリアへの里帰り一日目は賑やかに終わった。
ジュークボックスとビリヤード台はDMCの事務所に置いているので火影の部屋にも置いてみました。あとニコはオリキャラです。
庭を車で走るひとこまはアニメ版ストリートファイターII Victoryから考えました。